概要・あらすじ
秀才ながらエゴイストの高校生、五代明は窃盗の罪で少年鑑別所送りとなった後、さらに国立竜王特別少年院送致という異例の判決を下されてしまう。それまで人を欺き利用することしか知らなかった五代明だったが、男気あふれる一匹狼、風早丈二との出会いによって真の生き方に目覚め、教官の虐待に耐える日々の中で希望を見出していく。
そして改心した彼は仲間との絆を元に、大いなる反抗へと突き進むのだった。
登場人物・キャラクター
五代 明 (ごだい めい)
東大合格折り紙つきの秀才である一方、策謀家でエゴイストの側面を持つ東京都立城西第一高等学校の高校生。アパートで両親と暮らしていたが、銀座のバーでドアボーイのアルバイトをしている時に客の財布を盗んだことが発覚し、練馬区の少年鑑別所に送られてしまう。さらに家庭裁判所の国本調査官に危険な性格を見ぬかれ、裁判で異例の特別少年院送致が決定した五代明は、何度も彼に裏切られた同じ房の野間太一と共に山梨県の山奥にある国立竜王特別少年院に送られる。 そこで一匹狼の収容生、風早丈二を知り、命懸けの芝居を打って彼を味方に付けた五代明だったが、堂本教官の過酷な仕打ちから逃れるためにトロッコを使って脱走するも、悪運尽きて捕まってしまう。 独房で拷問を受けた五代明は、隣の独房に収容されていた風早丈二から人の生き方を説かれて感銘を受け、拷問に耐え切るのだった。その後も風早丈二の生き様を見て生まれ変わった五代明は彼と野間太一と共に、国立竜王特別少年院の待遇改善を目指して暴動を起こす。
野間 太一 (のま たいち)
五代明と同じ護送車に乗り合わせた、練馬区少年鑑別所送りの常習犯。雑居房を仕切る剛島健に五代明虐待を命じられても拒否し、さらに五代明のトイレへの放火を目撃しても告げ口せずに、悪党なりの仁義を通していた。しかし同じ鑑別所に収容されていた三枝ユリへの恋心を五代明に利用されたことを知って、彼が放火の犯人であることを佐藤教官に告白。 その後、五代明と共に国立竜王特別少年院送りとなり、またしても五代明の策謀によって、脱獄の実験台として使われてしまう。そのため独房に入れられ、虐待に耐えかねて舌を噛み切り自殺を図り死にかけるが、同じ血液型の風早丈二から輸血されて命を取り留めた。 その後は心を入れ替えた五代明、風早丈二と共に暴動を起こして待遇改善を要求する。この騒動については、五代明が罪滅ぼしのため首謀者として名乗り出たことで、野間は罪には問われなかった。
国本調査官 (くにもとちょうさかん)
家庭裁判所の判事。一見温厚な老人だが、自分を『罪と罰』の主人公になぞらえて釈明した五代明の凶悪な本質を見抜き、家庭裁判所での裁判で釈放に異を唱えた。そのため特別少年院送致と決まった五代明から憎まれ、掴みかかられている。
佐藤教官 (さとうきょうかん)
練馬区少年鑑別所で「鬼」と恐れられる教官。密かに愛していた収容生の三枝ユリが五代明を好きになって利用されたことを野間太一の告白で知り、特別少年院送致が決まった五代明を殴りつけた。その後も彼女のため、国立竜王特別少年院に送られた五代明と面会できるよう取り計らっている。
三枝 ユリ (さえぐさ ゆり)
