概要・あらすじ
イタリアでバイオリン職人の修業をしていた稲原なつのは、母・里美の死をきっかけに日本に帰国。京都祇園町のお茶屋・近江乃を継ぐ。それから3年、なつのの女将ぶりも板についてきたある夏の日。なつのは、近江乃のなじみの客、黒田章雄の座敷に向かう。黒田は社運をかけた新事業のため、近江乃で神埼興行・神埼社長を接待していた。生まれつき人から音楽が聞こえるという、不思議な力を持ったなつのは、神埼からサン=サーンスの甘美な音楽と、その甘い調べに垣間見える不協和音を感じ取る。酒が進み「麦つみ」というお茶屋遊びに上機嫌な神埼だったが、なつのにちょっとしたズルを指摘され、怒って帰ってしまった。大変なことをしてしまったと反省するなつのだったが、後日黒田から連絡があり、感謝される。神埼興行を突っ込んで調査したところ、巧妙な粉飾が見つかったのだという。なつののおかげで、黒田の会社は災難を免れたのだ。(第1楽章「7月のチューリップ」)
登場人物・キャラクター
稲原 なつの (いなはら なつの)
京都祇園町のお茶屋・近江乃の女将。和服、京都弁が特徴の女性。イタリアでバイオリン職人の修業をしていたが、母・里美の死をきっかけに帰国。近江乃の跡を継いで女将となる。生まれつき人から音楽が聞こえるという、不思議な力を持ち、相手の本音や本性を見抜くことがある。母からは父親のことを何も聞かされておらず、まだ見ぬ父を捜し続けている。