ペリカンロード2

ペリカンロード2

五十嵐浩一の『ペリカンロード』の続編。前作の登場人物がほとんど登場しない新規の物語で、暴走族やチームの名称などから共通の世界観である事が示唆されるにとどまっている。バイクなど、テーマは共通点として前作から引き継いでおり、作中にも新車・旧車を問わずさまざまな種類のバイクが登場する。「ヤングキング別冊キングダム」に2002年から2004年にかけて連載された作品。

正式名称
ペリカンロード2
ふりがな
ぺりかんろーどに
作者
ジャンル
不良・ヤンキー
関連商品
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あらすじ

第1巻

高校生の藤枝冬馬は、バイクを教えてくれた叔父の本間雅美が事故で命を落とした事を、いまだ引きずる日々を過ごしていた。雅美の姉である冬馬の母親は、バイクを冬馬から遠ざけようとするが、冬馬はバイク好きな友人、松原清純の影響から少しずつバイクとの距離を縮めていく。そんなある日、冬馬と同じ高校に通う森崎和美が高校の先輩にさらわれてしまうという事件が起こる。それを知った清純は冬馬に連絡し、冬馬は雅美から教わったバイクの技術を駆使し、和美の救出に成功する。その一件で清純は冬馬にバイクを勧めようと、行きつけのバイク店へと連れていくが、冬馬は母親との約束からバイクには二度と乗らないと断り続ける。その店で冬馬は、顔に傷のある男に声をかけられ、大人になる前のケンカには気をつけろと告げられ、清純もまた大型バイクを駆る謎の女性、柴田エリカと出会う。

第2巻

柴田エリカのマンションについて行った松原清純は、彼女の口から伝説の暴走族「FHH」とその「FHH」の理想を受け継ぐチーム「ヴィルデ・ザウ」の存在を知らされる。かつて「FHH」はこの街で無敵の暴走族だったが、あるメンバーの死を機会に解散、現在はエリカをリーダーとする「ヴィルデ・ザウ」が「FHH」の理想を受け継いで活動しているという。折しも藤枝冬馬は、担任の有賀万里がかつて「FHH」のメンバーだった事実を知り、清純に死んだ「FHH」のメンバーとは自身の叔父である本間雅美である事を話すが、その夜、清純は何者かに襲われ、重傷を負わされる。清純の心配をする冬馬と森崎和美の前に滝川という男が現れる。そして、彼こそが「ヴィルデ・ザウ」のメンバーであり、清純を襲った犯人だった事が判明する。無事に回復した清純は、再びエリカと接触し、二人で夜のツーリングへと出かける。しかし、エリカのバイクはすでに滝川によってチェーンが切断されており、エリカは清純の目前で炎上してしまう。

第3巻

柴田エリカの死を目の前で目撃した松原清純に、藤枝冬馬は彼女の死が単なる事故ではなく、何者かによって仕組まれた事であると突き止める。その実行犯である滝川は、エリカの兄である柴田カツユキと接触し、柴田から麻薬の販売に協力するよう持ちかけられる。エリカの死にかかわっているのが滝川である事を知った清純は、エリカの仇討ちのために滝川を探し続けるが、その途中で同じクラスの森崎和美が滝川にさらわれてしまう。清純から和美が拉致された事を聞かされた冬馬は、清純と共に和美の救出に向かうが、そこへ暴走族「FHH」のメンバーだった松本が現れ、冬馬と清純に協力を申し出る。松本と共に滝川から和美を助け出した冬馬だったが、松本はその場に現れたカツユキに銃撃されてしまう。 立て続けに人の生死にかかわる事件に巻き込まれた冬馬は、担任の有賀万里に叔父の事や「FHH」の事を尋ねるが、万里は何も答えない。もう逃げないと覚悟を決めた冬馬は叔父の形見のバイクに乗り、「ヴィルデ・ザウ」に「本間雅美」の名前を名乗ってメンバーとして潜入する。

