あらすじ
第1巻
観察者によって大地に投げ入れられたフシは、球体から岩、コケ、そしてレッシオオカミへと姿を変え、大雪原の中で少年と出会う。外の世界へのあこがれをフシに語りながら、孤独に生活をしていたその少年は、不慮の事故に遭い、志半ばで息絶える。その後、フシは少年の姿を写し取り、彼の意志を継いで旅を続けていく。その道中に、フシはニナンナに住むマーチという少女と出会う。マーチは村で神と崇められている、大きな熊、オニグマへの捧げものになる事が決まっていた。しかし、レッシオオカミの姿に変化したフシがオニグマを倒した事で、儀式は失敗に終わってしまう。こうしてフシとマーチ、そしてマーチの姉的存在であるパロナの三人は、儀式の失敗を村人達に悟られないようにヤノメ国へと逃亡の旅を始める。
第2巻
フシら三人は、ヤノメ国の住人として新しい生活を始めた。しかしフシは、不死身の肉体と自由自在に変化する生態に興味を抱いたハヤセに捕まり、世話係となったマーチと共に監獄に投獄されてしまう。何とかして監獄から逃げようと考えたフシは、地面を掘り進めて抜け穴を作り、マーチと共に脱獄に成功。その後、パロナと合流して一行はヤノメ国からの逃亡を試みるが、その道中でハヤセの矢によりマーチが生命を落としてしまう。大きな犠牲を払いながらもヤノメ国の追っ手から逃れた二人だったが、パロナはマーチが遺した手紙を胸に、故郷のニナンナへ戻る事を決意。そしてフシは再び孤独な旅を続ける事になるのだった。
第3巻
旅の道中、ヤノメ国で起こった騒動のどさくさに紛れて脱獄したピオランと再会したフシは、彼女から文字や言葉を教わりながら旅を続け、ピオランの故郷、タクナハへと辿り着く。そこでフシは、酒屋を営むピオランの夫、酒爺の世話になる。酒爺の家には、店を手伝いながら生活をしている、奇妙な仮面をかぶった少年、グーグーがいた。彼らとの共同生活の中で、フシの中に人間らしい感情が芽生え始める。そんな平穏な日々の中、フシは突如ノッカーに襲われ、不死身にもかかわらず瀕死の状態にまで追い込まれてしまう。グーグーに危機一髪のところで助けられ、何とか一命を取りとめたフシだったが、そんな彼の前に観察者が姿を現す。そして観察者はフシに同じ場所に留まらず、再び旅に出るようにと助言するのだった。
第4巻
フシがタクナハにやって来て、約4年の月日が流れた。グーグーは逞しい体格の青年となり、フシも流暢に言葉を使って感情豊かに会話をするようになり、より人間らしく成長をしていた。そんなある日、リーンの16歳の誕生日パーティーに参加したフシは、再びノッカーと相まみえる事になる。前回よりも強力な力を持つノッカーを相手に、フシは苦戦を強いられる。そして戦いの最中、グーグーはリーンを守り抜いた末に、倒壊する建物に押し潰されて生命を落としてしまう。グーグーの死によって感情をコントロールできなくなったフシは、グーグーの姿に変身し、口から炎を吹き出してノッカーを退けるのだった。再び大事な人を失ってしまったフシは、タクナハを離れて旅立つ事を決意する。
第5巻
フシと彼に同行するピオランは、港から船に乗ってサールナイン密林へ向かおうと考えていた。だが、トナリの策謀によって乗る船を誤り、世界各地から凶悪殺人犯を集めた監獄島のジャナンタに連れて行かれてしまう。島に到着後、フシはピオランと離れ離れになってしまうが、そこでトナリから、島で行われている闘技場で試合に優勝すると、島の長になる事が可能で、どんな願いでも叶えられるという話を聞く。こうしてフシは、ピオランを見つけ出して共に島を脱出するため、闘技場の試合に出場する事になる。順調に試合を勝ち進んでいくフシだったが、決勝戦ではそんな彼の前に、数年前にヤノメ国でマーチを殺害したハヤセが立ちはだかる。
登場人物・キャラクター
フシ
観察者が作り出した物体。ありとあらゆるものの姿を写し取って変身する事ができる。はじめはただの球体だったが、観察者によって大地に投げ入れられてからは岩の姿で時を過ごしていた。その後はコケに姿を変え、フシの近くで一匹のレッシオオカミが息絶えてからはその姿を写し取り、レッシオオカミの飼い主だった少年と共に生活をしていた。 しかし、少年が志半ばで息絶えると彼の姿を写し取り、以後はその姿で過ごしている。過去に姿を写し取った物であれば、自分の意志で任意に変化する事が可能で、傷を負ってもたちまちに自己再生する治癒能力を持つ。ニナンナを訪れる前までは会話すらまともにできなかったが、マーチやピオランをはじめとする、さまざまな人達と不慣れながらコミュニケーションを重ねる事で、徐々に自我に目覚め、言葉も話せるようになっていく。
