チワワちゃん

チワワちゃん

1990年代に発表された岡崎京子の短編集。殺人事件の被害に遭った女性について周囲が語り合う表題作の『チワワちゃん』をはじめ、登場人物の内面や人とのかかわりなどが叙情的に描かれる。なお「LOVE,PEACE&MIRACLE-紙の上のスライドショウ-」は明確な登場人物やコマ割りは存在せず、簡単なイラストだけで読み手に語り掛けている。「月刊YOUNG ROSE」1994年6月号から1995年5月号にかけて不定期に掲載されたもののほか、「FEEL」1994年10月号増刊に掲載された作品を収録。加えて、ヤングロゼコミックスデラックス『チワワちゃん』が刊行された際に描き下ろされたエピソードも収録されている。"

正式名称
チワワちゃん
ふりがな
ちわわちゃん
作者
ジャンル
ヒューマンドラマ
レーベル
あすかコミックスDX(KADOKAWA) / KADOKAWA
関連商品
Amazon 楽天

あらすじ

第1巻

このところテレビでは連日、若い女性のバラバラ死体が発見されたという残忍な事件が報道されていた。被害者は千脇良子だったが、彼女は以前から相手に応じて語る内容が大きく変わっており、さらに神出鬼没な事もあり、事件に巻き込まれたのが良子だと気づく者はほとんどいなかった。それでも人づてに良子の死を知り、葬儀に集まった加藤美樹をはじめとする知人達は、無念の死を遂げた彼女を弔うため、死体が遺棄された港へと向かう。そんな中、みんなは「自分にとっての良子」とはどんな人物だったのかをそれぞれが語り出す。(エピソード「チワワちゃん」。ほか、5エピソード収録)

登場人物・キャラクター

加藤 美樹 (かとう みき)

エピソード「チワワちゃん」に登場する。大学に通う女性。千脇良子の知り合いで、年齢は21歳。実家は美容室を営んでいる。気が弱く、相手から強く出られると断れない性格をしている。良子から行く場所がないから数日泊めてほしいとお願いされ、あまり親しくなかったが実家に迎え入れた事がある。テレビで良子が殺害された事を知るが、報道されている良子の境遇と自分が聞いていた話が大きく異なるため、現実感が持てないでいる。ヨシダに思いを寄せていた時期があり、一度身体の関係を持ったものの交際へと発展しなかった。のちにヨシダの彼女になった良子を、内心うらやましいと感じていた。

森田 セーコ (もりた せーこ)

エピソード「夏の思い出」に登場する。港野ヨーコとルームシェアをしている女子大学生。年齢は20歳。快楽主義者で、目先の事は考えないポジティブな性格。ボーイフレンドとハワイに行って散財した。電気代も払えなくなり、ヨーコと共に窮地に追い込まれる。ピンチに追い込まれても森田セーコ自身の美貌と抜群のプロポーションを活かし、たくましく人生を謳歌している。

港野 ヨーコ (みなとの よーこ)

エピソード「夏の思い出」に登場する。森田セーコとルームシェアをしている女子大学生。年齢は20歳。セーコと同じく基本的には快楽主義者ではあるものの、ややネガティブな一面を持つ。ボーイフレンドとハワイに行って散財した。電気代も払えなくなり、セーコと共に窮地に追い込まれる。偶然訪れた海の家の息子、タツジに恋をする。

田中 優子 (たなか ゆうこ)

エピソード「チョコレートマーブルちゃん」に登場する。黒髪をショートカットにしたボーイッシュな女子高校生。恋人だと思っていた男性が鈴木裕子と交際しており、二股をかけられていた。そのうえ、別に本命の恋人もいる事も判明し、その後は心の傷を埋めるように裕子と行動を共にする。

鈴木 裕子 (すずき ゆうこ)

エピソード「チョコレートマーブルちゃん」に登場する。いわゆるコギャルの女子高校生。派手なメイクをして髪の毛を明るく染めている。恋人だと思っていた男性が田中優子と交際しており、二股をかけられていた。そのうえ、別に本命の恋人もいる事も判明し、その後は心の傷を埋めるように優子と行動を共にする。以前、祖母の家の近くで見た美しい花畑を見せたいと優子を誘い出す。

