バベルハイムの商人

人間や悪魔、精霊の間で使用される唯一の通貨・運命金貨。この金貨を手に入れた人間には、次々と悪魔の商人たちがやって来る。その中の1人、ユージンは、人間たちの望むものなら何でも売ってくれるが、その品々には相応のリスクが伴っていた。ユージンがさまざまな人間と交易を交わすなかで生まれる関係性、そして天敵ともいえる商人・メフィストフェレスとの対立を描く。「月刊コミックブレイド」2011年11月号から2014年8月号に掲載された後、「コミックブレイド」で2014年10月から2015年3月にかけて配信された作品。古海鐘一のデビュー作でもある。

正式名称
バベルハイムの商人
作者
ジャンル
ダークファンタジー
レーベル
BLADE COMICS(マッグガーデン)
関連商品
Amazon 楽天

世界観

本作『バベルハイムの商人』では、運命金貨を共通の通貨として、商品の売買を行う人間悪魔が訪れることになる、交易を中心とした概念世界「バベルハイム」を軸にして物語が展開される。また、作品後半では、生まれ変わりが重要なキーワードとなる。なお、作中では神や神の御使いも、人間と共存しにくい点が共通しているという理由で、悪魔や精霊の一種にカテゴライズされている。そのため、一口に悪魔といっても、真面目で心優しい者も多く登場する。

作品誕生のいきさつ

作者である古海鐘一が、10年以上の間、ブラウザゲームやオリジナル作品で使用していたキャラクター、ユージン・グリフィスの本格的な活動を同人誌に描いたものが、本作『バベルハイムの商人』の原作となっている。そのため、第1話は同人誌『バベルハイムの商人 首飾りは怨む』のリメイク作品だが、終盤の展開は大きく変更されている。また商業化にあたり、ユージンのキャラクターデザインが変更されている。

あらすじ

悪魔商人であるユージン・グリフィスは、運命金貨を持つ人間のもとに現れる。彼らの希望する商品のリスクを説明し、販売し、時に助言をも与えて、バベルハイムの交易を回していく。商品を使って破滅、もしくは静かに生活を送る人間たちを、見守っていたユージンだったが、豊穣の万冥節のオークションでメフィストフェレスと再会し、ガラスの棺の男を目にしてから、膨大な魔力とメフィストの悪意によって、交易の環が傾いていくのを防ごうと奔走する。

現況

「月刊コミックブレイド」「コミックブレイド」での連載と、コミックスの発行は終了しているが、現在はアプリ「マンガワン」、およびWEBコミックサイト「裏サンデー」で、大幅な加筆修正や新規書き下ろしエピソードを加えた『輪典バベルハイムの商人』が連載されており、各ゲストキャラクターについて、より踏み込んだストーリーや、その後の展開が描かれている。

登場人物・キャラクター

ユージン・グリフィス (ユージングリフィス)

悪魔商人であり、俗にいう吸血鬼。後ろ髪の跳ねた黒髪が特徴の青年で、19世紀に同名で同じ容姿の人間から生まれ変わった存在。肉体を無数のコウモリに変化させることができ、また、その1匹ずつに、ユージン・グリフィスとしての意識がある。顧客に対しては非常に低姿勢で、丁寧な言葉遣いを意識しており、商人仲間には、フランクで友好的な態度で接する。 部下である黒田清彦には、命令口調で指示を出す。しかし、窮地に陥った際には、高額なアイテムを使用して救出にあたるなど大事にしており、互いの信頼関係を築いている。同じ悪魔商人であるメフィストフェレスを蛇蝎のごとく嫌っており、顔を合わせた際には、普段の飄々とした態度とは真逆の、敵対心を露わにした表情を見せることが多い。 ミュシタを、悪魔に生まれ変わる前から師と仰いでいるが、バベルハイムの交易の環を傾ける存在として忌避している。ダリア、サニー・ハンプティとは悪魔商人仲間の中でも特に仲が良い。豊穣の万冥節にはともに赴き、買い物後の合流も約束する姿が見られる。また顧客の中でも、伊丹一馬には一目を置いている節があり、その行動を興味深く見守っている。 吸血鬼という特性上、純銀や流水に触れると肌を焼かれるため、涙を流すことができない。茜と葵の姉妹をアルバイトとして雇ってからは、幼い2人を穏やかに教育している父性も見られる。他にも、尻尾夫井椎太郎がコメンテーターを務める悪魔向けテレビショッピング番組に、ついツッコミを入れてしまうなど、涙を流す以外なら多種多様な表情を見せる。

黒田 清彦 (クロダ キヨヒコ)