少年 (しょうねん)
衣服の上から動物の毛皮を身にまとい、白髪で襟足の髪を一つに束ねている少年。フシが最初に出会った人間。かつては雪原の中、家族と共に集落で生活をしていたが、家族は5年前に雪原の向こうに食料の豊富な楽園があると信じて、集落の人達と共に旅立ってしまった。以来、ずっとレッシオオカミのジョアンと共に厳しい極寒の中、生活を続けていた。 のちに、両親や集落の人達が向かった楽園を目指して旅立つが、道中で不慮の事故に遭い、生命を落としてしまう。
マーチ
ニナンナに住む少女。背が低く長い黒髪で、顔を墨のような塗料でペイントしている。頭部に草でできた冠をかぶり、ニナンナの民族衣装を着用している。明るく活発な性格をしたお転婆娘だが、出会った当初、まだ言葉を満足に話す事のできなかったフシの世話をするなど、面倒見のいい一面がある。毎年行われているニナンナの伝統儀式の、巨大な大熊、オニグマへ差し出す捧げものに選ばれたが、フシによって儀式が失敗に終わり、近隣国のヤノメ国へと逃亡する事になった。 パロナと姉妹のように仲がよく、「ねーね」という愛称で呼び慕っている。大人になったら、母親のような女性になりたいと、あこがれを抱いている。
パロナ
ニナンナに住む女性。黒髪のロングヘアを毛先で一つに束ね、ニナンナの民族衣装を着用している。幼少の頃に両親を亡くし、姉と共に二人で生活していたが、姉は、ニナンナの伝統儀式であるオニグマへの捧げものの儀式の生贄として選ばれたが、逃亡。その後、何者かに殺害されている。面倒見がよく、マーチを自分の妹のように大事にしていて、マーチからは「ねーね」という愛称で呼ばれている。 弓矢を上手に扱えるようになりたくて、日々、男性達に混じって弓矢の練習に勤しんでいる。マーチが生き延び、オニグマへの捧げものの儀式が失敗した事を知り、その事実をニナンナの人達に気づかれないよう、マーチと共にヤノメ国へ逃亡する。
ハヤセ
ヤノメ国の役人の女性。黒髪のショートカットの髪型で、黒いタンクトップとショートパンツの上から甲冑を身にまとっている。ニナンナで神と崇められているオニグマに人間を捧げる儀式を遂行するために、ヤノメ国からニナンナに派遣された。フシがオニグマを倒してしまったために儀式は失敗に終わるが、その事実を隠蔽するために、フシと、捧げものだったマーチを、ヤノメ国へと連れ帰る事を決断する。 武芸に長け、特に弓矢の腕前は一流。また表情をあらわにする事が少なく、人を殺める事に躊躇のない冷酷な性格をしている。オニグマを倒したフシの不死身の肉体と、自由自在に変化する生態に興味を抱き、ヤノメ国に連れ帰ったフシを監獄に入れて人体実験を行う。
ピオラン
祈禱師の老婆。小麦色の肌をしていて、左の頬にほくろがあり、ニナンナの民族衣装を身にまとっている。ハヤセと共にヤノメ国からニナンナに派遣され、オニグマへの捧げものとしてマーチを選んだ。実は祈禱師ではなく、ヤノメ国の囚人で、捧げものを指名するために祈禱師のふりをするように、ヤノメ国から命令されていた。 その後、ニナンナを訪れたフシと出会い、共に生活をする中、日常会話ができるレベルまで、フジに言葉や文字を教え込んだ。囚人になる以前は、タクナハで夫の酒爺と共に生活をしていた。
酒爺 (さけじい)
タクナハで酒屋を営む老人。ピオランの夫。小柄で小麦色の肌をしていて、長い顎鬚を蓄え、頭部にひょうたんを載せている。世間では犯罪まがいの仕事をしていると噂されているが、豊富な知識の持ち主で、ユニークな発明品を作る事が得意。不慮の事故で顔面を丸太で潰されてしまったグーグーに仮面を作り、以来、グーグーを自宅で養っている。 大らかで世話好きな性格をしているが、高純度の酒を溜め込む事ができる臓器をグーグーの腹に埋め込むなど、その好奇心は限度を知らない。
グーグー
タクナハに住む少年。大きな体軀で、上半身を裸にして筋肉を顕にしている。両親はおらず、幼い頃は年の離れた兄のシンと共に、畑で育てた野菜を売って生計を立てていた。だが、兄は置き手紙を残して突如消息を絶ってしまい、以来、酒爺の家で育てられる事になった。幼い頃に市場によく買い物に来ていたリーンに密かな恋心を寄せており、リーンをかばって事故に遭い、顔面を丸太で激しく殴打して顔が潰れてしまった。 それ以来、素顔を人目にさらさないように仮面をかぶって生活をしている。決して逆境に負ける事のない強い意思の持ち主で、幾度も不遇な目に遭いながらも真っ直ぐに生きている。幼少の頃に酒爺から、高純度の酒を溜め込む事のできる臓器を腹の中に埋め込まれており、口から炎を吹き出す事が可能。
