あらすじ
第1巻
家族のために働き続けた結果、過労で倒れた木乃原塔子は、夫でありシェフの木乃原ヒロが独立し、店を構えるのを機に退職して田舎に引っ越す事になった。しかし塔子は内心、こんな田舎で経営が成り立つのだろうかと疑問を抱いていた。さらにヒロは家庭菜園(ポタジェ)を始めたいと言い出し、野菜も虫も苦手な塔子は、乗り気でないまま手伝う事になり、外食すらままならない新しい暮らしに不安を感じるのだった。さらに塔子には、もう一つ悩みがあった。塔子とヒロのあいだには5歳の一人娘の木乃原ハナコがいるが、これまでの激務でコミュニケーションが取れなかった事から、ハナコは塔子にまったく懐いていなかったのである。そんなある日、塔子とハナコは近所の竹田からぶどうをもらう。さっそくハナコは塔子と食べようとするが、ぶどうに虫がついている事に気づいた塔子は食べるのを拒否し、ハナコを傷つけてしまう。しかし、あとでハナコが体調を崩しがちだった自分のために、ぶどうを勧めてくれた事を知り、大いに反省する。
第2巻
木乃原ヒロの店「Cafeきのはら」がついにオープンした。そんなある日、木乃原塔子は自宅をオープンガーデンにする予定の女性客、戸田文の忘れ物を発見する。そこにはポタジェ(家庭菜園)もある事を知った塔子は、木乃原ハナコを連れて戸田家に忘れ物を届けに行き、ぜひポタジェの作り方を教えてほしいと頼み込む。人付き合いが苦手な文は塔子たちとの交流を渋るが、最終的に承諾。文のアドバイスによりポタジェは一気に美しくなり、二人は親しくなる。しかしその直後、木乃原家のポタジェはタヌキの被害に遭い、めちゃくちゃにされてしまう。意気消沈した塔子は体調を崩してしまうが、ハナコが看病してくれた事で元気を取り戻す。そんな中、塔子は竹田絵里と約束した買い物に出かける。そこで絵里の最悪な家庭事情を知った塔子は彼女に同情しつつ、自分がヒロに甘やかされている現状を反省。そして、もっと自分にできる事はないかと考え始める。
第3巻
ある夏の日、木乃原ハナコは自宅で育てていたトマトの実を、いつもお世話になっている竹田にプレゼントしようと、木乃原塔子に無断で竹田家へ向かう。途中で道に迷いながらも、「Cafeきのはら」の常連客である久本の家にたどり着く。久本はハナコの事を迷惑に思いつつも、いっしょに竹田の家へと向かう。しかし、竹田は結局「Cafeきのはら」にいた事がわかり、ハナコは久本と共に帰宅する。そこで久本は、塔子が目を離したせいでハナコが迷子になり、自分が迷惑したと塔子を攻めたてる。そんな中、久本が竹田の家に行こうとしていたのは、自作の虫よけ薬を渡そうとしていたためだった事が発覚。ちょうど農薬ではない虫よけ薬を探していた塔子は、久本に頼み込んで薬をもらい、これに気をよくした久本との関係は、一気に改善するのだった。そしてハナコもまた、この件をきっかけに人見知りを克服し、見知らぬ人にもきちんとあいさつができるようになる。
第4巻
戸田家に遊びに来た木乃原塔子と木乃原ハナコは、戸田文の夫と知り合う。塔子は彼の事を、文を非常に大切にする優しい男性だと考えていたが、文にとってはすべてが噛み合わない夫であった。そんなある日、文は夫から犬を飼わないかと提案される。家の庭を何よりも大切にする文は、犬に庭を荒らされる事を恐れてこの申し出を断るが、夫は勝手に犬を飼い始めてしまう。当然、二人はケンカになってしまうが、出会った頃の事を思い出した文はかたくなな自分の態度を少し反省する。その直後、木乃原塔子の母親が突然木乃原家に遊びにやって来る。しかしキャリアウーマンである塔子の母親は、塔子の事も自分と同類ととらえ、今後復職を考えているとカンちがいしていた。そこで塔子は、母親の滞在期間中に、今は仕事よりもハナコが優先である事、当初は不向きだと思っていた田舎暮らしにも、今はすっかりなじんでいる事を伝えるのだった。
第5巻
木乃原塔子は自動車免許を取得するためにやって来た教習所で、短期大学生の三橋奈緒と出会う。彼女と親しくなるうち、塔子は三橋家がブルーベリー農園で、年間を通じてブルーベリーを販売する方法を探していると知り、「Cafeきのはら」でブルーベリーのお菓子を売る事を思いつく。木乃原ヒロとも相談した結果、三橋家で作られたブルーベリーのケーキが店に並ぶ事が決定した。それからしばらく経ったある日、木乃原ハナコが使っているお茶碗を割ってしまったのをきっかけに、塔子はちょうど不足していた店の食器も含め、改めて新調する事にする。そして、近所に住んでいる佐藤トシオが陶芸家だと知った塔子は、トシの妻の佐藤ユリに招かれて陶芸教室に参加する。そこで塔子とハナコは、新しいお茶碗作りに挑戦するが、誤ってトシは二人の作ったお茶碗を割ってしまう。後日トシとユリは木乃原家に謝罪に訪れ、トシはあらためてハナコといっしょにお茶碗を作るのだった。一方、トシの作品に目をつけた塔子は、「Cafeきのはら」でトシの作品を売る事を提案する。