ユージン・グリフィスの助手。西洋人の幼い少年姿だが、300年近く生きている悪魔。60年前、ユージンの助手として命じられた最初の仕事で、シャルロット・アッシュダウンと友だちになった。のちに、200歳差の兄妹として接するようになっている。普段はダークスーツを着込んでいるため見えないが、体中に継ぎ接ぎがある。 手の中で金属を溶解したり、重量のある荷物を軽々と持ち上げることもできる。通常は、肺に使用された少年の名前である黒田清彦の名を使用しているが、本当の名前は、ユージンが名付けた「ウリエル・フランケンシュタイン」という。各部位に使用されている子供はすべて哀れな子供で、黒田は全員の名前を覚えている。

メフィストフェレス (メフィストフェレス)

ユージン・グリフィスの天敵ともいえる悪魔商人。褐色の肌に、前髪のみが黒い長い金髪で、豪奢な服をまとった、好青年に見える人物。単独での行動が多いが、オイフィーリアを伴って現れることもあり、音声として表現されていない彼女の言葉を聞き、会話することができる。人間の欲望をくすぐり、甘く耳障りのいい言葉で誘惑して、破滅させることを楽しんでいる。 かつてヨハン・ファウストに仕え、数々の伝説を生み出したとされる。

オイフィーリア (オイフィーリア)

豪奢なドレスを身に着けた女性の悪魔。メフィストフェレスが伴っている。無表情で言葉を発するシーンもないが、メフィストフェレスにだけはその心情や意図が理解できている。メフィストが対ユージン・グリフィス用に用意していた、天使をかたどった純銀製の籠手(こて)を、赤ん坊のように見せかけて抱えていたりと、さりげなく重要な役割をこなしている。

ダリア (ダリア)

ユージン・グリフィスの商人仲間。上半身は若く美しい人間の女性に見えるが、8本の足と巨大な昆虫の臀部を持っている蜘蛛の悪魔。主食として人間の血液を飲用しており、ブルゴーニュのコート・ドール産だという血液を、ユージンから買い取っている。また普段は優雅な女性として振る舞っているが、テンションが上がると、顔に似合わない非常に下品な笑い声をあげることもある。 ユージンの連絡を受け、6万点が掲載されているカタログから、顧客の望みの品を選び出す。

サニー・ハンプティ (サニーハンプティ)

ユージン・グリフィスの商人仲間。孵化し損ねたひよこに似た姿の鳥型悪魔で、「チキンゾンビ」と自称している。いつもニコニコと柔和な笑顔を浮かべた穏やかな性格。常に死相を浮かべたまま話すこともない、卵の殻型悪魔「ジャンク・ダンプティ」に乗っていることが多く、互いに片割れという認識でいる。人毛や獣毛を主食としている他、販売も請け負う。

ニューマン (ニューマン)

ユージン・グリフィスの顧客。がっしりとした体格の白人男性。結婚したばかりの若く美しい妻に、永遠の若さと美貌を与えることを望み、ユージンから世界最大級のダイヤモンド「天空の窓」を購入した。自己顕示欲が強く、自慢屋。世界の頂点に上り詰めるという野望を抱いており、人としての情に欠ける。

(アイ)

ユージン・グリフィスの顧客。日本の若い女性社員。自分の代理をこなしてくれるものを望み、ユージンから「厄代わり人形」を購入した。物怖じしない性格で、ハキハキとした物言いと面倒見の良さがあり、同僚の麻美とは非常に仲がいい。

麻美 (アサミ)

愛の同僚で2つ年下の若い女性社員。小柄でオドオドとしたところがあり、チンピラに難癖をつけられても言い返すことができない性格。そのため、勝ち気な性格の愛を頼りにしている。人形を愛好するなど少女趣味でもあり、彼氏にも臆面なく甘えることができる。

人魚堂の主人 (ニンギョドウノシュジン)

ユージン・グリフィスが蠟燭の仕入れに訪れた、生掛(きがけ)蠟燭の職人。運命金貨による交易で悪魔との売買ルートを確保したのはいいが、客層の悪さに辟易していた。商魂逞しく、ユージンの仲介を通さずに、買い手と直接交渉した方が儲かると考え、店を出たユージンの後を尾行するなど度胸がある。

死神 (シニガミ)

ユージン・グリフィスの顧客。日本髪を結った着物姿の若い女性に見える。ところが、胸元から下は骨が向き出しになっており、下半身は無数の人骨が蛇のように連なっている。死神の屋敷の中では時間がゆっくりと進み、蠟燭1本が燃え尽きるまでに60年ほどかかる。人間の寿命を、個人名を書いた蠟燭の消費で計算し、管理、記録することを生業としている。

伊丹 一馬 (イタミ カズマ)