リーン
タクナハに住む少女。栗色のロングヘアで、タクナハの民族衣装を身にまとっている。裕福な家庭の生まれで、大きな屋敷に住んでいる。一方で、厳しい両親に育てられた事もあり、何にもとらわれない自由な生活にあこがれを抱いている。そのため頻繁に外出をしており、市場で野菜を販売していたグーグーと知り合った。幼少の頃に不慮の事故に見舞われ、グーグーに助けられたものの、身体に大きな傷を負っている。 明るく、誰とでも分け隔てなく接する、心優しい性格の持ち主。
シン
グーグーの兄。上半身は裸で、ショートカットで前髪をオールバックにしている。孤児で、幼少の頃から年の離れた幼いグーグーを連れて雇い主の家を渡り歩き、住み込みで働いていた。のちに自分達だけの畑を手にし、畑で育てた野菜を市場で販売して生計を立てるようになった。明るい性格で、どんな逆境にも負けない、弟思いの世話好きな兄だったが、ある日、唐突に置き手紙だけを残して消息を絶った。
チャン
タクナハに住む少年。酒爺の家を出たグーグーが住み込みで働く事を志願した家の息子。上半身は裸で、黒い短髪をしている。グーグーの素顔が醜いので、いっしょに生活する事だけでなく、家の仕事を手伝わせる事も嫌悪し、父親に無断でグーグーを解雇してしまう。
トナリ
ジャナンタに住む少女。小麦色の肌で、黒髪のボブヘアをしている。7歳の頃に母親が他界した際、父親が犯人ではないかという疑いをかけられ、父親の無実を信じて共にジャナンタへと流された。のちに父親は闘技場で試合に勝ち抜いて島の長になったが、間もなく島民に毒殺される。以降はジャナンタにいる孤児の少年少女達と仲間になり、島から脱出する計画を立てながら暮らしていた。 14歳の時に観察者の依頼を受け、フシをジャナンタ行きの船に乗せた。読書が好きで、父親が誕生日にプレゼントしてくれた日記帳が宝物。「リガート」という名前のフクロウをペットとしてかわいがっている。
エラン・ジー・ダルトン (えらんじーだるとん)
トナリの父親。筋肉質の大柄な体型で、頭をスキンヘッドにしており、小麦色の肌をしている。妻と娘のトナリと共に書物に携わる仕事をしていたが、突如妻が亡くなり、妻を殺した疑いをかけられて、ジャナンタへ島流しにされてしまう。その後は父親のあとを追って来たトナリと共に、島で苦しい生活をしていた。島の長を決める闘技場の試合で、優勝すれば島から出してもらう約束をして出場する事を決意。 結果、見事に最後まで勝ち抜いて島の長になるものの、島の外へ出る前に試合に出場していた者の家族に毒殺され、還らぬ人となってしまう。強面ではあるが、家族思いな心の優しい性格で、トナリの誕生日には日記帳をプレゼントしていた。
オニグマ
ニナンナで神と崇められている巨軀の大熊。白い体毛に覆われていて、体全体に矢が刺さっており、顔と手の付近に血が付着している。獰猛な性格で、一度暴れると並みの人間では手に負えないほど。今年の捧げもののマーチを頂戴するために、儀式を行う場所へと向かったものの、フシによってマーチを喰らう事を妨害された末に、倒されてしまった。
観察者 (かんさつしゃ)
この世界を保存するためにフシを作り出し、この世界の大地に投げ入れた張本人。黒装束に身を包み、黒いフードを目深にかぶっている。そのため素顔を表に出す事はないが、人間の男性のような姿をしている。フシが球体から岩、コケ、レッシオオカミ、そして人間に変化していく過程を観察し続けていた。その後、フシがさまざまな人間達との触れ合いの中で言葉を覚え、自我に目覚めていく過程で、時折フシの前に姿を現すようになる。 フシの生命を狙って襲いかかってくるノッカーを倒すためのアドバイスや、フシの今後の進路についての助言をするなど、フシの旅先案内人のような存在。
ノッカー
観察者の計画を阻止しようと企む存在。人間に酷似した姿形をしているが、植物や樹木のような有機体で構成された生体を持っている。伸縮自在に肉体を変化させる事が可能で、体の中心部にある核を壊されると活動を停止する。フシが旅の道中で写し取って獲得していった姿を奪い、弱体化させるために設計されている。学習能力を持っており、敗戦を重ねる度に知恵と力をつけてフシに襲い掛かる。
場所
ニナンナ
