新たなる「ラッキーマイン」
1979年、神奈川県で資材メーカーの社員だった父親の次男として生まれた鴨次七男は、2001年に私立大学を卒業してから現在まで定職に就いたことがなく、さまざまなアルバイトを転々としていた。そんな中、道端で500円を拾った七男は、それを元手に買った宝くじで200万円を引き当てる。有頂天になった七男はバーで一人祝杯を挙げていると、そこで出会ったアゲハに誘われ、ビルの地下で行われている灰澤の主催するロシアンルーレットをはじめとしたギャンブルに参加させられる。そこで、命を賭けたギャンブルに勝ち残った七男は、灰澤やアゲハから幸運の源泉「ラッキーマイン」として期待され、やがて彼らの野望に取り込まれていく。
「ラッキーマイン」を欲する大富豪
七男やアゲハと因縁を持つ大富豪の灰澤は、病的なまでに運の存在を信じており、幸運を引き寄せる「ラッキーマイン」を探し求めている。七男やアゲハをはじめとするギャンブラーたちを招き入れるのもその一環で、100万円の場代でロシアンルーレットに勝利すれば1000万円を獲得できるという、至ってシンプルなギャンブルを行っていた。さらに、ロシアンルーレットで勝ち残った者たちを集めて次のギャンブルを課し、勝ち残った者を「ラッキーマイン」として迎え入れ、自分の側近に置こうとする。灰澤にとって人の命はまったく価値がなく、幸運こそが唯一無二の存在だと考えている。しかし、ラッキーマインを崇拝しているわけではなく、灰澤にとっては利用するだけの駒でしかない。また、灰澤が運に固執するのは、かつて成り上がるために他者を欺き続けたことで天罰が下ることを恐れているためで、ラッキーマインこそが自分を守る唯一の盾だと考えている。
七男を取り巻く哀れなギャンブラーたち
灰澤やアゲハから「ラッキーマイン」として見込まれた七男は、彼らの期待どおりに勝利を重ねていくが、一文字軍平や亀桐兄弟など、ギャンブル相手をことごとく破滅に追いやる。また、七男の兄は幸せな家庭を築いていたが、妻の浮気が発覚して離婚に至るなど、これまでの幸運が帳消しになるほどの不幸に見舞われる。しかし、七男自身は運に流れがあるという概念を信じておらず、自分を含めてあらゆる人に降りかかる幸運も不幸も、ただの結果であるという認識を崩さない。さまざまな過酷な勝負を潜り抜け、バーの雇われ店員として安定した生活を得た七男だったが、自分がラッキーマインではないことを証明するためにあえてアゲハと手を組む。
登場人物・キャラクター
鴨次 七男 (かもつぐ ななお)
フリーターの青年。年齢は29歳。毎日パチスロ、麻雀、競馬といったギャンブルに明け暮れている。ギャンブラーを気取って「ラッキーセブンのナナオ」と名乗っている。四人家族の次男だが、母親とは既に死別しており、父親も重い病にかかっている。兄との関係は良好だが、大学を卒業してからもフリーターの自分と、サラリーマンで妻子もいる兄とはまったく異なる人生を歩んでいると自覚しているため、コンプレックスに似た感情を抱いている。しかし、あらゆる幸運も不幸も結果でしかないとの考えの持ち主で、運に流れがあるという灰澤やアゲハの考えを否定している。一方で、ギャンブルの際に味わえるスリルと興奮をかけがえのないものと考えており、灰澤が主催するロシアンルーレットに挑戦した時も、引き金を引く瞬間に高揚感を感じていたことを認めている。座右の銘は「俺は神を信じる!都合のいい時だけ!」で、命のかかった大勝負に挑む際に心の中で叫んでいる。
アゲハ
ギャンブラーを生業としている女性。年齢、本名共に不明で、自らを「アゲハ」と名乗っている。七男とは対照的に幸運の流れは存在すると考えており、何かの転機が訪れた際に神の喘(あえ)ぎを感じると公言している。また、思考より直感を重要視するタイプで、バーで出会った七男を灰澤主催のギャンブルに誘った際も、決断する時は考えるより感じるべきだと主張している。灰澤のロシアンルーレットに七男が挑戦した時も立ち合い、彼が自らの強運で勝利を手繰り寄せたことで、自分が組むべき相手「ラッキーマイン」として見定める。