概要・あらすじ
江戸時代。江戸に出てきた気弱な浪人秋津政之助は、弥一という不思議な優男に出会い、五葉という組織に引き込まれる。五葉は密かに人を拐し、身代金を得る賊であった。政之助が加わったことで変化が訪れ、徐々に仲間らしくなっていく五葉の面々。しかし、盗賊時代の因縁から、追手が迫る弥一は、五葉の面々とは距離を置こうとし始める。
登場人物・キャラクター
秋津 政之助 (あきつ まさのすけ)
気弱な性格が災いして当主の座を弟に譲って江戸に出てきた浪人。剣の腕は立つが人前で力を発揮することができない。お人よしではあるが、物事の本質を見極める目を持っている。国元の弟に送るための金が必要で用心棒などを行っていた。最初は見せかけの用心棒として弥一に雇われるが、徐々に五葉の面々とうちとけ、仲間となった。 弥一の過去と因果を知り、救う術を探そうとする。
弥一 (やいち)
人を拐わかし身代金をとる賊五葉の頭。つかみどころのない優男だが、独特の凄味を持つ。秋津政之助を気に入って五葉に引き入れた。元は旗本の子息だったが、家から見捨てられ、盗賊白楽の一味となった過去がある。白楽では霧中の誠と呼ばれ、人を殺すことに躊躇のない盗賊だった。
梅造 (うめぞう)
五葉の一員。仲間が集まる居酒屋の店主。元々は壱師という盗賊の一味だったが、娘のため抜けて江戸に店をもった。娘のお絹を溺愛している。坊主頭の巨漢で口は悪いが、面倒見のよい性格。おたけに惚れている。壱師を抜ける際、手を尽くしてくれた仏の宗次に恩義を感じ、父親のように慕っている。 五葉で稼いだ金は、かつての盗賊仲間からゆすられていた昔の兄貴分に渡していた。
おたけ
五葉の一員。酒好きの妖艶な美女。元は岡場所にいたが、弥一に身請けされ自由の身となった。美味い酒が飲みたくて弥一に手を貸している。一味の名付けをしたのも彼女で、楓が好きなことから五葉と名付けた。秋津政之助の長屋を又借りして暮らしている。梅造と立花伊蔵に惚れられている。
松吉 (まつきち)
「五葉」の一員。元は一人働きの盗人であったが、弥一に救われたことがあり、恩を返すため五葉に加わった。五葉では、主に情報の収集を行う。腕のいい飾り職人でもある。金持ちから盗った金で酒を飲むことが好きで、五葉で稼いだ金で酒を飲み、残った金は賽銭箱に放っている。人並みはずれて身が軽いが、かつてのケガにより左腕の自由があまりきかない。 別々に暮らしている娘がいて、密かに気にかけている。弥一以外の一味とはあまり口をきかなかったが、秋津政之助の加入から徐々に親しみやすい人柄になっていった。
銀太 (ぎんた)
代理業を営む青年。五葉のことを知り、強引に仲間入りをした。秋津政之助の長屋に押しかけ同居している。旗本の家に生まれたが、双子の弟であったことから、赤子のうちに寺に預けられた過去がある。その後、寺を飛び出し、商家に拾われ世話になる。その商家は盗賊に襲われ潰れてしまったため、再建のため金を稼ごうとしている。 後、商家を襲った盗賊白楽に弥一がいたことが判明する。
八木 平左衛門 (やぎ へいざえもん)
北町奉行所の筆頭与力。度々身分を隠して町を廻っている。八木家には婿養子として入っている。弥一が、実家の隣家の子息・三枝誠之進であり、死んだ使用人の名「弥一」を名乗っていることに気付く。
お絹 (おきぬ)
五葉の一味梅造の一人娘。居酒屋の手伝いをする気の優しい娘。梅蔵に溺愛されており、五葉のつとめのことも承知している。かつて行儀見習いで旗本の家に奉公に出ていたが、その次男を袖にしたことで暇を出された。憤慨した梅蔵に弥一が力を貸し、おたけ、松吉とともに、旗本の次男を拐し、身代金をいただいた。 これが五葉ができるきっかけとなった。
仏の宗次 (ほとけのそうじ)
元盗賊壱師の並び頭。今は隠居の身で郊外に隠棲している。五葉が拐した人質をあずかることもある。梅造が盗賊を足抜けする時に力を貸しており、梅蔵はその恩を忘れず、父親のように慕っている。梅造の店で出す漬物も作っており、味の良さで人気がある。盗賊の頭時代、白楽にいた弥一と面識があった。
立花 伊蔵 (たちばな いぞう)
八木平左衛門のもとで働く奉行所・同心。梅造の店の常連で、五葉のメンバーとは皆顔なじみである。八木に命じられて、弥一の動向を探る。
仁 (じん)
弥一が「霧中の誠」として盗賊白楽の一味だった頃の兄貴分。右頬に大きな刀傷がある。盗賊として捕まり島送りとなっていたが、つとめを終えて江戸にもどり、裏切者の弥一を追う。かつて、旗本の嫡男だった弥一(誠之進)を誘拐し、盗賊の一味に引き入れた。
秋津 文之助 (あきつ ぶんのすけ)
秋津政之助の弟。気弱でふがいな兄に代わって家督を継いだ。家禄を減らした家を盛り返そうと、要人に賄賂を渡し、勘定頭に出世した。そのための金を家の借金と偽り、兄・政之助から無心している。異例の出世により、家中にも敵が多い。
秋津 幸 (あきつ さち)
秋津政之助の妹。兄・秋津文之助が進めた縁談が気に入らず、長兄・政之助を頼って江戸にやってきた。幼馴染の忠次郎をしたっており、後、許嫁となる。
徳次郎 (とくじろう)
仏の宗次の昔なじみ。裏の世界の情報を色々集めることのできる老人。弥一の情報を白楽の残党から求められた。
紋次 (もんじ)
盗賊一味白楽時代の弥一の兄貴分。仁の弟分。盗賊の罪で島流しにあっていた。江戸に戻って来て、弥一に裏切りの是非を問いただそうとしたが、匕首で刺されて殺されてしまう。
集団・組織
五葉 (ごよう)
『さらい屋五葉』の登場する組織。弥一を頭とする拐し専門の江戸の賊。内密に身代金をとり、殺しは行わない。オリジナル・メンバーは弥一、梅造、松吉、おたけの4名で、その後、秋津政之助と銀太が加わった。外聞をはばかる家から人質を拐すため、訴えが出ることはなく、長らく一味の存在は表ざたにならなかった。
白楽 (ばくろ)
『さらい屋五葉』に登場する盗賊一味。九平を頭とする。いそぎ仕事が多く、押し入った先で女子供も容赦なく殺す残酷な一味。弥一は、「霧中の誠」の名で、仁の弟分として一味に加わった。江戸でのつとめの後、ほぼ全員が捕まり、主だった者は獄門にかけられた。生き残って島流しにされた者たちは、弥一が奉行所に仲間を売ったと疑っている。
壱師 (いちし)
『さらい屋五葉』の登場する盗賊一味。仏の宗次がかつて並び頭をしていた賊。盗賊の世界では名が知れた一味で、人数も多く、殺しをなるべくしない鮮やかな仕事ぶりで知られていた。並び頭の鬼蜘蛛の弁蔵が力で皆をまとめ上げ、同じ並び頭の仏の宗次は人徳で手下から慕われていた。仏の宗次が隠居して、鬼蜘蛛の弁蔵がひとり頭となったが、その後しばらくして弁蔵が病死したことから、一味は解散した。