ムシ・コミュニケーター

ムシ・コミュニケーター

虫と会話ができる特殊能力を持つ孤独な少女の森白百佳が、さまざまな虫とコミュニケーションを取り、その虫たちと向き合い、時には無残に死んでいく様を見届ける、切なくもシュールな物語。「青騎士」第1号から掲載の作品。

正式名称
ムシ・コミュニケーター
ふりがな
むし こみゅにけーたー
作者
ジャンル
異能力・超能力
レーベル
青騎士コミックス(KADOKAWA)
巻数
全3巻完結
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あらすじ

虫と会話できる特殊能力を持つが、人とのコミュニケーションが大の苦手な女子中学生の森白百佳は、中学校に入学したあとも周囲から孤立している。登校中のバスの中では、ダンゴムシの死を見届けた幼き孤独な日の夢を見たり、クラスメイトと楽しく会話する妄想をしたりと、人との交流の輪に入れない自分に軽い失望を抱きつつ、孤独な日々を送っていた。そんなある日、登校中の百佳は自分のカバンにくっついていたを発見する。百佳が話を聞くと、蝶は花を探してバスの中に迷い込んでしまったらしい。しかも、さなぎから成虫になった直後に鳥の襲撃を受けたことがトラウマになった蝶は、空を飛ぶことすらできない状態だった。助けを求める蝶の願いを聞き入れた百佳は、バスを降りて蝶が好む花がある場所を探して街をさまよう。苦労の末に絶好の空き地を見つけ、そこに蝶を残して立ち去る百佳だったが、そこで初めて自分が道に迷ってしまったことに気づく。引き返した百佳が先ほどの蝶に帰り道を聞くと、蝶は百佳の指に触れ、「群れの中に帰りたい」という百佳の強い願いを瞬時にして理解する。そのことがきっかけとなり、再び空を飛べるようになった蝶は、太陽の方角から現在位置を把握して百佳を先導するが、蝶が案内した先にあったのは百佳が見知らぬ小学校だった。蝶の大雑把さに呆(あき)れつつ、小学校の教師から自分が通う中学校の場所を聞いた百佳は、そのまま学校へと直行する。百佳はその道すがらで蝶と別れるが、別れた直後に蝶は鳥に食べられて命を落とすのだった。(エピソード「第1話」)

登場人物・キャラクター

森白 百佳 (もりしろ ももか)

虫と会話できる特殊な能力を持つ中学1年生の女子。肩口まで伸びた長い髪を、後ろでまとめている。おとなしい性格で、自己主張も下手(へた)なため、他人と交流するのを大の苦手としている。そのため、中学校に入学して以降友達が一人もできず、クラスでは完全に孤立した状態となっている。内心ではそんな自分に嫌気がさしており、クラスメイトと会話する白昼夢を見てしまうほど友達を欲しているが、いまだに具体的な行動に移すことができないでいる。その反面、ふつうに過ごしていてもあらゆる虫たちの声が聞えてくるため、どんな虫ともすぐになかよくなれる。指で虫に触れることで、森白百佳自身の意思をダイレクトに虫に伝え、自在にコントロールすることもできる。本能に突き動かされる虫たちの単純さに呆れつつも、成り行きから彼らの願いを聞き届け、人助けならぬ虫助けを頻繁に行っている。ただし、虫の暮らす世界が厳しい弱肉強食の世界であることを知っており、虫たちに過剰な思い入れはせず、適度な距離感を持って接する。そのため、なかよくなった虫たちが鳥やほかの虫に捕食されても、少し残念そうな表情を見せるだけで、特に感傷的になったりはしない。小さい頃は、虫となかよくなるのが何よりの喜びだった。教師からはその社交性の無さを憂慮されており、改善のため森白百佳の母親には個別教室で授業を受けさせることも提案されていた。そのことが心の重しとなってしまい、百佳自身のコミュニケーション能力の乏しさに対し、さらに悩み苦しむようになる。

飛べないモンシロチョウ。性別はオス。さなぎから成虫になった直後に鳥に襲撃されたことがトラウマとなっており、今も羽ばたかせて移動することができない。花とメスを求めて街中をさまよい、森白百佳のカバンにくっついていたところを彼女に発見される。百佳の助けを借り、野花が咲く安全な空き地に到達することに成功した。その後に百佳の指に触れ、「群れに帰りたい」という彼女が心に秘めた願いを知った際に、再び飛べるようになった。太陽を目印にして迷子になった百佳を先導し、近くの小学校まで送り届けるが、百佳と別れた直後に鳥に捕食されてしまう。

