概要・あらすじ
文久3年3月、京の都では尊王攘夷の気運が高まり、過激派浪士によるテロ暗殺が多発。幕府は治安を回復するために、テロ取り締まりの機動隊として浪士隊を一般から公募して京に上らせたが、京に着くと一転、清河八郎の命で江戸に引き返す事とになる。これに反発した芹沢鴨率いる水戸派と、近藤勇をはじめとする土方歳三ら試衛館組による13名は、京に残り、会津中将御預新選組を結成して、革命派組織の取り締まりを行っていった。
やがて新選組が発展し組織も大きくなっていくと、次第に芹沢鴨たちの横暴さが目に付き始め、土方歳三たちとの確執がより深い物になっていく。
登場人物・キャラクター
土方 歳三 (ひじかた としぞう)
新選組副長。試衛館出身。近藤勇と同じ農民の出で、侍への憧れは人一倍強い。そのため、貧しさから武士にあるまじき惨めな振る舞いをする者に対して怒りを向ける。幼い頃に大名行列を見ながら約束をした、いつか師匠である近藤勇を出世させる誓いを実現させるため、自分にも他人にも厳しい態度を取りながら新選組を大きな組織にしようとする。 近藤勇の危機には、風呂から飛び出してでも駆けつける。剣術の腕前は、到底芹沢鴨や新見錦には及ばないが、一度真剣を抜けば獣のような闘争心で相手を威圧してしまう実戦派。一途な態度が、周りから誤解をされ敵を多く作るタイプで、数々の心無い悪評を受けるが、忍耐強く耐え続けている。 表向きは冷酷に、隊の為であれば友達でも叩き切る覚悟と言ってはいるものの、実は仲間思いのため、本人の知らない所で裏から手を回して危機から救っている。文才が無く、川柳と間違えられる下手な俳句を読む。
近藤 勇 (こんどう いさみ)
新選組局長。試衛館道場主。多摩の農民出身。武家の養子になる事で侍になったため、農民出身を軽く見られることが多く、武士以上に武士らしく生きようとする。道場主としては、月謝が払えず野菜をくれるような所へも出稽古に行き、居候たちのせいでいくら食費が掛かったとしても、自分を慕って集まってくれた者には常に温かく接し、弟子たちにとって剣術以上の魅力になっている。 奉公口を世話してもらうために、惨めな芸を強要された時は、己のプライドと弟子たちに苦労を掛けたくない思いとの間で苦悩するが、決して侍としての意地を捨てる事はなかった。道場主として剣の腕は確かだが、もし弟子の土方歳三と勝負をしたら、自分は情に厚いため冷血さで負けてしまうだろうと感じている。 新選組では、3人の局長の中で芹沢鴨に次ぐ地位。誠心誠意、隊のために忠誠を尽くすという思いから、隊旗に誠の文字を入れる。一度笑い出すと止まらない笑い上戸。
沖田 総司 (おきた そうじ)
新選組一番隊隊長。試衛館出身。近藤勇の直弟子。侍と言うよりはボンボンと例えられる容姿の上、刀を置き忘れたまま子供たちに交じって遊ぶような無邪気さがあるが、剣の腕と馬術は超一流。芹沢鴨は宮本武蔵以上と評し、道場では竹刀を持つと人が変わると讃えられている。暴れ馬のような芹沢鴨を前に、折れやすい柿の木で一突きにした固い生芋を差し出して、その実力ととぼけた雰囲気で一瞬にして怒りを鎮めさせたため、仲間たちからも不思議な男と言われる。 マイペースでありながら、思慮深い。呉服屋鳥古屋に長州の脱藩浪士たちが襲撃に来た時は、台帳に落書きをして遊んでいる様で、土方歳三らに応援の手紙を書き子供たちに使いを頼む抜け目なさを見せた。
原田 左之助 (はらだ さのすけ)
