あらすじ
第1巻
2033年、地球は異常気象に見舞われた。その後、どこの国でも、どこの町でも大人だけが消え去り、17歳までの子供だけが残ってしまう。大人がいないため、多くの都市の機能が麻痺して、リサイクル・シティ・システムのある榛野市に、子供達が集まって来ていた。もともと榛野市に住んでいた鹿賀一紀は、いとこの大熊大介といっしょに品川にいる親友の星名を車で迎えに行く。帰る途中で猿渡飛比夫に出会い、彼も榛野市へと連れ帰る。榛野市では突然、新生児が出現するという現象が起きていたが、一方で子供は18歳の誕生日を迎えると突如姿を消していた。大介は18歳になると同時に、次の瞬間自宅のベッドの上で目覚める。大介のやって来た世界では、子供達だけの世界と18歳以上の大人達だけの世界に分けられていたのだ。大人の世界も子供と引き離された事により混乱していた。大介はケーブルテレビのインタビューを受けて、大人の世界では経度の線に沿って子供が消失している事を知り、この現象には作為的なものがあると感じる。何のために、誰がこのような事をしているのか、大介は怒りをあらわにするのだった。
第2巻
子供だけの世界AWAYでは、大きな子供が小さな子供の親代わりを務め、何とか秩序を保っていた。そんなある日、猿渡飛比夫は、自分の背後に気配を感じるようになり、その気配の主は「雪の王子」を名乗る白い少年と知る。彼の正体はわからないが、その姿は14歳で亡くなった飛比夫の兄、ルリ夫にそっくりだった。その後、大人の世界からAWAYに現れた赤ちゃんのお包(くる)みに手紙が入っており、そこには現在、世界が大人だけの世界と子供だけの世界に分けられている事が書かれていた。それを読み終えた鹿賀一紀と、飛比夫の前に再び白い少年が現れ、彼らに世界の秘密を語って聞かせる。一紀は白い少年が語った事をレポートにまとめて河津克巳に託し、18歳の誕生日を迎えた河津は、そのレポートを手にAWAYから去っていく。世界が二つに分けられたまま時は流れ、2051年。一紀と飛比夫の子供である羽生は、一紀のレポートから、環境破壊によって世界が消滅しそうになっている事を知る。
登場人物・キャラクター
鹿賀 一紀 (かが かずき)
2033年時点で中学2年生の14歳。平凡な少女だが、芯が強く、情に厚い。動物や人間の世話を率先して行う。いとこの大熊大介に惹かれていたが、彼が18歳となりHOMEへ帰還し、離別してしまう。夢遊病になり大介を探すほどこがれていたが、次第に、共にAWAYで生活していた猿渡飛比夫に惹かれて結婚、羽生という息子をもうける。 白い少年とたびたび接触し、飛比夫と共に世界の秘密を聞かされ、レポートとして書き留めた。
猿渡 飛比夫 (さるわたり とびお)
2033年時点で15歳。異常気象の日の翌日、茨城県の牛久から、榛野市に住む母に会う為に移動中、鹿賀一紀と出会った。母は飛比夫の兄・ルリ夫を溺愛し、ルリ夫の死の際には「おまえが代わりに死ねばよかった」と発言。その後、母は夫と離婚、飛比夫の側を離れ、鬱病の療養に。 大熊大介の帰還を受け不安定になった一紀を側で支え、彼女に惹かれていく。一紀と息子の羽生をもうけるも、彼女の「大ちゃんが一番好き」という言葉にショックを受ける。その後一紀と和解した際に、白い少年と接触。彼から世界の秘密を聞かされ、一紀と共に、レポートとして書き留めた。
大熊 大介 (おおくま だいすけ)
2033年時点で17歳。4月1日に18歳を迎え、HOMEへ帰還した。鹿賀一紀のいとこで、彼女に恋心を抱いていた。HOMEへ帰還した際、AWAYの状況を多くの人に伝えた。後に、帰還した式部と結婚。2051年のAWAYに、大地という13歳の息子がいる。
白い少年 (しろいしょうねん)
猿渡飛比夫の兄・ルリ夫と同じ容姿をしている。正体は、未来のカナダのラボで、時空間・パラレルワールドの研究を行っている45歳の男性。飛比夫の持つイメージを借りて、ルリ夫の姿を投影している。自分の存在する未来や、それよりも先の未来で起こる地球の破滅を回避するため、鹿賀一紀達の世界をHOMEとAWAYに分離した。
八神 (やがみ)
榛野市で唯一AWAYに残留した成人男性。分離時に、タクシーで移動していた為、残留したと思われる。大人がいなくなり、混乱をきたした榛野市で、青年団を指揮して体制を整えさせた。妻・マツコ、息子・靖はHOMEに存在。靖は帰還者のカウンセリングを行っている。
式部 (しきぶ)
