あらすじ
仕事も家も失った八重と幼なじみの匠の再会
千堂八重は派遣社員として勤務し、東京都内で友達とルームシェアをして平凡な生活を送っていた。しかしある日、経営不振から派遣の契約を切られてしまい、さらに突然友達が結婚することになり、八重は仕事と家を同時に失ってしまう。貯金もなく途方に暮れる八重の前に、同郷で時折行われる飲み会でも顔見知りの夏目匠が現れる。仕事も家もなくなったと落ち込む八重に対して、匠は自らの「偽物の妻」になるように強引に話を進める。優秀な一級建築士にしてルックスもいいことから、仕事にも支障をきたすほどに女性にモテていた匠は、八重に入籍しないまま妻を演じてもらい、その代わりに住居も生活費も提供することを提案する。ほかに選択肢のない八重は就職活動をしながら、匠の「偽物の妻」としてセレブな生活をスタートさせる。契約はあくまで「偽物の妻」であるはずだったが、匠は八重に対して煽情的な言動を繰り返すようになり、八重は匠を一人の男性として意識するようになっていく。
「偽物の妻」ながらも匠に心惹かれていく八重
千堂八重は就職活動を続けていたが、なかなかいい結果が出ていなかった。そんな中、八重は突然夏目匠から、国内にあるリゾート地への呼び出しを受ける。そこにはグランピング施設があり、匠の意見が聞きたいと、クライアントから招待されていたのだ。八重が必死に「偽物の妻」を演じるが、匠のファンの女性関係者から悪態をつかれてしまう。その姿を見た匠は八重を初恋の女性だと紹介し、八重は思ってもいない言葉に動揺する。その後もなかなか本心を見せず、煽情的な言動を繰り返す匠に対して、八重は思わず胸を高ならせてしまう。そんなある日、匠は知り合いの進藤将輝を自宅に招く。遊び人の進藤は匠が席を外したスキに、八重に自分の不倫相手にならないかと誘惑する。
八重と匠の初めての旅行
夏目匠は仕事のためにシンガポールに行くことになり、千堂八重にも同行するように告げる。半ば強引に連れて行かれた八重は現地でも「偽物の妻」を演じることになり、以前から匠を狙っていた社長令嬢の二木谷レミからは激しい嫌がらせを受ける。落ち込む八重を匠はフォローし、観光地やショッピングに誘い出す。これまでいっしょに生活はしていたものの、デートをしたことのなかった八重は新鮮に感じ、二人きりの時間を大いに楽しむ。そんな中、匠は幼い頃から八重が好きだったと思い出話を始める。
元カレと再会する八重
千堂八重はシンガポールから日本に戻ってすぐに、大学時代の友達の結婚パーティーに参加する。そこで八重は、大学時代に半年間だけ交際していた河合恭平と再会する。お互い嫌いになったわけではなく、事情があって別れたこともあり、八重は恭平に懐かしさを覚える。一方の恭平は八重にもう一度交際しようと、積極的なアプローチを繰り返すようになる。そんな中、八重はかつての恭平がこんなに強引な人物だっただろうかと、彼の言動に違和感を覚え始める。その一方で、夏目匠は八重がほかの男性と親しくしていることに嫉妬心を募らせていく。
匠からのプロポーズ
元恋人の河合恭平との関係も落ち着き、千堂八重は夏目匠に恋心を募らせていた。そんな中、匠が権威ある建築賞を受賞し、その表彰式に八重は妻として出席することになる。登壇する匠の姿を見て八重はこれまで以上に胸が高鳴り、彼を一人の男性として好意を抱いていることを自覚する。しかし、進藤将輝から匠は結婚願望がないタイプだと聞き、八重自身はあくまで「偽物の妻」という立場であり、彼には結婚する気はないのだと落ち込む。報われない恋愛に落ち込む八重に対して、匠は偽ではなく本当に結婚しようと告白し、二人はそのまま初めて体の関係を持つ。
八重を巡る匠と淳
夏目匠は会社員時代にお世話になった先輩の新田淳に、千堂八重との結婚を報告する。これまで一人の女性と深く交際することのなかった匠が結婚したと知り、八重に興味を抱いた新田は、彼女にちょっかいを出す。八重はつかみどころがないが、誠実な人柄の淳のペースに次第に飲まれていく。そして、八重はいつの間にか新田の「偽物の恋人」と、匠の「偽物の妻」との二重生活を送ることになってしまう。その状況に嫉妬心を抱いた匠は、新田と話し合いの場を設ける。すると新田は匠に対して、八重は「偽物の妻」なのだからアプローチをしても問題ないだろうと挑発する。その話し合いの一部始終を、以前から匠に好意を抱き、結婚したことであきらめていた二木谷レミが偶然耳にしてしまう。まだ自分にもチャンスがあることを知ったレミは、八重に以前悪態をついたことを謝罪し、匠に対しては猛アプローチを開始する。
八重と匠の2度目の旅行
夏目匠は二木谷レミとの一件で千堂八重を不安にしたことを謝罪し、そのお詫びとしてドバイ旅行に誘う。ドバイで慣れないセレブリティ体験に戸惑いつつも、八重は匠との時間を大いに楽しむ。そして匠は、近隣にある国の第三皇子で、友達としても親しくしているアドゥルを八重に紹介する。アドゥルはさっそく八重に高価なプレゼントを送ろうとするが、彼女は自分の身の丈に合っていないと丁重に断る。その姿を見たアドゥルは「自分の周りにはいない謙虚な女性」だと好意を抱き、さらに日本人女性が好みであることから、八重を自分のものにしたい欲求が高まる。
