あらすじ
第1巻
正しい事をやるのがモットーの非営利団体「D・R・T」を運営するDr.皇とTAKO介は、渋谷で政治家を襲撃した直後、ホームレス風の男性のマルクスに抱きつかれ、気がつくと真実の楽園と呼ばれるクリームソーダシティに立っていた。クリームソーダシティの関係者たちに丁重に迎え入れられた二人だったが、この楽園での行動によってはもといた場所へ「陥落」するケースもあるという。皇とTAKO介には、かつて有名音楽プロデューサーの小室のプロデュースで華々しくデビューしたが、予期せぬ苦汁をなめさせられ、芸能界を引退したという過去があった。その件で相当なダメージを負った皇は、クリームソーダシティに思いの外溶け込んでいたが、一方のTAKO介はとまどいを隠せなかった。そんな中、クリームソーダシティに新たな来客として中国人女性のチャン・メイが降り立つ。
第2巻
クリームソーダシティから、東京へと「陥落」したDr.皇とTAKO介は、非営利団体「D・R・T」の活動に再び専念するようになる。そして、ある時は女性を助けようとして大ケガを負ったり、またある時は昔の熱狂的なファンから復活ライブをせがまれたりと、多忙な日々を送っていた。そんな中、内閣総理大臣に指名された小瀬は、ある謎の組織から半ば暴力的に、この世に隠された秘密であるクリームソーダシティについてのレクチャーを受けさせられる。その頃、皇の特異な存在感を恐れた警察は、皇とTAKO介を拘留していた。皇の不思議な能力を開花させて脱獄に成功するが、皇とTAKO介は過酷な現実に追い詰められていき、ホームレスへと転落してしまう。打ちひしがれた皇は、クリームソーダシティへ戻ろうと、ビルの屋上から飛び降りる。
登場人物・キャラクター
Dr.皇 (どくたーこう)
非営利団体「D・R・T」を運営するロングヘアのイケメン男性。「シャイラ」というのが口癖で、一人称は「予」。有名音楽プロデューサーである小室の秘蔵っ子で、シンセサイザーの腕は埼玉エリアNo.1とのお墨付きを得ている。TAKO介と組んだユニット「D・R・T」でデビューするが、おかしな方向にプロデュースされてしまい、惨憺(さんたん)たる結果に終わる。その後、精神を病んでレコード会社をクビになり、芸能界を引退して非営利団体「D・R・T」を立ち上げた。渋谷で演説していた政治家の牛川しげるに最悪のバッドノイズを感じ、銃撃した直後にマルクスに抱きつかれ、クリームソーダシティに降り立った。ふだんから理想郷の入り口を探しているようなところがあり、クリームソーダシティでの生活にはすぐになじんだ。TAKO介と共に東京に「陥落」してしまうが、絶望的な日常の中、不思議な能力を開花させていき、クリームソーダシティに戻るべく、ビルの屋上から飛び降りた。TAKO介からは「センパイ」と呼ばれている。
TAKO介 (たこすけ)
非営利団体「D・R・T」に所属する若い男性。ウエービーな短髪で、額にヘアバンドを巻いている。眉毛が太く目が大きい。有名音楽プロデューサーの小室の音楽スタジオでDr.皇と出会った瞬間、その圧倒的な存在感に魅了され、どこまでもついて行くと心に決めた。ユニット「D・R・T」としてデビューするが、惨憺(さんたん)たる結果に終わってしまう。常人の域を超えた皇を尊敬してやまないが、時折、ただのパッパラパーなのではないかと疑う事もある。渋谷で演説していた政治家の牛川しげるを銃撃し、クリームソーダシティに降り立つが、非現実的な楽園に圧倒されてしまい、日本にミサイルが撃ち込まれる悪夢を見るなど、精神的に不安定になる。皇ほど東京が嫌いではなく、クリームソーダシティから「陥落」する事をそれほど恐れていない。皇といっしょなら、ずっとここにいたいと思った矢先、あとからクリームソーダシティにやって来たチャン・メイと皇のキス・シーンを目撃。ほどなくして、東京に「陥落」したが、クリームソーダシティでの記憶はなくしている。
チャン・メイ
上海の銀行でOLをしていた若い女性。姫カットのロングヘアの美人。非常に気性が荒く、仕事中にイライラした結果、中華人民共和国のすべてに嫌気がさし、金庫の紙幣に火をつけた。その際、止めようとした上司を金庫に閉じ込めて殺害。会社の外に出たところで、走ってきたマルクスに抱きつかれ、クリームソーダシティのシャチの体の中に転移する。その後、助けてくれたDr.皇とキスしているところをTAKO介に目撃される。
