黒鉄ボブスレー

黒鉄ボブスレー

オリンピックへの出場、そして金メダルの獲得を目指し、ボブスレーのソリを開発する下町の町工場の奮闘を描く物語。資金のない町工場が精密加工の技術を駆使して、大手企業と技術で渡り合う姿を通し、日本のものづくりの真髄を描く。「週刊ビッグコミックスピリッツ」2013年52号から2014年37・38合併号にかけて連載された作品。

正式名称
黒鉄ボブスレー
ふりがな
くろがねぼぶすれー
作者
ジャンル
職人・芸術家
 
ウィンタースポーツ
関連商品
Amazon 楽天

あらすじ

第1巻

黒井精機は、自動車関連部品の金属加工を中心に行っている大田区の町工場。だがそんな黒井精機に、大口顧客の鳴神グループが取引を打ち切ると通告して来た。黒井精機の営業担当の白河は会社存続の危機に直面し、新たな大口の取引先を開拓するべく奔走する。そんな矢先、元ボブスレー日本代表の倉萩という男が黒井精機を訪れ、社長の黒井銀蔵にボブスレーのソリの開発を持ちかける。だが開発費はいっさい出ないという倉萩に銀蔵は難色を示す。銀蔵の息子の黒井鉄郎はこの話に乗り気になるが、銀蔵と諍いを起こし、その結果銀蔵は急性脳卒中で入院してしまう。偶然、鳴神グループの娘である鳴神チヅカと知り合いになった鉄郎は、物事はハードルが高いからこそ挑みがいがあると語り、大手に負けない町工場の技術をチヅカに語る。そんな鉄郎達の前にチヅカの弟で鳴神グループの御曹司の鳴神融が現れ、ボブスレーのソリの共同開発を提案して来た。開発費として1億円出すと持ち掛ける融だったが、そのための条件とは黒井精機の名前はいっさい公にしないという事だった。それを不服に思った鉄郎はその提案を却下し、倉萩と共に独自にボブスレーのソリを開発する事を決意する。

第2巻

ボブスレーのソリを開発する事となった黒井精機黒井鉄郎は、元ボブスレー日本代表の選手だった倉萩の提案で、長野県にある信濃中央大学へとやって来る。そこはウインタースポーツの強豪校であり、ボブスレーも多くの選手達が練習していた。今までボブスレーのソリを作った事がない鉄郎は、倉萩に頼んで信濃中央大学で練習に使用しているソリを貸してもらうように頼み込むが、ボブスレー選手である山田小結はいきなり現れた鉄郎達の事が信用できない。鉄郎は自身の持つ技術でソリを整備し、山田達の信用を得る事に成功、ソリを借りて黒井精機へと持ち帰る。持ち帰ったソリを分析した黒井精機の技術部長の嵐山仁は、このソリを作るには黒井精機の持つ金属加工の技術だけでなく、さまざまな技術が必要だと考え、協力企業を巻き込む事を提案する。鉄郎は旧知の黄島剣一緑山文雄に相談、それぞれの持つ熱処理加工と切削加工の技術の協力を取りつける。さらに鉄郎は、レーシングカーの企画開発を行う幻夢の社長の丹田悟と出会い、幻夢をも味方につける事に成功する。

第3巻

レーシングカーの企画開発を行う幻夢からソリのボディの供給を受ける事になった黒井精機では、それ以外の部品についても開発・製造が進められていた。だがそれでも黒井精機だけでは、賄う事が難しい状態が続く。黒井鉄郎は、父親の黒井銀蔵に相談し、銀蔵が持つコネを利用して大田区の町工場を総動員させる事に成功、ボブスレーのソリがようやく形になっていく。ついに完成したボブスレーのソリは「黒鉄ボブスレー」と名付けられ、テスト走行の日を迎える。実際にソリに乗るのは鉄郎の幼なじみである日村姉妹の二人。だが同じ頃、鳴神グループ鳴神融もまたボブスレーのソリを完成させていた。長野県で開催される大会での黒井精機と鳴神グループとのボブスレー対決は、鳴神グループの勝利に終わるが、鳴神グループ製のソリは世界大会ではまったく通用せず、惨敗を喫する事となる。改めて黒井精機へと足を運んだ融は、再びボブスレーのソリの共同開発を持ちかける。それを受けた鉄郎は下町の町工場を超えた「オールジャパン」製のソリを作る事を提案。融もそれを承諾し、共に新たなソリの開発に着手するのだった。

