不機嫌なモノノケ庵

不機嫌なモノノケ庵

高校生の主人公が自分に憑いた妖怪との出会いをきっかけに、さまざまな妖怪関係のもめ事を取り扱う物怪庵に所属したため、繰り広げられるギャグ・コメディ漫画。ウェブコミック配信サイト「ガンガンONLINE」にて2013年9月12日より毎月第1、第2週更新で連載中。

正式名称
不機嫌なモノノケ庵
ふりがな
ふきげんなもののけあん
作者
ジャンル
ギャグ・コメディ
関連商品
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世界観

物語の舞台は基本的に現代日本だが、明確に妖怪が存在する世界で、妖怪と話したり妖怪の力を目の当たりにするなど、現実離れした表現が多くなっている。妖怪という存在はもちろんのこと、物怪庵隠世など、妖怪がいればこそ存在する場所が数多く描かれていることも大きな特徴の一つ。

あらすじ

第1巻

戻橋高等学校に通う男子高校生の芦屋花繪は、入学以来、妖怪のモジャに取り憑(つ)かれて体調不良が続く毎日を送っていた。そんな中、花繪は健康管理をうながすポスターの下に「妖怪祓いスタッフ募集」と書かれた求人広告があることに気づく。藁(わら)にもすがる思いで電話をかけた花繪を出迎えたのは、どこにでも直結することができる不思議な茶室、物怪庵と、そこの主である安倍晴齋だった。無事にモジャを祓ってもらった花繪だが、その料金として隠世の通貨で100万怨(えん)を借金することになり、その支払いのため物怪庵でバイトすることになってしまう。やがて花繪は、晴齋からあるおつかいを頼まれる。

第2巻

芦屋花繪安倍晴齋から頼まれたおつかいのため、ミツチグラがなくしたという「笑面」の捜索に青流寺を訪れていた。取り憑いている相手に泣き顔を見せれば笑面を外せるという情報に、涙腺が弱い花繪は自信を見せるが、相手が強面(こわもて)な藤原禅子の父のためか思いのほか苦戦を強いられてしまう。なんとか笑面を回収した花繪に感謝を告げたミツチグラは、隠世へと戻る直前、晴齋に対して「花繪は貴重な人間ですが危険なので、十分注意を」と忠告する。そんな矢先、晴齋が隠世の薬屋、亀薬堂に出かける用事ができる。物怪庵からの勧めもあり、花繪も晴齋と共に隠世へと赴くことになるが、そこで花繪は以前自分に取り憑いていたモジャらしき妖怪がケガをしている後ろ姿を見て、晴齋に告げずにその場を離れてしまう。

第3巻

モジャモドキを追いかけて隠世ではぐれた芦屋花繪は、粗暴なカピバラの妖怪に襲われたところを本物のモジャに救われる。しかし、そのためにモジャにケガをさせてしまい、介抱するため亀薬堂へと連れて行くことになった。無事に手当が済んで安心したのもつかの間、今度は安倍晴齋が、上司の立法から「花繪を物怪庵の奉公人(バイト)として認めるかは自分が決める。今すぐ連れて来い」との命令を受ける。隠世の権力者の一人であり、法律を司っているという立法との面会に緊張する花繪だったが、無事に奉公人として認可され、物怪庵へと戻る。そしてモジャも奉公人に加わることになり、物怪庵はよりいっそう騒がしさを増していく。

第4巻

芦屋花繪は連日のアルバイトで疲労が溜まっている中、以前「笑面」を捜索した際に青流寺で出会った藤原禅子と再会する。花繪と安倍晴齋が同じ戻橋高等学校の同学年に在籍していると知った禅子は、キツネに嚙まれてから浮かび上がったという謎のアザについて相談するために二人を探していたという。その相談の最中、キツネに似た妖怪が現れる。晴齋を知っているというそのキツネは「隠れんぼをして遊んでくれないとアザは消してやらない」「晴齋と遊ぶためだけに来た」と話し、夜の青流寺での隠れんぼを提案する。下校後に隠れんぼに興じる面々だったが、何度キツネを捕まえても隠れんぼが終わらない。苛立ちが募る中、3日3晩遊ぶと豪語したキツネの言葉に、晴齋はかつて出会った妖怪、ヤヒコのことを思い出す。

第5巻

人間からのお祓い依頼を終え、久し振りに依頼のない放課後を過ごしていた芦屋花繪安倍晴齋に、藤原禅子から連絡が入る。ヤヒコが大変だということで青流寺に向かうと、ヤヒコの体が巨大になって、身動きが取れなくなってしまっていた。その原因がヤヒコの盗み食いしたジャガイモ、ひいてはそれを育てた土にあると気づいた二人は、禅子の案内でその畑へと向かう。霊感の強い人間にとっては鼻が曲がるような悪臭と謎の煙に満ちたその畑の中では、しかもノボウという案山子に似た妖怪が困り果てていた。ノボウが畑から出ようとすると、臭いと煙が強くなるうえ幻覚を見てしまい、いつまでも出られないのだという。それを聞いた花繪と晴齋はノボウを抱えて畑から出ようとするものの、二人もまた、ノボウの見た幻覚の中に迷い込んでしまう。

第6巻

に紹介された妖怪のトモリに視力を貸与して、芦屋花繪は一時的に妖怪が見えなくなっていた。いつまでも視力が戻らないことを理由に安倍晴齋からクビ宣告を受けた花繪だったが、晴齋のハッパ掛けが功を奏し、ほどなくして視力を取り戻すことができた。花繪は視力が戻って妖怪が見えることに歓喜し、よりいっそう妖怪のために働くことを決意する。花繪の視力が戻らないことを非常に不安がっていたモジャの機嫌も直ったある日、物怪庵立法から「SOS」との連絡が届く。ケガをした立法に代わって書類仕事を手伝って欲しいという依頼を嫌々ながらも受ける晴齋だが、今度は花繪だけで行政のところへお使いに行って欲しいと言われる。不安に襲われる花繪は、モジャをおともに行政のもとへと向かう。