第6巻
秋になり、木乃原塔子の誕生日が近づいてきた。そんなある日、木乃原ハナコを騙して予防接種に連れていったうえ、ハナコが集めた草花を勝手に捨ててしまった事で、塔子はハナコを怒らせてしまう。これを心配した戸田文は、その後に回収できた草花を使って、塔子の誕生日プレゼントを作ってはどうかとハナコに提案する。なかなか素直になれないハナコは、当日プレゼントを渡す事はかなわなかったが、その夜塔子の枕元に、草花を使って描いた似顔絵を置き、これをきっかけに二人の仲は改善されるのだった。後日、竹田絵里、水上尚美と話した塔子は、自分と木乃原ヒロはほかの家庭に比べていい関係であり、むしろ自分が甘やかされている事を再確認する。少しでも店の役に立てるようにと奮闘する塔子だったが、またも空回りし、ヒロにはよけいな事をしないでほしいと言われてしまう。これに傷ついた塔子は、ヒロは家族よりも店の事が大切に違いないと腹を立て、雪の中、薄着のままハナコのお迎えへ行く。しかしいつもと違う道を選んだために体を冷やしてしまう。そこに現れたのが、車で迎えに来たヒロだった。お互いに反省した二人は仲直りし、ヒロは今後は塔子の意見も店に取り入れる事を約束する。
第7巻
春になり、幼稚園の年長になった木乃原ハナコは、まだ周囲になじめていない年少の男児の高橋いつきが気になっていた。ハナコは、いつきに泥団子の作り方を教えてなかよくなろうとするが、そこに年少の男児のゆうきが無理やり割り込んできた事で、泥団子は壊れてしまう。ハナコはゆうきを叱り、いつきには今後また困った事が起きたら、自分に相談してほしいと伝える。これによっていつきはハナコを信頼し、ようやく幼稚園になじむようになる。それから少し経ったある日、木乃原塔子と戸田文は、昨年交した約束通り、オープンガーデンの準備を始める。以前は生花店に勤めていたものの、不愛想すぎるあまり接客を外された過去がある文は、自分にきちんと接客ができるか悩むが、当日の朝、突如夫の妹の戸田美佳とその息子たちがやって来る。文は、今日は予定があるので帰ってほしいと美佳に頼むが、美佳は、この家はもともと自分の家であると激怒。美佳たちは帰るが、文は沈んだ気持ちのままオープンガーデンの開店時間を迎える。
第8巻
6月になり、木乃原ハナコの通う「こばと幼稚園」の女子たちのあいだでは、手紙の交換がブームになっていた。しかしまだ文字がうまく書けないハナコは、手紙を受け取っても返事が書けずにいた。これを案じた木乃原塔子は、ハナコはレターセットがないために返信ができないと思い込み、プレゼントする。しかし、ハナコが本当に欲しかったのは、ひらがなのドリルだった。そこで塔子は木乃原ヒロとオリジナルのひらがな練習帳を作り、再度プレゼントする。これによってハナコはひらがなが書けるようになり、七夕の笹を飾っていた木乃原家では、短冊にさまざまな事を書くのがブームになるのだった。夏休みのある日、夏祭りの金魚すくいに興味を持ったハナコは、三匹の金魚を手に入れる。塔子は仕方なく金魚の飼育を始めるが、すぐに一匹が病気になってしまう。その一匹はまもなく死に、やがて残りの二匹も死んでしまう。ハナコは深く落ち込み、塔子とヒロも責任を感じる。しかしハナコは竹田太一と共に金魚の話をした事で元気を取り戻し、以前よりも少し優しい性格になるのだった。
第9巻
夏のある日、木乃原塔子はポタジェで作った野菜を「Cafeきのはら」で使ってもらおうと、綿密な作付計画を立てていた。しかし、これを見た木乃原ヒロは、塔子にゆっくり暮らしてもらうための引っ越しのはずが、生活の至るところで塔子に頼っている事に気づく。そんなある日「竹田ファーム」を訪れたヒロは、竹田絵里の夫が工作を得意としている現状を知り、作りかけのままになっている庭の小屋作りを手伝ってもらう事にする。こうしてヒロは塔子と木乃原ハナコに喜んでもらうために作業に打ち込むが、足を踏み外して捻挫してしまう。これによってヒロは、小屋一つ満足に作れない自分が家族を守れるのだろうかと深く落ち込むが、そんなヒロを案じた絵里の夫はヒロを励まし、二人はまた小屋作りを再開する。そしてついに小屋が完成したある日、北海道から、ヒロの義姉の木乃原清香が木乃原家へ遊びにやって来る。まじめで厳しい性格の清香は、木乃原家の温かい雰囲気になじめず、家出してきたのである。そんな清香を塔子たちは優しく迎え入れ、いっしょに農作業をするうちに、清香の心はほぐれていく。そして数日経ったある日、家族からの心配の電話を受けた清香は、木乃原家でもらった豆苗を持って帰宅するのだった。