ユージン・グリフィスの顧客。反抗期らしい強気さを持った男子中学生。愛犬を殺され、その犯人を同じ目に遭わせてやりたいと望み、ユージンから「狭間へのいざない」を購入した。将来は獣医になりたいという夢を持つだけあり、一を聞いて十を知るように聡明。日頃から日記をつけるマメさも見せ、運命金貨を入手してからも、その使い道は堅実。 インターネットカフェ「ふぁみりえーる」をよく利用している。のちにユージンから「物語ものがたり」も購入し、伊丹一馬の友人に使用した。

伊丹一馬の叔父 (イタミカズマノオジ)

伊丹一馬の叔父。一馬の父親の弟で、ギャンブルや眉唾モノの儲け話に飛びつくようなヤクザ者。一馬の父親に金の無心をするため何度も通っており、それを断られた腹いせに、一馬の愛犬を殺害した。一馬に対しても、血縁者としての愛情を感じさせない残虐な態度を見せる。

イサドル (イサドル)

牧師服に身を包み、十字架に似た木の芽デザインのネックレスを提げた少女。ユージン・グリフィスから購入したアイテム「狭間へのいざない」によって、伊丹一馬がインターネットカフェ「ふぁみりえーる」で会話することになった魔女。ネックレスに血液を垂らすことで、相談者の願いの成就に力を貸す。

シャルロット・アッシュダウン (シャルロットアッシュダウン)

イングランド中部に大邸宅を構えている上品な老婦人。黒田清彦の妹を名乗っている。60年前、ユージン・グリフィスから購入した「灰かぶりの夜蜂」を母親が、誤用したことにより容姿が変貌して、自殺するまでの一部始終を目撃していた。その直後は悪魔に対し非常に怯えた様子を見せていた。しかし、ユージンから友人になるように、と命令を受けた黒田を兄と慕うようになり、シャルロット・アッシュダウンが年老いてからも、その関係は変わっていない。

佐藤 (サトウ)

ユージン・グリフィスの顧客。少々内気な男子学生。友人を作れないことに悩み、話したい時にしっかりと言葉を出せる度胸が欲しいと願い、ユージンから「寛大な舌」を購入した。もともと、友人を作るために勉強、スポーツ、趣味、容姿にも気を遣っていた努力家。しかしメフィストフェレスに不安を煽られ、メフィストフェレスからも「飲み薬」を購入してしまう。

高西 かおり (タカニシ カオリ)

ユージン・グリフィスの顧客。高飛車な女性。以前からユージンとは取引をしていた。とある殺人事件を目撃したことで犯人を強請(ゆす)るため、社会的、生命的に守ってくれて知恵の湧くものを望み、「凶悪人の胆力」を購入した。その後は運命金貨を持っていない人間たちと悪魔商人たちの仲介役として、交易の幅を広げている。

関本 詩織 (セキモト シオリ)

ユージン・グリフィスの顧客。ごく普通の主婦。近隣の主婦たちから執拗ないじめを受けており、その中核にいる主婦の殺害と、その後の身の安全を望んで「地獄の強運」を購入した。冷静に状況判断を下せる我慢強さを持っており、目的達成後は、主婦仲間に影響力を及ぼせる地位を確立し、ユージンを手助けする一角を担う。

不破橋 宗佑 (フワバシ ソウスケ)

ユージン・グリフィスの顧客にして旧知の仲。不破橋運輸の会長を務めていた老人。溺愛するひ孫、茜と葵を幼くして亡くし、この2人を、悪魔に生まれ変わりさせるため、「口寄せオバケへの依頼状」を購入した。遺産目当てに集まった親戚一同を、バルーンアートの悪魔と黒田清彦の力を借りて、人払いする計画を立てた。 また茜と葵の心を動かすために、「不破橋宗佑の自刃刀」であっさりと自決。後のことをユージンに丸投げして、言いくるめてしまう胆力の持ち主。

バルーンアートの悪魔 (バルーンアートノアクマ)

陽気な悪魔。不破橋宗佑の屋敷に集まった親戚たちを、怖がらせて人払いするために雇われた。体そのものがバルーンアートで作られた人形の姿をしている。人間そっくりに作られたバルーンアートを自在に操ることができ、普段は週末の横浜で街頭芸人として活躍している。

葵、茜 (アオイ、アカネ)

不破橋宗佑のひ孫で、幼くして亡くなった双子の姉妹。剥き身の魂として漂っていたところ、宗佑の願いにより「口寄せオバケへの依頼状」を介して呼び出された。宗佑の自決によって、激しい悲しみに襲われた結果、悪魔として生まれ変わりを果たした。その後はユージン・グリフィスのもとでアルバイトをしながら、悪魔としての暮らしを学んでいる。