第7巻

芦屋花繪たちが通う戻橋高等学校に、エゲンという妖怪がやって来た。隠世に学校を作るため視察に来たというエゲンが、学校の仕組みや施設にいちいち驚くのを、花繪はどこか新鮮な思いで見守る。しかし安倍晴齋は、エゲンが学校の視察だけではなく、行政から花繪と晴齋の査察をも申しつけられて来たことを察していた。なぜか花繪に隠世の注目が集まる中、ヤヒコは小さな妖怪のキナコと兄妹のようになかよくなる。しかしキナコの体は弱く、とても現世で生きていけないと判断したヤヒコは、晴齋にキナコを祓ってくれるように依頼する。だが、ヤヒコと離れたがらないキナコは、ヤヒコといっしょなら隠世へ行くと言い始める。

第8巻

物怪庵の奉公人が窃盗をしたという容疑で、登校していた芦屋花繪に代わりモジャ隠世に捕らえられた。そのことを知った花繪と安倍晴齋は、捕らえられているとされる白洲獄へと向かう。そこで出会ったのは、濡れ衣を着せてでも花繪を捕らえるようにと司法に依頼した行政だった。人間嫌いだという行政は、濃厚な妖気で花繪を威圧し、そのまま殺害しようとする。司法と晴齋によって食い止められたものの、花繪は今後隠世への出入りを禁止されてしまった。しかし花繪はそれ以来、妖怪の気配を察知できるようになる。精度の低い妖気探知を高めるべくヤヒコとの特訓に挑んだ花繪だが、ヤヒコが行政に化けて驚かせたとたん、無意識に威光を使用し、ヤヒコを怖がらせてしまう。

第9巻

芦屋花繪は妖気探知の特訓を経たことで妖怪の気配を察知することができるようになり、物怪庵の奉公人としてまた一歩前進した。そんな中、物怪庵に立法が訪れる。行政の仕打ちを花繪に詫びたうえで、花繪が条件付きで隠世に来られるように行政に掛け合ったという。それを叶える賭けにみごと勝利した花繪は、基本的に隠世には行かないが、行く際には必ず司法の同行が必要になるという。そんなある日、藤原禅子から妖怪の情報が寄せられた。かねてより物怪庵を探していたという妖怪のケシは、一度でいいから人間として盆踊りに出てみたいという。その願いを叶えるために、安倍晴齋は浴衣とお面による細工を思いつく。

第10巻

夏休みを終えて2学期を迎えた芦屋花繪安倍晴齋のもとに、カタハクからモロハクへ向けた、酒の配達依頼が届く。生き別れであるため親子の縁が希薄ではあるものの、充分に親子の絆を思わせる二人の姿に幸福感を抱いたのもつかの間、芦屋楢が倒れたという一報が入る。慌てて病院に向かった花繪が目にしたのは、楢に憑いた妖怪のアラナキだった。花繪がアラナキを剝がすとすぐに回復した楢は「花繪の父親で行方不明になっている芦屋榮も、同じようにしてすぐ治してくれた」と話す。そこで父親も妖怪が見えていたのではないか、物怪庵にかかわりがあったのではないかと考えた花繪は、すぐに晴齋に相談することにする。

第11巻

芦屋花繪から芦屋榮について詳しく知りたいという依頼を受けた安倍晴齋は、かつて榮に会ったことがあるというヤヒコへの聞き込みや、アオイが残した業務報告書に榮の記述がないかを調べていた。その結果、榮が16年前の11月2日に死亡していたらしいことが判明する。花繪が出会ったのは榮に化けたアオイだろうと見当をつけた晴齋は、その推察も含めて花繪へと報告した。その後も妖怪祓いの依頼を遂行するかたわら、榮の情報を集める花繪と晴齋に、隠世へ祓うだけの簡単な依頼が舞い込む。しかし待てど暮らせど依頼人が約束の場所に現れず、花繪が探しに行った先では、かつて榮が封印した妖怪のササが封印を解こうと企てていた。

第12巻

芦屋花繪の体を借りて威光を使用した芦屋榮の人格は、花繪の危機が去ると同時にまた姿を消した。理由はどうあれ、花繪の体に妖怪を殺させてしまったことを後悔する安倍晴齋だったが、榮の人格が花繪に内在していることも含めて、妖怪を殺した事実を打ち明ける。ショックを受けた花繪だったが、自分が罪を犯したことには変わりないと、立法に事件を報告することを決意する。一方で、隠世の森の中に本来存在しないはずの蝶が現れたという報告が入り、立法、司法行政が一堂に会することになる。物怪庵の主と奉公人としてこの会議に招かれた晴齋と花繪は、意を決してその場で一連の出来事の報告を行うことにする。

第13巻

隠世姫の体調不良によって隠世の加護が弱まっているとして、芦屋花繪安倍晴齋樹海における祟(たた)りの様子を見回ることになった。堀近くにまで自生していた厄病草寄生樹を燃やした二人は、寄生樹に取り憑かれて死んだ妖怪の亡骸にすがる小さな妖怪のニオを保護して隠世に帰還する。隠世姫の体調は回復に向かっているものの、晴齋は万一に備えて7日間隠世に滞在することを命じられた。そんな中、現世に戻った花繪は藤原禅子から、自宅である青流寺に心霊写真と思しきものが届いたと聞かされる。数日後、無事に登校した晴齋は、そこに写った黒猫がアオイであることに驚愕し、その場所を探すことにする。