第10巻
秋になり、木乃原塔子と戸田文は、2日間にわたって開催される「Cafeきのはら」でのオープンガーデンに向けて準備を進めていた。当日は木乃原ハナコもお手伝いとして参加するが、その途中でぬいぐるみのテディが、オープンガーデンといっしょに開催されたマルシェの売り物とカンちがいされてしまい、人の手に渡ってしまう。しかし、塔子たちはこれに夜になって気づいたうえ、翌日の2日目は大雨で中止になってしまう。落胆する塔子たちだったが、マルシェの出展者たちから、来週もう一度オープンガーデンを開くのはどうかと提案された事で元気を取り戻す。こうして塔子たちはもう一度オープンガーデンを開催し、そこには先週テディを購入した女性も、テディを連れて訪れていた。彼女いわく、このぬいぐるみを気に入って買ったが、なぜか元の場所へ帰りたがっているように感じるので、返却する事にしたのだという。こうしてハナコは、テディと無事に再会を果たすのだった。
登場人物・キャラクター
木乃原 塔子 (きのはら とうこ)
とある田舎の喫茶店「Cafeきのはら」で働く若い女性。ランチタイムだけ手伝っていたが、のちに店の経理も務めるようになる。田舎にやって来るまでは、SEとして働いていた。前髪を目の上で切り、胸の高さまで伸ばした茶色のロングヘアにしている。明るく一生懸命な性格ながら、まじめ過ぎる一面が災いして空回りしがち。田舎には、夫でありシェフでもある木乃原ヒロが、勤めている店から独立したのを機にやって来た。独身時代は毎日仕事に追われ、社内での評価も高かった。ヒロと結婚して、娘の木乃原ハナコが生まれたあとも、朝から晩まで働きづめだった。その結果、ハナコとは精神的に距離ができてしまったうえ、体調を崩して過労で倒れてしまう。これを重く見たヒロが退職を勧め、慣れない田舎暮らしを送る事になった。SEとしては非常に優秀だったが、カフェ店員としてはミスが多く、食器を割ってしまう事がよくある。田舎にやって来た当初は虫と野菜が嫌いで、ヒロが始めた家庭菜園(ポタジェ)にも難色を示していた。しかし、ハナコとの関係を改善するためにも自分を変える事を決意し、次第に田舎暮らしになじんでいく。
木乃原 ヒロ (きのはら ひろ)
とある田舎の喫茶店「Cafeきのはら」で、店長兼シェフを務める若い男性。木乃原塔子の夫であり、木乃原ハナコの父親。田舎にやって来るまでは、フレンチレストランで働いていた。前髪を眉上で短く切った短髪にしている。集中力を高めるには、視界が狭い方がいいという考えから、ほとんど一日中帽子をかぶって過ごしている。穏やかな性格で心優しく、感情の起伏が少ない。そのため周囲からは怒っているのを見た事がない温厚な人物として知られているが、実は怒りを表現するのが極端に苦手なだけである。塔子とは独立前、レストランの従業員と客の関係として知り合い、塔子は頻繁に来店するものの、野菜が苦手でいつも残している事に気づき、関心を持つようになる。ある日ついに声を掛けて交際を始め、この交際が半年続いたら結婚してほしいとプロポーズする。しかし、塔子が今すぐ結婚しても構わないと言った事で、そのまま結婚した。その後は仕事で忙しい塔子を支えるために勤務時間を減らし、主夫に近い状態で生活していた。しかし塔子が過労で倒れ、店長からも独立するなら協力すると言われた事で引っ越しを決意し、「Cafeきのはら」を始める事になる。
木乃原 ハナコ (きのはら はなこ)
「こばと幼稚園」のゆり組に在籍する年中の女子。年齢は5歳で、木乃原塔子と木乃原ヒロの娘。前髪を目の上で切りそろえ、顎の高さまで伸ばした茶色のボブヘアにしている。周囲からは「ハナ」と呼ばれている。明るく活発な性格だが、やや人見知りが激しく、怒りっぽい。そのため塔子に対しては、うまく愛情表現ができずにいる。田舎にやって来るまでは、主にヒロが面倒をみていたため、激務の塔子とはほとんど顔を合わせない生活を送っていた。しかし5歳の時に塔子が退職し、以前と比べていっしょに過ごす時間が増えてとまどう。当初は塔子に懐かず気まずい関係だったが、田舎暮らしを通じて、少しずつ関係を改善していく。また「こばと幼稚園」に入園して園児たちと交流を持ち、竹田や久本をはじめとする近所の人々といっしょに野菜作りをするうちに、人見知りも克服した。特に竹田とは、本当の祖母と孫のように仲がいい。竹田太一とは喧嘩友達ながら、いざという時には助け合うなど仲がいい。両親と喧嘩している時はテディと話したり、幽霊を見たりする事ができる。
木乃原塔子の母親 (きのはらとうこのははおや)