登場人物・キャラクター

黒井 鉄郎 (くろい てつろう)

黒井精機で金属加工の職人として働く男性。父親であり、創業者の黒井銀蔵が急性脳卒中で倒れたため、急遽二代目社長に就任する。倉萩が持ち込んだボブスレーのソリを開発する案件を受け入れ、大手メーカーの鳴神グループとの軋轢などさまざまな困難を乗り越えてボブスレーのソリを開発する。直情型の性格で、一度決めた事は必ずやりきる意固地な一面を持つ。 黒井精機内部をはじめ大田区にある町工場の中では、まだ若年のため信用されていない部分も多いものの、持ち前の熱さで周囲からの信用を勝ち取っていく。

アカネ

黒井精機で金属加工の職人として働く女性。黒井精機の中ではまだ新人だが、黒井鉄郎の一番弟子として鉄郎から信頼されている。大田区の町おこしの一環として結成されたご当地アイドル「ドリルシスターズ」のメンバーであり、緑山文雄をはじめ密かに彼女のファンだという人は多い。趣味はバイクで、鉄郎がボブスレーのソリを見るため、長野県の信濃中央大学まで行った際には、アカネ自身のツーリングも兼ねてついて行った。 黒井精機では新人ながら金属加工の技術は既に一人前であり、現在はさまざまな経験を積む事を求められている。

黒井 銀蔵 (くろい ぎんぞう)

黒井精機の創業者であり、黒井鉄郎の父親。鳴神グループから取引を打ち切られた黒井精機の経営難を乗り切るためにさまざまな方策を考えるが、それらの無理がたたって急性脳卒中で倒れる。その後は黒井精機の経営を息子の鉄郎に任せ、自身は隠居していた。ボブスレーのソリを黒井精機で開発する事については、開発費が出ない事から乗り気ではなかったが、最終的には鉄郎に協力する形でソリ開発を承諾する。

白河 (しらかわ)

黒井精機の営業を務める男性。自営業だった実家が倒産した際に黒井銀蔵に救われた過去があり、その恩を返すために黒井精機で働いている。黒井鉄郎とは幼なじみであり、金にならない仕事をする事が多い鉄郎とたびたび衝突する。その一方で、鉄郎の技術は誰よりも信頼しており、鉄郎がボブスレーのソリを作ると決意した際も、当初は反対したものの、その後はさまざまなルートを通じて協力する。 白河自身には金属加工の技術はないものの、営業マンとしてのフットワークの軽さが信条で、その点は幻夢の社長の丹田悟にも評価されている。

(せき)

黒井精機で金属加工の職人として働く男性。黒井鉄郎や白河とは同期であり、急遽社長となった鉄郎に対しても敬語は使わずに接する。金属加工のプログラムを組む事が得意であり、職人のアナログ的な技術に対して、デジタルの技術でミリ単位の精密加工を実現する。鉄郎がボブスレーのソリを作ると決意した際には当初反対していたが、ソリ作りの面白さに魅せられて、その後は嬉々としてソリの開発を行う。

嵐山 仁 (あらしやま じん)

黒井精機で加工部長を務める男性。創業者の黒井銀蔵と共に黒井精機の創業当時から金属加工の職人として働いて来た。それだけに金属加工の技術は黒井精機の中でも随一であり、二代目社長となった黒井鉄郎も嵐山仁を頼りにしてアドバイスを仰いでいる。職人としてさまざまな経験を積んでいるため、物事に対して柔軟な思考を持ち合わせている。

倉萩 (くらはぎ)

元ボブスレー日本代表の男性。これまでボブスレーのソリは海外製がほとんどだったという現状を変えたいという思いから、黒井精機に国産のソリを作ってもらうように提案する。かつては日本代表の選手だったが、現在は信濃中央大学でボブスレーのコーチを務めており、開発費用は出せないものの、それ以外の面でのさまざまな協力を申し出る。

鳴神 チヅカ (なるかみ ちづか)

鳴神グループの創業者の娘。両足を事故で失い、現在は義足で生活している。もともと世界レベルの陸上選手であり、義足となった現在も義足ランナーとして走り続けているが、自身の義足をコンプレックスに感じている。黒井鉄郎と出会って、彼の持つ金属加工への思いに触れ、ボブスレーのソリ作りを応援する。

鳴神 融 (なるかみ とおる)