山田 律子 (やまだ りつこ)

エピソード「GIRL OF THE YEAR」に登場する。最近現在の学校へと転校して来た女子高校生。年齢は17歳。それまでは父親の仕事の都合で海外で生活しており、言いたい事ははっきりと主張するタイプ。また腕っぷしも強く、力もある事から、並みの男性であれば対等に渡り合える。学校内で開催されるミスコンテスト「GIRL OF THE YEAR」に勝手にノミネートされ、冷泉寺アンネからライバル視されるなど、騒動に巻き込まれていく。

彼女 (かのじょ)

エピソード「好き?好き?大好き?」に登場する。彼氏と交際している女性。彼氏が自分をどれくらい好きなのかを知りたいと願い、自分への愛を確認するような言動を繰り返している。彼氏が、そんな自分にうんざりしている事を知らない。

千脇 良子 (ちわき よしこ)

エピソード「チワワちゃん」に登場する。看護学校に通う女性。年齢は20歳。周囲や千脇良子自身も自分の事を「チワワ」と呼んでいる。バラバラ殺人事件の被害者となり、まだ犯人は見つかっていない。小柄だが非常にグラマラスな体型でスタイルも抜群。良子自身もそれを武器にしてグラビアモデルをしたり、アダルトビデオに出演したりしていた。言いたい事ははっきりと口にする、場の空気が読めないタイプ。同時に人やその場の雰囲気によって発言が二転三転する傾向があり、なにが噓でなにが本当だったのか、誰にもわからないままこの世を去った。

ヨシダ

エピソード「チワワちゃん」に登場する。大学に通う男性。千脇良子の元恋人。一時期は良子と同棲していた。良子にぞっこんで、人目をはばからずに抱き合ったり、キスをしたりとオープンな交際を続けていた。加藤美樹と一度だけ身体の関係を持ったが、交際へと発展せずに終わった。女癖が悪いがモテるタイプで、良子と別れてからもすぐに別の彼女ができた。

勝田 正信 (かつた まさのぶ)

エピソード「チワワちゃん」に登場する。ヨシダと中学時代から付き合いのある男性。周囲からは「カツオ」と呼ばれている。ヨシダと千脇良子が同棲していた部屋に頻繁に遊びに行っており、良子から煮物などの手料理を振る舞われていた。そのため、良子に対しては家庭的なイメージを持っている。良子から信頼を寄せられていたが、のちに吉野真由美と同様に金銭トラブルが発生し、絶縁している。

吉野 真由美 (よしの まゆみ)

エピソード「チワワちゃん」に登場する。千脇良子と一番仲がよかった女友達。周囲からは「ユミ」と呼ばれている。良子が殺害されたニュースを聞いて号泣し、適当な発言を繰り返すコメンテーターに激怒していた。良子に対しては清廉潔白なイメージを持っている。一方で、殺害された当時は勝田正信と同じく金銭トラブルが発生し、良子とは疎遠になっていた。

嶋田 明広 (しまだ あきひろ)

エピソード「チワワちゃん」に登場する。千脇良子とヨシダの共通の知人の男性。特に良子と仲がよかった。周囲からは「シマ」と呼ばれている。二人が破局する間際には良子からヨシダに暴力を受けている事で、頻繁に相談を受けていた。嶋田明広自身はゲイを公言しており、良子とは恋愛関係になる事はなかった。

永井 善行 (ながい よしゆき)

エピソード「チワワちゃん」に登場する。千脇良子の男友達。ヨシダと別れて行き場のない良子と3か月ほど同居していた過去を持つ。良子とは身体の関係があったものの恋愛感情はいっさいなく、お互いにセックスだけの関係と割り切り、アブノーマルなプレイにも興じていた。しかし、家事をまったくしない良子とのあいだに溝ができ、最終的に良子が勝手に出ていく形で同居生活が終了した。のちに身体を弄ばれたと、良子から慰謝料を要求される。現在は福井サヨコと交際中。

野田 サヤカ (のだ さやか)