謎の美少女 (なぞのびしょうじょ)
羽衣のような布を身にまとったボブヘアの美少女。クリームソーダシティでは、TAKO介を遠くから見守り、いずれ彼がこの街と自分のトリコになると謎の笑みを浮かべていた。東京へ「陥落」したTAKO介の前にも現れるなど、彼を導くかのように至るところに現れる。
牛川 しげる (うしかわ しげる)
自共党の議員を務める中年男性。自称「政界のジャン・バルジャン」で、自分の事を「うっしー」と言い、「こんにちうっしー、また来てポテト」が口癖。街頭演説をしている際、通りがかったDr.皇が「政治家はなぜ示し合わせたように顔が汚いのか」との疑問を抱いた事がきっかけとなり、皇とTAKO介に銃殺される。
マルクス
クリームソーダシティの7代目司祭。太ったホームレス風の高齢男性で、口ヒゲと顎ヒゲを長く伸ばしており、サンタクロースのような風貌をしている。政治家の牛川しげるを銃殺したDr.皇とTAKO介に抱きつき、クリームソーダシティに導いた。ある日、人生には何か隠された仕組みがあると気づき、『資本論』という本を書いて人類相手に一杯食わしてやった事で、クリームソーダシティに来たとTAKO介に語っている。皇とチャン・メイのキス・シーンを目撃したTAKO介に抱きつき、東京へ「陥落」させた。
ロッキー
クリームソーダシティに来た新しい住人を迎える中年男性。マルクスホテルのフロント係を務めている。肩までのチリチリのパーマヘアで、口ヒゲを生やしている。Dr.皇とTAKO介相手にクリームソーダシティについての説明を行い、マルクスホテルに迎え入れた。
キャサリン
ウエービーなロングヘアをした若い女性。花冠をかぶっている。ロッキーと共に、クリームソーダシティに来た新しい住人を迎える役割を果たしている。怯えた様子のDr.皇とTAKO介相手に、クリームソーダシティはまるで最高のセックスのような場所だと説明した。
キャンディ・ポーキー
クリームソーダシティの住人。ボブヘアに猫耳をつけた若い女性で、左頰にホクロがある。ポーキーの妻。TAKO介をテンション高く歓迎し、意味ありげな行動を取る。
ポーキー
クリームソーダシティの住人。船員帽をかぶった筋肉質の男性で、口ヒゲを生やしており、黒い肌を持つ。キャンディ・ポーキーのほかに80人の妻がおり、100年以上快楽的な毎日を送っている。ニュージャージーのアナキストだった頃、イタリアの国王を撃ち、クリームソーダシティに来たとTAKO介に語ったが、調子づいて口にすれば元の地に「陥落」してしまうNGワードを口走りそうになった。
ナオキ
アナリストを名乗る男性。七三分けのヘアスタイルで、大きな蝶ネクタイを付けている。目がぱっちりしており、まつ毛が長く、頰骨が出っ張っている。輪っかのあるストローを人生にたとえ、真っすぐの部分が「現実」で輪っかの部分が「夢」、そしてその輪っかの穴の部分の向こう側にクリームソーダシティがあると解説した。
ヒナ
J-POPユニット「D・R・T」の熱狂的なファン。ガーリーなファッションに身を包んだ巨漢の若い女性。ウエービーなロングヘアに花のヘアアクセサリーを付けている。帰宅した際、ヒナの母から水回りのトラブルの助けを求められたDr.皇とTAKO介を見て、狂喜に震える。自分にとっては神同然の二人をもてなすも、TAKO介が自分の巨乳を視姦していたと言い出し、謝罪の代わりに復活ライブをやってほしいとねだった。
ヒナの母 (ひなのはは)
非営利団体「D・R・T」に助けを求めた主婦。ワンレングスのショートヘアをしている。トイレのつまりを直してもらい、ステッカー購入代金として「お心添え」を要求され、Dr.皇とTAKO介に不信感を抱いた時に、娘のヒナが帰宅。皇とTAKO介の素性を知る事になる。空気が読めず、本音しか言えない性格だとヒナから評されており、ヒナから「マンマミーヤ」と呼ばれている。
小瀬 (こせ)
第97代内閣総理大臣となった初老の男性。自共党に所属している。左サイドを刈り上げたオールバックヘアで、実はカツラをかぶっている。黒縁の大きな眼鏡をかけ、左顎にホクロがある。戦後最も背の低い総理大臣としてお茶の間で人気を博し、所信表明では「原発ちょっぴり好きくないかもしれない路線」を強力に進めていくと語った。人間的に薄っぺらく、幼児性が強い性格をしている。総理大臣就任直後、謎の組織のエドワーズたちからクリームソーダシティの真実についてレクチャーを受けるが、ふまじめな態度がエドワーズの逆鱗に触れ、首相という名の奴隷という立場を思い知らされる。エドワーズからは徹底的にバカにされており、「ウンコ」と呼ばれている。銃撃された牛川しげるとは派閥も同じで、よくフィリピンパブに行った仲。