合コンに出席する八重
ドバイ旅行から帰国し、千堂八重はりかからの依頼を受け、六本木にあるコーヒーチェーン店のヘルプスタッフとして働くことになる。どうしてもハイスペックな相手と結婚したいりかは、八重のコネを使って、新田淳の知り合いの男性たちと合コンを開催する約束を取りつける。そして当日、人数が足りないために、八重も合コンに参加することになってしまう。いつもならば嫉妬する夏目匠が快く送り出してくれたことに違和感を抱きつつも、八重が合コン会場に到着すると、相手の男性陣の中に匠がいることに気づく。
八重の結婚へのあこがれと突然の別れ
千堂八重は以前ルームシェアをしていた友達の結婚式に参加し、夏目匠との結婚へのあこがれを募らせる。そんな中、八重は突然匠から別れを切り出されてしまう。動揺する八重だったが、もともとの関係が「偽物の妻」なのだから、契約期間が終わっただけだと静かに受け入れる。失恋をして落ち込む八重の前に新田淳が現れ、匠を一方的に逆恨みしている堀尾という人物がいることを打ち明ける。堀尾は建築業界で匠が不正を働いていると事実と異なることをでっち上げ、その証拠も巧みに作り出し、匠を破産に追い込もうと画策していた。大きな騒ぎになる前に、自分との別れを告げたことを知った八重は、匠を追って彼が滞在するマルタ共和国へと向かう。
実写ドラマ
登場人物・キャラクター
千堂 八重 (せんどう やえ)
現在東京都内に住む石川県出身の女性。年齢は29歳。派遣社員として勤務していたが、突然会社から契約を打ち切られてしまう。さらにルームシェアをしていた友達の結婚が急に決まり、一人では家賃を支払えないことから家も失ってしまう。仕事と家が同時になくなって呆然としていた際に、幼なじみの夏目匠と久しぶりに再会し、女性からモテ過ぎて仕事に支障をきたしている彼の「偽物の妻」を演じることになる。匠が所持する高級タワーマンションの最上階での暮らしや、妻を演じることに戸惑いながらも、懸命に「偽物の妻」になるための努力を重ねている。また、匠からはたびたび煽情的な態度で誘惑されており、単なる幼なじみとしか思っていなかった彼に、心を乱されている。見た目も中身もふつうの女性だが、その飾り気のなさがセレブな男性には新鮮に映るらしく、好意を抱かれることが多い。料理も得意ながら、素朴な家庭料理しか作れないため、進藤将輝からは「最高の地味めし」と評されている。恋愛経験に乏しいため、匠の誘惑に対しても同年代の女性よりも初心な反応を見せる。
夏目 匠 (なつめ たくみ)
現在東京都内に住む石川県出身の男性。年齢は29歳。「夏目設計」を経営する一級建築士で、さまざまな有名建築物を手掛けている。千堂八重の幼なじみで、上京してからも仲間との飲み会を開いているため、特に親しくしているわけではないが、八重ともよく顔を合わせている。仕事も家も同時に失って行き場のない八重に、自らの「偽物の妻」になってほしいと依頼する。その理由は、女性から非常にモテるため、仕事に支障をきたし、妻がいれば言い寄られなくなると説明していたが、実際は八重が初恋の相手で、ずっと忘れられずにいたからだっだ。そしていっしょに生活していく中で、八重に煽情的な誘惑や、気のある素振りをしたりして、彼女の心を乱している。容姿端麗なクールな性格で、自分の欲望に忠実なタイプ。料理の腕はプロ級で、食材を購入するために遠方に出向くなど、こだわりが強い。八重からは「たっくん」と呼ばれている。
進藤 将輝 (しんどう まさき)
夏目匠の仕事関係の仲間で、新進気鋭の有名アーティストの男性。匠から妻だと紹介され、千堂八重と知り合う。八重が清楚な女子アナウンサー風のファッションで現れ、進藤将輝自身の好みだったことから匠の目を盗んで不倫関係にならないかと誘惑する。八重の素朴な家庭料理が好きで、「最高の地味めし」と絶賛している。イケメンながら、軟派な性格で軽薄そうに見える。ノリと勢いで行動しているところがあり、匠を困惑させることも多い。大の女好きで、二木谷レミとも親しくしている。八重が匠の「偽物の妻」になる契約をする前は、匠を餌に美女との飲み会を開催していた。匠のことを一人の人間として尊敬している。八重が匠の「偽物の妻」であることは知らない。
二木谷 レミ (にきたに れみ)
夏目匠のクライアントである資産家の一人娘。自らも一族が経営している「二木谷フォールディングス」の専務を務めている。匠がシンガポールで仕事をする際、千堂八重が同行したことで知り合う。匠に好意を寄せており、妻の八重に対してライバル意識を燃やしているため、八重に対して悪態をつくことが多い。ただし匠に対しては純粋な愛情ではなく、自分と結婚するのにふさわしい相手だからと、執着しているだけにすぎない。スタイル抜群の美女で、高飛車な性格をしている。匠が八重といっしょに暮らし始める前は、進藤将輝とその仲間たちと共に彼のマンションを訪れることも多かったため、部屋の間取りも知っている。
