アマネ†ギムナジウム

アマネ†ギムナジウム

不思議な粘土を手に入れた人形作家の宮方天音は、ギムナジウムをテーマに7体の球体関節人形を作った。その人形達は、天音が中学2年生の頃に妄想した「アマネギムナジウム」という世界において、命を持つ存在となる。そんな人形達や「アマネギムナジウム」の世界設定に振り回される天音の姿を描く、コメディ作品。球体関節人形の製作過程や、本当は人形でありながらも人間と同じく苦悩する少年達の姿なども丁寧に描かれる。「月刊モーニングtwo」2017年8月号から連載の作品。

正式名称
アマネ†ギムナジウム
ふりがな
あまね ぎむなじむ
作者
ジャンル
ギャグ・コメディ
レーベル
モーニング KC(講談社)
巻数
既刊7巻
関連商品
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あらすじ

第1巻

人形作家の宮方天音は、彼氏どころか親しい友達もおらず、祖父が残した築80年の一軒家で一人暮らしをしていた。生計を立てるために昼間は派遣社員として勤務しているが、周りからはコミュニケーションが取れない宇宙人扱いされる日々を送っていた。しかし、笹井涼介だけは唯一、気さくに声を掛けてくれる。そんな中、天音は次のグループ展のため、球体関節人形造りの腕が上がったら実現しようと心に決めていた「ギムナジウム」をテーマにした人形制作を決意。いつものように西園寺徳一が営む文具店「画材ニコニコ堂」を訪れると、閉店を告げられると同時に、50年前の粘土を託される。天音は自身が中学2年生の頃に設定した「アマネギムナジウム」の資料ノートを参考に、7体の球体関節人形造りを開始。体調を崩しつつも見事に人形を造り上げ、グループ展は好評を得る。自宅へ戻った天音が、徳一の言っていた「作った人形にキスをすると光輝く」という言葉をふと思い出し、「アマネギムナジウム」の人形達にキスをしてみると、それぞれが意志を持ち、まるで生きているかのように動き出す。中学生の頃に妄想した設定通りに動くフィリクス・シュルツらに感動し、フィリクスらを自由にのびのびと生活させたいと考えた天音は、自身が住む一軒家の内部に「アマネギムナジウム」を製作。完成後、天音は礼拝堂で余った粘土で製作した十字架にキスをすると、天音が設定を考えた仮想世界に入り込んでしまう。

第2巻

アマネギムナジウム」の中では、宮方天音が設定した通りにフィリクス・シュルツらが行動する。天音はたびたび礼拝堂で十字架にキスをしては、「アマネギムナジウム」を堪能する充実した日々を過ごしていた。そんな中、ゼップ・ジングフューゲルが自室に飾っていた家族写真が破られる事件が起る。素行の悪いヨハン・ベルクが犯人として挙げられ、実際にヨハンも自分がやったと自白する。しかし、実際は両親が離婚の危機にあるフィリクスが衝動的に破ってしまった事を、ゼップの前で自身が告白した。どんな時でも優等生を演じているフィリクスの心の闇に気づいているヨハンは、もっと自分を偽らずに過ごすべきだと訴え、これまで負の感情を抑えていたフィリクスは涙し、二人は雨の中で寄りそって抱き合う。その姿を目撃したテオ・アプフェルは、フィリクスを奪われると、ヨハンに嫉妬。テオはヨハンに好意を抱くゼップに対し、薬品を使って眠らせて自分のものにしてしまえとけしかける。テオから呼び出されたフィリクスは、ゼップに眠らされたヨハンがキスをしている場面を目撃し、ショックを受ける。さらにテオから「ヨハンはアマネギムナジウム内でたくさんの男と関係を持っている」と虚偽の内容を語り、フィリクスを騙す。しかし、テオの画策はすぐに明るみになり、フィリクスはテオを平手打ちにする。テオは、天音が来てから学校内がおかしくなったと、天音を疫病神扱いする。

登場人物・キャラクター

宮方 天音 (みやかた あまね)

昼間は派遣社員として働く人形作家の女性。年齢は27歳。祖父が残した風呂もない築80年の一軒家に住んでおり、家は東京都江東区門前仲町にある。母親に家賃として月7万円を支払っている。彼氏いない歴は27年で、男性はもちろん同性の友達もほとんどおらず、他人と接する事を苦手としている。普段は無口であるもののオタク気質が強く、自分が好きな分野の話題になると、一方的にまくし立てて話してしまう癖がある。 球体関節人形の製作技術に長けている。愛好家達のあいだでは名の知れた存在で、グループ展を開催するほどの腕前の持ち主。中学2年生の頃に「アマネギムナジウム」の設定ノートを製作し、大切にしていた。西園寺徳一の影響を受け、球体関節人形の製作をはじめた頃に、自らの技術が上がったら「アマネギムナジウム」を作ろうと心に決めていた。 「アマネギムナジウム」では理事長の孫として振る舞う。給与のほとんどを球体関節人形の製作につぎ込んでしまうため、まともな食事を摂れず、160センチで46キロのスリムな体型をしている。