ネクロマンサーのゾンビ (ネクロマンサーノゾンビ)

「ネクロマンサー」と呼ばれる占い師のゾンビ。不破橋宗佑が「口寄せオバケへの依頼状」で招いた。人間の死体に死霊を憑依させて、会話を仲介することができる。羽織をまとった着物姿の若い女性だが、腕が4本ある。本来は他人の死体に死霊を憑依させることが仕事。しかし、ネクロマンサーのゾンビ本人が死んでいるため、自分自身の体に降霊を行う。 また降霊中は霊の顔に変貌し、複数人の降霊に際しては、頭部が人数分に分裂する。

牧水 勇太 (マキミズ ユウタ)

不破橋宗佑の大甥。気難しそうに眉間を寄せた、痩せ型の中年男性。遺産相続を狙って集まった又従兄弟の孫や兄の隠し子、妾の孫など、それまで顔を合わせたこともない親戚の中で、唯一冷静に周囲を見ていた。運命金貨による交易の環を新興宗教だと考えており、バルーンアートの悪魔が姿を現した後も、その存在をなかなか認めようとしなかった。

ムルタ (ムルタ)

アイルランドの北の湖にある、小さな島に暮らしている男性。モールーとともに生活しており、食事はモールーの尻尾を摂り、その代わりにモールーには、ムルタ自身が血液を与えている。悪魔の友人や外の世界を知らないモールーを案じていた。一夜の宿を求めたユージン・グリフィスから、謝礼として運命金貨を受け取り、モールーに複数の悪魔との交流を持たせることに成功する。

モールー (モールー)

アイルランドの北の湖にある、小さな島に暮らしている海トカゲ族の未成熟体の悪魔。少年とも少女ともつかない人間の体に、トカゲの尾や魚類に似たヒレを複数持っている。ムルタとともに生活しており、食事はムルタの血液を飲み、その代わりに、ムルタにはモールー自身の尾を切断して与えている。島で生まれ育ったため、外の世界や他の悪魔を知らない。 海トカゲ族の尻尾は非常に価値があり、高額の運命金貨で取引される。

サンタクロース (サンタクロース)

クリスマスに現れる、かつて聖人とされた悪魔。巨大な一輪車に大きな袋を乗せ、鈴を鳴らしながら天空を翔る。牙や角のある悪魔の顔面骨格を仮面として付けているが、その素顔は若い女性。交易世界の環の外にいる者だが、人間からヒールのかかとや猫用缶詰など、ガラクタのような物を略奪しながら、代わりに小さな幸福を与えている。

ブリュノー (ブリュノー)

ユージン・グリフィスの顧客。900年前に生きていたフランスの騎士。女主人が異端者と不貞を働き、愛の証として送られた指輪を紛失。そこで領主から拷問を受ける女主人のため、指輪を盗んだ賊を追ったが、返り討ちに遭って死亡した。しかし無念が残り、ユージンから女主人の指輪を購入した。

金子 信貴 (カネコ ノブタカ)

特殊詐欺グループのリーダーで、松方の部下。詐欺の売り上げを海外に輸送するための換金アイテムとして、「魂を追うもの」を利用していた。悪魔商人が必要数をそろえられず、「ガラスの棺の男」を寄越したため、見た目のインパクトや輸送費などに困窮した結果、「ガラスの棺の男」の買い取りを申し出た黒田清彦を利用しようと考える。 悪魔の殺し方もいろいろと心得ている。

松方 (マツカタ)

金子信貴のボスで、日焼けした褐色肌が特徴の初老の男性。背は低く痩せ型だが、話し方や立ち居振る舞いに威圧感がある。金子以外にも大勢の取り巻きや部下がおり、携帯電話で会話する際にも、部下に手で捧げ持たせている。葉巻を愛用しており、シガーカッターを常備している。ユージン・グリフィスとは緩やかな取引を続けている。

トリリアン (トリリアン)

豪華客船「オーシャン・エンプレス号」でユージン・グリフィスが出会った少女。父親の形見だった運命金貨を、ペンダントトップに加工して所持していた。無実の父親を陥れて家族を崩壊させたレイラの本性を衆目に晒すことを願い、ユージンから「走馬糖」を購入した。

レイラ (レイラ)

トリリアンの父親に無実の罪を着せ、一家を崩壊に導いた女強盗。強盗を続けることに限界を感じ、保険金や遺産を手に入れる算段で金持ちと結婚。豪華客船「オーシャン・エンプレス号」でハネムーンを楽しんでいた。トリリアンの死によって窮地は乗り越えたはずだったが、前田翼に糾弾されることになる。