第14巻

藤原禅子が持って来た心霊写真に写っていたアオイの姿に、もしかしたら芦屋榮の手がかりもあるのではと考えた芦屋花繪安倍晴齋は、家の妖怪のもとへと赴く。家族が忘れていったアルバムを返したいという家の妖怪の願いを聞き入れた二人は、その最中、写真の中にアオイと榮のツーショットを発見する。その後、の湯治のためにと向かったトウゲン温泉でも、かつてトウゲンが榮に助けられたという情報を耳にした花繪は、これまでの情報で培われてきた「何匹もの妖怪を殺害してきた榮」というイメージとの違いに苦悩し始める。そこで花繪は、より詳しい花繪の情報を知るため、母親である芦屋楢から昔の榮の話を聞き出すことを決意する。

第15巻

隠世姫の体調がなかなか回復しない中、立法司法行政たちは次代の隠世姫を探す算段を始める。しかし隠世姫は、未だ遺体の見つかっていないアオイが生きているのではないかと希望を持ち続けていた。そんな中、隠世姫の兄であり、対の存在となっているヤヒコもまた体調を崩し始める。このままでは悪化の一途を辿るのではないかと芦屋花繪安倍晴齋が心配し始めた矢先、立法から「隠世姫が物怪庵の一堂に面会を求めている」という連絡を受ける。緊張しながら面会に向かった二人に、隠世姫は「アオイを探しに樹海へ行ってくれないか」と相談を持ちかけた。しかし、晴齋は「依頼は受けるが、これが最後の捜索にして欲しい」という条件を突きつける。

第16巻

冬休みを利用し、芦屋花繪安倍晴齋樹海アオイの捜索を行っていた。しかし手がかりは見つからず、そのうえ、樹海はある地点から先に進もうとするとスタート地点に戻っているという不思議な構造になっているため、なかなか思うように捜索は進まない。そんな中、二人の前にほかとは違う黄色い蝶が舞っていることに気づく。しかも蝶からは隠世にないはずの海の波音が聞こえ、もしやアオイに関係しているのではと色めき立ち、捕獲しようと考える。そんな二人に対し、やがて蝶から「これ以上探しに来るな。アオイは死んだ」と話す声が聞こえる。だがその声が芦屋榮の声だったこと、さらに断言するからには遺体の場所も知っているのではないかと、二人はさらにやる気をみなぎらせる。

メディアミックス

TVアニメ

2016年6月から9月まで岩永彰監督によるTVアニメ版がTOKYO MX、AT-X、BS11などで放送されている。キャラクターデザインは影山あつこ、音楽は高梨康治が担当している。主なキャストは芦屋花繪役を梶裕貴、安倍晴斎役を前野智昭が務めている。

webラジオ

2016年7月から9月まで音泉にて『不機嫌なモノノケ庵 ラヂオノ怪』のタイトルで、毎月第2、第4水曜日に配信された。パーソナリティは芦屋花繪役を梶裕貴、安倍晴斎役を前野智昭が務めていた。

舞台

2016年9月6日から9月11日までの期間に、舞台(ステージ)「不機嫌なモノノケ庵」が赤坂RED/THEATERにて上演された。脚本は錦織伊代が担当している。陳内将、入江甚儀、元木聖也、原嶋元久の四人が、役を固定せず、芦屋花繪役と安倍晴斎役を、日によってシャッフルで演じている。

登場人物・キャラクター

芦屋 花繪 (あしや はなえ)

戻橋高等学校に通う1年生の男子。黒髪と黒い目で、特徴のない容姿をしている。以前は妖怪や幽霊などを信じていなかったが、モジャに取り憑かれて体調が悪化したことや、安倍晴齋に出会ってから妖怪が目に見えるようになり、物怪庵の奉公人として働くこととなる。非常にお人好しなところがあるが、妖怪にも親身に接することで、晴齋にも解決できなかった問題を解決することがある。 金属製のモノを見つけることが得意で、広い川の中から小さな指輪を見つけたり、森の中でアクセサリーを見つけたりしている。なぜか妖怪たちから危険視されており、特に行政からは警戒されている。

安倍 晴齋 (あべの はるいつき)

戻橋高等学校に通う1年生の男子。物怪庵の主で、金髪に金色の瞳を持ち、背が高い。ふだんは物怪庵で生活しており、制服以外のときは基本的に着物を身につけている。つねに無表情で、冷静さを失うことはない。人間のために妖怪を祓うことはなく、あくまでも妖怪のために妖怪を隠世へと祓っている。かつての物怪庵の主であるアオイを殺害して今の地位を得たと囁(ささや)かれているが、事実ではないらしい。芦屋花繪が妖怪たちにとって危険な存在であることを知ったうえで、物怪庵の奉公人として雇っている様子がある。また、物怪庵や立法たちからは「花繪が奉公人になってから人間らしくなった」と言われている。なじみのある妖怪たちからは「イツキ」と呼ばれることがある。

藤原 禅子 (ふじわら ぜんこ)

戻橋高等学校に通う1年生の女子。青流寺の一人娘で、非常に背が低いために一見すると小学生にしか見えない。芦屋花繪が、ミツチグラの依頼で「笑面」の捜索のために青流寺を訪れた際に知り合った。ヤヒコに嚙まれたことによって妖怪が見える体質へと変化した。ヤヒコが安倍晴齋を試した際に藤原禅子にアザをつけて苦しめた代償として、1年間青流寺の手伝いをするようにとお願いした。しかし、ヤヒコをブラッシングしたり食べものを与えたりと、甘やかしている様子がある。青流寺にお祓いなどの依頼を受けると、それが妖怪関係だった場合は晴齋に相談するために出向く。

モジャ

芦屋花繪に取り憑いた全身毛むくじゃらの妖怪。花繪に取り憑いた時は、殴っても蹴っても離れなかったが、その真意は「無視されるよりマシだった」というもの。生前は人に飼われていた動物だった。妖怪になったため、人に認知されなくなったことを寂しく思っている。そのため、人に構われたいという気持ちや、人と遊びたいという気持ちが非常に強い。学校の屋上で安倍晴齋と一緒に遊んだことにより心が満たされて、隠世へと帰って行った。義理堅い性格で、隠世へ行く前には2人にお礼を告げた。