河合 恭平 (かわい きょうへい)
東京都内で会社員として勤務している男性で、年齢は30歳。かつて千堂八重と同じ大学に通い、先輩と後輩の間柄で、半年間だけ交際していた過去を持つ。八重が大学4年生の時に遠方に転勤となり、まだ彼女が大学生なことからついて来てほしいと言えずに、未練を残したまま別れを告げた。その後、知り合いの結婚パーティーで八重と再会し、もう一度交際したいとアプローチを開始する。誠実な性格で、早く結婚して家庭を持ちたいと焦っている。
新田 淳 (あらた じゅん)
イベント会社を経営している有名実業家の男性。年齢は36歳。夏目匠が会社員をしていた時の先輩で、元建築士でもある。匠から妻だと紹介された千堂八重に興味を抱き、ちょっかいを出すようになる。匠ほどではないが女性からモテるため、八重を自らの恋人だと紹介して女性関係を整理しようと考え、それからは「偽物の恋人」としてかかわるようになる。非常につかみどころのない性格の持ち主で、ミステリアスな雰囲気を漂わせている。表向きは優しく温厚なタイプに見えるが、腹黒い一面もある。また、物腰は柔らかいものの、言いたいことははっきりと主張する。現在は独身だが、かつて社長令嬢と政略結婚しており、関係は良好だったものの、お互いのビジネスのために離婚した過去がある。
堀尾 (ほりお)
建築士を生業にしている男性。かつて新田淳と夏目匠が勤務していた建築事務所に在籍していた。匠と同時に独立したものの経営がうまくいかず、起死回生を懸けたコンペティションで匠の会社に負け、そのまま倒産した過去を持つ。直接的な責任が匠にあるわけではないが、彼のせいで人生が破滅したと逆恨みをしている。匠が建築業界で不正を働いているとのウソの噂をでっち上げ、その疑惑を晴らす代わりに全財産を要求するなど、卑劣な手段で彼を破産に追い込もうとしている。
アドゥル
ドバイの近隣国の第三皇子の男性。年齢は30歳。以前、夏目匠が仕事でドバイを訪れた際に出会って意気投合し、以降友情を築いている。非常に裕福な一族に生まれ育っており、一夫多妻制のために妻が複数人いる。高価なプレゼントを贈っても受け取ろうとしない千堂八重に対し、自分の周りにはいない謙虚な女性だと好意を抱くようになり、強引に四人目の妻にしようと画策する。以前は「サエ」という名前の日本人女性に恋をしていた。
りか
チェーン店のカフェ「トキーズコーヒー」の六本木店で店長を務めている独身女性。以前は派遣社員として働いており、千堂八重と同じ職場になった縁で、以降親しくしている。店のスタッフが不足しているため、よく無職の八重にヘルプスタッフとして働いてもらっている。明るくノリのいい性格で、玉の輿に乗ることを夢見ている。六本木のカフェで働いているのも、ハイスペックな男性と出会えるのではないかという下心がある。八重が夏目匠の「偽物の妻」を演じており、私生活ではセレブな暮らしをしていることは知らず、自分と同じく男性に縁のない平凡な毎日を過ごしていると思っている。
田中 (たなか)
有名ハウスメーカーに勤務している男性。かつて千堂八重がモデルハウスの受付として派遣されてきたことで親しくなる。八重の契約期間が満了したことで疎遠になっていたものの、夏目匠が出席するパーティーで再会し、八重が匠の妻を演じているとは知らず、体の関係を持とうと誘惑する。仕事ぶりもまじめで、派遣社員にも優しかったことから、当時は八重から好意を抱かれていた。
書誌情報
ウソ婚 15巻 講談社〈講談社コミックス別冊フレンド〉
第1巻
(2019-04-12発行、 978-4065155035)
第2巻
(2019-07-12発行、 978-4065163450)
第3巻
(2019-10-11発行、 978-4065172681)
第4巻
(2020-03-13発行、 978-4065188873)
第5巻
(2020-07-13発行、 978-4065201541)
第6巻
(2020-11-13発行、 978-4065214008)
第7巻
(2021-04-13発行、 978-4065229576)
第8巻
(2021-08-12発行、 978-4065243916)
第9巻
(2021-11-12発行、 978-4065259214)
第10巻
(2022-07-13発行、 978-4065283899)
第11巻
(2022-11-11発行、 978-4065296882)
第12巻
(2023-04-13発行、 978-4065313022)
第13巻
(2023-08-10発行、 978-4065326503)
第14巻
(2024-02-13発行、 978-4065346044)
第15巻
(2024-11-13発行、 978-4065375914)