前田 (マエダ)

中小企業の社員旅行で豪華客船「オーシャン・エンプレス号」に乗っていた守衛の壮年男性。社長をはじめとして社員たちに慕われており、元警察官のため正義感も強く、悪人を見抜く目もある。若い頃に運命金貨を手に入れたが、これまで取引は行ってこなかった。妻が亡くなった直後から不仲が続いている息子の前田翼を伴って船旅に参加。 しかし、息子との距離感を掴めず、その状況を打開するため、メフィストフェレスから「蛇のような膏薬」を購入する。

前田 翼 (マエダ ツバサ)

前田の息子。社員旅行に付き添わされ、豪華客船「オーシャン・エンプレス号」に乗った男子学生。3か月前に一度手にした運命金貨を口実に、メフィストフェレスから接触を受けた。母親が死ぬ一因を作ってしまった後ろ暗さから、前田と顔を合わせることができない。船の中でも彼から逃げ回るために、メフィストから「蛇のような膏薬」を購入する。 正義感が強い性格で、偶然目にしたレイラの悪事を糾弾する。

ミュシタ (ミュシタ)

豊穣の万冥節のオークションで、「ガラスの棺の男」として出品されていた悪魔。全身が白く、表情の乏しい男性の吸血鬼。変化するのも巨大な白いコウモリ。ユージン・グリフィスが人間だった頃に、手負いのところを拾われた。その後ユージンに自らの正体を明かし、悪魔の知恵を授けて師と仰がれるようになった。生前はギリシア神話に登場するフリギュアの王・ミダースであった。 ミュシタに血液を吸われた者は、身体の内部が金塊に変化するという特性を持つ。

伊丹一馬の友人 (イタミカズマノユウジン)

伊丹一馬のクラスメイトで、中学受験からともに勉強していた友人。一般的な男子生徒として生活を送っているが、週末になると生活圏外に出向いて、猫を捕らえては解体するサイコパス。ターゲットを猫から幼児に変更しかけていたところ、伊丹一馬の友人の言動を不審に思った一馬によって、「物語ものがたり」を使用される。

サディアス・グリフィス (サディアスグリフィス)

ユージン・グリフィスが人間だった頃の実父。貴族であり貿易商人。乗馬中の事故で大怪我を負い、別宅で寝たきりの生活を余儀なくされた。ユージンに対する態度は冷淡で厳しく、肉親としての愛情をあまり感じさせない。長期間にわたって正妻との子供に恵まれなかった。

ヘクター・グリフィス (ヘクターグリフィス)

ユージン・グリフィスが人間だった頃の叔父。幼かったユージンが成人するまでの間、サディアス・グリフィスの資産や経営する会社の管理を申し出た。サディアスが事故に遭う直前に、家畜が舐めると暴れ死ぬという劇薬を購入している。

セロン・グリフィス (セロングリフィス)

ユージン・グリフィスが人間だった頃の実弟。ユージンがサディアス・グリフィスの介護役として別宅に移される際、サディアスの正妻とともに海外に引っ越した。グリフィス家で唯一ユージンを慕って心を通わせ、離れて暮らしながらも、手紙のやりとりを欠かさなかった。

アポリナ (アポリナ)

生前のユージン・グリフィスが暮らしていた屋敷の近くに住んでいた婦人。ユージンがサディアス・グリフィスとともに別邸に移される際にも、見送りに来ていた。一族とは関係のない人間でありながら、親類の大人たちの誰よりも、ユージンに対して優しく接していた。ユージンが別宅に移って半年も経たぬうちに、心を病んで衰弱死した。

美咲 (ミサキ)

霊能力があると言って怪談話を披露し、クラスメイトを楽しませていた女子高生。友人たちと行ったカラオケで、歌本に挟まれていた運命金貨を入手した。いじめを受けていたクラスメイトを放っておけず庇ったところ、廃墟に閉じ込められ、潜んでいた不良たちに暴行を受けそうになる。すんでのところで登場したユージン・グリフィスから、「子供だましの化けだぬき」を購入した。

ヨハン・ファウスト (ヨハンファウスト)

かつてメフィストフェレスが契約していた人間の錬金術師。ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ著作の『ファウスト』に登場するファウストその人。しかしその最期は原典の『ファウスト』と違い、皇帝から与えられた広大な土地を開拓し、民に分配して人々を幸福に導こうとしていた。

尻尾夫井 椎太郎 (シッポオイ シイタロウ)

