概要・あらすじ
浪人の西村左内は道場の帰りになんともいえない笑顔の男から、30両の報酬と引き換えに剣の腕を持って手助けをしてほしいと請われる。左内が、毎日笑顔で生きている長屋の住人おみちの家族に施しをしながら、その笑顔の意味を考える「笑顔」ほか10編。
登場人物・キャラクター
西村 左内 (にしむら さない)
『まげもん。―御誂人情幕ノ内』第一幕「笑顔」の登場人物。長屋ずまいの独り者の浪人。正義のために人に仇なす者を斬ってほしいと依頼されて報酬の30両を受け取る。
おみち
『まげもん。―御誂人情幕ノ内』第一幕「笑顔」、第七幕「竹坊」の登場人物。長屋で病気の父親、年の離れた弟の竹坊と暮らしている。いつ亡くなるとも知れない父親、年端もいかぬ弟の世話に追われ潰されそうになる気持ちを、笑顔を絶やさず生きることで乗り切ろうと考える。西村左内の不器用な優しさに憧れている。
竹坊 (たけぼう)
『まげもん。―御誂人情幕ノ内』第一幕「笑顔」、第七幕「竹坊」の登場人物。長屋で姉のおみつと病気の父親の世話をしながら暮らす。おみつが仕事に出ている間は一人でいることが多く、いつも腹を空かしていて、西村左内に食べ物をもらうことがある。
稲本 小弥太 (いなもと こやた)
『まげもん。―御誂人情幕ノ内』第四幕「果たし合い」の登場人物。鈴木家に養子に出した弟の鈴木数馬が道場の朋輩たちに髷を切られたことに憤り、髷を切った当事者の戸塚菊之助、三船助十郎、河瀬康之助の髷を切り落とし、最後の一人となった島村半之丞に意趣返しの果たし合いを告げる。
島村 半之丞 (しまむら はんのじょう)
『まげもん。―御誂人情幕ノ内』第四幕「果たし合い」の登場人物。道場の朋輩である鈴木数馬を仲間たちと4人がかりで押さえつけ、その髷を切り落とした。兄の稲本小弥太に果たし合いを告げられるが、仲間3人がすでに髷を切られてしまったため、その意趣返しのため果たし合いに応じようとした。
島村半之丞の父 (しまむらはんのじょうのちち)
『まげもん。―御誂人情幕ノ内』第四幕「果たし合い」の登場人物。息子の島村半之丞が道場の朋輩である鈴木数馬の髷を切り落としたことに気づき、責任を取って事態の収拾に当たるため稲本小弥太との果たし合いに立ち合う。
鈴木 数馬 (すずき かずま)
『まげもん。―御誂人情幕ノ内』第四幕「果たし合い」の登場人物。道場の朋輩に4人がかりで髷を切られてしまう。剣にひいでた兄の稲本小弥太が、ひ弱な自分に代わって果たし合いを挑むことに納得しておらず、自ら一太刀でも与えたいと望む。
おちか
『まげもん。―御誂人情幕ノ内』第五幕「おちか」の登場人物。博打で借金を抱える夫の仁助によって女郎屋に売り飛ばされそうになったところを逃げ出してきて、差配の五平のもとに身を寄せる。困っている人間を見かけると放っておけず、自分を差し置いてでも救いの手を差し伸べようとする。
五平 (ごへい)
『まげもん。―御誂人情幕ノ内』第五幕「おちか」の登場人物。長屋の差配で、おちかの身柄を預かっている。おちかが他人に優しいのは、そうすることで自分の境遇から目を逸らそうとしているのだと断じる。
仁助 (にすけ)
『まげもん。―御誂人情幕ノ内』第五幕「おちか」の登場人物。おちかの夫で、歌留多遊びの借金がかさんだため、おちかを女郎屋に売り払おうとする。逃げ出したおちかを追って、力ずくで取り戻そうと手を尽くす。
助次 (すけじ)
『まげもん。―御誂人情幕ノ内』第六幕「父子」の登場人物。腕のいい職人で、親方の要請に応じて、職人の目利きと噂される新進気鋭の大店「花豆」から仕事を受ける。息子の長坊がなかなか自分の仕事を認めてくれないことに頭を悩ませる。
長坊 (ちょうぼう)
『まげもん。―御誂人情幕ノ内』第六幕「父子」の登場人物。6歳。職人である父親の助次に仕事のノウハウを叩き込まれるが、幼すぎてなかなか修業に身が入らない。
卯吉 (うきち)
『まげもん。―御誂人情幕ノ内』第十幕「戯画・好色女尻草紙」の登場人物。女の尻が何よりも好きで、毎日近隣の女房の尻ばかり眺めているが、持ち前の愛嬌の良さゆえあまり嫌われてもいない。ある日、行き倒れていた見事な尻の持ち主、お玉を助け、彼女と夫婦になる。
お玉 (おたま)
『まげもん。―御誂人情幕ノ内』第十幕「戯画・好色女尻草紙」の登場人物。卯吉の前に突如現われた巨大な尻を持つ娘。何よりも尻が好きな卯吉の嫁になるが、その正体はタヌキで、えさが少なくなった仲間を救うため人間に化けて食料を手に入れようとした。