バス停の周辺にいた蟻。種類は不詳で性別はメス。アリジゴクの巣に落ち、体液を吸われそうになっていたが、間一髪のところで森白百佳の手で助けられた。その後、自分の獲物を取るなという、アリジゴクの主張に納得した百佳によって再び巣に戻されそうになるも、必死の訴えで百佳を思い留まらせる。

アリジゴク

バス停の周辺にいたアリジゴク。種類や性別は不詳。地面にすり鉢状の巣を掘り、落ちた虫の体液を吸っている。まんまと巣に落ちて来た蟻の体液を吸おうとしていたが、森白百佳が蟻を助けてしまったため、獲物を巣に戻すように猛抗議する。しかし、助かろうとする蟻の必死の主張によって事態は膠着(こうちゃく)してしまう。

住宅地をさまよっていた蠅。種類は不詳で性別はメス。森白百佳の自宅のリビングに入り込み、彼女のプリンにまとわりついて食べていた。百佳に追い払われてもしつこくプリンを食べ続けたことで怒りを買う。百佳が呼び寄せたトンボの襲撃を受け、最終的に食べられてしまう。

トンボ

住宅の周辺でエサを探していたトンボ。、種類や性別は不詳。森白百佳の自宅の周辺を飛んでいたが、蠅にプリンを食べられて怒った百佳によって呼び寄せられた。百佳の自宅に入った直後に蠅を捕食するが、蠅の代わりにプリンを食べ出したため、結局百佳に家の外に出されてしまう。

アメンボ

水路で暮らしていたアメンボ。種類や性別は不詳。道端の水路で溺れているところを森白百佳によって助けられた。なぜか水に浮くことができず、すぐに溺れてしまう。そのため、ずっと葉っぱなどの上で暮らしていた。水に浮けない原因が、水路に流れこむ生活排水にあると推測した百佳の手で、田んぼまで連れていかれる。田んぼで無事に浮くことができたが、すぐにほかの虫に捕食されてしまう。

スズメバチ

学校に迷い込んだスズメバチ。性別はメス。森白百佳の通う中学校の校舎に迷い込んで出られなくなっていたため、百佳の手で助け出され、巣のある山まで返された。しかし、巣が何者かによって破壊されていたため、路頭に迷ってしまう。その後、百佳から生物部の部長の手に託されるも、そのまま標本にされてしまう。

生物部の部長

森白百佳の通う中学校の男子。生物部で部長を務めている。眼鏡をかけた長身の少年で、虫が大好き。学校の近くにある山などで虫を観察・収集して標本にしている。部員が自分しかない生物部の現状を嘆いている。活動中に百佳と出会い、一見して虫に興味がありそうな彼女を生物部に誘っていた。しかし、躊躇(ちゅうちょ)なく虫を標本にする姿勢を百佳に嫌われ、拒否されてしまう。後日、めげずに百佳を生物部に再度勧誘するが、百佳から「あなたの言うことは全部間違っている」と言われてしまう。

森白百佳の母親

森白百佳の母親。若々しい容姿をしている。包容力のある性格で優しくておっとりとしており、人とのコミュニケーションがうまく取れない彼女のことをいつも気にかけている。百佳の虫と会話できることを知り、森白百佳の母親自身もそんな能力が欲しかったと百佳に語っていた。学校側からコミュニケーション能力に問題のある百佳を個別教室で学ばせることを提案されており、ずっと悩んでいる。

森白 柚子 (ももしろ ゆず)

森白百佳の妹。幼稚園に通っている女子。優しくて思いやりのある性格をしている。ぬいぐるみの「ジンベイ」が大好きで、それを肌身離さず持っている。ジンベイを一人にしたくないという理由で、お泊り保育に行くのを拒否していた。母親と百佳から非常にかわいがられている。

傷ついた蝶

羽が傷ついた蝶。種類は不詳で性別はオス。森白百佳の通う中学校の校舎で、メスを巡ってほかのオスと争った際に羽をズタズタにされて瀕死(ひんし)の状態となっている。百佳の手で保護されたが、襲撃してきた鳥から身を挺(てい)して百佳を守り、絶命する。

ダイオウグソクムシ

とある水族館で飼育されていたダイオウグソクムシ。4年前に食事をして以来、一度も食事を取っておらず、一部界隈(かいわい)では有名な存在となっている。遠足で水族館に出向いた森白百佳と出会い、長期間食事を取らないことを不思議に思った百佳からその理由を聞かれていた。その際に百佳が虫と会話できることを知り、彼女に対し我々虫と話すことはよくないことであると忠告していた。

書誌情報

ムシ・コミュニケーター 全3巻 KADOKAWA〈青騎士コミックス〉

第1巻

(2021-12-20発行、 978-4047368958)

第2巻

(2022-10-20発行、 978-4047372252)

第3巻

(2023-08-19発行、 978-4047375833)

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