ナナホシとタチバナ

ナナホシとタチバナ

双子の女の子、タチバナとナナホシがパンを作り、レンガ村の人々に笑顔をもたらす。かわいらしい双子と村人たちのメルヘンチックでハートフルな触れ合いと、どこか不気味で残酷な雰囲気が漂う夜の場面という緩急のある絵柄で描かれる、謎が謎を呼ぶダークメルヘン。作中には、タチバナとナナホシが作ったパンのレシピも記載されている。「月刊ビッグガンガン」2018 vol.09から2019 vol.06にかけて連載された作品。

正式名称
ナナホシとタチバナ
ふりがな
ななほしとたちばな
作者
ジャンル
グルメ
 
ファンタジー
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あらすじ

第1巻

とある山にあるレンガ村の奥の森で、パン屋を開いている双子のタチバナナナホシは、ある日、行き倒れの青年レンを介抱する。長年、家を出ていたレンは父親の死を知り、家に戻ろうと思ったが、いざ家の前に来たら踏ん切りがつかないと悩みを明かす。それを聞いた双子はパンを作り、彼の後押しをする。双子の作ったサンドウィッチを食べ、父親との触れ合いを思い出したレンは、家に帰って母親や妹たちと再会し、父親の死を悼むのだった。家に帰って気持ちが高揚したレンは、落し物があったことを思い出し、高ぶった気持ちのまま双子と出会った森に戻る。そこでレンが目にしたのは真っ暗な闇の中、何かをしている双子の姿だった。それがこの世のものとは思えないほど恐ろしく、不気味だと感じたレンは、そのまま逃げ帰って朝を迎える。次の日、出会った双子はいつもどおりの姿で、レンは昨夜の出来事は夢だと思う。その後、レンは旅費を稼ぐために村にとどまって雑用を行う。双子がパンで人々の悩みを解決していくのを見ていくうちに、レンはディアナから恐るべき双子の真実を聞かされる。

第2巻

かつて旅をしていたディアナは、タチバナナナホシの姿を10年以上も前に見ているが、二人はその時からまったく成長していないと語る。またディアナは双子の運命に不吉なものを感じたと語ったため、その話を聞いたレンは双子について独自に調査を開始する。そんなある日、町に向かうタチバナとナナホシの姿を見かけたレンは、そのまま二人を尾行。いつもと違った双子の様子と情報屋からの情報で、レンは少しずつ双子の真相に近づいていく。

登場人物・キャラクター

ナナホシ

タチバナの姉。淡いすみれ色の髪をショートカットにした少女で、顔立ちは妹のタチバナにそっくりだが、性格は正反対のしっかり者。甘えん坊のタチバナを適度にあしらい、二人なかよく暮らしている。珍しい虫が好きで、気に入った虫を見つけるとスケッチをする。1年前からタチバナといっしょにレンガ村に定住した。パン作りが得意で、村の奥にある森でパン屋「ふたごのパン」を営んでいる。彼女たちの作るパンは絶品で、村でも大評判となっており、訪れた人たちの悩みをパンで解決している。ふだんは年相応の無邪気な少女たちだが、夜更けの森でタチバナといっしょに「ちいさいほう」と「おおきいほう」と呼ぶ何かを作っていたりと、その行動には謎が多い。またふだんは髪と同じすみれ色の瞳をしているが、時々、瞳の色が金色に変わる。村に来る前も各地でパン屋を営んでおり、少なくとも10年以上前から子供のまま姿を変えずに各地を放浪している。「あいつ」と呼ぶ誰かを探し続けており、パン屋を営んでいるのも、パン好きな「あいつ」を誘き寄せるため。目的を達成するためにも、パン屋の評判を上げようと考えている。またパン作り以外にも毒と薬の知識も豊富で、100年前に出版された毒の本の著者名も同じ「ナナホシ」だったり、各地に双子に治療された人の逸話が残っていたりする。