第4巻

かつて暴走族「FHH」のメンバーだった神尾は、かつての「FHH」の仲間を集め、「ヴィルデ・ザウ」との決着をつけるため走り始める。しかし、その「ヴィルデ・ザウ」の中には「本間雅美」を名乗ってチーム内に紛れ込んでいた藤枝冬馬の姿があった。神尾達「FHH」のテクニックの前に次々と倒れる「ヴィルデ・ザウ」のメンバー達だったが、その間隙をぬって神尾の前に現れた冬馬は、なぜこんな事をするのか詰め寄る。冬馬の目的は「ヴィルデ・ザウ」の滝川に近づく事だったが、その滝川はチームの本隊を連れて神尾達を包囲する。有賀万里のサポートでかろうじて包囲を抜けた冬馬は、万里からかつて本間雅美の身に何があったのかを聞かされる。一方、冬馬の友人である松原清純もまた、行きつけのバイク店の店長であり、元「FHH」のメンバーだった岩片から事情を聞かされていた。「ヴィルデ・ザウ」を作ったのは、雅美の片腕だった柴田カツユキである事を知った冬馬と清純。そんな二人の前に交機の巡査部長を名乗る人物が、同じ高校に通う森崎和美に話を聞きたいと現れる。

第5巻

藤枝冬馬の前に現れた交機の巡査部長を名乗る人物は、麻薬を売っているという滝川とそのバックにいる柴田カツユキの事を追っており、彼らと何らかの関係がある可能性があるとみて森崎和美に接触してきた。しかし、自分達の手で決着をつける事を望む冬馬達は、滝川の事を警察に話さずに独自で動き始める。滝川を探す冬馬は、ひょんな事から中崎マキという人物と出会う。彼は暴走族「FHH」の三代目リーダーであり、冬馬の叔父である本間雅美とも深いつながりを持った人物であり、かつてバイク店で冬馬に忠告してきた「顔に傷のある男」でもあった。そんな冬馬とマキの前にカツユキが現れる。マキから、カツユキは最も雅美を尊敬しており、誰よりも雅美に心酔していた事を聞かされる冬馬。それを知った冬馬は、カツユキになぜ雅美が死ななければならなかったのか、その真相を詰め寄る。

登場人物・キャラクター

藤枝 冬馬 (ふじえだ とうま)

男子高校生。母親の弟であり、バイク乗りだった本間雅美を幼い頃から尊敬していた。雅美の影響からバイクの事を好きになるが、雅美の死をきっかけにバイクから距離を置いていた。父親が職場の金を横領して蒸発した事から、中学時代に母方の実家がある街に引っ越して来たが、犯罪者を父親に持つ事から風評被害に悩まされている。雅美からバイクとケンカのコツを教わっており、咄嗟の場面ではそれが表に出る事も少なくない。

松原 清純 (まつばら きよずみ)

藤枝冬馬と同じ高校に通う男子高校生。中学時代に引っ越して来た冬馬につっかかっていき、冬馬とケンカになって敗れた事で友人となる。父親が犯罪者という事で、風評被害に悩まされてきた冬馬にとっては数少ない友人の一人である。バイクが好きで、愛車はカワサキ・ゼファー。ひょんな事から伝説の暴走族「FHH」の存在を知り、好奇心からそのあとを追いかけるようになる。 同じクラスの森崎和美とはケンカ友達のような関係。

森崎 和美 (もりさき かずみ)

藤枝冬馬と同じ高校に通う女子高校生。やや性格が軽いところがあり、同じクラスの松原清純や冬馬をつねに翻弄するような振る舞いをするが、その本心では冬馬に惹かれている。冬馬達の通う高校の中でも目立つ存在であり、先輩や後輩を問わず男子生徒からの人気も高い。冬馬にとっては清純と共に気のおけない友人の一人ではあるものの、異性としては意識されておらず、なかなか冬馬との距離を縮められずにいる。

本間 雅美 (ほんま まさみ)

藤枝冬馬の母親の弟。暴走族「FHH」の元メンバーであり、父親が蒸発して自暴自棄になっていた冬馬にバイクの乗り方を教えた人物。父親のいなくなった冬馬にとって、父親代わりともいえる存在だったが、バイクの事故で帰らぬ人となる。「FHH」のメンバーの中でも特にバイクとケンカのテクニックに優れており、柴田カツユキをはじめ彼を慕う者も多かった。

有賀 万里 (ありが まり)

藤枝冬馬の通う高校の女性教師。クラスの担任も務めている。かつて暴走族「FHH」に所属しており、メンバーの本間雅美の恋人でもあった。雅美の死をきっかけに「FHH」を離れるが、偶然にも彼女の通う高校に雅美の甥である冬馬が入学して来た事で、再び過去と向き合う事になる。教師でありながら遅刻したり、生徒の前で喫煙するなど問題行動も多いが、生徒からの人気は高い。

柴田 エリカ (しばた えりか)

