概要・あらすじ
古代エジプトのナイル川ほとりの村に、バステトという醜い顔の娘が住んでいた。バステトは古代の神の命を受けて、女王とその恋人の僧侶カクラテスを殺害する。バステトはその報酬として、美しい容姿と不老不死の生命を持った女王となって生まれ変わる。
時代は移り、現代日本で写真家として活躍する青年、加蔵春彦は海外の撮影旅行から帰国途中の機内で建設会社の社長夫人、武藤鳩子と運命的な出会いをする。日本に戻った春彦は、エジプトや世界各地で撮影した鷲の頭の形をした雲の写真が気になっていた。春彦の妹で女子高校生の加蔵真理が級友にその話をしたところ、級友の父親が同じ鷲の頭の形をした山の写真をアフリカで撮影したことがあったと判明する。春彦と真理は何かに導かれるように、この鷲の頭の形をした山を目指してアフリカへと旅立つ。
アフリカに到着した春彦は鷲の頭の形をした山を目指すが、そこは現地の人々でさえ近づきたがらない難所であった。案内人の老人にも断られかけたが、同行を名乗り出た人夫の男たちとともに奥地へと向かうことになった。巨大なワニの襲撃や熱病を媒介する蚊の大群などに悩まされながら国の入り口に辿りついた春彦たちは、女王の命によって出迎えに来た女兵士たちとそのリーダー、スティンと出会う。
スティンは春彦に一目惚れして、一方的に婚約者になろうとする。ところが春彦はそれを妬んだ他の女兵士たちによって底なし沼に落とされ、死にそうになってしまう。そして春彦は苦難の旅の末にたどり着いた鷲の頭の国で、古代そのままの生活をしている神秘的な美しい女王に出会う。
一方、春彦と知り合った鳩子は夫である武藤社長に春彦との仲を疑われたことをきっかけに離婚を決意、春彦の後を追ってアフリカへと向かう。そこで鷲の頭の国から逃げ出してきたアダシャや、一攫千金を狙うファクトンとその上司のダビとともに鷲の頭の国を目指す。
登場人物・キャラクター
バステト
鷲の頭の国に君臨する永遠の生命を持つ女王。過去や未来を見ることができ、動物や気候でさえも自在に操るなど数々の超能力を持った美貌の女性。自分の命令に逆らう者は容赦なく残忍な刑罰を与えるという独裁者でもある。
加蔵 春彦 (かくら はるひこ)
東京で父母妹の4人家族で暮す独身青年。「加蔵風子」の名で活動するカメラマンで、世界各地で撮影した風景写真を雑誌に発表している。不可思議な霊感に導かれてアフリカの鷲の頭の国を訪れ、時空を超えた神秘的な体験をする。
カクラテス
古代エジプトで女王に仕え宮殿に住む青年僧侶。美男であるがゆえに僧としての禁制を破り、女王と相思相愛の仲となってしまう。女色におぼれたことで神々の怒りに触れ、バステトによって殺害される。
加蔵 真理 (かくら まり)
東京に住む女子高校生で、活発な性格の美少女。加蔵春彦の妹であり、春彦が撮影した写真を同級生に見せて自慢するほど兄を尊敬している。春彦がアフリカに旅立つ際には、家族の反対を押し切って兄に付いて行くほどの行動力を持つ。
武藤 鳩子 (むとう はとこ)
東京の高級マンションに暮らす美しい若妻。夫である武藤社長との結婚は失敗だったと後悔しており、離婚に踏み切るか否かを思い悩んでいた。国際線旅客機の機内で加蔵春彦と運命的な出会いを果たし、その後、夫と離婚をして、春彦の後を追ってアフリカへと向かう。
武藤社長 (むとうしゃちょう)
武藤鳩子の夫で建設会社の社長。資産家である鳩子の実家の支援によって会社経営者となったが、毎晩飲み歩き夜遊びにふける自堕落な性格で、鳩子からは愛想を尽かされている。目的のためには部下に命じて暴力も振るう卑劣な男。
人夫の男 (にんぷのおとこ)
アフリカの奥地で、鷲の頭の国を目指す加蔵春彦のために、荷物運びとカヌーの漕ぎ手を買って出た男性。よこしまな目的を持った強欲な性格の正体不明の人物で、目的地に到着した直後に異常な事態に巻き込まれることとなる。
案内人の老人 (あんないにんのろうじん)
アフリカの酒場で毎日仲間とたむろしている地元の老人。土地に伝わる不気味な伝説に詳しく、加蔵春彦から鷲の頭の国への道案内を依頼される。一度は断るものの、行く先の危険を忠告しつつ、沼の入り口まで道案内をする。
スティン
鷲の頭の国に住む女兵士のリーダー。女王の命により加蔵兄妹を迎えに来た際、加蔵春彦に一目惚れし、国の風習に従って一方的に彼との結婚を宣言する。女王に対しても、自分の意思を堂々と主張する芯の強い性格の美女。
アダシャ
鷲の頭の国でひっそりと暮らす男たちのリーダー的存在の青年。アダシャと仲間の男性たちを種馬のように見下している女王に強い恨みを抱いており、新天地を求めて鷲の頭の国を脱出したが仲間をほとんど殺された上に重症を負い、女王に対し復讐を誓う。太鼓の音で仲間を呼び寄せる特技を持っている。
ダビ
アフリカに住む、暗黒街の親分格の男性。多くの手下たちを意のままに操り、儲け話につながる情報収集のためのネットワークを駆使する。鷲の頭の国にある財宝に目をつけて、アダシャを道案内にファクトンや武藤鳩子たちとともに鷲の頭の国を目指して旅をする。
ファクトン
アフリカの密林地帯で砂金掘りをしている中年男性で、ダビの従順な手下。カヌーで川岸に流れ着いた瀕死状態のアダシャから鷲の頭の国の秘密を聞き、彼を道案内にダビや武藤鳩子たちとともに鷲の頭の国を目指して旅をする。
場所
鷲の頭の国 (わしのあたまのくに)
アフリカの密林地帯の奥地にある黄金の国。古代エジプトによく似た文明を持つ、女性中心の国家。頂上が鷲の頭の形をした山の麓にあり、絶対的権力を持った不老不死の女王バステトが支配している。周辺には人喰いワニが生息する広大な底なし沼と熱病を媒介する蚊の大群が行く手を阻み、誰も近づくことができないという伝説がある。