あらすじ
第一巻
30年の長きにわたって猫を飼い続けているベテランのブリーダーであるいわみちさくらは、現在も家に九匹もの猫を飼っており、惜しみない愛情を注いでいる。同居しているお母さんもまた、さくら以上に猫の生態に詳しいほどの猫好きで、家族そろってにぎやかな日々を過ごしていた。そんな中、飼い猫のシリが、頻繁にさくらの膝の上に乗るようになる。さくらは、甘えてくれることを喜びつつも、急な変化に疑問を抱く。さらにお母さんから、最近あまりシリがご飯を食べなくなったと聞くと、何かよくないことが起こっているのではないかと心配し、かかりつけの獣医さんのもとへとシリを連れていく。その結果、急性腎不全の疑いがあると発覚し、治療に専念することになった。早期発見が功を奏し、シリの病状が大事に至らずに済んだことで、さくらはほっと胸を撫でおろす。こうしてシリの問題は解決したかに思われたが、あまりに快適だったからか、シリがさくらの膝に乗る癖は変わることはなかった。さらにシリは、事あるごとにさくらに付きまとっては、愛らしい声で膝の上に乗せるよう、おねだりするようになる。(エピソード「Vol.1」。ほか、15エピソード収録)
登場人物・キャラクター
いわみち さくら
猫をこよなく愛している漫画家の女性。さまざまな犬や猫との出会いと別れを繰り返しながら、現在は九匹の猫を飼育している。猫を飼い始めて30年ということもあり、ブリーダーとしての豊富な知識を基に、猫たちの信頼を集めている。猫たちの様子の変化にも敏感で、少しでも異変があったらすぐにその原因を探り、獣医さんのもとで様子をうかがうなど行動力にも長けており、猫たちが健康な生活を送る支えとなっている。こういった経験から、膝に乗せることをおねだりされたり、いっしょに遊ぼうと誘われるなど、猫たちからは甘えられることが多い。いわみちさくら本人も、九匹の猫からのおねだりに対しては、忙しさを感じつつも幸せを感じている。反面、ノミ防止のための薬を飲ませることを忘れたり、シリを外に出したまま窓の鍵を閉めたり、飼い猫がベランダから姿を消した際に大騒ぎするなど、あわてん坊な一面を見せることもある。実在の人物、いわみちさくらがモデル。
お母さん (おかあさん)
いわみちさくらの母親。娘と同様に猫が大好きで、さくらが多忙なときにエサをあげるなど、飼育を手伝っている。猫の様子を報告したり、情報を共有したりするなど、さくらからは彼女の一番身近にいるブリーダー仲間として信頼されている。一方で、よなの姿が見えなくなった際は、知らずに窓を開けたことが原因で外に出てしまったのではないかと疑われるなど、さくらに似てうっかり者なところがある。また、年の影響から目まぐるしく動き回る猫に対応しきれないこともあり、特にシリの脱走に関して頭を悩ませている。
シリ
いわみちさくらが家で飼っているオスの白猫。チャビの息子で、産まれた時からさくらの家にいる。瞳の色が青く、左右の目のあいだに茶色いブチがある。外に出ることが大好きで、日向ぼっこのためにベランダに出されると、備え付けられた階段をつたって外に出ようとする。このため、さくらからは「脱走王」と呼ばれており、その行方を心配されることが多い。また、さくらが知らないうちに外に出て窓の鍵を閉められてしまい、家に帰れなくなったこともある。一方、家の中では甘えん坊で、腎不全を起こした際にさくらの膝に乗りたがるようになる。病気が完治しても膝に乗りたがる癖は変わらず、さらに昼夜問わず膝に乗せるように鳴いておねだりするようになり、その傾向は変わらないどころか、むしろエスカレートしている。しかし、おねだりするときのしぐさや鳴き声は、さくらを困らせつつも喜ばせるほどに愛らしい。
ふたば
いわみちさくらが家で飼っているメスの猫。全身が薄茶色の毛で覆われており、目のあたりに濃い茶色の模様がある。さくらからは「ふたたん」のあだ名で呼ばれている。外に出たときは積んであるガラクタの上をアスレチックのように走り回って遊ぶなど、活発な性格をしている。その一方で寒い場所が嫌いで、冬は必要以上にストーブに近づいて、さくらに心配されることもある。また、コマほどの力ではないが、おねだりをする際はさくらの膝をはたくなど、あまり行儀はよくない。
よな
5年前にいわみちさくらが拾って家で飼っている猫。真っ黒な体毛を持つメス猫で、さくらからはもっぱら「よな子」のあだ名で呼ばれることが多い。シリと同様に外に出ることが大好きだが、彼とは違って風や日光など、外の気配を楽しむことを目的としている。そのため、ベランダに出ても備え付けの階段をつたって脱走することはなく、ベランダの隅でぼーっとしていることが多い。また、日向ぼっこが好きな割には、庭などに出ると置いてあるガラクタの陰に身を潜めている。寂しがり屋で、すぐにさくらに構ってもらいたがり、彼女が多忙になるとストレスから腹部を舐める癖がある。一時はそれが行き過ぎて、下腹部周辺の毛がはげてしまい、さらに潰瘍を患うこともあった。獣医さんから処方された薬で快方に向かうが、さくらからはまたストレスで毛づくろいを始めないかと心配されている。また、チャビを威嚇したり、さくらが撫で続けると怒るなど、寂しがり屋ながらもプライドが高く、病院に連れていかれたときは過剰にさくらに甘える傾向にある。