フシが最初に訪れた地域。マーチやパロナが住んでいる村のある地域の一つ。幾つかの村が集まって形成されている地域で、独特の民族衣装を着用し、顔面に墨のようなペイントを施している者もいる。この地域ではオニグマと呼ばれる大熊を神として崇める風習があり、毎年、ヤノメ国から祈禱師が派遣され、この地域の村の中から一人の少女を、オニグマへの捧げものとして生贄に出す儀式が行われている。 住居をはじめとする建物の殆どが高床式住居で、屋根は藁葺き。近隣国のヤノメ国に比べて文明の発達が遅れているが、広大で豊かな大地を持っている。
ヤノメ国 (やのめこく)
ハヤセが住んでいる国。国内の至るところに大きな「目」がデザインされた旗が吊るされている。また、ニナンナ地域とは比べ物にならないほどに文明が発達していて、建物は木材のほかにも石材等を加工して建築されている。また、明かりを灯すためのエネルギーの供給源と装置があるため、夜でも建物や外灯に明かりが灯っている。そのため夜遅くまで外で商いなどの活動をする住民も少なくない。 街中には商店が沢山軒を連ねていて、紙に文章を認めて依頼人が指定した場所へと送る、手紙屋という独特の商売がある。ニナンナで神と崇められているオニグマへ、一人の少女を捧げる儀式を執り行う役目を担っていて、毎年に役人と祈禱師をニナンナに派遣している。しかし、実はニナンナの豊かな大地を狙っていて、そのためにニナンナ伝統の生贄の儀式を手伝い、自ら手を汚す事によって彼等の猜疑心を払拭して英雄心を煽り、最終的には精神的な支配を目論んでいる。
タクナハ
グーグーやリーンが住んでいる村。ピオランの故郷。野菜を育てる事に非常に適した豊かな地域で、村の住民の殆どが農作物や果物を育て、市場で販売して生計を立てている。そんな中、酒爺のように酒を醸造して販売している酒屋も存在する。村の奥にはリーンの住む大きな屋敷が存在する。ヤノメ国をあとにしたフシがピオランと共に訪れた村で、約4年間このタクナハに滞在した。 グーグーやリーン達との触れ合いによって、フシが、身体だけでなく、精神的な成長をする大きなきっかけを作ってくれた村。
ジャナンタ
世界各地の手に負えない凶悪な殺人犯と、その家族を集めて収容している監獄島。運ばれて来る囚人達は、島に到着する前に島民の印として手に焼印を押される。島民全員が監視し合っているため、一度収容されると、脱獄する事はほぼ不可能。島内では独自の文化が形成されており、犯罪を取り締まるような組織は存在しない。島内では島民達の息抜きのために闘技場が設けられていて、この闘技場で行われる試合に勝ち抜いた者が島の長となり、島内の権限のすべてを手に入れる事ができる。 島の長が死亡した場合、その3日後に次の島の長を決める試合が開催される。
書誌情報
不滅のあなたへ 23巻 講談社〈講談社コミックス〉
第1巻
(2017-01-17発行、 978-4063958423)
第2巻
(2017-03-17発行、 978-4063958874)
第3巻
(2017-06-16発行、 978-4063959550)
第4巻
(2017-09-15発行、 978-4065101896)
第5巻
(2017-11-17発行、 978-4065103852)
第6巻
(2018-02-16発行、 978-4065109632)
第7巻
(2018-06-15発行、 978-4065114100)
第8巻
(2018-09-14発行、 978-4065122310)
第9巻
(2018-12-17発行、 978-4065133965)
第10巻
(2019-04-17発行、 978-4065144497)
第11巻
(2019-08-16発行、 978-4065153161)
第12巻
(2020-01-17発行、 978-4065176634)
第13巻
(2020-07-17発行、 978-4065193082)
第14巻
(2020-12-17発行、 978-4065214794)
第15巻
(2021-04-15発行、 978-4065228876)
第16巻
(2021-08-17発行、 978-4065245552)
第17巻
(2022-02-17発行、 978-4065269015)
第18巻
(2022-09-16発行、 978-4065291313)
第19巻
(2023-02-17発行、 978-4065306260)
第20巻
(2023-08-17発行、 978-4065321928)
第21巻
(2024-01-17発行、 978-4065341858)
第22巻
(2024-06-17発行、 978-4065357842)
第23巻
(2024-11-15発行、 978-4065374344)