エピソード「チワワちゃん」に登場する。千脇良子の女友達。実家暮らしをしている。良子と永井善行が同居している期間に度々会って話をしていた。良子からは温かい家族へのあこがれや、自分の内面における不安定な部分を打ち明けられている。ただし親友といった間柄ではなく、良子から一方的に言葉を投げかけられていた。のちに良子がアダルトビデオに出演した事を知る。

木田 菊子 (きだ きくこ)

エピソード「チワワちゃん」に登場する。パフォーマーを生業とする女性。弟子に本田夕貴がいる。周囲からは「キキ」と呼ばれている。千脇良子とは友達で、良子がアダルトビデオの女優としてデビューしたあとに連絡があった唯一の人物。自宅の高級マンションで手料理を振る舞われた。良子の死後、勝田正信からの話により、あのマンションは良子が一人で住んでいるのではなく、数人の女性とシェアしていた事を知る。

福井 サヨコ (ふくい さよこ)

エピソード「チワワちゃん」に登場する。永井善行と交際中の女性。千脇良子とは顔見知り程度の関係だったが、お金を貸してほしいとお願いされて断った過去がある。永井に対して恐喝まがいの金銭の取り立てをしたと聞き、良子の顔を躊躇なく平手打ちした。良子に対しては悪い印象しか抱いていないが、殺害後は死者を悪く言えないと口を閉ざす。

本田 夕貴 (ほんだ ゆき)

エピソード「チワワちゃん」に登場する。高円寺の書店で働いている女性。周囲からは「クマ」と呼ばれている。千脇良子とは顔見知り程度だったため、かわいい人だったという印象しか残っていない。殺害される数日前に書店を訪れた良子と会話を交わしている。

タツジ

エピソード「夏の思い出」に登場する。実家が海の家を経営している青年。港野ヨーコから恋心を寄せられた。当初は相手にしていなかったものの、勢いでヨーコと身体の関係を持った事がきかっけとなり、恋に落ちる。

大山田 健三 (おおやまだ けんぞう)

エピソード「GIRL OF THE YEAR」に登場する。山田律子とは異なる高校に通う男子。生徒会長を務めているが、実は番長で素行が悪い。背は低いものの整った顔立ちと人並外れた頭脳を持っているため、女性から好意を寄せられる事が多い。自分の学校の生徒が奥村田チヨをナンパしていた事をきっかけに、律子に倒される事となる。以降律子に興味を抱き、接近を試みる。

奥村田 チヨ (おくむらた ちよ)

エピソード「GIRL OF THE YEAR」に登場する。女子高校生。年齢は17歳。大山田健三が通う学校の男子生徒に絡まれていたところを山田律子に助けられ、以降律子に好かれたいと付きまとうようになる。男性と交際した経験はなく処女。奥村田チヨ自身は奥手なタイプだと思っているが、大胆かつ常識外れの言動で律子を困らせている。

冷泉寺 アンネ (れいせんじ あんね)

エピソード「GIRL OF THE YEAR」に登場する。女子高校生。年齢は17歳。学校内で開催されるミスコンテスト「GIRL OF THE YEAR」で優勝したいと野心を燃やしている。将来の夢は芸能人で、学校内で人気の高い山田律子をライバル視している。父親は有名企業の社長を務めており、裕福な家庭で育っている。

近田 チカ (ちかだ ちか)

エピソード「GIRL OF THE YEAR」に登場する。女子高校生。年齢は17歳。山田律子からは唯一の友達だと思われている。黒髪のショートカットの髪型で、さっぱりとしたクールな性格の持ち主。一見まじめそうに見えるものの、学校をさぼって喫煙をするなど、素行はよくない。

彼氏 (かれし)

エピソード「好き?好き?大好き?」に登場する。彼女と交際している男性。彼女が自分の愛を確認するような言動をしつこく繰り返しているが、すべて優しく肯定し続けている。しかし最初は丁寧に受け答えていたものの、徐々に彼女の言動を面倒くさいと感じるようになっていく。

書誌情報

チワワちゃん KADOKAWA〈あすかコミックスDX〉

(2018-12-22発行、 978-4041078488)

チワワちゃん KADOKAWA

(2004-03-04発行、 978-4048536899)

SHARE
EC
Amazon
logo