あらすじ
千幌のてっぺん(第1巻~第3巻)
北海道千幌の中学生・花菱哲は、日々ケンカに明け暮れては警察に補導され、担任教師の大杉に引き取りに来てもらうという毎日を過ごしていた。そんな哲の目標はこの千幌で最強の男である「てっぺん」になる事。ある日、現在の「てっぺん」である木山純一とのタイマンに勝利した哲は、純一から千幌のてっぺんを譲られる。しかし、純一の部下たちはそれを認めないばかりか、小樽からは秋葉サトシが哲に挑戦するために侵攻して来る。サトシと対決しこれを退けた哲は、名実共に千幌のてっぺんとして認められるのだった。
やがて哲は進学の時期を迎える。現在の哲の成績では進学できる高校は道内でも不良の巣窟として名高い千幌水産高校だけだったが、それに不安を感じた大杉は哲に補習を行う。そんなある日、哲は純一からヤクザの山岸という男を紹介される。純一やサトシを倒した哲の数々の武勇伝を聞いた山岸は、哲を自身の組へとスカウトしようとするが、それを大杉が阻止する。実は大杉もまたかつて不良だった経歴があり、その過去を背負って教師をしていたのだった。そして哲は、大杉の思いを胸に千幌水産高校へと進学する。
千幌水産高校生徒会(第4巻~第5巻)
千幌水産高校に進学した花菱哲は、校内でトラブルを起こし千幌水産高校生徒会のターゲットとされる。千幌水産高校生徒会は、会長の加賀見龍一を中心に鉄の結束を誇る組織であり、文字通り千幌水産高校を牛耳る存在だった。哲は同級生の東條仁や岡島ケンヂの協力を得て龍一とのタイマン勝負に臨み、全校生徒の見守る中龍一に勝利する。龍一は、千幌水産高校は長年にわたり、北海道最大の暴力団「千幌北狼会」から不当な搾取を受けていた事を哲に告げ、自身が統制をとっていたのも「千幌北狼会」から生徒たちを守るためだったと打ち明ける。
千幌水産高校生徒会を従える事になった哲は、「千幌北狼会」の会長・天地剛介と直接対面し、話をつけようとするが、搾取は剛介ではなくその息子である天地三郎太の指示によるものだった。
天地三郎太(第5巻~第6巻)
花菱哲は、千幌水産高校の学生から搾取を続ける天地三郎太とその父親・天地剛介に手を引くよう忠告するが、三郎太はそれに応じる事なく逆に千幌水産高校生徒会の会長である加賀見龍一の自宅を襲撃、彼の父親を殺害する。逆上した龍一は三郎太に復讐を臨むが返り討ちにされてしまう。重傷を負った龍一を見た哲は、東條仁ら仲間を引き連れ三郎太の居場所へ赴き、タイマン勝負で三郎太を叩きのめす。さらに三郎太は父親である剛介の手で警察へと突き出され逮捕される。しかし、三郎太はまだ兄が二人いて、その二人が必ず哲を殺すと警告するのだった。
三郎太の逆襲(第7巻~第9巻)
天地三郎太を倒した花菱哲の前に三郎太の兄である天地次郎、そして天地一誠が現れる。三郎太に勝利した哲に対し興味を抱いた次郎は、哲を三郎太のかわりにしようとするが哲はこれを拒否する。一方、次郎の兄である一誠は哲の素質を見抜き自身と共に東京へと来るように誘う。しかし、哲は自身を「てっぺん」と仰ぐ千幌水産高校の生徒たちを想い千幌にとどまる事を伝える。一誠は弟の次郎に哲には手を出さないように告げるが、次郎は刑務所に入った三郎太を脱獄させるよう画策、さらに次郎の手引によって赤井エイジという男が哲を襲撃する。
エイジの襲撃によって重傷を負い入院した哲を見て怒りに震える加賀見龍一は、哲の仇をとるためエイジに挑むがタイマンの末に敗れる。勝利を確信する三郎太だったが、そこへ病院から抜け出してきた哲が登場、エイジや三郎太と対峙する。周囲が従っていたのは自分ではなく金と父親・天地剛介の権力である事に気づいた三郎太は、自身と本気で向き合ってきた哲への「けじめ」をつけるため、次郎のもとへ向かう。
