概要・あらすじ
少年古谷三敏は、出身の茨城県郊外で漫画家を目指して漫画の通信教育に作品を送る毎日を過ごしていた。その作品を漫画家手塚治虫に注目され、ある日突然アシスタントに勧誘された。緊張と期待に胸を膨らませながら東京・初台にある仕事場へと向かったが、早朝に訪問して徹夜明けの手塚を起こすという失態を犯してしまう。
その後も大小様々な失態を手塚に叱られつつ、古谷はアシスタント仲間たちと共に、忙しいながらも充実した生活を送る。
登場人物・キャラクター
古谷 三敏 (ふるや みつとし)
茨城県出身。1959年から4年半、漫画家手塚治虫のアシスタントとして働いた。本作はその時代を描いた実録エッセイ作品である。アシスタント仲間からは「フルさん」と呼ばれた。手塚の靴を勝手口に移して編集者からの逃亡を助けたり、手塚の結婚披露宴に出席したりと、公私に渡って手塚と深く交流し、多大な影響を受けた。 手塚のアシスタント卒業後は、1964年から12年間、漫画家赤塚不二夫のアシスタントを務めた。代表作は『ダメおやじ』『BARレモン・ハート』『寄席芸人伝』など。実在の漫画家、古谷三敏がモデル。
手塚 治虫 (てづか おさむ)
古谷三敏がアシスタントを務めた漫画家。戦後のストーリー漫画を発展させた「漫画の神様」。代表作は『ジャングル大帝』『鉄腕アトム』『ブラック・ジャック』『リボンの騎士』『火の鳥』『アドルフに告ぐ』など多数。本作では、東映のニューフェイスの女優とお見合いしようとした話や、結婚披露宴当日も原稿の締め切りがあり、式場の控室で仕事に追われた話など、生活に密着していたアシスタントならではの細かく具体的なエピソードが、古谷の目を通して描かれている。 実在の漫画家、手塚治虫がモデル。
井上 英沖 (いのうえ ひでおき)
漫画家手塚治虫のアシスタント。古谷三敏にとって先輩にあたる。後に描いた『遊星少年パピイ』がテレビアニメ化もされ大ヒット作品となった。中南米の音楽が大好き。クラシック音楽にも造詣が深く、手塚が仕事場にベートーベンの「悲愴」を流す時には漫画の重要なキャラクターが死ぬということを古谷に教えた。 実在の漫画家、井上英沖がモデル。
平田 昭吾 (ひらた しょうご)
漫画家手塚治虫のアシスタント。古谷三敏にとって先輩にあたる。通称「ポンさん」。後に童話作家となり、数々の絵本の作家として活躍した。実在の作家、平田昭吾がモデル。
しのだ ひでお
漫画家手塚治虫のアシスタント。古谷三敏にとって先輩にあたる。当時すでに『板チョコ天使』という漫画連載を持っていた。後に大学の先生となった。実在の漫画家、しのだひでおがモデル。
笹川 ひろし (ささがわ ひろし)
漫画家手塚治虫のアシスタント。古谷三敏にとって先輩にあたる。当時のアシスタントの中で一番の古株。後にアニメ制作会社タツノコプロの創立スタッフとして『おらぁグズラだど』『タイムボカンシリーズ』などを生み出した。実在の人物、笹川ひろしがモデル。
月岡 貞夫 (つきおか さだお)
古谷三敏より1週間ほど遅れて漫画家手塚治虫のアシスタントとなった。後に天才アニメーターとして数々のアニメ制作に関わった。実在の人物、月岡貞夫がモデル。
カベムラさん
秋田書店の編集者。後に「週刊少年チャンピオン」の編集長となる名編集者。身体が大きくケンカも強く、酒豪で有名。「締め切りに遅れた手塚治虫の原稿をカベムラが破り捨てた」というエピソードが有名だが、その話は誇張されており、実際は原稿をポンと足元に投げただけだということを、現場を目撃していた作者が本作で訂正している。 実在の編集者、壁村耐三がモデルと思われる。
赤塚 不二夫 (あかつか ふじお)
古谷三敏が、漫画家手塚治虫の次にアシスタントを務めた漫画家。ギャグ漫画を大きく発展させた第一人者。代表作は『おそ松くん』『天才バカボン』『もーれつア太郎』『ひみつのアッコちゃん』など多数。古谷は赤塚のアシスタント就任当初「ギャグ漫画は嫌い」などと暴言を吐いてしまうが、アイデア会議で自分の考案したギャグが赤塚作品に採用されることを繰り返すうち、ギャグ漫画のとりこになってゆく。 実在の漫画家、赤塚不二夫がモデル。