世界中を飛び回っているキャリアウーマンの初老女性。木乃原塔子の母親。前髪を目の上で切って左寄りの位置で斜めに分け、顎の高さまで伸ばしたボブヘアにしている。明るくエネルギッシュな性格の仕事人間で、夫とは早くに離婚した。そのため、塔子の子育ては両親に頼りきりで、自分の役割は働いてお金を稼ぐ事だと考えていた。結果、塔子にはろくにお弁当を作った事がなく、これを内心申し訳なく思っていた。ある日、仕事に余裕ができたのをきっかけに、田舎に引っ越した塔子に2年ぶりに会いに行く。その際、東京都にいた頃とは大きく変わった塔子に驚きつつ、木乃原ハナコにお弁当を作ったり、いっしょに農作業をしたりするうちに、塔子が現在幸せそうにしている事に安堵する。
木乃原 清香
北海道に住むキャリアウーマンの中年女性。木乃原ヒロと木乃原塔子の義姉。ダイキとカズキという二人の小学生の息子がいる。前髪を目の下まで伸ばして真ん中で分けて額を見せ、肩につくほどまで伸ばしたセミロングヘアにしている。まじめでクールな性格で、自分にも他人にも厳しい。そのため木乃原家の面々に対しては、少しのんびりしすぎで、甘やかされ過ぎではないだろうかと心配しつつも、その穏やかでめったに怒る事のない人柄を素晴らしいと感じている。木乃原家になじめない事を申し訳なく思っており、ある日長期の有給休暇を申請し、家族には出張とウソをついて家出。しばらくヒロと木乃原塔子のもとに滞在する事になる。塔子の事は、熱心に働く都会的な女性ととらえており、自分と同じタイプだと思っていた。しかし塔子がヒロと共に田舎に引っ越してしまい、今ではすっかり田舎になじんでいる事に驚く。そして滞在中いっしょに畑仕事をしたり、塔子がこの生活を楽しんでいる姿を見たりするうちに考えを改めて、前向きな気分で帰っていった。その際、木乃原家から比較的育てやすい豆苗をプレゼントされた。
テディ
木乃原塔子が昔大切にしていた、大きなくまのぬいぐるみ。眉が太く、オーバーオールを着ている。男性キャラクターとして作られたが性自認は女性で、オネエ口調で話す。歯に衣着せぬ辛辣な性格だが、なんだかんだで面倒見が非常にいい。また子供にとって、自分が一番大切に思われているときだけ、その子と会話ができるという特殊能力がある。たとえば、子供が両親と喧嘩し、両親よりもテディが大切だと思っているときなどに話せる。そのため、悩んでいる子供の相談役になったり、子供のまちがいをたしなめる役割を果たす事が多い。もともとは塔子が母親に買ってもらったぬいぐるみで、塔子が田舎に引っ越した際もいっしょに移住するが、その後は木乃原家の押し入れにしまわれていた。しかし木乃原ハナコが5歳のある日、偶然発見して時々おしゃべりができる関係になる。ハナコとは、会話しない方が適切であると考えつつも、ハナコの事は大切に思っている。
竹田 (たけだ)
木乃原家のとなりに住んでいる年老いた女性。竹田絵里の義理の祖母で、竹田太一の曾祖母。以前は実家である「ファーム竹田」で農業をしていたが、引退した今も個人的に野菜を作っている。前髪を上げて額を全開にし、頭の低い位置で一つにまとめたお団子ヘアにしている。農作業をしている事が多いため、服装は作業着に帽子をかぶっている。明るくおおらかな性格で、非常に面倒見がいい。そのため、木乃原家の三人が引っ越して来てすぐに親しくなり、個人的に作った野菜をプレゼントしたり、木乃原ハナコの面倒を見たりするようになる。さらに木乃原家で家庭菜園(ポタジェ)を始めた事を知り、積極的にアドバイスを送るなど、木乃原塔子とハナコにとっては先生のような存在である。特にハナコとは、本当の祖母と孫のように仲がいい。一人で勝手に出歩く癖があり、絵里に心配されているが、これは自宅での仕事があまりにも忙しい絵里を外に連れ出す役目も担っている。
竹田 絵里 (たけだ えり)
「ファーム竹田」でトマト農家をしている若い女性。竹田太一をはじめとする三人の息子の母親。前髪を上げて額を全開にし、顎の高さまで伸ばした外はねボブヘアをまとめたハーフアップにしている。太眉で、鼻の周辺にそばかすがいくつもある。体形はやや太めで、結婚を機に10キロも太ってしまった。明るくおおらかな性格で、面倒見がいい。竹田たちも含めた八人の大家族で暮らしており、家では農作業だけでなく、家事全般も担当している。姑の竹田加代子はまるで協力的ではなく、自分を召使いのようにこき使うために辟易している。しかしそれにもめげず、時々ストレス発散しながら明るく生きる強さがある。木乃原家の面々とは「Cafeきのはら」で使う野菜を「ファーム竹田」からおさめる事になったのがきっかけで知り合った。木乃原塔子の事は、出会った当初は都会からやって来た変わった女性だととらえていた。しかし、木乃原ハナコが太一と同じ「こばと幼稚園」に通うようになってから塔子と接する機会が増え、塔子の人柄を知って親しくなる。