女子会長で、真面目で責任感が強い美人。大熊大介に恋心を抱き、鹿賀一紀に反発している。大介のHOME帰還と叶先生からの手紙に懐疑的な態度をとっていた。その後和解し、共に榛野市を支えた。2033年8月半ばにHOMEへ帰還。大介と結婚し、2051年のAWAYに、大地という13歳の息子がいる。
河津 克巳 (かわづ かつみ)
山に明るく、猟銃も扱える。ジビエを扱う店の子で、イノシシなどを捕って捌くことが出来る。子供を殺害した高山リストや、似た殺傷事件を起こした中学生に手を下した。2034年11月に、世界の秘密と共にHOMEへ帰還。2051年のAWAYに、15歳の春馬、12歳の真夏、10歳の冬子の三人の子供がおり、彼らがAWAYの世界の秘密のレポートを管理している。
仏子沼 えりか (ぶしぬま えりか)
榛野高校の看護コースの生徒で、AWAYの中央病院で子供達の看護を行っていた。HOMEから新生児が転移してくることに初めて気づいた。2033年の4月15日にHOMEへ帰還。90名の子供達の遺品を届けた。
叶先生 (かのうせんせい)
産婦人科の医師。AWAYに消える前の新生児の産着に、メモを忍ばせたことをきっかけに、HOMEとAWAYのやりとりが行われるように。小学生の娘が二人、AWAYにいた。
羽生 (はにゅう)
鹿賀一紀と猿渡飛比夫の息子。世界が子供のみの世界と大人のみの世界に分けられたあとで産まれたため、実の両親よりも親代わりをしてくれたねね達を慕い、実の親のように思っている。一紀の作成したレポートにより、世界の秘密を知る事になる。
星名 (ほしな)
鹿賀一紀の女友達。2033年時点で東京都品川に住んでいたが、一紀達に迎えに来てもらい、榛野市に移住した。
集団・組織
帰還者 (きかんしゃ)
『アウェイ-AWAY-4月1日』で、AWAYからHOMEへ帰還した者達の総称。18歳の誕生日を期に、HOMEに帰還した子供達は、世界の分離の初期には、子供を心配した親たちなどにより、迫害や糾弾を受けていた。しかし多くの子供達が帰還し、様々な情報を持ち帰る内に、批判は分散。AWAYの存在を認めていなかった国も、認めるようになっていった。
場所
AWAY (あうぇい)
『アウェイ-AWAY-4月1日』の世界の一つ。18歳未満の子供が生活する。2033年の3月21日の春分の日を境に、18歳以上の大人はHOMEに分離。以降、18歳を迎えた者もHOMEへと転移するようになってしまった。分離当初は世界全体が混乱し、強盗も横行していた。親を失った乳幼児が死亡する事件や、惨殺事件も発生。 榛野市では、残された大人・八神と年長者の大熊大介や式部、河津克巳、仏子沼えりか達が統率をとり、早くからライフラインを復旧。安定した自給自足状態を作り上げた。政府のAWAY認定を受け、HOMEからの新生児の流入が減少するが、AWAYにいる間であれば、自分の子と共にいられることや、恋愛感情故にAWAYでの出産が増加。 2051年には、AWAYで生まれた子供や、世界の分離以降にHOMEで誕生した子供達が、AWAYで一つの生活形態を形作った。
HOME (ほーむ)
『アウェイ-AWAY-4月1日』の世界の一つ。18歳以上の大人が生活する。2033年の3月21日の春分の日を境に、18歳未満の子供たちはAWAYに分離。以降、出産された赤ん坊もAWAYへと転移するようになってしまった。東経線に沿って子供が消失すること、子供が時速4km以上で移動している場合に消失を免れるという報告から、子供を動かす運動もあったが、ほとんどの子供は消失。 また仏子沼議員など、AWAYの存在に懐疑的な人物・国家も多くあった。2033年7月には日本もAWAYの存在を肯定。妊娠出産を控えるよう通知が出された。動植物は、AWAYとHOMEの両方に同一個体が存在する。
榛野市 (はんのし)
『アウェイ-AWAY-4月1日』の舞台となる市。埼玉県。市名は架空の物。リサイクル・シティ・システムが発達し、電気・水・熱エネルギーはリサイクルされる、地産地消型都市。焼却炉・葬儀場などもオートマチック。世界の分離の際も、2023年の東京震災以降の安全教育が行き届き、全市民が14歳から青年団に参加、年2回の防災訓練を受けていることや、八神の残留、水田はないが近隣に農場や猟場が存在することなどから、AWAYの中では比較的早い段階から体制が整えられ、状況が落ち着いた。
その他キーワード
世界の秘密 (せかいのひみつ)
『アウェイ-AWAY-4月1日』で、鹿賀一紀と猿渡飛比夫が、AWAYの子供達のために残したレポート。白い少年が語った、破滅の未来や、HOMEとAWAYに世界を分離した理由が記されている。
クレジット
- 原作