天地一誠の野望(第10巻~第11巻)
天地三郎太は、兄の天地次郎に警察へ自首し花菱哲から手を引くように進言するが、次郎はそれを拒否し逆に三郎太に銃口を向ける。次郎の説得は無理と判断した三郎太は次郎と共に自爆する。三郎太が死亡した事を知った哲は、天地一誠の誘いを受けて東京へと旅立つ。東京へやって来た哲は、一誠の世話にはならず、自分の力だけで東京で生きていく事を伝える。一誠は、日本社会のシステムを作り変えるという大きな野望を抱いていた。その手始めとして、全国の不良学生を集め国会議事堂を取り囲み、与党幹事長の大沢直嗣と直接対話をする一誠。国会に自身の要求する草案を渡した一誠の姿に「何か」を感じた哲は、再び一誠のもとを訪れる。一誠の事を認めながらも、それでも自分だけの力を信じる哲は一誠とのタイマン勝負に臨むが、為す術もなく敗れる。一誠に登用された哲は、定食屋で働く島本ひとみと出会いながら自分自身と向き合っていく。そんな中、日本最大の暴力団「此花組」の総長・此花咲夜が一誠に対して興味を抱き始めていた。
大阪のてっぺん(第12巻~第14巻)
此花咲夜の主催するパーティに招待された天地一誠と花菱哲は、咲夜から手を組むように持ちかけられるが一誠はそれを拒否する。自身に屈辱を与えた一誠を許せない咲夜は刺客を差し向け一誠を襲撃するが、その巻き添えで哲の友人である島本ひとみが重傷を負ってしまう。哲は、ひとみを巻き込んだ咲夜への怒りから、暴力団「此花組」の本拠地である関西へと乗り込んでいく。しかし、巨大組織である「此花組」の中枢へたどり着く事ができず、元刑事の矢作龍彦に助けられる。矢作も「此花組」によって大切な人を失った過去がある事を知った哲は、彼と共に「此花組」と戦う事を誓う。そんな哲に矢作はある男を紹介する。彼の名は内田勘太郎。現在は八百屋で働いているが、かつては大阪中の不良をまとめていた男だった。今なお大阪で絶大な影響力を持つ「大阪のてっぺん」である勘太郎の力を借りるべく、哲は勘太郎にタイマン勝負を挑む。
登場人物・キャラクター
花菱 哲 (はなびし てつ)
北海道千幌で「てっぺん」を目指す少年。千幌水産高校に進学するが、天地一誠と出会い1年生の時に中退する。ケンカの強さにはかなりの自信があり、実際に数多くの猛者と戦い勝利しているが、戦った相手との間に遺恨を残す事はほとんどない。人を惹きつける天性の力があり、その素質を一誠に見出され、その後は東京や大阪を渡り歩き、自身の目指す「てっぺん」への道を模索する。 幼い頃に母親を亡くし、酒浸りの父親と暮らしている。
天地 一誠 (あまち いっせい)
天地剛介の長男。暴力団「千幌北狼会」の総長である剛介の後継者として育てられたが、その跡を継がずに出奔、東京で政治の世界に飛び込む。弟である天地三郎太を倒した花菱哲と出会い、彼の持つ素質を見抜いて自身の右腕として登用する。頭脳だけでなくケンカの腕も相当であり、哲がケンカでかなわなかった唯一の男。
大杉
花菱哲が通っていた中学校で数学を教えている男性教師。暴れん坊の哲を警察へ引き取りに行ったり、進学できるように補習を行うなど何かと目をかけていた。実は不良だった過去があり、ヤクザの事務所にとらわれた哲を救うために事件を起こし、哲のもとを去る。
木山 純一 (きやま じゅんいち)
千幌で暴走族を率いる男性で、花菱哲とタイマンで敗れ「てっぺん」の座を哲に譲る。護身用ではなく戦闘用としてつねにナイフを携帯しているほどの強面だが、その心根は実直で面倒見のいい性格。千幌をまとめていたが、ケンカの実力だけでなく人望も厚く、彼を慕う者や気にかける者も少なくない。かつて大杉の教え子だった。