竹田絵里の夫 (たけだえりのおっと)
「ファーム竹田」でトマト農家を営む若い男性。竹田絵里の夫で、竹田太一の父親でもある。前髪を眉上で短く切って、髪全体をぼさぼさに伸ばした短髪にしている。体形は背が高くがっしりとしており、無精ひげを生やしている。また目が細く、つねに目を閉じているように見える。武骨でやや口下手だが、穏やかで面倒見のいい性格。また絵里の過酷な労働量を理解しており、優しく支えている。木乃原家の面々とはあまり交流がなかったが、ある日木乃原ヒロが地元の青年会に参加するようになった事で、次第に親しくなる。ヒロが自宅の庭にある作りかけの小屋を完成させたいので、手伝ってほしいと頼んだ時は積極的に協力した。
竹田 太一 (たけだ たいち)
「こばと幼稚園」に通う男子。竹田絵里の三人の息子の一人で、竹田のひ孫。前髪を眉上で短く切り、髪全体をぼさぼさに立てた短髪にしている。絵里と同様、太眉で鼻の周辺にはそばかすがいくつもある。明るくやんちゃな性格で、少し乱暴者。そのため、悪気はないが周囲とトラブルになってしまう事が多い。しかし、まちがいにはきちんとあやまる事のできる素直さがある。木乃原ハナコとは、ハナコが「こばと幼稚園」に入園した事がきっかけで知り合った。当初はハナコの事をウソつきだととらえて意地悪していたが、一度大喧嘩になり、話し合いの末に自分がまちがっていた事に気づく。そこで謝罪し、それ以降はハナコと喧嘩友達のような仲になっていく。
竹田 加代子 (たけだ かよこ)
「ファーム竹田」でトマト農家を手伝う中年の女性。竹田絵里の義母で、竹田太一をはじめとする絵里の三人息子の祖母。前髪を長く伸ばして真ん中で分けて額を見せ、肩につくほどまで伸ばしたセミロングヘアで、眼鏡をかけている。被害者意識が強く、意地悪な性格をしている。さらに、自分が竹田家に来た頃は誰も味方をしてくれなかったと認識しており、絵里に嫉妬している。そのため、家事全般にはいっさい協力せず、絵里の事を召使いのように扱って、いつも絵里に文句ばかり言っている。絵里の事を本気で憎んでいるわけではないが、不器用な性格が幸いして、たまに絵里に親切にしようとしても、まるで伝わらずに失敗する事が多い。
戸田 文 (とだ ふみ)
専業主婦の若い女性。「Cafeきのはら」の近くに住んでいる。前髪を眉上で短く切ったベリーショートヘアにしている。まじめで神経質な性格で、凝り性。そのため、人付き合いは苦手で家にこもりがちだが、親切で面倒見がいい。元は生花店に勤めていたが、ある日、あまりにも不愛想であるという理由で接客担当を外されてしまう。これに落ち込んでいたところ、いつも自分の仕事を見てくれていた戸田文の夫に励まされる。さらに、彼には両親が遺した大きな家と、広すぎる庭がある事を知り、この庭の世話をしてくれないかと頼まれた事がきっかけで結婚した。そのため、自分の事をよく見てくれていた夫には非常に感謝しているものの、彼の少し的はずれな気遣いに悩まされている。木乃原塔子とは、ある日「Cafeきのはら」に来店した際、戸田文が忘れ物をしてしまい、それを塔子と木乃原ハナコが届けに来た事で知り合った。当初は塔子の事を、人付き合いのうまい女性だととらえて距離を置こうとしていた。しかし、塔子が自分と積極的にかかわろうとしてくれている事を知り、考えを改める。そこで、木乃原家の家庭菜園(ポタジェ)作りに協力する事になり、塔子たちの先生となる。
戸田文の夫 (とだふみのおっと)
「戸田公認会計士税理士事務所」で働く男性。戸田文の夫。前髪を上げて額を見せた短髪で、眼鏡をかけている。眉が太く、体形は太め。明るくエネルギッシュな性格だが、あまり深く考えずに行動する事が多い。そのため、よかれと思って人に親切にしても、かえって迷惑がられてしまったりする事がある。特に文に対してはそれが顕著で、よけいな事をしては文のストレスとなっていた。文とは、文が生花店に勤めていた頃、従業員と客の関係として知り合う。その際、文の細やかな気遣いをひそかに気に入っていた。しかしある日、文が店を辞めようと考えている事を知り、どうにかしてつながりを持ち続けたいと考えていた。そこで両親が亡くなって以来、荒れ果てている自宅の庭を整備する役目、つまり自分の妻になってほしいとプロポーズした。戸田文の夫自身が子供を作れない体であるため、文の生活に変化をもたらしたいと行動しては、かえって彼女を困らせていた。しかし、文が木乃原塔子と親しくなった事で少しずつ変わり、自分に対する意見も伝えてくれるようになった事で、関係が以前よりよくなった。
