概要・あらすじ
明治中期の東京、てんじん(竹松天人)は庶民を相手に鍼灸の診療所を開いていた。西洋医学を学ぶ東里孝太郎は、偶然出会ったてんじんの治療に医学校では学べない何かがあると感じ、足繁く診療所に通うようになる。実はてんじんは、かつて東里孝太郎の父で西洋医師の東里洋一郎と共に、ドイツに医学留学していた人物であった。
登場人物・キャラクター
竹松 天人 (たけまつ てんじん)
『てんじんさん』の主人公の鍼灸師。眉間のホクロが特徴的な豪放磊落な大男。廓や賭場へ出入りもするが、遊ぶだけでなく遊女の病気も治してしまう。20年前、東里洋一郎と共にドイツへ西洋医学を学ぶため留学していたが帰国寸前に消息を絶ち、今は鍼灸師として貧乏長屋に鍼灸所を構える。漢方や西洋医学にかかわらずに、まず病気を治そうという姿勢で時には患者の生活や環境に病気の原因を見いだす。 てんじん(竹松天人)から西洋医学に無い物を学ぼうとやってきた東里孝太郎に対しては、生真面目で青臭い部分を時に厳しく指導する。
東里 洋一郎 (ひがしさと よういちろう)
ドイツに留学し西洋医学の医師となる。また息子の東里孝太郎に西洋医学を学ばせているが、孝太郎が鍼灸師、てんじん(竹松天人)とつき合うことを快く思っていない。実はかつて竹松天人とは一緒に医学生として学びドイツ留学をした仲であった。頑固で責任感が強い性格で、日本の医学向上のために活動している。
東里 孝太郎 (ひがしさと こうたろう)
東里洋一郎の嫡男で西洋医学を学んでいる青年。てんじん(竹松天人)の漢方や西洋医学にかかわらずにまず病気を治そうという姿勢に、父・東里洋一郎の西洋医学や医学校では学べないものがあると思い、てんじんの鍼灸所に通うようになる。生真面目でまだ青臭い部分をてんじんに注意される時がある。
東里 千代 (ひがしさと ちよ)
東里洋一郎の妻で、息子である東里孝太郎は千代の連れ子。竹松天人と東里洋一郎が医学生の頃に書生として世話になった家の娘であった。
鷺沢 藍子 (さぎさわ あいこ)
鷺沢財閥の鷺沢邦道の末娘で、5年間の英国留学から戻ってきたお嬢様だが、乗馬を楽しみ、自転車を乗り回すじゃじゃ馬娘。欧化主義でてんじん(竹松天人)の鍼灸を野蛮なものと見下し、そこに通う東里孝太郎もバカにしていたが、落馬した時にてんじんの治療を受けてから徐々に考えを変えるようになる。
辰五郎 (たつごろう)
車引きだが、腰を痛めててんじんの鍼灸治療を受けている。鷺沢家お抱えの車夫として鷺沢藍子を女学校へ送り迎えしている。
お咲 (おさき)
てんじんが住む長屋の住人。大家の世話でゆで卵売りをして病気の母の治療費を稼ぎながら、東里孝太郎に文字を教えて貰い看護婦学校を目指す。
泣き弁天のお蝶 (なきべんてんのおちょう)
上州前橋の油問屋の娘であったが、両親を盗賊の鷹ノ目長三郎に殺され、渡世人の養女となる。今では背中に弁天の彫り物を背負った女博徒として旅をしている。両親の敵である鷹ノ目長三郎と似たてんじんを襲おうとした。
甲斐 広臣 (かい ひろおみ)
財界で頭角を現し政界に打って出ようとしている。浅草の博徒一家の親分、碇山富太郎と付き合いのある怪しい男。てんじんと容貌、体格が似ている。
高森 繁 (たかもり しげる)
明開新聞の元記者。医学師会館建設の不正をネタに、建設発起人名簿に名前を連ねる東里洋一郎をゆする。
中村 九兵衛 (なかむら きゅうべえ)
鍼灸の世界では全国津々浦々に名を轟かせた鍼職人。てんじんは中村九兵衛作の鍼以外は使う気にはならず、直接会いに行く。
森田 音吉 (もりた おときち)
上野山下町の西洋菓子店・鹿鳴堂の大時計を造った職人・松五郎の弟子。頭痛を押さえるために酒をやめられなくなり、大時計の修理の依頼も断っている。
檜垣 一風斎 (ひがき いっぷうさい)
鍼灸の本場の関西から東京にやってきて、赤坂に一風漢方医院を開いた鍼灸師。痛み止めの漢方薬、一風散で評判となっていたが、老舗の味噌屋の御曹司の盲腸を治せず評判を落とす。
紫乃 (しの)
吉原の初見世、茜屋の遊女。てんじんが吉原に行く際についていった東里孝太郎は、紫乃に偶然出会って以来、胃の病気を診るためもあり通うようになる。
クレジット
- 原案協力
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西園寺 英