概要・あらすじ
上田としこは、漫画家松本かつぢと出会い、成り行きから彼の弟子としてイラストを描くことになる。初めはなかなか認められなかったが、師事してから半年後、小学館の雑誌の仕事を任される。これをきっかけに漫画家としての実績を積んでいくとしこだったが、活動中に太平洋戦争が勃発。後の身の振り方を考えた末に、生まれ故郷である満州のハルピンへと向かうことになる。
登場人物・キャラクター
上田 としこ (うえだ としこ)
女性漫画家。生まれてすぐに満州のハルピンへ渡り、12歳まで過ごした後、東京へ渡る。後に漫画家松本かつぢに師事して自らもプロとしての活動に着手。頭角を現してゆき、やがてハルピンでの体験を基に、代表作の1つとなる『フイチンさん』を著すことになる。 実在した女性漫画家上田としこがモデル。
村上 もとか (むらかみ もとか)
この作品の作者。小学2年生の時、友人に見せてもらった少女雑誌に連載されていたフイチンさんを読み、深い感銘を受ける。実在する漫画家村上もとかがモデル。
手塚 治虫 (てづか おさむ)
漫画家。『フイチンさん』を日本の漫画史に残る名作と評し、読者として楽しみにしていると上田としこにエールを送った。としこもまた、彼を若き天才と讃えている。実在した漫画家手塚治虫がモデル。
松本 かつぢ (まつもと かつぢ)
漫画家。上田としこが通っていた女学院で人気を博しており、その人物像にみんな興味を持っていた。松本本人は豪快な人物で、としこを弟子に取り、厳しくも思いやりのある指導を行う。彼女に初仕事を任せ、としこがプロデビューした後も家族ぐるみで長く交流を続けた。実在した漫画家松本かつぢがモデル。
上田 熊生 (うえだ くまお)
上田としこの父親で、長身の偉丈夫。満州のハルピンで銀行員を務めた後、起業。民族、習慣も含めて、ハルピンを愛し続けた。「働いていただいている」と考えるなど、使用人などに対しても細かな気配りができる反面、妻の總子とは不仲な時期もあった。
上田 總子 (うえだ ふさこ)
上田としこの母親で、日本橋出身。やんちゃなとしこに手を焼いていたものの、漫画を描くという彼女の夢に理解を示す。おしとやかながらもしたたかな一面を併せ持ち、その性格はとしこや康子にも受け継がれている。
上田 淳一 (うえだ じゅんいち)
上田としこの兄で、上田家長男。秀才で、弟妹の尊敬を一身に集めていた。小学5年の時に家族を離れ親戚の元で勉学に励み、早稲田大学に進学。左翼的な思想を持っており、戦時中は父熊生と口論になる事もあった。
上田 康子 (うえだ やすこ)
上田としこの姉で、上田家長女。年が近いこともあり、としことは仲が良く、幼い頃はよく一緒に遊んでいた。器量がよく、いい嫁になれると期待を持たれていたが、父母が不仲だった影響で嫁ぐ気はない様子。としこの漫画家としての活動を応援しており、としこのアシスタントの役割も果たしている。
上田 裕二 (うえだ ゆうじ)
上田としこが5歳の時に生まれた弟で、上田家次男。ハルピンの学校を卒業後に戦争の召集令状が下り、戦線に赴いた際に病に倒れるが、母總子の懸命な介護によって一命を取り留める。その後も長く病に苦しむが、やがて回復し、神田でレストランの経営を始めた。
弦田 英太郎 (つるた えいたろう)
東京美術大学の出身で、漫画サークルの一員。熱心にイラストの勉強に励む上田としこに興味を持ち、サークルへ迎え入れる。様々な勉強を共に行い、そのうちとしこに友情とも愛情ともつかない意識を向けるようになるが、最終的には生涯の友という形で落ち着いた。
藤岡 英興 (ふじた ひでおき)
東京美術大学の出身で、弦田英太郎の親友。ハルピンで育った上田としこの生き方や姿勢に憧れていた。パリに渡って油絵を描くという夢を持っていたが、その夢をかなえることなく、腸閉塞によって若くして世を去ってしまう。
近藤 日出造 (こんどう ひでぞう)
政治漫画家。真面目で自他共に厳しく、上田としこに対して「漫画家として成功するには人生経験が足らない」と真摯に指摘し、彼女の姿勢に大きな影響を与えた。実在した漫画家近藤日出造がモデル。
欧 (おう)
上田としこの父、熊生の経営する会社の社員。熊生を強く尊敬しており、彼がハルピンの孤児院や養老院などに援助している様子を上田としこに見せ、親子関係の円滑化を促す。日本の敗戦により熊生が社長としての立場を失った際も助力を惜しまず、彼の再起業を信じ続けた。
小泉 フミ (こいずみ ふみ)
上田としこが満州の鉄道会社で働いていた時の上司。達観した性格のためとしことはそりが合わず、時には嫌味を言うこともあった。しかし次第に彼女のひたむきさに感化されていき、素直でないながらも彼女の姿勢を認めた。
吉川 (よしかわ)
上田としこが満州の鉄道会社で働いていた時の同僚。病気、貧困、恋愛などに苦しんできたが、その都度としこに助けられ、彼女に絶大な信頼を抱く。
場所
ハルピン
満州に位置しており、漢字で「哈爾濱」と書く。上田としこが家族と共に幼少時代を過ごした場所で、彼女にとっては第2の故郷。上田としこの漫画『フイチンさん』の舞台でもある。
その他キーワード
フイチンさん
『フイチン再見!』に登場する漫画。上田としこの代表作品の1つで、ハルピンを舞台に、「星」を意味する名前を持つ「フイチンさん」が活躍する。としこの幼少時代の体験が反映されている。手塚治虫の『リボンの騎士』に匹敵する人気を誇り、作者村上もとかも幼い頃から夢中になった。
書誌情報
フイチン再見! 10巻 小学館〈ビッグ コミックス〉
第1巻
(2013-09-30発行、 978-4091854292)
第2巻
(2014-02-28発行、 978-4091858962)
第3巻
(2014-08-29発行、 978-4091863805)
第4巻
(2015-01-30発行、 978-4091867605)
第5巻
(2015-05-29発行、 978-4091870544)
第6巻
(2015-11-30発行、 978-4091873460)
第7巻
(2016-03-30発行、 978-4091875242)
第8巻
(2016-08-30発行、 978-4091877666)
第9巻
(2017-01-30発行、 978-4091893451)
第10巻
(2017-06-30発行、 978-4091895400)