概要・あらすじ
女嫌いのラウール・ド・シャルトル公爵と、そのいとこでレズビアンのグランサニュー候爵令嬢ヴィスタリアの間に生まれた息子アンリ・ド・シャルトルは、誰をも魅了する美貌の持ち主にして、生まれながらの天才。さらに年の離れたアンリの妹アテネーは超能力者。フランスの大貴族、大金持ちで美形揃いだが変わり者ぞろいのシャルトル公爵一家の周りには、女装の似合う泥棒少年ミカエルや、年の離れたラウールに熱愛を捧げる美女レオポルディーネ・ハプスブルク、宝石泥棒を裏家業に持つ皇太子リオンなど、様々な変わり者たちが集まってくる。
そんな豪華絢爛だけど一風変わった上流階級の人々の恋愛模様を描く。
登場人物・キャラクター
アンリ・シャルル・フランソワ・アルベール・オーギュスト・ド・グランサニュー・ド・シャルトル
ラウール・ド・シャルトルとヴィスタリアの子。少年期は神童的な才能を持った美少年で、大人びて冷めたところのある性格だった。本人曰く、幼少期は勉強に夢中で、思春期は色事に夢中になって過ごしたとのこと。長じてからは自他共に認める美青年となり、複数の恋人とも付き合うプレイボーイとなった。 性格は傲慢。だが根の部分では傷つきやすい繊細な感情も持ち合わせている。少年期、中南米での旅行中、事故で記憶喪失になり、そのときに結ばれた女性との間に子供も居たが、共に死別。その恋人の思い出が今も心に影を落としている。実業家としてもやり手で有能。またバイセクシャルでもあり、学生時代の年上の親友ソンモール・ド・ロシュフォール伯爵には、いまだに本気の恋愛感情を持っている。 さまざまな恋愛遍歴の果てにレオポルディーネ・ハプスブルクと結婚。フィリップ、クロウディアの2児を儲ける。 同作者名香智子『花の美女姫』、『ファンション・ファデ』などにも登場している。『花の美女姫』収録の「樹海の虜」「黄金の少年」にて、アンリが中南米で右足を失うに至った経緯が描かれている。
ラウール・ド・シャルトル
アンリ・ド・シャルトルの父親。何十代と続く由緒あるフランスの大貴族シャルトル公爵家の当主。多岐に事業を展開する大資本家でもある。息子のアンリによれば、実業家としての能力はあまり高くないとのことだが、誠実な人柄ゆえ人望は高い。いとこで幼馴染のヴィスタリアと、彼女が基本的にレズビアンであることを理解した上で結婚。 ラウール自身も潔癖な女嫌いだが、基本的な性向はヘテロで、ヴィスタリアとヴィスタリア公認の愛人サラ・ヴェルシニにだけは特別に愛情を注いでいる。ヴィスタリアとは息子アンリが生長した後、長い間別居状態にあったが、23年後ひょんなことから娘アテネーが生まれると、ほぼ同居状態で暮らすようになった。 アテネーを溺愛している。奥歯には誘拐に備えて発信機が埋め込まれている。 同作者名香智子『花の美女姫』にも登場している。
ヴィスタリア
アンリ・ド・シャルトルの母親。フランスの大貴族グランサニュー侯爵令嬢。夫となったラウール・ド・シャルトル公爵とはいとこで幼馴染。基本的に女の子が大好きなレズビアンで、男とキスをすると吐いてしまうほどの男嫌いだが、ラウールだけは例外の模様。酔っ払うと翌日蕁麻疹が出てしまう体質。 アンティークドールの収集を趣味のひとつとしている。アンリの成長と共に、年相応老けたラウールに対し、いつまでも若い姿を保っている。 同作者名香智子『花の美女姫』、『ファンション・ファデ』などにも登場している。
アテネー
アンリ・ド・シャルトルの妹。ラウール・ド・シャルトル公爵とヴィスタリアの間に結婚23年後にして生まれた娘。生まれながらに念動力やテレパシーなどの超能力を持ち、常人とは異なる思考回路を持っていた。そのためか、言葉などを覚えるのが遅く、心配した公爵夫妻により、遊び相手として同い年のソフィー・ド・ロシャンボー令嬢が呼ばれ、彼女と遊ぶうちに言葉を喋るようになった。 4歳にしてシャルトルとの縁組を望むロノス王国のリオン皇太子から求婚された。リオンから犬を贈られ、その犬にリオンと名づけて可愛がる。またミカエルに好意を抱いているが、それは何か見返りを期待してのものではない。
レオポルディーネ・ハプスブルク