佐伯 真魚 (さえき まお)
謎の組織のセンター長を務める中年女性。ショートボブヘアでゴーグルのようなサングラスをかけている。時の指導者が経験する通過儀礼として、総理大臣の小瀬にクリームソーダシティの真実についてのレクチャーを受けるように要請した。
エドワーズ
謎の組織に従事する白人男性。耳が隠れるほどの長さの髪を七三分けにし、口ヒゲを生やしている。昔はレスリングのグレコローマンで鳴らした肉体派。内閣総理大臣に就任した小瀬に対して、ジョークまじりだが、徹底的にバカにした態度を取る。小瀬のあまりのバカさ加減に辟易し、首相という名の奴隷だという事をわからせるべく、銃で脅した。同じ組織の白人女性からは「エディ」と呼ばれている。
白人女性 (はくじんじょせい)
謎の組織に従事するグラマーな白人女性。ウエービーなロングヘアをしている。指導者が経験する通過儀礼として、小瀬総理大臣にセッションを施し、クリームソーダシティを体験させた。そのせいで、小瀬は国会前を半裸で暴れ回っているところを取り押さえられる事態となった。
刑事 (けいじ)
パンチパーマの刑事で、ニキビ面の中年男性。Dr.皇の国会前での演説を聞き、何かやらかすと直感したため、皇とTAKO介を拘留した。今でも1995年3月20日に起きた事件の悪夢に怯えており、その事件の主謀者と同じニオイを、皇たちから感じ取ったため、震えが止まらなくなる。夜間に皇たちに差し入れを持ってきた際、摩訶不思議な皇の脱獄を目撃してしまう。酔うと自分の事を「エンジェル」と言う。
大家 (おおや)
非営利団体「D・R・T」に部屋を貸している大家の中年女性。ショートヘアで、派手なフレームの眼鏡をかけている。ジローという用心棒を引き連れ、家賃を一年分滞納しているDr.皇とTAKO介の部屋を訪れた。
ジロー
黒い肌をした中年男性。リーゼント風のパーマヘアで、口ヒゲを生やしている。大家が非営利団体「D・R・T」に強制的に家賃を払わせようと連れてきた用心棒で、関西弁で話す。ボクシングを嗜んでおり、Dr.皇とTAKO介をボコボコにし、彼らを追い出した。
集団・組織
D・R・T (どぅーざらいとしんぐ)
原宿系のスーパーユニット。J-POP界狂乱の2000年代初頭、有名音楽プロデューサーの小室率いる小室ファミリーの「大政」「小政」と謳われた伝説の二人組で、Dr.皇の絢爛なシンセサイザーサウンドに、TAKO介のシャカリキ系喘ぎ声ラップが特徴。「ポーカーフェイスコミュニケーション」でデビューしたが、会社が皇とTAKO介に内緒で、シンセサイザーの間奏部にサウスこうせつの「語り」をオーバーダビングしたため、オリコン最高69位と惨憺(さんたん)たる結果に終わる。セカンドシングル「大政小政ディスティニー」も振るわず、芸能界を引退。現在は非営利団体「D・R・T」として、「正しい事をやろう」と、街にあふれるバッドノイズ(恐喝、売春、窃盗、詐欺、車上狙い、キャッチバーなど)を排除する活動をしている。クリームソーダシティから「陥落」して金銭的に困窮していた際には、水回りのトラブルにも対応し、ステッカーの購入代金として「お心添え」を要求している。
場所
クリームソーダシティ
栄光ある使命を成し遂げた人間が行く事ができる真実の楽園。エメラルドグリーンの空に満天の星と、すべてが爽やかな南の島のような場所で、7代目司祭を務めるのがマルクスである。政治家の牛川しげるを銃殺したDr.皇とTAKO介が、マルクスに導かれ、この地に降り立った。苦しみも悲しみもいっさいない、人生という神秘に隠された秘密の場所だが、楽園に来た人間の行動によってはもとの地に「陥落」するケースもある。マルクスによると、人間には抜け道があり、そこを抜けるとクリームソーダシティに来られるという。皇とTAKO介の場合は政治的暗殺が抜け道であり、マルクスは噓八百の『資本論』を書き、全世界を騙した事である。TAKO介が「陥落」して東京に戻った際には、クリームソーダシティの記憶をなくしていたが、皇がクリームソーダシティに戻ろうとビルの屋上から飛び降りた際、記憶を取り戻した。