ヤヒコ

安倍晴齋と旧知の妖怪。少年の姿をしているが、尾先に三つ股の炎が灯ったキツネに似た姿にも化けることができる。晴齋がアオイを殺して物怪庵の主になったという噂を聞いて、真偽を確かめるために藤原禅子に取り憑いた。100年以上も現世に留まっている強力な妖怪で、晴齋でも気配を察知するのがむずかしい。無邪気な性格で子供っぽく、遊ぶことがなによりも大好き。禅子に取り憑いて危険な目に遭わせた償いに、青流寺に住みついて掃除などの手伝いをしている。実は隠世姫の兄であり、本名は「隠世下鴨御祖彦」。また、「御祖彦」とも呼ばれている。キツネ以外のものにも巧みに化けることができる。

アオイ

物怪庵の先代の主を務めた妖怪。ふだんは艶のある黒ネコの姿をしているが、人間の姿になることもある。幼少時の安倍晴齋が妖怪に襲われているところを助けたのがきっかけで知り合った。妖怪たちのあいだでは晴齋に殺害されたと噂されているが事実ではなく、祟りに冒されたため自ら樹海の奥へと消えていったが、未だに遺体は発見されていない。隠世姫には及ばないが非常に妖力が強く、気配だけで樹海の祟りを牽制することも可能で、次代の隠世姫として名を挙げられるほどだった。妖怪でありながら、現世にいるすべての者に対して自分の姿を可視化できる、唯一の技を持っている。そのため、妖怪を見ることのできない人間でもアオイを認識できた。

コウラ

女性の姿をした妖怪。亀薬堂の主を務めている。かなりの薬オタクで、いつも薬のことを考えている。身体の一部を使って薬を作ることもでき、安倍晴齋の身体の中では、特に目がお気に入り。そのため、晴齋の目を使って薬を作れたら、と想像するだけで興奮してしまう、少々危険な一面がある。また、芦屋花繪の身体の中では、耳を一番評価していた。

シズク

女性の姿をした妖怪。亀薬堂の奉公人を務めている。元はヤモリの妖怪。最近は人間に化けることが得意になり、その変化は、お尻から尻尾が出ていることを除けば、完璧な出来映え。主のコウラのことが大好きな「主バカ」だ。しかし、嫉妬深い性格でもあり、コウラから気に入られている人物に対して、対抗意識を燃やすこともある。

モジャモドキ

モジャに似ている妖怪。カピバラの妖怪の店から、売り物の木の実を盗んだ。後姿だけみればモジャそのもので、芦屋花繪も見間違うほど。しかし、盗みを働いたり気性が荒かったりと、外見以外はモジャとは似ても似つかない。

カピバラの妖怪 (かぴばらのようかい)

二足歩行で歩く、カピバラの姿をした妖怪。店を営んでおり、モジャモドキに盗まれた木の実を取り戻そうとしていた。性格はかなり好戦的で、頭に血が上りやすいので、話し合いが難しい。また、店の物を盗んだ者には特に容赦がなく、刃物を取り出して、見せしめとして傷つけようとするなど凶暴な性格。

立法 (りっぽう)

シズクの兄。隠世社会を統制している3人の権力者の1人で、隠世の法律を作る力を持つ妖怪。人間の男性の姿をしており、安倍晴齋いわく、「ヘビースモーカーで酒豪で博打好きの色魔」。最初は奉公人である芦屋花繪を見て、辞めるように諭したが、花繪の妖怪への想いを聞いて奉公人として認めた。酒を飲むことが好きだが、酒癖は悪く、晴齋を10時間拘束したことがある。

行政 (ぎょうせい)

隠世を統制している三人の権力者の妖怪のうちの一人。白い髪をオールバックにしたウルフカットヘアの青年。非常に白い肌を持ち、ひょろ長い印象を与える。巨大な烏の姿になることができる。人間嫌いで、芦屋花繪をよく思っておらず、エゲンを使って査察したうえで司法に依頼し、偽の罪状で、白洲獄に幽閉しようとしていた。また、立法とは犬猿の仲で、顔を合わせるとすぐケンカになってしまう。幼少期の安倍晴齋の教育係を務めており、晴齋にだけは好意的な態度を見せる。

司法 (しほう)

隠世社会を統制している3人の権力者の1人で妖怪。チーターに変身することができ、その際は非常に速いスピードで大地を駆け巡ることが可能。鳴禽籠へ行く途中で芦屋花繪と出会い、尻尾飾りを見つけたお礼と称して、花繪を背中に乗せて鳴禽籠へ連れて行った。

エゲン

隠世の教育水準を向上させるために現世の学校視察に来た妖怪。隠世に誰もが勉強できる学校を作ることが夢で、視察にも並々ならぬ意欲で挑んでいる。しかし、実際は行政に言われて、物怪庵の面々の様子を見るという任務も兼ねていた。

ギギギ

芦屋花繪がモジャ以外で初めて学校内で目撃した妖怪。「ギギギギギ」という声で鳴き、その鳴き声は聞いた者の耳をつんざくほどに強烈。身体は小さいが、人間の足に乗れば、その動きを封じることができるという能力を持つ。集団で行動することも可能なギギギの親分の分身でもある。

ギギギの親分 (ぎぎぎのおやぶん)

ギギギの本体。命名したのは芦屋花繪。ギギギと異なり、人の言葉を話すことができ、妖怪の姿を認識できる人物であれば、意思疎通も可能。現世に根となる「寄生樹」を張っており、現世から離れられないようになっている。

ミツジグラ

物怪庵に依頼にやって来た妖怪。無表情な地蔵や、ふくよかなハニワのような姿をしている。本来は無表情ながら、「笑面」「怒面」「泣面」を装着することで感情の起伏を表現することができる。以前、安倍晴齋に祓われた際に「笑面」をなくしてしまい、喜びを表現できなくなったため、笑面の捜索を晴齋と芦屋花繪に依頼した。