秋葉 サトシ (あきば さとし)
小樽で暴走族を率いる男性で、かつて木山純一とタイマンの末に引き分けたほどの実力を持つ。それ以来純一の事をライバルとして認めており、その純一を倒して千幌の「てっぺん」となった花菱哲と戦うために千幌へ攻め込むが、彼とのタイマンに敗れる。その後は哲を千幌のてっぺんと認め、小樽へと引き上げた。
天地 次郎 (あまち じろう)
天地剛介の次男で、天地一誠の弟。天地兄弟の中で最も計算高い戦略家でもあり、弟である三郎太に対しても表面上は愛情を持って接するが、内心では見下しており、集金係としての認識しか持っていない冷酷な性格。
天地 三郎太 (あまち さぶろうた)
天地剛介の三男で、天地一誠や天地次郎の弟。暴力団「千幌北狼会」の総長である剛介の権力をバックに、千幌水産高校をはじめ数多くの高校を傘下におさめ、不当な搾取を続けていたが、花菱哲の逆襲を受け警察に逮捕される。自身の目的達成のためには手段を選ばず、殺人すらもいとわない凶暴な性格の持ち主。
剣 一平 (つるぎ いっぺい)
花菱哲の幼なじみの男子高校生。哲よりも2歳年上だが、いつも哲にケンカを挑んでは返り討ちにされている。哲が東京に行くと決めた日には北海道から彼がいなくなる事を喜んでいたが、その事で哲の怒りを買って殴られるなど損な役回りが多い。
加賀見 龍一 (かがみ りゅういち)
千幌水産高校生徒会会長を務める男子高校生。ケンカでは自分の拳から骨が突き出るまで相手を殴るのをやめないほどの強さを誇り、圧倒的なカリスマ性で千幌水産高校の「てっぺん」として君臨していた。しかし、それらは暴力団「千幌北狼会」から生徒たちを守るための行動であり、その事を見抜いた花菱哲との死闘の末に哲に「てっぺん」を譲る。 その後は哲のよき友人として、一番の理解者となる。
東條 仁 (とうじょう じん)
千幌水産高校に進学した花菱哲の同級生となる男子高校生。つねにサングラスをかけているが、それは自身の正体を隠して千幌水産高校生徒会の会長である加賀見龍一に近づくためだった。かつて龍一の親友だった男の弟で、龍一とは幼なじみともいえる関係。
岡島 ケンヂ (おかじま けんぢ)
千幌水産高校に進学した花菱哲の同級生となる男子高校生。入学早々トラブルを起こし、2年生の実力者を倒した哲の強さにほれこみ、勝手に「舎弟」を名乗る。腕っ節は決して強くはないものの、不良の巣窟と呼ばれる千幌水産高校に通うだけあって時折度胸のあるところを見せる。
天地 剛介 (あまち ごうすけ)
北海道最大の暴力団「千幌北狼会」の総長で、天地一誠ら兄弟の父親。一代で巨大な組織を作り上げた優れた才能の持ち主で、初対面の花菱哲に対しても一人の人間として向き合う度量を持っている。犯罪を犯した息子の天地三郎太を警察に突き出すなど、甘えを許さない厳しい性格。
赤井 エイジ (あかい えいじ)
少年刑務所で天地三郎太が出会った男性。出所したあとは天地次郎の手引きによって千幌に現れ、花菱哲を襲撃した。次郎の手駒として三郎太の側近を演じていたが、元来は誇り高い人物だった。現在も地元には赤井エイジを慕う人間も多く、次郎に利用されていただけと知りながらも自らの誇りをかけて哲と戦った。
大沢 直嗣 (おおさわ なおつぐ)
政府与党の幹事長を務める男性。時の総理ですら意のままにできる事から、事実上国会のドンともいわれる存在だが、その権力は日本最大の暴力団組織である「此花組」によって与えられたものだった。天地一誠の登場により失脚に追い込まれる。
此花 咲夜 (このはな さきや)