テレビのコメンテーター。ユージン・グリフィスが視聴している、さまざまなテレビ番組に登場する。眼鏡をかけた男性の悪魔だが、額、耳、スーツの随所に、タイヤキを貼り付けたインパクトのある容姿をしている。魔界タイヤキ連盟の会長を務めているが、どんなに働いてもタイヤキに関わる仕事は来ない。

集団・組織

交易世界の環の外にいる者 (コウエキセカイノワノソトニイルモノ)

運命金貨のルールに従って売買を行っていない者。交易世界の環の外にいる者の悪魔の多くは、昔ながらの暴力や悪知恵を用いた方法で、自分よりも弱い相手から、欲しいものを欲しいだけ奪っていく場合が多い。またバベルハイムに与する悪魔でも、交易世界の環の外にいる者に対しては、暴力などの略奪行為を行うことが確認されている。

場所

ふぁみりえーる (ファミリエール)

伊丹一馬がよく利用しているインターネットカフェ。特定の条件下で狭間へのいざないを店頭カウンターに提示すると、店員が魔女イサドルと会話できる場所に案内してくれる。コミックや小説も豊富で、伊丹一馬の友人に物語ものがたりを使用する作品を物色する際にも利用された。

幸福の島 (コウフクノシマ)

豊穣の万冥節が開催される、地中海に浮かぶ島。交通はフェリーやクルーザーが主体で、祭の開催時期になると、世界中の悪魔や人間たちの来訪を受ける。祭の最中は、石造りの家々の他にさまざまな露店が並び、広いオークション会場もあつらえられている。

オーシャン・エンプレス号 (オーシャンエンプレスゴウ)

横浜と台湾を結ぶ豪華客船。広い船内にはドレスコードのあるパーティー会場やゲームセンター、プール、バーやラウンジ、ヘリポートなど、多くの施設が存在している。ミュシタが復活して以降2週間消息を絶ち、海上保安庁が捜索していたが、無人で発見された。

イベント・出来事

豊穣の万冥節 (ホウジョウノバンメイセツ)

運命金貨による縁を結ばれた者だけが参加を許される祭。卸売業者たちが持ち寄った自慢の品を露天に並べ、仲卸、小売商人、観光客も交えて賑やかに取引を行う。幸福の島で毎年開催されており、ここでは運命金貨の他、金塊でも取引が可能。暴力的な参加者を戒めるため、邏卒(らそつ)と呼ばれる見回り兵士たちがいる。

その他キーワード

バベルハイム (バベルハイム)

常夜の国。運命金貨を中心とした独自の交易世界。バベルハイムに関する明確な説明は作中にない。しかし、運命金貨を新たに入手した相手にユージン・グリフィスが挨拶する際、交易世界の輪の中に招待された旨の説明とともに、「バベルハイムへようこそ」という挨拶を行っている。

生まれ変わり (ウマレカワリ)

一度肉体が死亡した後、再度生を受けること。1つの魂は3回の生まれ変わりを経験するとされている。生まれ変わりでは、必ず魂が未経験の種族になることが決定されている。例えば最初に人間だった魂は、悪魔か精霊にしかなれない。各種族を1回ずつ経験した後には、本当の滅びが待っているといわれており、その先になにがあるのかは、悪魔たちも知らない。

人間 (ニンゲン)

世界に3つ存在する種族のうちの1つ。基本的に異端な能力を持たず、悪魔に比べて力も弱く、知識も浅いとされている。しかし精霊が生まれるには、人間が持つ信仰の力が必須となる。人間から生まれ変わりできるのは悪魔か精霊に限られ、人間の前に悪魔だった者は、精霊に生まれ変わることが決定づけられている。

悪魔 (アクマ)

世界に3つ存在する種族のうちの1つ。容姿、能力、知恵、すべてにおいて人間を凌駕する存在。中には神や神の御使いとして崇められる者もいる。しかし、ある国の神話では神であっても、別宗教の教典では異教の神として悪魔化されることがあるように、別視点から見ると忌み嫌われる存在であり、人間と共存しにくい点において共通しているので、特性によって悪魔、精霊と一括りにされている。 またバベルハイムに与する悪魔の中には、自分と同等、もしくはそれ以上に強い悪魔と戦わずに、欲しいものを手に入れる目的で運命金貨を使用している場合がある。そういった者は、相手が人間や自分より弱い場合でも、運命金貨を使用している相手ならば、ルールに従った売買を行う。 しかし、交易世界の環の外にいる者を相手にした場合には、本性を現し、欲しいものを略奪していく。

精霊 (セイレイ)

世界に3つ存在する種族のうちの1つ。人間や悪魔とは異なり、触ったり話したりすることができない存在で、人間や悪魔のような生活はできない。こんな神がいるかもしれないという意識や、広く信じられる都市伝説から生み出される。人間が精霊本人に向ける信仰や噂といった意識そのものを食べており、それが足りない場合は、人間の欲望を食べる。 そのため、悪魔商人を運命金貨の持ち主のいる場所に導くことがままある。