アンリ・ド・シャルトルの妻。ゴージャスなブロンド美女。ヨーロッパ一の名門オーストリアハプスブルク出身だが、家自体今は貴族というわけではないので、庶民的な育ち方をしており、料理もできる。ラウール・ド・シャルトルを熱愛しており、当初はラウールがヴィスタリアと別れた後にプロポーズすることを考えていたが、レオポルディーネに恋をしたアンリが、自分と結婚すればラウールが義父となるため、いつまでも傍に居ることができるという提案を出され、結婚を承諾する。 やや天然で、ラウールのこととなると盲目的な行動をとるエキセントリックな性格。空手の心得がある。 アンリとの間にフィリップ、クロウディアの二子を儲けた。ロノス王国の皇太子リオンとは遠い親戚で、幼馴染。
リオン・カルロス・デ・ロノス
地中海にある小国ロノス王国の皇太子。黒髪の美青年で、通称「黒の皇太子」と呼ばれる。裕福とはいえない国家財政のため、資産家であるシャルトルとの縁組を求め、18歳の頃、アンリ・ド・シャルトルの妹シャルトル公爵令嬢アテネーに求婚した。裏家業として宝石泥棒をしている。 同業者とわかったミカエルに恋愛にも似た執着を見せる。身分を偽っている時の名前はダグラス・ホジキン。髪をオールバックに整えたダグラスの時はやや性格も異なり、鼻持ちなら無いプレイボーイといった様子になる。ホジキンは母方の姓。オックスフォード大学に通っていたため、イギリスの友人も多い。
ミカエル
元泥棒である銀鼠の息子。金髪の美少年だが、強気で軽い性格。父である銀鼠と母シルヴィは同作者名香智子の『花の美女姫』にも登場する。シルヴィは5年前に病気で亡くなっている。アテネーの暮らすローザン館に忍び込んだ縁からアンリ・ド・シャルトルと友人のような付き合いをすることになった。 泥棒として磨いた運動能力や陰謀を巡らす知略は非常に高く、アンリはミカエルをシャルトルの事業に加えたいと考えている。女装も似合うため、シャルトル公爵夫人ヴィスタリアにも気に入られている。最初に女装状態で会ったリオン・カルロス・デ・ロノスは、男と判った後にもミカエルに執着を持つ。 アテネーの友人である大人びた少女ソフィー・ド・ロシャンボーと結婚の約束を交わしており、彼女がボリビアに行ってしまった後はプレイボーイとして複数の女性と付き合っていたがどれも長続きしなかった。10歳となったソフィーと再開後、結婚を考えるのは6年後という約束を交わす。
パリス
アンリ・ド・シャルトルの従兄弟。アンリより1つ年下だが、すでにアンリよりも背が高い、金髪の美青年。大学院生。アンリの元婚約者アネモネ・ド・マレーに恋をしている。同作者名香智子の『花の美女姫』で少年期の姿が描かれている。
アネモネ・ド・マレー
アンリ・ド・シャルトルの元婚約者。男爵令嬢。赤毛の清楚な女性。10代の頃アンリと交際していたが、中南米での事故により心に傷を負ったアンリによって婚約を解消される。今でもお互いに思い合ってはいるが、アンリはアネモネにはアネモネただひとりを愛する男性と結婚してほしい考えている。 チャイルド・スポンサーの現地ボランティアの仕事をしており、アフリカに5年ばかり滞在していた。一時フランスに帰国するが、またすぐにインドへ行ってしまう。同作者名香智子の『花の美女姫』において、少女期のアンリとの婚約と婚約解消までが描かれている。
フランソワ・ド・ギーズ
アンリ・ド・シャルトルの悪友。ギーズ侯爵の次男。遊び人でバイセクシャル。学生時代からアンリに惚れており、今もことあるごとにちょっかいを出してくる。
ソフィー・ド・ロシャンボー
アテネーの遊び相手として選ばれた、ド・ロシャンボー家の幼女。黒髪で、心優しく聡明。超能力を持つアテネーにも自然体で接し、アテネーの心を開かせた。ミカエルに一目惚れし、結婚の約束を取り付ける。その後、外交官の父の仕事により、ボリビアへ行くことになるが、アテネーはシャルトルの専用機を飛ばして彼女に会いに行った。 10歳の時にフランスに帰国し、ミカエルに再会。今は誰と付き合っても良いが、結婚を考えるのは、自分が16歳となる6年後としてほしい考え、ミカエルとその約束を交わす。
銀鼠 (ぎんねずみ)