マンジロウ

江戸っ子口調の、威勢のいいウナギの妖怪。生前は指輪を失くしたおばあさんの夫だったが、結婚指輪を失くしてしまった妻のために、物怪庵に指輪探しの依頼をしにやって来た。ちなみに、生前の職業はウナギ屋。

ジョウマツ

鳥の妖怪。物怪庵を探して現世をさまよっていたところを、芦屋花繪に保護された。アンモ姫に仕えている。振り回されながらも、アンモ姫に好意を抱いているので、かなり献身的に尽くしている。失恋をしてタマゴの殻の中に引きこもり、1か月も出てこないアンモ姫を、どうにかしてほしいと思っている。

アンモ姫 (あんもひめ)

鳥の妖怪。惚れっぽい性格で、よく現世の相手を好きになる。これまで鳥類15羽、熊4匹、狸3匹、モモンガ2匹、犬猫に至っては数えきれないほど好きになっている。ジェット機まで好きになったこともある。しかし、現世の者には姿も声も届かないので、毎回失恋してはたまご型の殻を作り、その中に引きこもってしまうという悪癖がある。

ノボウ

案山子の姿をした妖怪。テンションが高く、かなりのお喋り。畑にいた案山子と友達になっていた。その畑がタバコの火によって火事になり、1人だけ逃げて自分だけが生き延びてしまったことを気に病んでいる。その罪悪感から、現場である畑から動けないでいる。

(おきな)

現世の御社に祀られている老いた妖怪。正式名は「猪柄嶽夕日滝翁神」で、これは人間が名付けたもの。長いこと現世におり、現世で妖怪を見かけると、物怪庵に訪れて祓ってもらっている。物怪庵によくやって来る常連客。

トモリ

オットセイの妖怪。盲目だが、妖怪の見える人間の視力を一時的に借りることによって、視力を回復することができる。隠世に帰る前に、現世を一度見たいと思っており、芦屋花繪の視力を借りてその望みを果たす。

キナコ

森でヤヒコが見つけた小さな妖怪。最初はヤヒコに対して恐怖心を抱いていたが、ヤヒコに遊んでもらっているうちに、すっかり懐いた。主食は葉っぱ。身体の一部だけなら変化することが可能だが、完全にはできない。また、身体が弱く、長く現世にはいられない。

ゴロウ号 (ごろうごう)

芦屋花繪の近所にいた気性の穏やかな大きな犬。幼少期の花繪はゴロウ号の背中に乗せてもらうのが好きで、よく乗って遊んでいた。そのため、花繪は司法の背中に乗せてもらって鳴禽籠へ行く際に、このゴロウ号のことを思い出していた。

嵯峨 則人 (さが のりと)

戻橋高等学校に通う高校1年生の男子。芦屋花繪のクラスメイトで、活発な性格。あだ名は「サガ」。で、短くした前髪を上にあげている。花繪がモジャに取り憑かれて体調を崩し、授業に参加できなかったのを気遣い、授業のノートを貸してあげた。

伏見 慎士 (ふしみ しんじ)

戻橋高等学校に通う高校1年生の男子。芦屋花繪のクラスメイト。写真部に所属している。あだ名は「フッシー」。つかみどころのないマイペースな性格で、嵯峨則人とともに、モジャに取り憑かれて授業に参加できなかった花繪を気遣って、授業のノートを貸してあげた。

芦屋花繪の母 (あしやはなえのはは)

芦屋花繪の母親で、芦屋榮の妻。黒髪のベリーショートヘアで、中肉中背の体型をしている。生花店「花芦」を一人で経営しており、気持ちが昂(たか)ぶった際には自分の気持ちを花束にして表現する癖がある。花繪に店を継がせる気はなく、花繪がやりたい仕事があるならばその夢に向かって頑張って欲しいと伝えている。昔から妖怪に憑かれやすい体質で、同じ高校に通っていた榮が保健室で妖怪を消滅させたことから知り合った。旧姓も「芦屋」で、榮と出会った時には偶然名字が同じことを喜んだ。

藤原禅子の父 (ふじわらぜんこのちち)

藤原禅子の父親。青流寺の住職を務める人物。「笑面」が取り憑いたことにより、四六時中笑いが止まらなくなってしまい、仕事ができなくなっていた。禅子をかなり大切に想っており、初めて芦屋花繪に会った時は、禅子の彼氏と勘違いして「殺す」と、敵意をむき出しにしていた。

芦屋花繪の担任 (あしやはなえのたんにん)

戻橋高等学校の男性教師。芦屋花繪の担任を務める。モジャが取り憑いて体調不良になっていた花繪を気遣ってくれる優しい人物。しかし、クラスに初登校する前にクラスの生徒に、花繪を男子だと紹介していないなど、ウッカリしているところがある。そのせいで、花繪は当初女子だと思われていた。5歳の娘がおり、かなり溺愛している。

怪奇現象の依頼人 (かいきげんしょうのいらいにん)

物怪庵に依頼を持ち込んだ女性。家に怪奇現象が起きていることを不気味に思って依頼してきた。妖怪の類にはまったく理解を示さない人物で、芦屋花繪と安倍晴齋の2人が若すぎることもあり、不信感を抱いていた。特に、奉公人をしている花繪に対しては、「新しい仕事を紹介する」ことを口実に、晴齋のもとから引き離そうとする。

怪奇現象の依頼人の娘 (かいきげんしょうのいらいにんのむすめ)

怪奇現象の依頼人の娘。妖怪やオカルト、怪奇現象に対しては恐がる素振りも見せず、むしろ面白がっているような人物。芦屋花繪からは「こういう人もいるんだ」と驚かれていた。家に怪奇現象が起きているのも、実は本人が面白半分で心霊スポット巡りをしたことがきっかけだった。まったく悪びれる様子もなく、祓い業務を行う安倍晴齋に終始目を輝かせていた。

