概要・あらすじ
素敵な恋愛に憧れているものの、恋人どころか好きな人もなかなかできない毎日を送っていた藤吉絵里子は、朝早くから大学に行ったはずの姉・藤吉留衣子をホテルの前で見かける。しかし、不意に見知らぬ男からバッグをぶつけられ、姉を見失ってしまう。その男は同級生の問題児・麻生有二であることが後から判明する。そんなある日の放課後、買い物中に万引き犯に間違えられた絵里子は、とっさの機転を利かせた有二に助けてもらう。
有二のことが頭から離れなくなる絵里子だったが、家の前で抱き合う留衣子と有二を目撃し、2人が恋人同士であることを知る。少しでも有二とのつながりを持ちたかった絵里子だったが、留衣子の気持ちを思い、これ以上は有二に踏み込むべきではないと考える。
登場人物・キャラクター
藤吉 絵里子 (ふじよし えりこ)
青条高校に通う1年生の女子。不器用で要領が悪く、母親からは姉の藤吉留衣子と比較されては溜め息をつかれることが悩みの種。そのためか、少しだけひねくれた性格をしている。しかし、一度自分で決めたことは最後まで曲げずに頑張る芯の強さを持つ。ホテルの前でバッグをぶつけられた麻生有二が同じ学校に通っていることを知り、いつしか彼に惹かれるようになっていく。 有二が留衣子の恋人だと分かってからも、気持ちを抑えられず、想いの行き場をなくして苦しむこととなる。有二を忘れるため、榊芙美の恋人に紹介してもらった麻生紘人と付き合おうと前向きになるが、紘人もかつて留衣子の恋人だったことが判明し、もともと壊れかけていた姉妹関係がさらに悪化してしまう。
藤吉 留衣子 (ふじよし るいこ)
藤吉絵里子の姉で、大学生。家では品行方正な娘を演じて両親から絶大な信頼を得ているが、実は感情の浮き沈みが激しく、自分の精神状態が不安定な時は、絵里子に対して冷たく意地悪な態度を取ることもある。結婚の約束までしていた麻生紘人と別れた後、自分のことを大切に思ってくれる麻生有二を都合のいいように振り回しては心の隙間を埋めようとしてきた。 しかし、有二に惹かれ始めている絵里子の気持ちに気がつき、2人に対して辛く当たるようになる。やがて紘人までもが絵里子に惹かれているような素振りを見せたことに激昂し、絵里子との姉妹関係に大きな亀裂を作ってしまう。
麻生 有二 (あそう ゆうじ)
青条高校に通う1年生の男子。わけあって1年留年しているため、藤吉絵里子とは同学年だが歳は1つ上。また、長身で落ち着いていることもあり、とても高校生には見えない。校内でも一目置かれる存在だが、友達と呼べる相手が1人もいないという孤独な面もある。兄である麻生紘人の恋人だった藤吉留衣子に中学生の頃から憧れており、留衣子が紘人と別れた後もずっと彼女のそばにいようと誓いを立てている。 ふとしたことから藤吉絵里子と知り合い、留衣子の妹だと知って近づいたが、それが結局、絵里子と留衣子の両者を傷つけてしまうことになる。留衣子を捨てた紘人を嫌っており、両親とも折り合いが悪い。ダイビングショップ「Sea Canary」(シーキャナリー)でアルバイトをしながら生計を立てており、店長の大山隆一の家に居候中。
麻生 紘人 (あそう ひろと)
麻生有二の兄で、大学生。藤吉留衣子と長年付き合って結婚の約束までしていたが、社会的に地位が高く厳格な父親に留衣子との交際を反対され、別れる羽目になった。大学の知人の紹介で偶然にも藤吉絵里子と出会い、留衣子の妹と知りつつも惹かれて付き合うことになる。その際、自分の名字を言いそびれてしまい、たまたま持っていた友人の本に書かれた名前を絵里子が勘違いしたため、仕方なく「水野」と名乗ることになる。 親に対して反抗的な有二とは裏腹に、親には逆らえない性格。だが、心の奥底では別れた今でも留衣子を大切に想っている。
水谷 一子 (みずたに かずこ)
青条高校に通う1年生の女子で、藤吉絵里子の友達。絵里子とはお互いのことを何でも話し合い、良き相談相手として支え合っている。比較的控えめな性格で消極的だが、根はしっかりしており、絵里子や榊芙美にはっきりと自分の意見を言うこともある。クラスメイトの的場始のことが好きだが、一方的な片想いのままなかなか前進することができずにいる。 「イチ子」という愛称で親しまれているため、本名がクラスであまり浸透しておらず、的場にも知られていなかったことで深く傷つく。
榊 芙美 (さかき ふみ)
青条高校に通う1年生の女子で、藤吉絵里子の友達。大人びたところのある恋多き美女で、恋人が次々と変わる。麻生有二への想いを忘れようとする絵里子に頼まれ、自分の恋人の知人である麻生紘人を紹介する。気まぐれな性格で、時に絵里子や水谷一子に対し無神経な一言を言うこともある。特に一子の奥手な態度に関しては、つい余計なことを口走ってしまいがち。
的場 始 (まとば はじめ)
青条高校に通う1年生の男子で、藤吉絵里子のクラスメイト。親元を離れて下宿生活を送っており、下宿中のアパートには絵里子をはじめとする友人たちが集まって、泊まりがけで試験勉強をすることもある。お調子者ではあるものの、根は真面目で友達想い。しかし、自身に寄せる水谷一子の一途な気持ちにはまったく気づいておらず、仲が良いことを理由に一子に無神経な発言を繰り返しては、絵里子と榊芙美によくたしなめられている。 同じクラスの中に好きな相手がいるようだが、仲間内にはその存在を明らかにしていない。
彩原 栞 (あやはら しおり)
名門私立の宮園学院高校に通う女子。もともと麻生紘人の婚約者だったが、麻生家の意向によってのちに麻生有二の婚約者となる。裕福な家庭で何不自由なく育ち、幼い頃からずっと親の言いなりだった。しかし心の奥底では自分なりに反発心を持っており、有二だけはその一面を密かに知っていた。後先のことをあまり考えないところがあり、ある日突然、家出をして有二のもとを訪ねて来る。
大山 隆一 (おおやま りゅういち)
麻生有二がアルバイトをしている、スキューバダイビングショップ「Sea Canary」(シーキャナリー)の店長を務める中年男性。父親に反発して家を飛び出して来た有二に理解を示し、自宅に居候させている。スキューバダイビングが生きがいで、海外へ潜りに行ったまま長期間不在になることもあり、その時は有二が留守を預かっている。 有二から父親のように慕われており、彼に対しても一人前の男として接している。