暴力団「此花組」の総長で、妖艶な美女。女性ながら日本最大ともいわれる暴力団組織を率いる存在であり、組織内外から恐れられている。かつて組織の後継者候補だった兄を海外旅行中に暗殺した過去を持ち、その知略とカリスマ性で「此花組」の組織力を盤石のものとした。取引の時間に遅刻したというだけの理由で、取引相手を壊滅させてしまうほどの短気な性格。
島本 ひとみ (しまもと ひとみ)
東京の定食屋で働く女性。週末には公園でストリートライブを開いており、シンガーとしてデビューするという夢を持っている。天地一誠のもとで働く事になった花菱哲と出会い互いに惹かれあっていくが、暴力団「此花組」の一誠への報復の巻き添えを受けて重傷を負う。
矢作 龍彦 (やはぎ たつひこ)
元大阪府警の刑事で、現在は探偵として暮らす男性。飄々とした人物だが、かつて先輩刑事と家族を暴力団「此花組」によって殺されており、その胸には「此花組」への復讐心がくすぶっていた。大阪に現れた花菱哲と目的が一致した事から、彼に協力する。普段は人のいい人物だが、怒った時の迫力は、現役のヤクザですら震え上がるほど。
内田 勘太郎 (うちだ かんたろう)
大阪で八百屋として働く男性。かつては大阪中の不良たちの「てっぺん」といえる存在で、その影響力は大阪のみならず関西・中国地方全域にまで及ぶ絶大なものだった。引退し八百屋となった現在でも影響力は健在で、暴力団「此花組」と戦うための戦力を必要とする花菱哲がその力を借りるために戦いを挑んだ。
浪岡 龍生 (なみおか たつお)
政治結社「浪岡政経塾」を主宰する老齢の男性。かつては政界内で絶大な権力を持った存在であり、現在の与党幹事長である大沢直嗣も浪岡龍生の教えを受けた一人だった。ボディガードとして採用した天地一誠に命を救われた事から彼に自身の夢を託し、一誠の活動を支援する。
浪岡 蘭子 (なみおか らんこ)
浪岡龍生の孫娘で、天地一誠の婚約者。一誠と出会う前はフリーのカメラマンとして活動していたが、現在は一誠のもとで彼の指示で動いている。一誠を誰よりも愛し、誰よりも信頼している芯の強い女性。
高橋 博 (たかはし ひろし)
暴力団「此花組」の若頭を務める男性で、広島に一家を構えるヤクザの組長。「此花組」の後継者と目されていた此花咲夜の兄が不審な死を遂げた事から咲夜を疑うが、葬儀の場での咲夜の姿に心を動かされ、現在は咲夜に対して絶対の信頼を寄せている。
集団・組織
千幌水産高校生徒会 (ちほろすいさんこうこうせいとかい)
千幌水産高校の生徒会で、名実共に千幌水産高校を牛耳る存在。毎年新入生に月額5万円もの上納金を強制し、逆らう者には暴力による制裁も辞さない事から校内でも恐れられている。会長の加賀見龍一が花菱哲に敗れたあとは、全員哲の下に従うようになった。
千幌北狼会 (ちほろほくろうかい)
天地剛介が一代で築き上げた暴力団。構成員は9000人以上ともいわれるほどで、北海道でも最大の暴力団組織である。武闘派で知られる剛介が率いるという事で、構成員の中にはケンカ自慢の者が多い事でも知られている。
此花組 (このはなぐみ)
神戸に本拠地をもつ、日本最大ともいわれる暴力団組織。表向きは大手ゼネコンとして活動しているが、その裏では麻薬の密売や売春などあらゆる犯罪を裏で手を引いている。かつて与党幹事長の大沢直嗣も暴力団「此花組」のバックアップを受けていた事があるなど、政財界と強いパイプを持っている。
場所
千幌水産高校 (ちほろすいさんこうこう)
不良の巣窟として知られる、北海道の高校。かけ算の九九ができれば合格できるといわれるほど偏差値が低い事から、毎年成績の悪い不良学生が多く入学してくる。校内は完全な実力社会であり、その頂点には千幌水産高校生徒会が君臨する。