運命金貨 (ウンメイキンカ)

人間と悪魔の間で共通して使用される通貨。これを所持した人間は、バベルハイムに永遠に組み込まれる。また何らかの事情で取引をやめたくなった場合は、「売るものも買うものもない」と断り続けることが推奨されている。これを破って取引自体から退く旨を口にした場合、交易世界の環の外にいる者として見なされ、危険が及ぶ恐れがある。 悪魔と取引ができるアイテムとして、都市伝説的に語られているが、現実にはアンティーク金貨としてオークションに出品されていることもある。1オンス、4分の1オンス、10分の1オンスなどの種類がある。

天空の窓 (テンクウノマド)

ニューマンがユージン・グリフィスから購入した、200カラットのダイヤモンド。手放さない限り、所有者に永遠の若さと美しさを与え続ける。面倒な代償やリスクもないが、譲渡する相手以外の人間に見せてはならないという条件がある。条件が破られた場合、所持者の大切な人間が死亡する。本来は王家の宝物を盗掘者から守らせる代わりに、門番に永遠の命を与える宝石として使用されていた。

恨み舌 (ウラミジタ)

リサイクルしたティースプーン。天空の窓に取り憑いていた、金銭絡みで命を落とした者の恨みがこもる金のネックレスを、黒田清彦が溶解し再形成したもの。これで飲み物などをかき混ぜると、飲んだ相手に小さな不幸が訪れる。日常のささやかな復讐に最適で、素人でも扱いやすい。のちに渋谷の露店で販売されていた。

厄代わり人形 (ヤクガワリニンギョウ)

愛がユージン・グリフィスから購入した、愛そっくりの人形。言葉を話すこともでき、教えれば、ある程度の仕事をこなすことも可能。購入者に降りかかる厄災を身代わりし、日常生活を守る。ただし、購入者が普段行わない行為は、厄代わり人形にも行わせてはならない。破った場合は代替部品が必要となる。本来は自動人形たちが、自分のスペアとして常備している人形。

狭間へのいざない (ハザマヘノイザナイ)

インターネットカフェ「ふぁみりえーる」の会員証。伊丹一馬がユージン・グリフィスから購入したもの。本物の魔女と一度だけ話す機会を得られ、占いやまじないなどを依頼することが可能。午後6時に来店し、店頭カウンターで提示すると、魔女イサドルと会話できるブースに案内される。利用自体にリスクはない。

ガラスの棺の男 (ガラスノヒツギノオトコ)

ベネチアの水没しかけた廃屋から引き上げられたという謎の物体。メフィストフェレスが豊穣の万冥節のオークションで落札した。なぜ、どうやって作られたか、また内包されているのは何者なのかを示す一切の文献がない。誰が作成したのかは謎のままだが、内包されていたのはミュシタであり、棺の形の特殊ガラスは、ミュシタの魔力を吸い出して他人に分け与える効果がある。

灰かぶりの夜蜂 (ハイカブリノヨルバチ)

イジェクト部分に蜂があしらわれた長いシガレットホルダー。灰かぶりの夜蜂を通して肺の中に取り込んだ煙を吐くと、その煙を吸った男性を、無条件で自身の恋の虜にすることができる。ただし深夜12時以降に使用すると、体が巨大な女王蜂に変貌し、あらゆる虫たちのオスを引き寄せてしまう。シャルロット・アッシュダウンの母親が、生前にユージン・グリフィスから購入した。

思い出の挨拶 (オモイデノアイサツ)

ケースに砂時計があしらわれた口紅。快適な時間を少しだけ長持ちさせる効果がある。ただし使用している間は時間の感覚が狂ってしまうため、灰かぶりの夜蜂と併せて使用するのは非常に危険。シャルロット・アッシュダウンの母親が、生前にメフィストフェレスから購入した。

寛大な舌 (カンダイナシタ)

鼻腔テープに似たテープ。佐藤がユージン・グリフィスから購入したもの。顎と首の境界に貼ることで、胸に詰まった言葉を、聞き心地のいい言葉に変え、スムーズに声に出すことができる。ただし寛大な舌を使用中に食事をすると、この世のものではないような美味に感じるため、過食に注意が必要。

飲み薬 (ノミグスリ)

印籠に入った飲み薬。佐藤がメフィストフェレスから購入したもの。使用者が望めば望んだだけ意志が強固になる。ポジティブな気分の時に飲用すると、根性がつくとされる。ただしネガティブな気分の時に飲用すると、不安が強固になり、すべてを投げ出したくなる気分になってしまう。

