グリンゴ

グリンゴ

商社マン日本人(ひもとひとし)は、南米リド共和国に赴任早々、派閥争いの余波で政情不安定なサンタルナ共和国へと左遷される。「グリンゴ」(よそ者)として排斥されながらも持ち前のモーレツ社員ぶりで困難を乗り切っていく日本人。幕末から沖縄返還まで、日本の近代史を書き続けてきた手塚治虫が、日本人とは何かを問う作品。最後は作者の病床で描かれ、未完に終わっている。

正式名称
グリンゴ
ふりがな
ぐりんご
作者
ジャンル
サラリーマン
レーベル
手塚治虫文庫全集(講談社コミッククリエイト)
巻数
既刊2巻
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概要・あらすじ

江戸商事カニヴァリア支店長として赴任した日本人(ひもとひとし)は、赴任早々、派閥争いの余波で政情不安定なサンタルナ共和国へ左遷される。政府軍とゲリラが戦いを繰り広げる国で、レアメタルの鉱脈を見つけ出し、廃坑を支配するゲリラと取引を成立させて市場を開拓する。軌道に乗ったかに見えた新天地だが、アメリカの支援を受けた政府軍はゲリラを一掃し、取引相手の日本人も妻子とともにジャングルを逃走する羽目になる。

命がけの逃亡の末に、戦時中の日本そのままの集落にたどり着くのだが、それは、日本が太平洋戦争で勝ったと信じ込み外界との接触を絶った村であった。

登場人物・キャラクター

日本 人 (ひもと ひとし)

35歳にして江戸商事カニヴァリア支店長として赴任。草相撲が盛んな茨城県杉生町にうまれ、負け知らずの横綱であったが相撲部屋の審査を受けるも身長が足りずに不合格。江戸商事の藪下専務に拾われ、異例の出世を遂げる。藪下が派閥争いにやぶれると日本人も政情不安定なサンタルナ共和国へ左遷される。 身長が低いため、外国人から「トム・タム(親指トム)」と呼ばれる。相撲中継がはじまると興奮を抑えられない。

エレン

日本人(ひもとひとし)の妻。フランス人であるが、日本国籍を持ち、日本人以上に日本文化に詳しく、お茶を点(た)てたり、羊羹を作ったりできる。献身的に夫を助ける。日本人との間にルネという娘を設ける。

熊谷 (くまがい)

江戸商事カニヴァリア支社副支社長。策謀家で、日本人(ひもとひとし)とその家族を襲わせ、ゴンザロ・アルバレスの土地の権利書を手に入れる。

鬼外 (おにがそと)

江戸商事エセカルタ支社の社員だが、70年代過激分子としてテロ事件を起こし日本を逃げ出す。サンタルナ共和国政府軍と戦う革命軍に加わり、リーダーのホセ・ガルチアとともに戦った元ゲリラ。ホセ・ガルチアと日本人の女戸隠美穂を取り合って革命軍を抜ける。 政情不安定なサンタルナ共和国で、生き抜くすべを心得ている。政府軍に追われサンタルナ共和国を日本人(ひもとひとし)らとともに脱出。ジャングルに住む原住民の部族に秘伝の特効薬を盗み姿を消す。

戸隠 美穂 (とがくし みほ)

ホセ・ガルチアの女。男から男へと渡り歩くしたたかな女。ホセ・ガルチアがサンタルナ共和国を脱出する際、ともにジャングルを抜け、彼の最後の戦いの道連れとされてしまう。

ホセ・ガルチア

自由解放軍として、ドミンゴ・ドラモスとともに、独裁政府を倒すが、民衆を力で押さえ込もうとするドミンゴ・ドラモスと袂を分かち反乱軍を指揮しモンテトンボ山の廃坑に立てこもる。鬼外と戸隠美穂を取り合う。モンテンボ山のレアメタル採掘で日本人(ひもとひとし)と取引をするが政府軍の攻撃で瀕死の重傷となる。 日本人らとともにジャングルを逃走し、政府軍と撃ち合い壮絶な最期を遂げる。

近藤 (こんどう)

カニヴァリアジャーナル紙の新聞記者。サンタルナ共和国で初めて市場を開拓した日本人(ひもとひとし)を取材に訪れ、政府軍によるゲリラ掃討戦に巻き込まれ日本人らとともにジャングルを逃走することになる。

柳川 (やながわ)

日本人(ひもとひとし)の前任者。日本人が到着した日に、日本に連れて行ってくれないことを恨んだ現地妻に刺殺されてしまう。

ゴンザロ・アルバレス

日本人(ひもとひとし)が買い取りたいと持ちかける土地の持ち主。何もない土地だが、日本人はマンガン、クロームなどの鉱脈が眠っているという情報をつかんで、買い取ろうと交渉するが、はねつけられる。リド共和国国籍を取得する前は、ナチスの隊員という過去を持つことをネタに日本人に脅されて土地を手放す。

ロハス・ワルノリス

サンタルナ共和国商務省政務次官。日本人(ひもとひとし)が表敬訪問するが、武器以外の商品には全く関心がない。

影山 (かげやま)

サンタルナ共和国日本大使。サンタルナ共和国在任3年にして、円形脱毛症、肋間神経痛、さらにはエイズにも冒されている。

集団・組織

山男 (やまおとこ)

『グリンゴ』に登場する部族。サンタルナ共和国とコロンビアの国境付近のジャングルに住み、原始的な焼き畑農業をしている部族。どんな病気にも効く特効薬で、日本人(ひもとひとし)の娘ルネの病気を治す。死んだ村の勇士のミイラを砕いて薬に混ぜることで勇士の魂が悪霊を祓うという。村人の言葉を信じるならばエイズにも効く驚異の薬である。

場所

サンタルナ共和国 (さんたるなきょうわこく)

『グリンゴ』に登場する国家。政変のために治安が乱れている。日本人(ひもとひとし)は左遷されてこの国のエセカルタ支社長となる。ゲリラのリーダーホセ・ガルチアは、自由解放軍として、ドミンゴ・ドラモスとともに、独裁政府を倒すが、民衆を力で押さえ込もうとするドミンゴ・ドラモスと袂を分かち反乱軍を指揮しモンテトンボ山の廃坑に立てこもる。 アメリカが肩入れして政府軍がゲリラを圧倒する。

勝ち組 (かちぐみ)

『グリンゴ』に登場する集落。サンタルナ共和国国境付近の辺境に住む日本人のコロニー。太平洋戦争で高まった反日感情をおそれ奥地へ隠れ住む。太平洋戦争で日本が勝ったと信じ込み、戦時中の日本そのままの村落を作り上げている。日本人でなければ、即追放となる。

書誌情報

グリンゴ 2巻 講談社コミッククリエイト〈手塚治虫文庫全集〉

第1巻

(2011-06-10発行、 978-4063738322)

第2巻

(2011-06-10発行、 978-4063738339)

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