戸田 美佳 (とだ みか)
戸田文の夫の妹。前髪を目の上で切り、肩につくほどまで伸ばした巻き髪セミロングをまとめたハーフアップにしている。体形はやや太めで、鼻が大きい。明るくわがままな性格で、夫とは喧嘩ばかりしている。兄である文の夫には甘えがちで、頻繁に息子二人を連れて実家に遊びに来ている。結婚を機に実家を離れたため、現在自宅は兄とその妻である戸田文に任せている。しかし文がガーデニングを始め、以前とは比べようもない庭を作った事で、文が勝手に庭をいじったと考えている。これが原因で、自分たちをないがしろにして、戸田家でオープンガーデンをしようとしている文に腹を立てて一方的に怒り出すが、兄に叱られた事で反省。オープンガーデン当日は、客として訪れた。
水上 尚美 (みなかみ なおみ)
専業主婦の若い女性。水上さとしの妻で、「こばと幼稚園」年中の水上ゆうとと、その弟である水上こうたの母親。木乃原塔子や竹田絵里とは、ママ友の関係である。前髪を目の下まで伸ばして真ん中で分けて額を見せ、肩につくほどまで伸ばしたセミロングヘアにしている。まじめな性格でしっかり者。そのため、家事も育児もしっかりこなしているが、義母が合鍵で勝手に家に入っては、無断で家事をする事に強いストレスを感じていた。そこで、できるだけ家にいないよう「こばと幼稚園」の役員を務め、習い事で忙しいゆうとに付き添う事で、家にいる時間を極端に減らす生活を送っていた。しかしある日、息子たちと三人そろって体調を崩してしまい、義母を呼ぼうとするさとしに、それだけはやめてほしいと頼み込む。これを機にさとしが義母の勝手な行動に気づき、合鍵を返却してもらった。また水上尚美自身は、ゆうとに無理やり習い事をさせていたと反省。特にゆうとが乗り気でなかったヴァイオリンを辞めさせ、尚美が習う事にした。
水上 さとし (みなかみ さとし)
会社員の若い男性で、水上尚美の夫。水上ゆうとと水上こうたの父親。前髪を目の上で切った短髪にしている。明るくのんびりした性格で、仕事はしっかりこなすが、家に帰ると子供同然になるなど、ギャップの激しいタイプ。尚美とは職場結婚で、尚美は水上さとしが仕事をする格好いい姿ばかり見ていた。そのため、結婚後のギャップに驚かれ、水上家には子供が「三人」いると評されている。しかしある日、母親が水上家に勝手に出入りし、無断で家事をするために尚美が困り果てていると知った際は、母親を叱りつけ、家の合鍵を返却してもらった。
久本 (ひさもと)
年老いて非常に痩せた男性。「Cafeきのはら」の近所に住んでいる。頭頂部がはげているが、眉から下の高さの髪は残し短髪にしている。不愛想な性格で、偏屈で怒りっぽい。木乃原家の面々とは、「Cafeきのはら」開店後、久本が常連客となった事で顔見知りとなる。それほど親しい関係ではなかったが、夏のある日、迷子になった木乃原ハナコを保護し、木乃原塔子に自作の虫よけ薬をプレゼントする間柄になった事で親しくなった。竹田とはよくケンカをしているが、なんだかんだで仲がいい。家族は妻と二人暮らしで、孫はいない。
木村 里都 (きむら さと)
園芸店の娘。中学2年生の女子で、文芸部に所属している。前髪を目の上で切り、肩につくほどまで伸ばしたセミロングヘアを、耳の下の位置で二つに結んだお下げにしている。明るく元気な性格で、やや夢見がち。吸血鬼が出てくる小説を読み、吸血鬼と恋愛する妄想に浸っていたところ、実家の店に研修にやって来た野間真夜と出会う。真夜が太陽を苦手としている事やトマトジュースを好む事などを知るうちに、もしかすると吸血鬼ではないかと疑うようになる。当然それは妄想であったが、いっしょに働くうちに親しくなり、思いを寄せるようになっていく。しかし中学3年生の時に真夜は家庭の事情で退職してしまい失恋する。父親の配慮に欠ける発言に時折腹を立てつつも、なんだかんだで仲がいい。
野間 真夜 (のま しんや)
木村家が営む園芸店で、研修を受けている若い男性。木村里都ら木村家の人間とは遠縁にあたるが、研修に来るまで里都とは面識はなかった。前髪を目が隠れそうなほど伸ばした短髪にしている。イケメンで背が高く、色白な肌を持つ。穏やかな性格で、岐阜の方言で話す。しかし方言は格好悪いと思うあまり、積極的にしゃべろうとせず、無理に標準語を使っている。それにより無口な印象を与えていたが、里都と話していたある日、とうとう方言が出てしまう。これによって無理をするのをやめ、性格も以前より明るくなった。胃が弱く、一度にあまりたくさん食べられない。トマトジュースが大好きで、貧血になる事が多い。この事から里都には、吸血鬼なのではないかと誤解されていた。その後、里都とは非常に親しくなるが、里都が中学3年生の時に父親が入院したのを機に退職を決意し、岐阜県に戻った。