フィリクス・シュルツ (ふぃりくすしゅるつ)

「アマネギムナジウム」に在籍する少年。クラスのリーダー的存在。年齢は15歳。身長は155センチ。テオ・アプフェルの親友。聡明で統率力もあり、自然と周りに人が集まってくるタイプ。ただし本人は普通に振る舞っているだけで、優等生を気取っているつもりはない。ヨハン・ベルクとは同じ街の出身で、幼い頃から仲がよかったが、いっしょに遊んでいる時にキスをしてしまい、それ以降関係がギクシャクしている。 「アマネギムナジウム」に入学してからはヨハンに冷たく当たられているが、その一方でヨハンに対しては友情とも恋愛感情とも取れない複雑な感情を抱いている。父親に好きな人ができたため、両親は離婚の危機に直面しており、一人で深く悩んでいる。宮方天音の基本設定では「いい子」となっている。

ヨハン・ベルク (よはんべるく)

「アマネギムナジウム」に在籍する少年。年齢は14歳。身長は154センチ。普段は少年として振る舞っているが、両性具有。容姿端麗だが、美しい外見とは裏腹に口が非常に悪く、宮方天音に対しても「ブス」などと辛辣な言葉を浴びせる。フィリクス・シュルツとは同じ街の出身で、幼い頃から仲がよかった。しかし、いっしょに遊んでいる時にキスをしてしまい、以降関係がギクシャクしている。 「アマネギムナジウム」に入学してからは、どんな時でも優等生として振る舞うフィリクスに対して苛立ちを覚えている反面、好意を抱いているために放っておけない。天音の基本設定では「とびきりの美人」となっている。

テオ・アプフェル (ておあぷふぇる)

「アマネギムナジウム」に在籍する少年。年齢は14歳。身長は149センチ。フィリクス・シュルツの親友。かわいらしい容姿をしており、甘え上手。基本的に穏やかな性格をしているものの、フィリクスが絡むと攻撃的な一面をのぞかせる。実際にフィリクスを独占したい気持ちから、ゼップ・ジングフューゲルのヨハン・ベルクへの恋心を利用し、騒動を起こした。 宮方天音の基本設定では「子犬みたいにキュート」となっている。

ゼップ・ジングフューゲル (ぜっぷじんぐふゅーげる)

「アマネギムナジウム」に在籍する少年。年齢は15歳。身長は164センチ。「アマネギムナジウム」の中では一番背が高く、喧嘩っ早い短気な性格の持ち主。勉強や運動をはじめ何でも一番になりたい気持ちが強いが、フィリクス・シュルツには勝てずにいる。ヨハン・ベルクが両性具有である事にいち早く気づき、以降恋心を寄せていた。 しかし、その恋心をテオ・アプフェルに利用され、ヨハンから軽蔑されてしまう。宮方天音の基本設定では「背が高くて浅黒くて素敵な子」となっている。

ダミアン・ベーゼンマン (だみあんべーぜんまん)

「アマネギムナジウム」に在籍する少年。年齢は14歳。身長は154センチ。ゼップ・ジングフューゲルの子分的な存在。宮方天音の基本設定では「意地悪だけど根はいい子」となっている。

オットー・グーテンゾーン (おっとーぐーてんぞーん)

「アマネギムナジウム」に在籍する少年。年齢は14歳。身長は153センチ。眼鏡をかけた優等生で、頭がよく、新しいものにも積極的に挑戦していくタイプ。歩きながら考え事をする癖があり、頻繁に物にぶつかっている。宮方天音の基本設定では「賢くて好奇心旺盛な君」となっている。

エルマー・クーヒェン (えるまーくーひぇん)

「アマネギムナジウム」に在籍する少年。年齢は14歳。身長は150センチ。目には見えないものを感じ取る事ができる。基本的に無口で、思い浮かんだ事だけを端的に口にするため、テオ・アプフェルら周りからは「ちょっといっちゃってる子」と評されている。「アマネギムナジウム」は本当はドイツにない事はもちろん、宮方天音が「アマネギムナジウム」の世界の人間ではない事、そして本当は自分達は人形である事も感じ取っている様子を見せる。 天音の基本設定では「色々見えちゃう不思議っ子」となっている。