ミカエルの父親。元泥棒で、「怪盗銀鼠」として知られていた。現在は引退しており、古本屋を営んでいる。アンリ・ド・シャルトルに裏社会の情報などを流す役割もこなす。本名は不明。同作者名香智子の『花の美女姫』で、アンリや亡き妻シルヴィとの出会いが描かれている。
エマニエル・ブーリエ
アテネーの女性家庭教師。ラウール・ド・シャルトルが修道院の院長に推薦をもらい、雇った。娘ギャランスの父である夫とは離婚をしている。夫は借金持ちで働かず、慰謝料を取れるような相手ではないため、家庭教師として働いている。控えめで心優しい性格。
ギャランス・ブーリエ
アテネーの家庭教師として雇われたエマニエル・ブーリエの娘で、アテネーの遊び相手。年頃はアテネーと同じくらい。利発な美少女だが、贅沢やステータスなどに弱いところがあり、天然な性格のアテネーに対しては強気にでるなど、やや小ずるい立ち回りが上手い。
アルフレッド・カイザー
アメリカの大富豪カイザー家の御曹司で、後に主宰となる。ラウール・ド・シャルトルの学生時代からの知り合いで、自称親友だが、ラウールからはそう思われてはいない。シャルトルと比肩する財力と権力の持ち主で、時に非情な手段もためらわない傲岸な性格。本人はプレイボーイのつもりだが、実際は妻イリスに首っ丈の愛妻家。 ラウールのものを何でも欲しがるため、イリスはヴィスタリアにそっくりになるような美容整形をしている。
ソンモール・ド・ロシュフォール
アンリ・ド・シャルトルの学生時代からの友人で、アンリが長年恋情を持って慕ってきた男性。伯爵。現在は日本の万葉大学で、日本文学の教授をしている。同作者名香智子の『花の美女姫』の主人公のひとり美女丸・ソンモール・氏家・ド・ロシュフォールのその後の姿。
フィリップ
アンリ・ド・シャルトルとレオポルディーネ・ハプスブルクの間に生まれた息子。レオポルディーネ側の遺伝で髪が赤い。父アンリによく似た神童で、8歳で大学入学を果たした。特にコンピュータープログラミングに高い才能を示し、6歳ごろからゲームの開発を行い、ヒット作を何本も生み出し、そこから得た個人資産だけでも億万長者となっている。 一般的な少年の生活を体験した方が良いというラウール・ド・シャルトルの考えで、14歳で大学卒業をした後、中等教育を行うコレージュに入りなおした。性格は理知的で、人の感情の機微をきちんと読み取ることができる。また、その天才性にも関わらず、大変謙虚。
クロウディア
アンリ・ド・シャルトルとレオポルディーネ・ハプスブルクの間に生まれた娘。フィリップの妹にあたる。顔はアンリにそっくりな美少女で、性格は祖母にあたるヴィスタリアにそっくりの、大変なわがまま娘。周囲が寄ってたかって甘やかしている。
サラ・ヴェルシニ
ラウール・ド・シャルトルの愛人。お針子をしており、死んだ恋人の代わりに一流のクチュリエとなるため、シャルトルの後ろ盾を求めてラウールの週末の愛人となった。シャルトル公爵夫人ヴィスタリアに美貌と服飾の才を気に入られ、ヴィスタリアもまたパトロンとして彼女をバックアップする。 同作者名香智子の『ファンション・ファデ』に登場するマダム・フルールその人。
場所
ロノス王国 (ろのすおうこく)
地中海にある小さな島々からなる王国。伝統的に腕の良い宝石職人が多く、宝石・宝飾品の加工などが基幹産業となっている。王を社長とした宝石会社と呼ばれることも。ロノス産の刻印は最高級品の証と言われるほど製品の質が高い。だが近年火山噴火があり、その被害の建て直しで莫大な借金を抱えている。
書誌情報
シャルトル公爵の愉しみ 7巻 小学館〈コミック文庫(女性)〉
第1巻
(2004-01-17発行、 978-4091915511)
第2巻
(2004-01-17発行、 978-4091915528)
第3巻
(2004-02-14発行、 978-4091915535)
第4巻
(2004-02-14発行、 978-4091915542)
第5巻
(2004-03-13発行、 978-4091915559)
第6巻
(2004-03-13発行、 978-4091915566)
第7巻
(2004-04-15発行、 978-4091915573)