三橋 奈緒 (みはし なお)
A女子短期大学に通う女子。紗江の先輩。前髪を左寄りの位置で斜めに分け、胸の下まで伸ばした巻き髪ロングヘアにしている。美形なうえにスタイル抜群で、周囲からは芸能人も夢ではないと噂されている。明るく気の強い性格で、やや怒りっぽい。実家の「三橋ブルーベリー農園」が好きで、地元から通えるA女子短期大学に進学した。しかし、大学進学以来周囲が大きく変化し、自動車免許がなければ行動範囲も限られる事を寂しく思うようになる。さらに恋人は東京の大学に進学して、会う事もままならずにいた。そこである日、自分も自動車免許を取得し、この寂しさを解消しようと中央自動車学校に通い始める。しかし、指導教官がいつも嫌みな教官に当たり、思うように教習が進まない事に苛立っていた。そんなある日、同じ教習所に通う木乃原塔子と出会い、教習状況が近い事で親しくなる。そこで実家がブルーベリー農園だと伝えた事がきっかけで、母親と自分が趣味で作っていたブルーベリーのお菓子を「Cafeきのはら」に卸す事になった。その後、塔子といっしょに自動車免許を取得したあとも交流は続いており「Cafeきのはら」で、短期アルバイトをした事もある。また、この時に紗江を紹介した。
よしき
「こばと幼稚園」に通う年中の男子。前髪を目の上で切りそろえた短髪で、眼鏡をかけている。まじめな性格で、理屈っぽいところがある。まだ年中ながら、すでに敬語をきちんと話せる。それゆえに幼すぎる同級生を嫌い、見下した態度を取る事がある。運動会でリレーの補欠選手に選ばれるが、走る可能性が低いのであれば、練習する必要はないと感じていた。さらにリレー選手である木乃原ハナコと竹田太一はいつも喧嘩しており、特にハナコが自分にまるで関心を持たない事に腹を立てていた。それでハナコにちょっかいを出すようになるが、ある日ハナコの体を強く押しすぎて転ばせてしまい、一部始終を見ていた太一に激怒される。そこで逃げ出したところ、今度は太一が転んで大ケガをしてしまい、繰り上がりでリレー選手となった。運動会では転んでしまうが、アンカーのハナコが巻き返した事で勝利をおさめる。後日ハナコから、ちょっかいを出すのをやめてくれたらいっしょに遊んでもいいと言われた事で反省し、親しくなった。
小松 (こまつ)
専業主婦の若い女性。「こばと幼稚園」年中の男子の小松ひなたと、七か月になる男子のもっくんの母親。前髪を目の上で切り、肩につくほどまで伸ばしたセミロングヘアにしている。まじめで一生懸命な性格だが、初めての育児に疲弊しており、毎日必死に家事と育児をしても満足のいく結果を出せずに自分を責めている。そんなある日、「こばと幼稚園」の役員にくじ引きで決まってしまい、どうしてもできないと木乃原塔子、竹田絵里、水上尚美に泣きつく。そこで三人に現状を説明したところ、慰められ、育児のアドバイスを受ける。そして最終的に、塔子と二人で一人分の仕事を分担するという形で役員をする事になった。専業主婦になるまでは、会社員としてデータ管理の仕事をしていた。
紗江 (さえ)
A女子短期大学に通う1年生の女子。三橋奈緒の後輩。前髪を目の上で切って左に向かってカールさせ、顎の高さまで伸ばした内巻きボブヘアにしている。都会的な華やかな生活を好み、卒業後は東京都で働きたいと考えている。しかし田舎の女子短大に進学した事で、すでに田舎暮らしに嫌気がさしている。奈緒とは大学のサークルで親しくなり、アルバイトを探していたところ「Cafeきのはら」での短期アルバイトを紹介される。その際、木乃原家の面々と知り合い、完全にこの地域になじんでいる木乃原塔子が、以前は東京都でキャリアウーマンとして活躍していた事を知って驚く。さらにアルバイトを通じて「Cafeきのはら」は従業員と客の仲がいい事に気づき、そんな人間関係が生まれる田舎生活を見直すきっかけとなった。
ゆうき
「こばと幼稚園」に通う年少の男子。木乃原ハナコが年長になった年に入園したため、学年は二つ下である。明るく元気な性格だが、身勝手なところがあり、他人の気持ちを考えずに行動して傷つける事が多い。「こばと幼稚園」には比較的早く順応している。しかし、高橋いつきのげた箱を勝手に使ったり、ほかの子供たちが砂場遊びをしているところに割り込んだりと、迷惑な行動を繰り返すようなる。ある日、いつきとハナコが遊んでいるところを邪魔し、ハナコと先生に怒られて反省した。
高橋 いつき (たかはし いつき)