凶悪人の胆力 (キョウアクニンノタンリョク)

手のひら大の人形。高西かおりがユージン・グリフィスから購入したもの。使用する際には、人形の中に家の壁を削った土を入れて、呪文を唱えるという儀式を要する。使用者が冷静な間は、悪事を成すための悪知恵を与えてくれる。使用者が感情を昂ぶらせると、一度だけ暗殺を成功させることができる。

地獄の強運 (ジゴクノキョウウン)

手のひら大の人形。関本詩織がユージン・グリフィスから購入したもの。使用する際には、人形の中に使用者の髪を入れて呪文を唱えるという儀式を要する。使用者が犯した悪事を、考えられないほどの偶然と幸運で隠蔽してくれる。さらに、仮に使用者が裁かれそうになった場合でも、無実を勝ち取らせてくれる。

口寄せオバケへの依頼状 (クチヨセオバケヘノイライジョウ)

ネクロマンサーのゾンビを購入者のもとへ招くための書状。購入者が話をしたい者を、ネクロマンサーのゾンビに憑依させることができる。不破橋宗佑がユージン・グリフィスから購入したもので、ひ孫である茜と葵を悪魔に生まれ変わりさせるための儀式の一環として使用した。

不破橋宗佑の自刃刀 (フワバシソウスケノジジントウ)

刺した者を爆弾の塊に変貌させるという呪いがかかっている短刀。不破橋宗佑がひ孫の茜と葵を悪魔に生まれ変わりさせるための儀式に際し、宗佑自身の感情の揺れが儀式を中断させることのないようにと、ガラスの棺の男の力を利用して、手ずから製作したもの。

魂を追うもの (タマシイヲオウモノ)

太めの枯れ枝をコケシに加工したような人形。本心を聞き出したい相手の本名を、質問とともに呼びかけると、一度だけ聞き出すことができる。ただし使用後は灰になって消える。金子信貴や松方が、特殊詐欺の売り上げを海外に輸送するための換金アイテムとして利用した。

走馬糖 (ソウマトウ)

中心に心臓をあしらった花のような形の砂糖。これを口にした者は、死ぬ直前に、当人が最も重大な秘密としてきた出来事を、映像として衆人環視の中に晒すことになる。秘密が多い者の場合、どの秘密が採択されるか、他人があらかじめ知ることはできない。トリリアンがユージン・グリフィスから購入した。

蛇のような膏薬 (ヘビノヨウナコウヤク)

短い包帯程度の幅と長さで、万能薬が塗布されている膏薬。前田、および前田翼がメフィストフェレスから購入したもの。本来は、怪我や病気をした際にこれを貼り付け、無事な状態の体を強くイメージすると、一瞬で治療することができる。メフィストフェレスはこれを前田親子に販売する際、ミュシタに血液を与えて蛇のような膏薬の効力を数十倍に増幅し、前進を大幅に変化させるという案を提示した。

ヴァン・ヘルシング (ヴァンヘルシング)

十字架をかたどった入れ物に入っている薬液。ユージン・グリフィスが、復活しかけているミュシタに振りかけようとしたもの。吸血による捕食を行うタイプの悪魔に深刻なダメージを与える。その危険性のため、悪魔同士でしか取引が許可されていない。また商品名は単なるイメージであり、特定の人物が素材に使用されているわけではない。

物語ものがたり (モノガタリモノガタリ)

観音開きの扉をあしらった栞。伊丹一馬がユージン・グリフィスから購入したもの。本を右手に持ち、左手で物語ものがたりを体に押しつけると、右手に持った本の世界を体験することができる。栞を破ると現実世界に戻ることができるが、物語内のルールには準拠しなくてはならない。なお、物語世界と現実世界のギャップは、現実世界に戻る際に自動的に解消される。

子供だましの化けだぬき (コドモダマシノバケダヌキ)

にわか煎餅を思わせる顔が描かれた仮面。美咲がユージン・グリフィスから購入したもの。枯れ葉と狸毛のファーで作られている。この仮面をつけている間、任意の相手に、好きな期間、好きな姿に化けて見せることができる。躾に困った親たちに好評なアイテム。なお、対象となる相手以外には効果は発揮されない。

かつて満たされざりし者ここに満たされるべし (カツテミタサレザリシモノココニミタサレルベシ)

ユージン・グリフィスが同業者や取引相手に配布を頼んだ護符。ミュシタが運命金貨を持っているデザインで、商売とお金の精霊の護符、おまじないと称して、一般の人間たちに広めていった。紙自体に効力はなく、複製品でも効果を発揮する。

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