松原清純が行きつけのバイク店で出会った女性。かつて暴走族「FHH」のメンバーだった柴田カツユキの妹で、解散した「FHH」の理想を受け継ぐチーム「ヴィルデ・ザウ」のリーダーとなる。「ヴィルデ・ザウ」内部では滝川など柴田エリカを慕う者も多かったが、やがて「ヴィルデ・ザウ」そのものはエリカの力だけでコントロールできなくなり、滝川によって引き起こされたバイク事故で命を落とす。

滝川 (たきがわ)

柴田エリカがリーダーを務めるチーム「ヴィルデ・ザウ」のメンバーの少年。進学校に通う高校生で、年齢は藤枝冬馬と同じだが、実質的に「ヴィルデ・ザウ」を仕切る立場にある。リーダーであるエリカを慕っていたが、エリカの考えが少しずつ自分の目指す方向性と違ってきた事から、エリカに対して複雑な感情を抱くようになる。 何かとエリカにつきまとう松原清純を疎ましく思っているが、決して自分から手を汚すような事はせず、「ヴィルデ・ザウ」のメンバーに実行させる等、陰険な性格。

柴田 カツユキ (しばた かつゆき)

柴田エリカの兄で、暴走族「FHH」のメンバーだった男性。同じ「FHH」のメンバーだった本間雅美に心酔し、雅美のいた「FHH」の理想を受け継ぐために、チーム「ヴィルデ・ザウ」を結成する。表向きは妹のエリカをリーダーとし、「ヴィルデ・ザウ」を裏から支配しつつ、ヤクザなどともつながりを持ち、活動資金として麻薬の密売など数々の犯罪を行っていた。

松本 (まつもと)

かつて暴走族「FHH」のメンバーだった男性。松原清純とは行きつけのバイク店で知り合い、「FHH」の事を知りたがる清純に、これ以上首を突っ込むと人が死ぬと忠告する。結果的に柴田エリカが死亡した事を受けて、その背景にエリカの兄でありかつての仲間だった柴原カツユキが関係している事から、過去と決着をつけるためカツユキと対決する。

神尾 (かみお)

かつて暴走族「FHH」のメンバーだった男性。現在は雑誌記者の編集長として政治家への取材などを行っているが、元「FHH」としての凄みは健在。柴田カツユキが「ヴィルデ・ザウ」を結成し、松本を殺害した事を受けて、過去とのけじめをつけるために「ヴィルデ・ザウ」に戦いを挑む。

岩片 (いわかた)

かつて暴走族「FHH」のメンバーだった男性。松原清純の行きつけのバイク店の店長であり、清純に初めて「FHH」の伝説を話した人物。清純に対してはこれ以上「FHH」の事を調べないように忠告するが、「ヴィルデ・ザウ」の引き起こした事件に巻き込まれた清純をフォローした事から、何かと清純とかかわっていく事になる。

中崎 マキ (なかさき まき)

かつて暴走族「FHH」でリーダーを務めた男性。本間雅美の死をきっかけに「FHH」を解散させ、自身は海外へと姿を消していたが、「FHH」のメンバーだった柴田カツユキが「ヴィルデ・ザウ」を結成したという噂を聞いて帰国する。藤枝冬馬とは岩片のバイク店で出会い、大人になってからのケンカは命にかかわるとの忠告を残す。 前作『ペリカンロード』にも登場する。

交機の巡査部長 (こうきのじゅんさぶちょう)

交通機動隊の男性。暴走族「FHH」とチーム「ヴィルデ・ザウ」の一連の事件を追いかけている。階級は巡査部長であり、交通機動隊の中でも特に優れたバイクの運転テクニックを持つ。また、中崎マキと面識がある。作中では本名は明かされないが、風貌などから前作『ペリカンロード』の登場人物である「田川しげる」と思われる。

集団・組織

FHH (ふぇるとへるんはれ)

かつて街では無敵を誇った暴走族。「立ちふさがる相手には容赦しない」など数々の流儀を持っていた。チーム内ではドイツ語で指示を出すなど、伝統的かつ独自のルールがある。メンバーだった本間雅美の死をきっかけに、リーダーだった中崎マキの手によって解散した。

ヴィルデ・ザウ (ゔぃるでざう)

柴田カツユキが結成し、妹の柴田エリカがリーダーとして立ち上げたチーム。本間雅美の死によって解散した暴走族「FHH」の理想を受け継ぐチームとして結成された。ドイツ語で指示を出すなど、「FHH」の独自のルールを引き継いでいる。敵対するチームを壊滅させたうえで、その残存勢力を取り込んで成長しており、現在は構成員の数は、下部組織も含め100人以上という大型チームとなっている。

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