タチバナ

ナナホシの妹。淡いすみれ色の髪をロングヘアにした少女で、顔立ちは姉のナナホシにそっくりだが、性格は正反対のおてんば娘。明るく無邪気な甘えん坊で、ナナホシをよく振り回している。好奇心が旺盛なことから趣味は探検で、レンガ村の森を自分の庭のように把握している。1年前からナナホシといっしょにレンガ村に定住した。パン作りが得意で、村の奥にある森でパン屋「ふたごのパン」を営んでいる。彼女たちの作るパンは絶品で、村でも大評判となっており、訪れた人たちの悩みをパンで解決している。ふだんは年相応の無邪気な少女たちだが、夜更けの森でナナホシといっしょに「ちいさいほう」と「おおきいほう」と呼ぶ何かを作っていたり、その行動には謎が多い。またふだんは髪と同じすみれ色の瞳をしているが、時々、瞳の色が金色に変わる。村に来る前も各地でパン屋を営んでおり、少なくとも10年以上前から子供のまま姿を変えずに各地を放浪している。「あいつ」と呼ぶ誰かを探し続けており、パン屋を営んでいるのも、パン好きな「あいつ」を誘き寄せるため。目的を達成するためにも、パン屋の評判を上げようと考えている。

レン

旅人の青年。行き倒れていたところを、タチバナとナナホシに拾われる。レンガ村出身で、父親は町の議員を務めている。些細なきっかけで父親とケンカ別れし、そのまま家を捨てて旅に出た。旅の噂で父親の訃報を知り、帰郷するものの家に帰る踏ん切りがつかず、迷っているうちに疲労で倒れてしまう。家事をしなかった父親が唯一作ってくれたたまごサンドが好物。双子がサンドウィッチを作ってくれたことでそのことを思い出し、家に帰る踏ん切りがつく。好奇心旺盛な性格をしており、一度家に帰ったら再び旅に戻るつもりだったが、妹と母親にお願いされてレンガ村にとどまる。村では再び旅に出るためのお金をためるため、村の雑用をして小銭を稼ぎながら暮らしている。双子には感謝していたが、ある日、夜更けに双子が怪しい行動をしているのを見てからは、時折彼女たちに不気味なものを感じ、疑念を抱く。ディアナから双子のことを聞いてからはその疑念がさらに強まり、独自に調査を開始する。

ディアナ

占い師の女性。艶やかな黒い髪を長く伸ばした妙齢の美女で、誰にでも優しい穏やかな性格をしている。カードを2枚引いて、そのカードで対象の運勢を占うのを得意とし、彼女の占いはよく当たると評判。また占いのときに得意の料理を振る舞うのが特徴で、彼女の料理は絶品といわれている。パン屋「ふたごのパン」の常連で、双子も彼女のことを気に入っている。外の国の出身者。故郷はウソツキばかりがいる町で、幼い頃は家族からも虐げられながら育つ。貧しくひもじい思いをしながら生きていたが、近所に住む優しい老婆に助けられた。その際、彼女に「素敵な靴」をもらい、その靴に似合う人間になりたいという志を抱く。その後、故郷を捨てて温かな人ばかりのレンガ村を気に入り、村に定住するようになった。実は10年前、占いの仕事の出張で西の国に行ったことがあり、そこで評判の双子のパン屋を目撃していた。その双子の姿が現在のタチバナとナナホシとまったく同じで、二人が成長せず子供の姿のままでいることをレンに打ち明ける。

リツ

パン屋「ふたごのパン」で働く少年。年齢は14歳。双子が初めてレンガ村に来た際に会った、村で一番料理上手な老婆の孫。パン作りに興味があったため、祖母に紹介され、パン屋が忙しい時期限定でお手伝いをしている。タチバナとナナホシを師匠と慕う。素直で勤勉な性格をしているため、彼女たちからも気に入られている。ただ、反抗期で家族に素直になれない年頃であるため、弟のヒビに対してはトゲトゲした態度を取ることがある。弟とケンカをしていたが、双子に助けられて仲直りする。

情報屋 (じょうほうや)

町で情報屋を営む青年。前髪を長く伸ばした線の細い優男で、ひょうひょうとした性格をしている。情報屋としての腕前はかなりのもので、国内でも有数の情報屋と評判が高い。北の大陸から来た旅人にタチバナとナナホシを紹介した。双子とはたびたび取り引きをしており、彼女たちの探す「あいつ」の情報を集める代わり、彼女たちに仕事を斡旋している。仕事の関係で方々に恨みを買っており、時々命を狙われる。双子に仕事を紹介したあと、男に襲われるが、双子を付けていたレンに助けられる。命を助けてくれたお礼として、レンに双子の手がかりがレンガ村の図書館の隠し部屋にあることを教える。