コマ
いわみちさくらが家で飼っているオスの黒猫。現在飼育されている九匹の中では一番若い。さくらからは「こまぞう」のあだ名で呼ばれている。よなとは外見が似ているが、彼女の目が鋭いのに対してコマの目は垂れており、さらに奇妙な鳴き声で鳴くため、まちがえられることはない。さくらにエサをおねだりする際は、やや強い力で膝を叩くなど、男らしいやんちゃな性格をしている。ハンモックの上で寝ることが大好きで、そこにコマ自身やよなが付けていた首輪を隠すなど、自分だけの場所として認識している。よなのことが大好きで、よくいっしょに遊びたがるが、彼女が腹部のケガを治すために療養していた際は、ほかの猫にちょっかいをかけて困らせていた。トイレには独特のこだわりを持っており、ペット用のトイレにしき詰めるためのペレットをストックしてあるバケツの中で用を足すことを好む。
チャビ
いわみちさくらが家で飼っているメスの猫で、シリの母親。全身が茶色く、縞のような模様がついている。もとは通い猫だったが、さくらに拾われて現在に至る。甘えん坊で、さくらに抱っこされるのが大好き。かつて真菌(カビの一種)が付着していたが、1か月かけて無事完治する。体温が高く、特に毛が薄い箇所は触ると熱いとすら感じられるほど。ある日を境に自らの毛を口でむしり始め、体のあちこちが薄くなってしまう。さくらはこれを、よなと同じようにストレスによる過剰な毛づくろいと考え、ストレスの原因になるようなものを探していた。しかし、思い当たる節もないままにチャビは毛をむしり続けて、ついには尻尾の毛がほとんどなくなるほどの事態となる。驚いたさくらによって獣医さんのもとに連れていかれた結果、ノミアレルギーであることが判明。また、その原因が先月ノミの予防薬を投与し忘れたためと発覚し、さくらに謝罪される。
ふくたん
いわみちさくらが家で飼っているメスの猫。チャビと同様に全身が茶色く、顔がやや大きい。無口で滅多に鳴くことがなく、初めておいしいカリカリを食べた時は、さくらからおかわりが来るのを数時間も待ち続けるなど忍耐強い。好き嫌いが激しく、ウエットフードが出るまでひたすら待ち続けたこともある。その挙句、小さな声でおねだりしたり、ふたばやコマのようにさくらの膝を叩くようになった。しかし、いずれもあまりに弱々しいため、それを見たさくらがつい早めにご飯をあげるなど、逆に同情心をあおる結果となっている。トイレ癖が悪く、お尻を垂直に上げながらフンをすることに加え、下痢を患っているため、部屋を汚してしまうことが多い。
らぶ
いわみちさくらが家で飼っているメスの猫。さくらからは「らぶたん」と呼ばれている。体の大部分が黒いが口元は白く、細い目が特徴。かつてさくらたちと同居していた叔母に懐いており、ご飯の時間以外は叔母の住む部屋に引きこもりがち。叔母が心不全で亡くなった時も、遺体のそばから離れなかった。叔母の葬式が終わったあとも、彼女の布団の上で眠ることが多かったが、のちに叔母に懐いている以外に部屋の室温が高かったため、居心地がよかったことが判明する。
くーにゃん
いわみちさくらが家で飼っているメスの猫。黄色い毛に覆われており、背中からお尻にかけて黒い斑点模様がついている。九匹の猫の中では比較的おとなしい性格で、おしゃれが大好き。また、眠る際にはクッションの上で丸くなるなど、行儀もいい。外出はあまり好きではなく、冬は締め切った部屋ででるでるやさくらとのんびり過ごしている。ふくたんとは当初仲が悪く、ケンカになることもあったが、共に生活していくにつれて態度を軟化させていく。
でるでる
いわみちさくらが家で飼っているメスの猫。体が茶色い体毛に覆われており、顔に大きな模様がついている。現在さくらに飼われている九匹の中では古参で、さくらからはお局さんと認識されている。高齢からかおとなしい性格で、くーにゃんやさくらと共に、家でのんびりしている。また、お母さんがいないときは、彼女のベッドで丸くなることが多い。
獣医さん (じゅういさん)
いわみちさくらが飼っている猫たちのかかりつけの獣医を務める男性。よなのおなかにできた見慣れない傷を潰瘍であると診断したほか、チャビが全身の毛を自らむしっていた時も、ノミアレルギーであることを見抜くなど、優れた観察眼を持つ。なお、チャビがノミアレルギーだったことが発覚した際は、さくらがノミ予防の薬を飲ませ忘れていたと聞き、若干呆れていた。