笹井 涼介 (ささい りょうすけ)

宮方天音と同じ会社に正社員として勤務している男性。天音と同じく東京都江東区門前仲町に住んでいる。彼女いない歴3年。コミュニケーション能力に長けており、人を寄せ付けない雰囲気の天音に対しても気さくに声を掛ける。天音が球体関節人形を製作している事も否定せず、「おもしろい人だ」と興味を抱いている。天音が自身の住居内に「アマネギムナジウム」を製作する際、一時的にフィリクス・シュルツ達を自宅で預かった時にも深く理由を追及しなかった。

西園寺 徳一 (さいおんじ とくいち)

文具店「画材ニコニコ堂」を経営する78歳の男性で人形作家。宮方天音とは10年程度の付き合いがあり、「徳ちゃん」と呼ばれている。天音が球体関節人形の製作を始めたのも西園寺徳一の作品を見た事がきっかけで、天音に造り方も教えた師匠的な存在。そのため天音とは非常に仲がよく、球体関節人形の製作に必要な道具を値引きしたり、ツケ払いにしたりと優遇していた。 高齢になった事や、妻に先立たれた事情が重なり、息子夫婦のもとで世話になるため、「画材ニコニコ堂」の閉店を決意した。最後に自身が扱いきれずに持て余していた50年前の土を天音に託す。その際にこの土で作った人形は、できあがったあとにキスをすると光ると教えたが、天音からはボケが始まったのかと相手にされなかった。

場所

アマネギムナジウム

宮方天音が中学2年生の頃に設定を考えた架空の「ギムナジウム」。フィリクス・シュルツ、ヨハン・ベルク、テオ・アプフェル、ゼップ・ジングフューゲル、ダミアン・ベーゼンマン、オットー・グーテンゾーン、エルマー・クーヒェンが在籍している。下調べもなく、あくまで中学生時代の天音の妄想世界の「ギムナジウム」のため、設定が甘かったり、妙に複雑だったりする。 「アマネギムナジウム」はドイツのケルン郊外にあり、200年もの長い歴史を持つ。これまで多くの企業家や政治家を排出してきた名門校で、10歳から18歳までの全寮制の男子校。実際に天音の手によって築80年の住居の中に製作された。天音は礼拝堂で十字架にキスをする事で、天音が設定を考えた仮想世界の住人として入り込める。 フィリクスらの行動範囲は天音が口にした部分のみになり、「礼拝堂」といった場所も天音が指示した場所が彼らにとっての礼拝堂になる。天音が指示をすると、フィリクスらは忠実に守り、近くに天音がいない場合や他人が接近した際には、フィリクスらはただの球体関節人形に戻って動かなくなる。 天音が製作したのはフィリクスら7体の球体関節人形だけだが、フィリクスらの見ている世界ではほかの生徒や教師も存在しており、みんな自分達が普通の人間だと思っている。

その他キーワード

十字架 (じゅうじか)

宮方天音が西園寺徳一から託され、フィリクス・シュルツら7体の球体関節人形を製作した粘土のあまりで製作したネックレス。「アマネギムナジウム」の設定ノートに描かれていた十字架がモチーフ。十字架を身につけている時のみ、フィリクスらから天音が認識でき、その際にはフィリクスらからは同じサイズの人間に見える。 フィリクスらからは外していると見えなくなるが、エルマー・クーヒェンだけは口にはしないものの、見えている素振りをしている。「アマネギムナジウム」の礼拝堂で十字架にキスをするとフィリクスらと同じサイズになり、天音が設定を考えた仮想世界の住人として入り込む事が可能。

ギムナジウム

ヨーロッパ地方にある教育機関。各国によって就学年数が異なり、「アマネギムナジウム」の舞台になっているドイツでは、通常大学に進学する前の8~9年間在籍するが、宮方天音の設定により、「アマネギムナジウム」では10歳から18歳までの男子が学ぶ。「ギムナジウム」は度々小説や70年代頃の少女漫画の舞台になっており、耽美な世界観が描かれている。 天音にとってもあこがれの場所。

書誌情報

アマネ†ギムナジウム 7巻 講談社〈モーニング KC〉

第1巻

(2017-04-21発行、 978-4063887259)

第4巻

(2018-12-21発行、 978-4065140543)

第5巻

(2019-07-23発行、 978-4065161173)

第6巻

(2020-03-23発行、 978-4065189436)

第7巻

(2020-09-23発行、 978-4065207109)

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