練馬区少年鑑別所女子房収容生で、元浅草のストリッパー。自暴自棄になって男子収容生にストリップを披露するが、計算づくでそれを止めた五代明に一目惚れしてしまい、彼に頼まれて野間太一宛の偽のラブレターを書くこととなる。さらに釈放後に五代明と再会する約束を信じこみ、番格のズベ公から一転して模範生になったうえ、彼からの愛の告白が嘘でもいいと言ってまで自分の気持ちを貫こうとする。 釈放後は佐藤教官に頼んで国立竜王特別少年院に収容された五代明に面会に行くが、彼が愛する院長代理、浅倉夕子の気を引くために自分を利用したことに気付き、なんとしても自分を愛させてみせると決心。 竜王保育園の保母になってまで国立竜王特別少年院への慰問にかこつけて彼に会いに行き、その真心に打たれた五代明と真実の恋に落ちた。
剛島 健 (ごうじま けん)
強盗の罪で収監された、練馬区少年鑑別所雑居房七号室収容生。新入りの五代明に過酷なリンチを加えたことで恨みを買い、隠し持っていたタバコによる出火の濡れ衣を着せられて、少年刑務所に送られてしまう。
久呂田・蟹沢 (くろだ・かにざわ)
共に練馬区少年鑑別所雑居房七号室の収容生。新しく入ってきた五代明に、剛島健と共にリンチを加えた。
堂本教官 (どうもときょうかん)
山梨県の山奥にあり「墓場」の通称を持つ最上級の少年院国立竜王特別少年院の非情な教官。100円玉の硬貨投げが得意なために銭形平次、さらに人を化かすのがうまい「タヌキ」などの異名を持つ。合気道の使い手でもあり、寮生の五代明、風早丈二、野間太一の三人に、何度も難題を持ちかけては虐待した。 その後、密かに愛する浅倉夕子が気持ちを傾けた五代明に的を絞って過酷な労働を強いたあげく、脱走に追い込むことに成功する。レールが途中で途切れたトロッコを脱走に使わせることで、事故死させることが目的だったが、五代明は運良く難を逃れて鉄道での逃亡を図る。その後、偶然遭遇し、彼を逮捕して浅倉夕子を侮辱した風早丈二と同様に、拷問に近い状態で独房に送り込む。 しかし虐待に耐えぬいた五代明と風早丈二が野間太一と共に暴動を起こしたため、みずから風早丈二との一対一の決闘に臨み、敗れた。
脇坂 (わきさか)
国立竜王特別少年院の教務課長。浅倉夕子をサポートしつつも、保身のことしか頭にない凡人。
風早 丈二 (かぜはや じょうじ)
国立竜王特別少年院三寮五室の札付き寮生で、五室の寮生全員を相手に戦ったばかりか、五室を仕切る小岩も倒した空手の達人。収容される前は歌舞伎町を縄張りとする関東同和会の若衆小頭を務め、命の恩人の会長の高峰に仕えていたが、騙されて麻薬の運び屋をさせられていたことを知り、怒りから高峰を殺してしまった。 国立竜王特別少年院では何度も独房に入れられるが、そのつど拷問に耐え抜き、美醜の美学に従って生きる生き方を五代明に伝えた。さらに独房から出たばかりの体で、同じ血液型の野間太一に輸血してその命を救い、自分のためにだけ生きていた五代明の目を覚まさせることになる。彼の広い心を知った五代明とは真の友の絆で結ばれ、国立竜王特別少年院の待遇改善を目指して、共に暴動の首謀者となった。 最後は宿敵の堂本教官との決闘にも勝利して、五代明とは別の少年刑務所に送られている。
小岩 (こいわ)
国立竜王特別少年院三寮五室を仕切る凶悪な不良。入寮したてで反抗した風早丈二を闇討ちするが、そのことを察知していた風早丈二に反撃され、空手で倒されてしまう。
浅倉 夕子 (あさくら ゆうこ)
国立竜王特別少年院院長を父に持つ20歳の娘で、過労がたたって胃病で倒れた院長の代理を務めることになる。理知的な美人だが、彼女に恋をした五代明から彼と三枝ユリとのキスを見せつけられ、五代明が気にかかるよう仕向けられる。うわべを取り繕うだけの高慢ちきな女に過ぎなかったため、五代明たちが暴動を起こした頃には、五代明の恋心は冷めていた。 そうとは知らず、暴動の際に五代明と交渉し、世間体を優先した愚かな取り引きを持ちかけて、拒絶されている。