指輪を失くしたおばあさん (ゆびわをなくしたおばあさん)

結婚指輪を失くしてしまったおばあさん。マンジロウの妻で、現在は一人暮らしをしている。指輪を返そうと無断で敷地内にいた芦屋花繪たちを、最初は不審に思ってきつく当たっていたが、誤解が解けてからは、家でご飯を振る舞おうとするなど、根はとても親切で優しい性格。

オイスケ

物怪庵に依頼するために訪れた妖怪。腕の生えた牡蠣(かき)のような姿をしており、自宅は両手に収まるほどの大きさの二枚貝である。隠世に祓われる前に公園の砂場に隠した自宅を取りに戻ったところ、近所の小学生たちが自宅の上でスイカ割りをしようとしており、身を挺して家を守ろうとした。

コワク

トウゲン温泉の湯守をしている妖怪。トウゲンの髪に取り憑いてつねに行動を共にしており、コイのような姿をしている。トウゲンとは別の妖怪ではあるものの一心同体であり、トウゲンの言葉はコワクが代弁している。ただし、トウゲンが芦屋榮と出会った頃はまだトウゲンに取り憑いていなかったため、榮の容姿などを知らなかった。

コモン

物怪庵に依頼するために訪れた妖怪。側頭部でツインテールにしたネコに似た姿をしている。安倍晴齋が物怪庵の奉公人をしていた頃に一度依頼していたが、その時にはある事情で依頼を完遂できなかったため、晴齋の方から再度訪問した。小鳥に似た妖怪5匹を保護しており、危険のない隠世へと祓ってもらおうと考えている。

家の妖怪 (いえのようかい)

藤原禅子が持ってきた心霊写真に写っていた妖怪。鉄筋コンクリート造の3階建ての家の姿をしている。意思表示はノートパソコンに打鍵して行うが、ひらがなしか打てないため、幼い妖怪だと考えられている。すでに取り壊された同型の家に宿ったが、意識を持った時にはすでに取り壊されている途中だった。しかし、瓦礫(がれき)の中に家族が忘れていったと思しきアルバムが残っていることに気づき、なんとか家族に返却したいと考えて心霊現象を起こしていた。

芦屋 千咲 (あしや ちさ)

芦屋花繪の姉。金髪を外ハネしたロングヘアにしている。現在は実家を出て一人暮らしをしているが、母親である芦屋楢が倒れた際や年末年始には帰省して、家族との触れ合いを大事にしている。一方で行方不明となっている父親の芦屋榮については「家族を捨てて出て行った」と考えて憎んでおり、幼少期に別れたにもかかわらず、未だに忘れられずにいる。

アラナキ

芦屋楢に取り憑(つ)いていた妖怪。毛むくじゃらで、4本の足と2本の腕があり、顔立ちはコアラに似ている。疲れ切っていたところを、楢に取り憑いて休息を取っていた。隠世を妖怪の墓場だと勘違いしており、芦屋花繪と安倍晴齋が物怪庵の主と奉公人と知った瞬間、泣きわめいて謝罪した。

カタハク

物怪庵に依頼するために訪れた妖怪。3対の耳があるロップイヤーラビットのような姿をしており、袴(はかま)を身につけている。酒造店を経営しており、銘柄「錦鱗酒」を、その姿を覚えてすらいない生き別れの父親、モロハクに届けて欲しいと依頼した。

ニオ

樹海にいた妖怪。片手で抱けるほど小さなアルマジロに似た姿をしており、「にゅおーん」と鳴く。隠世から逃げ出して樹海に住んでいたカバに似た妖怪に懐いていたが、その妖怪が寄生樹に取り憑かれて亡くなってからも亡骸のそばを離れなかった。芦屋花繪と安倍晴齋が寄生樹や厄病草を燃やしているのを目にし、カバに似た妖怪の亡骸も燃やされるのではないかと警戒し、二人の行動を監視していた。

ササ

ボンタに取り憑いた妖怪。クモの姿をした妖怪で、ボンタが暮らしている神社に隠された小さな祠(ほこら)の中に、かつて芦屋榮によって封印された。取り憑いた相手を思考ごとあやつることができ、封印を解かせるためにボンタと芦屋花繪に取り憑き、安倍晴齋を邪魔した。

ドンデンゴロリ

現世で騒ぎを起こしていた妖怪。三つ目で髪の生えた、カエルのような姿をしている。ずっと山で暮らしていたが、食べ物を探すうちに人里へ出て、食べ歩いているうちに山への帰路がわからなくなっていた。また、帰宅できないストレスで体が大きくなり、意図せずにいろいろな物にぶつかってしまうことからドンデンゴロリも困惑していた。

ボンタ

物怪庵に依頼するために訪れた妖怪。ブタに似た姿をしており、おっとりとした性格をしている。とある神社に住んでいるが、隠世に祓ってもらうべく芦屋花繪と安倍晴齋に相談に訪れた。明朝隠世の扉を開いてもらう約束を交わしていたが、その夜にササに取り憑かれた。

モロハク

モロハクの森の守り神といわれている妖怪。3対の耳があるロップイヤーラビットのような姿をしており、体中に鱗がある。モロハクの森の中にある小さな池に住んでおり、気配を抑えていても底知れない威圧感を放っている。カタハクが幼かった頃のことをよく覚えており、酒の礼にと昔カタハクがよく食べていた妖怪の鱗(うろこ)を届けるよう、芦屋花繪と安倍晴齋に依頼した。