「こばと幼稚園」に通う年少の男子。木乃原ハナコが年長になった年に入園したため、学年は二つ下である。前髪を目の上で切りそろえた短髪にしている。物静かで落ち着いた性格のため、手がかからないと思われているが、実は感情表現がやや苦手なだけ。また服や靴が汚れる事を嫌い、「こばと幼稚園」で推奨している裸足での外遊びを嫌がっている。入園当初は幼稚園という場所を正しく理解できておらず、これから毎日通う場所ではなく、期間限定で母親を待つための待機場所であるととらえていた。その結果、みんなとなじめずにいたが、ある日ハナコが声を掛けた事で親しくなる。しかし、二回に渡りハナコとの遊びをゆうきに邪魔されたうえ、服を汚された事で、ついに泣き出してしまう。その際に、ハナコと先生がゆうきを叱った事で事態はおさまった。ハナコから服や靴が汚れるのが嫌なら、脱いで遊ぶといいと提案された事で、ようやく裸足での外遊びにもなじみ始めた。
佐藤 トシオ (さとう としお)
ギャラリー「さとう陶芸展」で働く陶芸家の若い男性。佐藤ユリの夫で、タクという幼い息子がいる。短髪にバンダナを巻いており、体形はやや太めで無精ひげを生やしている。周囲からは「トシ」と呼ばれている。孤独を愛する仕事一筋の頑固な性格で、偏屈で気分屋なうえに不愛想である。そのため、たとえ客であっても平気で待たせたり、気に入らない相手にはあいさつもしなかったりと、精神的にやや幼いところがある。家族の事は愛しているものの、自分のできる事しかやらないという考え方の持ち主で、子育てには非協力的である。そのため、結婚後は家事も子育てもユリに任せきりで、自分はその分仕事をすればいいと考えていた。しかしある日、あまりにもユリが疲弊している事にようやく気づき、義母に連絡して手伝ってほしいと頼み、ユリとの関係が改善された。陶芸家として作品を作る傍ら、陶芸教室も開いている。木乃原家の面々とは、作品を届けに行った際に知り合い、木乃原塔子と木乃原ハナコに陶芸を教えた事がきっかけで親しくなった。特にハナコとは、頻繁に喧嘩をしつつも仲がいい。
佐藤 ユリ (さとう ゆり)
ギャラリー「さとう陶芸展」で働く若い女性。佐藤トシオの妻で、タクという幼い息子がいる。前髪を上げて額を全開にし、ロングヘアを頭の高い位置で一つにまとめたお団子ヘアにしている。明るく社交的な性格だが、人に頼るのは苦手である。元は都会に住んでいたが、人間関係が希薄な生活に嫌気が差す。そこで、人との密な交流を求めて田舎に引っ越し、役所に勤めるようになった。トシオとはその仕事中、道の駅に作品を出展してほしいと頼みに行った事で知り合い、親しくなる。ある日、住んでいるアパートから出なくてはならなくなり、引っ越し先を探していたところ、トシオから同棲の話を持ち掛けられる。その結果、同棲するなら結婚しようと、佐藤ユリの方からプロポーズして現在に至る。結婚当初は、トシオもまた自分のように孤独を感じているはずだと考えていた。だが、どうやらトシオは一人でいる事が好きらしいと気づき、考え方の違いに悩むようになる。しかしある日、トシオがユリの苦労に気づき、ユリの母親を呼び寄せてサポートを頼んだ事がきっかけで、関係が以前よりよくなった。
さえ
「こばと幼稚園」で教師を務める女性。年齢は20代後半。前髪を眉上で短く切り、顎の高さまで伸ばしたボブヘアにしている。明るい性格だが要領が悪く、仕事を抱え込みがち。幼稚園教諭を最初から志していたわけではなく、四年制大学を卒業したあとに幼稚園教諭免許を取得するため、短期大学に入学し直している。そのため、周囲の教師よりも年上だが、若々しい容姿であるために下に見られる事が多い。木乃原ハナコが年長になった年に、初めて年長クラスの担任を任される事になり、非常にはりきっている。そこで運動会を成功させようと、一人では抱えきれないような量の業務を担当するが、運動会中の服装についてるりはの母親の反対にあう中、同棲中の恋人の心無い言葉に傷つく。しかし、るりはが協力的であった事や、同僚たちの励ましによって元気を取り戻し、無事に運動会を成功させた。のちに、恋人とは別れた。
るりは
「こばと幼稚園」に通う年長の女子。前髪を目の上で切り、胸の高さまで伸ばしたロングウェーブヘアにしている。美意識が高くておしゃれに気を使い、地味な服装を嫌う。運動会では黒いTシャツを着てくるようにと言われ、腹を立てていた。しかし、一人だけ違う服装は嫌だと思っていたところ、母親が自分以上に激怒しており、さえをはじめ教師たちに理不尽な文句を言い続けている事に心を痛める。そこでさえと話し合って自分の気持ちを伝え、最終的には母親とも相談したうえ、ほかの子よりも派手にデコレーションした黒いTシャツを着て参加するという形で落ち着いた。