概要・あらすじ
根無し草の女・字忍は懸巣組の金を持ち逃げしようとしてあっさり捕縛された。懸巣組若頭・東は忍に彼女の故郷・石婚島で行われる取引での商品強奪に協力すれば、命を助けると持ちかける。否応もなく同意した忍だが、数年ぶりに訪れた石婚島は怪しい人間が集う売春島に変貌していた。謎の商品の強奪をはかろうとする懸巣組一行であったが、片腕が義手の女スナイパーの攻撃やチャイナドレスの女カンフー使いの戦闘に巻き込まれて、現場は大混乱に陥ってしまう。
そして、何とかして手に入れたアタッシュケースに入っていたものは、人間の胎児だった。
登場人物・キャラクター
字 忍 (あざ しのぶ)
住所不定、無職の女性。23歳。石婚島出身。チンピラの杉戸朗と懸巣組の金を持ち逃げしようとして簡単に捕まってしまうなど、後先をほとんど考えない性格。一方で度胸はとことんすわっており、眼前に銃を突きつけられても、ヤクザの殺し合いに巻き込まれても、さして動じることもなく堂々と対応することができる。経験豊富に見られがちだが、実はまだ処女。 金の持ち逃げをチャラにする条件として、懸巣組の若頭・東に故郷の石婚島で行われる取引の商品強奪の協力を持ちかけられた。この協力に同意したことで、未曾有の国際的謀略に巻き込まれていく。
トレーネ
隻眼、義手の金髪の女性。ドイツの小さな村キービッツェンべルグを故郷とする。医薬品開発の多国籍企業ヒルマイナ社の工場が爆発したことで故郷を奪われ、実験動物のような扱いを受けた過去を持ち、ヒルマイナ社に復讐をとげるため日本にやってきた。字忍とは石婚島での乱闘で出会った後、関東の場末のオカマ・バーで再会した。 日本での手足が欲しかった彼女は、忍に再び石婚島に渡ることをもちかけた。欠損した右手にドイツ製の高性能義手を装着しており、これを用いた戦闘を得意とする。
東 (あずま)
広域暴力団大鳳会の三次団体・懸巣組若頭。オールバックに整えた髪に眼鏡のクールなヤクザ。組の金を持ち逃げしようとした字忍に、故郷の石婚島での仕事に協力すれば助命すると持ちかける。石婚島で行われている謀略に関して思惑があるようで、心のうちで大きな絵図を描いている。
吉 音 (きる そり)
懸巣組の拷問担当の少女。捕縛された杉戸朗の指を愉しげに切断した。元は路上生活者の少女だったが、ある事件をきっかけに東に拾われ、それ以来恩義を感じて、彼に懐きまくっている。「ワーデンブルグ症候群」であり、聴覚に異常があったが、内耳改造手術を受けたことで、遠くの微細な音も聞き取れるようになった。以降、チームの諜報役も務める。 「ワーデンブルグ症候群」の影響で、前髪が白髪、左右の瞳の色が違うという身体的な特徴を持つ。
杉戸 朗 (すぎと ろう)
懸巣組の末端構成員。組の金2000万円を持ち逃げすることを字忍に持ちかけた、短絡的な発想の男。あっさりつかまってソリに拷問を受けたが、忍が若頭・東の取引に応じたことから一命をとりとめた。その後、忍の二度にわたる石婚島への渡航に同行した。基本的に役立たずだが、忍のことを犬のように慕っている。
海 燕 (はい いぇん)
懸巣組の客分。棒術使い。しなやかな長髪の優男だが、棒術を使った体術に優れている。状況を的確に把握し、常に冷静にふるまう気質の持ち主。もともと組関係の者ではなく、東との個人的な関係から懸巣組に協力している。一度目の石婚島遠征の後、修羅場での立ち振る舞いが堂に入っていた字忍を懸想組にスカウトしようとした。
岩縋 (いわすが)
懸巣組の客分。義理を重んじるのが極道の基本と信じる侠客。剛力の巨漢で高い戦闘力を有す。戦闘時には、銃弾をも弾く特殊な篭手を装備し、正面突破で戦う。もともと組関係の人間ではなく、東との個人的な関係から懸巣組に協力している。額に大きな傷がある。
新堂 九良彦 (しんどう くらひこ)
関西慈悲心会系五次団体クラス、噪天会組長。元々懸巣組構成員だったが破門となり、関西慈悲心会に鞍替えした。懸巣組時代には九藤寅彦と名乗っていた。石婚島の謀略に深く関わり、莫大な収益を上げている。ドイツ語に堪能。
睫 毛 (じぇ まお)
新藤九良彦の手駒として動く女性暗殺請負人。ヒルマイナ社に雇われている。妖艶なチャイナドレスをまとった中国拳法の達人で、特殊な形状のヌンチャクを使う。蹴りを当てると同時に電撃を流すガジェットを、つま先と踵に仕込んでいる。懸巣組の客分・海燕と岩縋はこのガジェットでKOされた。
会長 (かいちょう)
医薬品の研究、開発、製造販売を手がける多国籍企業ヒルマイナ社の会長。新堂九良彦を通して石婚島の差配を行っている。新藤と会うときは覆面で顔を覆っている。トレーネから赤ん坊を取り上げた時には、自ら現場に赴いている。
厨生 大亮 (くりふ だいすけ)
石婚島の秘密を暴くべく、島に潜入したフリー記者。客を装って売春宿に入り、売春婦として潜入していた字忍と出会った。忍の話から、島で胎児を利用した何かが行われていることを推測した。
集団・組織
懸巣組 (かけすぐみ)
広域暴力団・大鳳会の三次団体。東が若頭をつとめる。新堂九良彦もかつてはこの組に所属していた。東の上に組長がいるが、石婚島の件では、東は独自に動いていた。組長は石婚島をめぐる騒動の中、新堂九良彦と睫毛によって殺された。
噪天会 (そうてんかい)
元々懸巣組構成員だった新堂九良彦が、破門後に関西慈悲心会系となって立ち上げた組織。組員は組長を入れて10人。関西慈悲心会の五次団体に過ぎないが、石婚島の利権を握って莫大な利益を上げている。しかし、新興の組だけに関西慈悲心会での立場は不安定とされる。
場所
石婚島 (いしぐなぎじま)
字忍の生まれ故郷の日本海の離島。渡航するには、鳥取港から船で5時間かかる。忍がいた頃は漁業しか産業のない島だったが、今は売春島として名をはせ、巨大な利権を生んでいる。しかし、売春島というのは見せかけの姿に過ぎず、実際は、医薬品開発の多国籍企業ヒルマイナ社による違法な開発実験の場にされていた。新堂九良彦の噪天会が縄張りとして島を仕切っている。
キービッツェンベルグ
トレーネの生まれ故郷。ドイツ・エルツ山脈沿いの小さな集落だったが、医薬品開発の多国籍企業ヒルマイナ社の工場が建設されて発展した。しかし工場が爆発事故を起こし、大量の新型ファージ(細菌に感染するウィルス)が地下水に流入したことで、住人たちの運命は一変する。ファージが血液に混入した結果、住人の体内から新型の細菌が発見され、その細菌にはガン治療に関する様々な可能性が秘められていることが判明。 将来の莫大な利益を確信したヒルマイナ社は住民を隔離し、彼らをモルモットにして非人道的な実験を繰り返した。