ケシ

天望峠にある展望台で、藤原禅子と藤原禅子の父が出会った妖怪。古い人形の体をしているが、白いワンピースに長い黒髪をした幼い少女の姿をしているため、幽霊ではないかと噂されていた。一度でいいから人間になって盆踊りの輪の中に入ってみたいと願っており、物怪庵を探し続けていた。安倍晴齋たちに「人間に見えるように細工して欲しい」と依頼した。

芦屋 榮 (あしや さかえ)

芦屋花繪の父親。ふだんは髪を黒く染めてカラーコンタクトをしていたが、本来は金髪に金色の目を持つ。妖怪が見えていた様子で、物怪庵の非公認な奉公人として手伝っていたことがあり、威光が使える人物だった。花繪が生まれる少し前から行方不明になっており、花繪が3歳の時に一度だけ帰宅したあと、再度消息不明となっている。花繪の内面に取り憑き、花繪に危機が訪れると人格を交代して、威光によって妖怪を祓(はら)おうとする。かつて家族が不審死したのをはじめ、身の回りで原因不明の病気や災難がついて回っていたことから、周囲の人間からは「死神」と呼ばれて避けられていた。

隠世姫 (かくりよひめ)

隠世の最高位に座している妖怪。ヤヒコの妹。髪の長い少女の姿をしており、隠世の中央にそびえる山の火口にある高御座の中で暮らしている。立法、司法、行政よりも上の立場にあるが、政治にはいっさい関与していない。隠世に最初に住んだ妖怪ともいわれ、ほかの妖怪とは桁違いの妖力を持ち、隠世全体を樹海から守護している。現在は体調を崩して隠世の加護が弱まっているため、立法たちによって後継者探しが行われている。アオイとは対等な友人関係を築いており、帰って来て欲しいと願っている。また、ふだんはしっかりとした態度を見せるが、一度ワガママを言い始めると仕草が非常にヤヒコと似通ってくる。正式な名前は「隠世神賀茂別雷姫」だが、一般的には「隠世姫」と呼ばれている。

トウゲン

トウゲン温泉の湯守をしている妖怪。髪の長い女性の姿で、非常に言葉数が少ない。コワクが髪に取り憑いており、つねに行動を共にしている。コワクとは別の妖怪ではあるものの一心同体で、トウゲンの言葉はコワクが代弁している。かつてトウゲン温泉が埋まるほどの大雪が降った際に芦屋榮に救われ、それ以来は榮に好意を抱き続けている。

場所

物怪庵 (もののけあん)

四畳半の茶室。現在は安倍晴齋が主となり、妖怪関係の依頼を受ける際に使用している。晴齋が刀印を結びながら呼ぶことで、どんな扉にも接続し、呼び出すことができる。依頼で訪れた者や晴齋が招いた者しか足を踏み入れることができないため、悪意を持った妖怪から身を守る際の避難所として使用されることもある。また、この物怪庵そのものも妖怪であり、床の間に飾られた掛け軸に文字や顔文字が浮かび上がるため、意思疎通が可能となっている。掛け軸に文字が浮かぶ際には、となりに吊るされている風鈴が鳴るために見逃すことはない。陽気な性格で礼儀正しいが、お茶目な一面もある。退室する際には躙口(にじりぐち)が出現し、任意の場所に出ることができる。躙口から隠世に行くこともできるが、それが許されているのは物怪庵の主である晴齋だけとなっている。また、本体は隠世姫の加護の中にあり、樹海の中に建っている茅葺屋根の茶室。

隠世 (かくりよ)

人間が暮らす現世とは違い、妖怪にとっては過ごしやすい世界。中心には大きな山があり、そこには隠世姫が暮らしている。隠世自体が隠世姫の作った城下町のような場所であり、街並みや建物は現世とあまり変わらない。隠世の外には円形の堀があり、そのさらに外側には寄生樹などでできた樹海が広がっている。隠世姫によって樹海の侵入が防がれているため、隠世の平穏が保たれている。しかし、隠世姫が体調を崩したため加護が弱まっており、本来樹海に生息している蝶が隠世に侵入したことで大きな不安が広がっている。金銭取引が行われており、通貨単位は「怨」となっている。

戻橋高等学校 (もどりばしこうとうがっこう)

芦屋花繪と安倍晴齋が通う高校。基本的に普通の高校だが、昼休みにコンビニに行けたり、屋上に自由に出入りできたりと自由な校風。購買は、昼休みになると長蛇の列ができるほど人気。

現世 (うつしよ)

普通の人間が日常生活を送る場所。ここには妖怪を認知できる人間がかなり少なく、隠世を知らずに現世に留まっている妖怪にとっては、非常に「孤独」を感じざるを得ない場所となっている。

青流寺 (せいりゅうじ)

藤原禅子の住むお寺。「笑面」を探すために芦屋花繪が訪れた場所。古いが広大な庭と、ピカピカに磨かれた渡り廊下がある立派なお寺。境内の雑草の処理や掃除などは、禅子が毎日行っているので、いつも完璧な状態に保たれている。

亀薬堂 (きやくどう)

隠世にあるコウラが営む薬屋。良い薬を多く扱っており、店内からは薬を調合する「ゴリゴリ」という音が絶えず響いている。安倍晴齋が定期的に訪れ、薬をもらいに行く場所でもある。

イモリ池 (いもりいけ)

隠世にある立法が住む場所。亀薬堂からかなり離れた場所にあり、ケモノ道のようなところを1時間ほど進んだあたりにある。また、立法が住む家は池の中に建っており、一部は外壁によって守られている。

鳴禽籠 (めいきんろう)

隠世にある行政が住む場所。イモリ池同様、道中は道なき道を行ったところの深い森の中にある。行政の家は、せり出した巨大な樹木に吊り上げられており、空中庭園のような造りとなっている。

モロハクの森 (もろはくのもり)

現世の中でも妖怪の秘境として守られ続けている森。森に人間が迷い込むと、モロハクが脅して追い出していたため、守り神として崇(あが)められている。現世にあるにもかかわらずまるで隠世のような環境になっており、さまざまな妖怪の気配であふれている。しかし、本当の隠世と違って弱肉強食の世界となっているため、弱い妖怪たちは強い妖怪に食べられることもある。