鳴神グループの創業者の息子。鳴神チヅカの弟。姉であるチヅカを妄信的に尊敬しており、義足となった姉を守りたいと思っている。黒井鉄郎に黒井精機の名前を出さない事を条件に、ボブスレーのソリを共同開発する事を提案するが、鉄郎に却下されたため、黒井精機とは別にボブスレーのソリを開発する。姉に近づく鉄郎を快く思っておらず、鉄郎よりも自身が優秀である事を証明するためにボブスレーのソリ開発に心血を注ぐ。

丹田 悟 (たんでん さとる)

幻夢の社長を務める男性。誰よりも速さをこよなく愛し、自分用にチューンナップした愛車で自前のサーキットを疾走するという趣味を持つ。居酒屋で黒井鉄郎と出会い、2000万円支払えばボブスレーのソリ開発に協力すると持ちかける。白河の熱意と黒井精機の技術に触れた事で無償でのソリ開発を承諾し、その後はボブスレーのソリのデザインとボディ開発で黒井精機に協力する。

緑山 文雄 (みどりやま ふみお)

切削加工会社に勤める男性。切削加工技術に優れ、弟と共に「ドリルブラザーズ」と呼ばれている。黒井鉄郎や白河とは同じ学校の卒業生であり、ボブスレーのソリ開発での切削加工で協力する。黒井精機のアカネのファンであり、彼女を模して加工した金属製のフィギュアをプレゼントした。

黄島 剣一 (きじま けんいち)

熱処理加工会社に勤める男性。黒井鉄郎や白河とは同じ学校の卒業生であり、ボブスレーのソリ開発での熱処理加工で協力する。やや太り気味の体型であり、そんな自身の体型にコンプレックスを抱いていた。同じ会社で総務として働く女性に思いを寄せており、彼女の後押しもあって、ボブスレーのソリ開発でもさまざまな場面で活躍する。

日村姉妹 (ひむらしまい)

大田区にある金属メーカー社長の娘で、双子の姉妹。黒井鉄郎とは幼なじみであり、二人とも鉄郎に思いを寄せていた。鉄郎の父親である黒井銀蔵の意向で、どちらかと政略結婚する事が決まっていたが、鉄郎がそれを拒否した事を怒っている。日本を代表する陸上選手であり、義足ランナーである鳴神チヅカの事も知っていた。 鉄郎達が完成させたソリのパイロットとして、ボブスレー大会に出場する。

山田 (やまだ)

ボブスレー選手の男性。信濃中央大学で倉萩の指導を受けながらボブスレーの練習を行っている。小結と共にボブスレー日本代表選手になる事を目指し、ボブスレーに対する熱い情熱を持っている。そのため、いきなり現れてソリを作ると宣言した黒井鉄郎に対して不信感をあらわにする。その後は鉄郎の技術を認め、やがて日本代表選手として国際大会に出場する。

小結 (こむすび)

ボブスレー選手の男性。信濃中央大学で倉萩の指導を受けながらボブスレーの練習を行っている。山田と共にボブスレー日本代表選手になる事を目指しているが、技術的にはまだまだ未熟であり、自身が練習で使っているソリを黒井精機に貸し出す際にも辞退しようと思っていた。気弱な性格ながら、その後は山田と共に技術を向上させ、やがて日本代表選手として国際大会に出場する。

集団・組織

鳴神グループ (なるかみぐるーぷ)

自動車産業を主体とし、さまざまな事業を展開する大手企業。現在は社長の御曹司である鳴神融が経営の主導権を握っており、自社ブランドを世界的に売り込む目的でボブスレーのソリ開発に着手している。優れた金属加工技術を持った黒井精機にソリの共同開発を持ちかけるが、黒井鉄郎に却下されたため、その後は独自に黒井精機のソリを上回るボブスレーのソリを開発する。

場所

黒井精機 (くろいせいき)

黒井銀蔵が創業した、大田区にある金属加工会社。従業員数20名ほどの小さな町工場だが、金属加工技術は日本一を自負している。創業者の銀蔵は、大田区の中小企業連合会の役員も務めており、各方面からも信頼が厚い。納期と金属加工の正確さには定評があり、地元の高校生がインターンシップで職業体験に訪れる事も多い。

幻夢 (げんむ)

丹田悟が創業した、三重県にある会社。レーシングカーの企画開発を行う会社であり、鳴神グループともつながりが深い。自社社屋付近には自前のサーキットも所有しており、開発したレーシングカーのテスト走行などもそのサーキットで行っている。かつて鳴神グループと共にボブスレーのソリを開発した事もあったが、その技術だけを鳴神グループに奪われた過去がある。

SHARE
EC
Amazon
logo