概要・あらすじ
江戸時代の天保年間。下級武士である竜土鋼之助は、4年前まで大番勤務(江戸城警護、江戸市中の警備)をしていたが、「刀が怖い」という理由でクビになってしまっていた。以来、何度上役を訪れても、まったく相手にされず、食うにも困る生活を余儀なくされていた。世の中に絶望した鋼之助が河原で黄昏(たそが)れていると、数人の武士がそこへ通りかかった。武士たちは、「刃物が怖い」という理由で前職をクビになった鋼之助を馬鹿にした。その時、鋼之助は父の遺言を思い出す。それは「武士の名に恥じぬよう生きろ。忠を尽くし、天寿を全うするか、さもなくば刀で死ね」というものだった。鋼之助は刀を抜いて武士たちに襲いかかった。しかしその刀は竹光である。鋼之助は、武士たちにあしらわれ、ボコボコにされる。刀で斬られることを望む鋼之助は、一瞬のすきをついて武士の一人に強烈なケリを見舞った。逆上した相手は、刀を抜いて鋼之助に斬りかかる。しかしその刀は、鋼之助に触れることもなく、ぐにゃりと曲がってしまう。他の武士たちが斬りかかっても同じだった。鋼之助は刀を怖がっているわけではなく、あらゆる金属に触れられない特異体質の持ち主だったのだ。「やはり刀に触れられないのか」と絶望する鋼之助を、武士の一人が川へ投げ込んだ。鋼之助は沈みながら、母のことを思い出していた。子供の頃、母は鋼之助の目の前で、暴漢に斬られて死んだのだ。「自分が刀を握れたら」と後悔しながら生きながらえてきたが、そんな人生にも疲れた。死を覚悟し、意識を失った鋼之助を何者かが抱きかかえた。ふと気がつくと、鋼之助は自宅に戻っていた。そこへ見知らぬじいさんが訪ねてきて、鋼之助に書面を渡す。それは鋼之助宛の縁談だった。わけが分からず、断ろうとする鋼之助だったが、100両の支度金があるという話を聞き、つい結婚を承諾してしまう。こうして鋼之助は、異様なほど美しい娘、月と世帯を持った。
登場人物・キャラクター
竜土 鋼之助 (りゅうど こうのすけ)
竜土家の長男。中年の下級武士で、あらゆる金属に触れることができない特異体質の持ち主。そのせいで、月代(さかやき)も剃っておらず、無精ヒゲが伸びている。4年前まで大番勤務(江戸城警護、江戸市中の警備)をしていたが、現在は無役。食べるものにも困る生活を送る。子供の頃、目の前でゴロツキに母を斬り殺されており、そのとき刀で母を救えなかった自分を責めている。100両の支度金とともに突然押しかけてきた嫁の月に不信感を抱いていたが、彼女の人柄に触れ、次第に愛するようになる。囲碁が趣味だが、月には一度も勝ったことがない。
月 (つき)
竜土鋼之助のもとに、嫁として突然やってきた美しい女性。右目の下にほくろがある。甲斐甲斐(かいがい)しく鋼之助に仕えるがその正体は不明。囲碁が得意で、鋼之助との勝負では一度も負けたことがない。
書誌情報
太陽と月の鋼 9巻 小学館〈ビッグ コミックス〉
第1巻
(2020-10-30発行、 978-4098607501)
第2巻
(2021-03-30発行、 978-4098608737)
第3巻
(2021-08-30発行、 978-4098611317)
第4巻
(2022-04-28発行、 978-4098613038)
第5巻
(2022-10-28発行、 978-4098614578)
第6巻
(2023-03-30発行、 978-4098616060)
第7巻
(2023-08-30発行、 978-4098625505)
第8巻
(2024-02-29発行、 978-4098627127)
第9巻
(2024-09-30発行、 978-4098630387)