ニコ

レンガ村に住む、明るく朗らかな性格をした女性。母親が家を出たため、父親と二人で支え合って生きてきた。父親から溺愛して育てられたが、父親のめんどくさい性格を熟知し、しっかり者として育つ。恋人と結婚をすることを決め、父親に報告をしに行ったが、反対されて途方に暮れる。結婚式当日、タチバナとナナホシが作った父親の好物のチョコレートが入ったパンをきっかけにして仲直りした。実は母親は出て行ったが、ニコのことを気にかけており、父親に隠れてちょくちょく会っている。双子はニコの母親が出て行ったのは、父親の娘を溺愛しすぎる性格が原因ではないかと考えている。

リリ

レンガ村に住む女性。親友のマイと共に町の学校に通っている。垢抜けた容姿をした美少女で、明るく勝気な性格をしている。元はマイと似たような格好をしていたが、学校で町の子供たちにマイがいじめられているのを知ってからは、おしゃれをに磨きをかけて現在の垢抜けた容姿となる。努力家で成績も学校ではトップクラス。しかし、負けず嫌いな性格でリリ自身を追い詰めており、最近は学校ではいつも張り詰めた空気を放っていた。クラスメートとの張り合いで、村にはおしゃれなパン屋があるとウソをついてしまったため、そのウソを実現すべくタチバナとナナホシの店に訪れる。その後、双子と三つ編みのパンを作り、マイとも本音で語り合ったことで肩の力を抜き、再び自分らしさを出すようになる。マイとは幼い頃から姉妹同然の仲として育ったが、実はマイを妹と思い、自分の方が姉だと思っている。

マイ

レンガ村に住む少女。親友のリリと共に町の学校に通っている。長く伸ばした黒い髪を三つ編みにし、眼鏡を掛けた少女で、おっとりとした性格をしている。その性格から、学校の同世代の子供たちにいじめの標的にされてしまう。リリに助けてもらったが、それによってリリが無理をしているのを心苦しく思っており、彼女を支えたいと思っている。本が好きで図書館によく通っており、マイナーな薬草も網羅するほどの物知り。リリがパン屋「ふたごのパン」を訪れた際に、フォローに訪れ、タチバナとナナホシにリリのことを相談する。その後、双子と三つ編みのパンを作り、リリに自分の気持ちを伝える。リリとは幼い頃から姉妹同然の仲として育ったが、実はリリを妹と思い、自分の方が姉だと思っている。

ダグ

レンガ村の図書館で司書を務める高齢の男性。褐色肌で体格はがっしりとしており、目力が強く迫力がある。図書館の番人を務めており、図書館の隠し部屋も管理している。図書館の秘密に近づく者にはそっけなく対応し、隠し部屋について訪ねられても知らぬ存ぜぬを貫いて追い返す。隠し部屋について尋ねてきたレンに対しても当初は塩対応をしていたが、レンの真摯な態度と彼の父親に恩があるのを理由に、特別に彼を隠し部屋に案内する。実は園芸が趣味で、図書館の入り口にあるみごとなアーチツリーはダグが世話をしている。

ノイチ

ディアナの店に来た青年。アミという女性に好意を抱いており、彼女との相性を占うためにディアナの店を訪れるが相性が悪く、逆上してディアナに襲い掛かる。偶然通りかかったレンに無力化されて捕まった。その後、閉じ込められていたが脱走。再びディアナに襲い掛かるが、ディアナの占いと優しい言葉で正気を取り戻す。

場所

レンガ村 (れんがむら)

とある山にある村。もともとは旅人が集まって作った村なため、よそ者にも寛容な土地柄となっている。素朴で温かな人柄の人が多いため、現在もここを気に入り、定住する人があとを絶たない。「レンガ村」の名のとおり、小さい村ながらレンガ造りの家が多く、特に図書館は観光名所になるほど立派。実は図書館には隠し部屋が存在し、そこには見つかれば処分される禁書が集められている。

その他キーワード

炎の魔女と水の村 (ほのおのまじょとみずのむら)

レンガ村の隠し部屋にあったお伽噺の本。内容は、水の豊富な村を魔女が干からびさせていたが、旅の行商人が魔女を打ち倒し、村に水を取り戻したというもの。魔女には「双子の使い魔」がいたとされ、双子は復讐のために行商人に毒を盛ろうとしたが、行商人に見つかって失敗。行商人は命乞いをしてきた双子の使い魔を見逃し、村に平和を取り戻したとされる。しかしディアナは、このお伽噺は大衆向けに歪められた話で、真実は別にあるのではないかと考えている。

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