概要・あらすじ
心理カウンセリング業を営む楷恭介のもとにひとりの女性が訪れた。総合商社に勤める冠野あずさは「オフィスが恐い」と告白する。きっかけは2階から20階の部署に異動になってから。エレベーターに乗ると胸が圧迫され、脂汗やめまいなどの症状が現れる。また最近はゾンビに襲われる夢をよく見ると言う。楷は高層恐怖症と診断し、原因を探り始める。
冠野あずさは小学校に入る前の記憶が全くなく、そこに治療のカギがあると考えた楷は逆行催眠を試みる。幼稚園の頃、公園でパパに高い高いしてもらっていた記憶を掘り起こしたところでパニックを起こし、暴れ出してしまう。(「File.1 高層恐怖症」あらすじ)
登場人物・キャラクター
楷 恭介 (かい きょうすけ)
心理カウンセラー。新宿の雑居ビルで心理カウンセリング業楷恭介心理研究所を営む。青京女子大学の助教授も兼任している。飄々として、人当たりの良いハンサム。カウンセリングの腕は良く、評判を聞きつけた依頼人がやってくる。依頼人のためには採算度外視で、わが身をかえりみない懸命な治療をする。 治療法を考えているときは周りが見えなくなり、自分の世界に没頭してしまう。ただし女心には疎く、鈍感。元々医学部の優秀な学生だったが、聖春日子の死をきっかけに人の心の闇と向き合う決意をし、大学病院のドクターになるのを辞め、診療所を開く。犯罪心理学の専門家でもある。
冠野 あずさ (かんの あずさ)
「File.1 高層恐怖症」に登場する依頼人。25歳。青京短大卒。長い黒髪の美人。大手菱朋商事に勤めるOL。高層階に部署異動したことより、胸の圧迫や脂汗、めまいを訴え、楷恭介心理研究所を訪れる。小学校に入る前の記憶がなく、実の両親だと思っていたのは叔母夫婦だった。幼少期の記憶を一部取り戻すことで症状は回復に向かう。 その後、菱朋商事を辞め、楷恭介の助手になりたいと楷恭介心理研究所に通いつめ、助手となる。身元を隠して潜入調査するなど、危険な役目も担う。楷恭介に好意を持っている。
八尾警部 (やおけいぶ)
楷恭介の友人でブレーン。新宿署の警察官。髪はオールバックで薄毛。目が小さく、目の下には涙袋がある。ぶっきらぼうで口は悪いが、面倒見が良く、察しも早い。楷に頼まれて、調べものをしたり、楷に捜査協力を頼むこともある。よくバー・BananaMoonで飲んでいる。
真名部 (まなべ)
楷恭介の大学からの旧友。劇団の主宰で演出をやっている。演劇治療法を行う楷に頼まれて、劇団員や知り合いの俳優を派遣し、治療に協力している。 下まつ毛が長く、がっちり体系。芝居の稽古や麻雀ばかりして、大学を3年留年している。
力石 剛太 (りきいし ごうた)
バー・BananaMoonのママ。オカマ。元ボクシングの世界王者。マッチョでボンデージファッション。 後頭部も刈り上げたモヒカンのような髪型をしている。楷恭介とは友人で、よく治療の協力をしている。4人姉弟の末っ子。父は有名な武道家で、幼い頃から柔道を習う。父の勧めで始めたボクシングで世界チャンピオンになる。 「男らしく」、「男のくせに」と言われて育つが、物心ついたころから女らしい遊びが好きだった。
伊勢 幸之助 (いせ こうのすけ)
菱朋商事、常務取締役。会長の娘婿。粘着気質で欲望の強い激情家。普段は強い意志の力で自分の感情を抑えている。部下の冠野あずさと不倫関係にある。あずさに近づき、関係を持ったのは幼い頃の記憶がよみがえらないよう、監視するため。
聖 春日子 (ひじり はるひこ)
故人。真名部と同じ大学の演劇部員。1つ先輩だが、体が弱く、休学を繰り返していた。線の細い浮世離れした美人。楷恭介の一目ぼれの相手。彼女は「恋人がいる」と本気で思いこむ妄想に陥ってしまう。医者の卵であった楷恭介は心の病を治すため、時間かけて心理カウンセリングを施す。治療が成功し、治ったかに見えたが、楷に「ありがとう」という言葉を残し、大学の屋上から落ちて死んでしまう。
犀川 理 (さいかわ おさむ)
27歳。新人刑事。背が高く、切れ長な目が特徴の二枚目。機転がきき、行動派でタフな精神力を持っている。元はパトロール警官だったが、刑事として新宿署に配属。八尾警部の部下になる。コインロッカーに捨てられたバラバラ死体事件の取り調べ中にパニック発作を起こしてしまう。楷恭介のカウンセリングで閉所恐怖症と診断される。 両親から自分は養子だと聞かされていたが、実は捨てられた子供、コインロッカーベイビーだった。
神津 良晴 (こうづ よしはる)
楷恭介の通っていた大学の学部長。楷が大学に通っていた時は助教授だった。楷の恩師で、彼から患者を診る姿勢を学び、医師としても尊敬していた。楷の能力を認めており、大学で研究をしないかと楷を誘う。聖春日子の死に関わっていた人物。
集団・組織
楷恭介心理研究所 (かいきょうすけしんりけんきゅうじょ)
新宿の古びた雑居ビルの中にある診療所。楷恭介がカウンセリングの依頼を受けるために開いた診療所。建物は汚いが、評判を聞きつけた依頼人が遠方からもやってくる。採算度外視で依頼を受けてしまうので、儲かってはいない。たびたびツケのたまった珍来軒の集金がやってくる。元依頼人の冠野あずさが助手となり、治療の手助けをする。
場所
BananaMoon (ばななむーん)
オカマの力石剛太が営むバー。楷恭介もこの店の常連客。この店を借りてカウンセリングすることも多い。客は貧乏人ばかりでさほど儲かってはいない。