樹海 (じゅかい)

隠世を囲う堀の外に広がっている、寄生樹などでできた樹海。祟りが蔓延している場所といわれており、妖怪たちからは非常に恐れられている。人間が入っても祟られる心配はないが、隠世に住めなくなった者や白洲獄からの脱獄者が逃げ込んでいるともいわれる無法地帯のため、非常に危険な場所となっている。また、樹海の中では物怪庵を呼び出すこともできず、隠世から架けられた唯一の吊り橋を使用しないと行き来することができない。

トウゲン温泉 (とうげんおんせん)

現世にある、妖怪のための温泉。トウゲンが湯守を務めており、現世に疲れた妖怪たちの憩いの場として昔から人気があった。翁やヤヒコもよく湯治に訪れていたが、現在はトウゲンに声をかけない限りただの岩場になっており、温泉は湧いていない。トウゲンに声をかけることで間欠泉のように湯が噴き出し、豊富な湯で満たされる。

白洲獄 (しらすごく)

隠世にある、司法が暮らしている場所。警察署と裁判所を併せたような権限を持っており、立法が定めた法律に違反した者を捕まえ、裁く場所でもある。大きな屋敷のように見えるが、中には裁判のための白洲や罪人を捕らえておくための牢獄などがある。

その他キーワード

笑面 (わらいめん)

ミツチグラがなくした面。笑った顔が描かれているお面で、感情を表現するためにつけるもの。近づいた者の顔に取り憑いてしまい、一度顔に憑いてしまったら、力業では外せないようになっている。それを外すための唯一の条件が、「笑面」に泣きっ面を見せること。

オタマ回線 (おたまかいせん)

隠世の通信機器。オタマジャクシのような見た目で、外部から連絡があると、呼び出し音の「プルプル」という音とともに、勝手に近づいてくる。大きさは人の手のひらに収まるサイズとなっている。

厄病草 (やくびょうぐさ)

樹海に咲いている花。枝がうねっており、一見すると盆栽にも見える。3枚の花弁からなる小さな花で、蜜のように甘く、食欲を刺激する香りを放っている。しかし、この厄病草の分泌する蜜は妖怪の体を蝕む病原菌を媒介しており、花が咲くと香り立たせながら空気中に散布される。それを吸引すると風邪に似た症状が発症し、妖力の弱い者や重傷者は絶命することもある。そのため、厄病草の香りを嗅ぐこと自体が忌避されている。また、厄病草の種が妖怪の体を苗床に発芽したものが寄生樹と呼ばれている。現世でいうところの不治の病の一つだが、隠世では妖怪を蝕むものの一つとして祟りと総称されてもいる。

威光 (いこう)

人間が妖怪に取り憑く技。安倍晴齋と芦屋花繪が使用できる。右手に光をまとい、その状態の右手で妖怪に触れることで行政たちをも抑えつけることができる。ただし、威光は妖怪の意思や思考を変えるものではなく、あくまで強制的にねじ伏せて服従させるものであり、力加減や使い方によっては妖怪を殺しかねない危険なものとされている。使い手にとっては妖怪から身を守るための最強の技でもある。

寄生樹 (きせいじゅ)

ギギギの親分に取り憑いていた植物のようなモノ。主に樹海に自生している厄病草が、妖怪を苗床にして発芽したものを指している。厄病草の種を腹に宿した種虫が妖怪の体に入り込んで、そのまま死ぬと寄生樹が発芽する。取り憑いて身動きを封じ、力を吸い取ってつねに飢えさせることでより多くの養分を得て成長していく。また、多くはないが現世にも厄病草が自生しているため、現世の虫も種虫となっていることがあり、妖怪が寄生樹に憑かれることがある。現世でいうところの不治の病の一つだが、隠世では妖怪を蝕(むしば)むものの一つとして祟りと総称されてもいる。

隠世の扉 (かくりよのとびら)

現世と隠世をつなぐ巨大な両開きの門。門には2匹のキツネが描かれており、それぞれ口角が上下している。安倍晴齋だけが開くことができるが、1日に2回開くと強烈な睡魔に襲われて倒れるため、開く回数が少なくなるように調節されている。隠世に隠世姫、現世に隠世姫の兄である「隠世下鴨御祖彦」がいることで相互関係が成立し、隠世の扉が開かれる。この関係性が崩れた時、隠世の扉は消滅するといわれている。

隠世酔い (かくりよよい)

人間が隠世に行くまでの過程で、現世との違いに酔ってしまうこと。症状としては身体がだるくなり、気持ちが悪くなる。これが進行すると情緒不安定になってしまい、精神にも異常をきたすので、そのまま放っておくと非常に危険。

ギョマロッペのジュース

隠世に存在するジュース。現世には存在しないもので、味も美味しい。あまり隠世のものに耐性のなかった芦屋花繪は拒絶反応を起こし、胃が燃えるような感覚に陥ってダウンしていた。

種虫 (たねむし)

厄病草の種に寄生された虫の総称。厄病草の蜜の香りにつられて呼び寄せられた虫たちの中で、腹の中に種を宿されたものを指している。種虫は妖怪を見つけると妖力を吸うために体内に入り込み、やがて死亡したあと妖怪の中で厄病草が発芽し、寄生樹となる。

祟り (たたり)

現世における不治の病のようなもので、隠世においては妖怪を蝕むものの総称。主に寄生樹や厄病草などがこれに該当する。軽症であれば風邪のような症状が出るだけで済み、薬も有効だが、寄生樹に憑かれると治療は命がけとなる。また、祟られた妖怪は凶暴化するともいわれている。樹海に蔓延しており、妖怪たちからは非常に恐れられているが、人間には害がない。

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