新選組十番隊隊長。試衛館では1番新入りの居候。元は一本差しの武家奉公人。人一倍食い意地が張り、道場では稽古もせず態度が大きいと仲間たちから呆れられる。殺し屋の見立てでは、剣の腕は立たないが常識では考えられない反撃の仕方が、まるで野犬のようだと例えられた。博打好きが高じて、200両の負けの代わりに腕を切られそうになるが、最後まで堂々とした態度に、賭博を仕切る親分に気に入られる。 将棋好きで、隊名を考える時も駒に関連したものしか思いつかなかった。
永倉 新八 (ながくら しんぱち)
新選組二番隊隊長。元試衛館の居候。敵に襲われた土方歳三を探したり、浪士隊と分かれて京に残る事になった時など、何かとボヤキが多い。喧嘩に上手い奴は勝ち目のある時だけと、無理をせず不利な勝負は挑まないタイプ。下の者には優しいが、隊規を重んじる部下の中には、締まりがないと別の隊への配置換えを希望する者もいる。 市中巡察中に部下が斬られ、隊長責任を取らされる。
山南 敬助 (やまなみ けいすけ)
新選組幹部。元試衛館の居候。インテリで講釈好きだが、得意になっているとその態度を面白く思っていない土方歳三からチクリと小言を言われる。暴力や大声を上げる相手を前にすると圧倒される。喧嘩も含め、物事全てを合理的に済ませようと考える。京都所司代の嫌がらせで、隊名を新鮮組にするように命じられた時は、字にこだわる事はないと同じ読みの新選組を藩に届け出た。
藤堂 平助 (とうどう へいすけ)
新選組四番隊隊長。元試衛館の居候。口が達者で、新見錦に使いに出されそうになっても皮肉で言い負かしている。試衛館時代を思い出す時には、いつもたくあんの尻尾ばかりだった貧しい食事の話をする。屯所として使っていた八木家のおかみさんが、自分に惚れて色目を使っていると誤解をする幸せな色呆け。 モデルが望月三起也の弟子土山しげるのため、巨漢で眼鏡を掛けた姿に描かれている。
井上 源三郎 (いのうえ げんざぶろう)
新選組幹部。試衛館出身。近藤勇の直弟子。道場時代から、居候連中相手に小言を言いながら家の修繕や食事の支度などの面倒を見てきた世話役。器用で生え抜きの幹部である事から、新入隊士から先生と呼ばれると恐縮するが、試衛館から馴染みのある原田左之助や藤堂平助に加え、局長の近藤勇からも飯炊き係のような扱いしか受けず落ち込んでしまう。 酒を飲むとすぐに裸になりたがる癖がある。
芹沢 鴨 (せりざわ かも)
新選組局長。水戸藩出身。神道無念流の免許皆伝を受け、戦績は33戦無敗、うち13人を死亡させた剣豪。殺し屋たちからは、道場でも一流で殺しの経験も豊富と場数を踏んでいるため、土方歳三を狼と例えるなら芹沢鴨は虎だと言われた。大酒飲みで強欲な性格のため、町民たちを脅して多額の金を強請っては、料亭で派手に宴会をして新選組の評判を落としていた。 刀で兜を割り、大阪相撲相手に喧嘩を売るほどの怪力の持ち主。しばしば試衛館一派と対立し、特に反抗的な土方歳三の事は目の敵にしてきたが、沖田総司だけは、その実力を買い、また同じくらいの年齢で亡くなった弟がいたため気に入っている。「尽忠報國士芹沢」と彫られた鉄扇を持つ。
新見 錦 (にいみ にしき)
新選組局長。水戸藩出身。神道無念流の免許皆伝の持ち主。芹沢鴨にとって唯一無二の友人。竹を使った剣の打ち合いでは、土方歳三に対して圧倒的な腕の差を見せるが、真剣を抜き殺し屋の如く豹変した土方歳三の勢いに呑まれてしまった。上の者に対する口の利き方を心得ていて、暴れ者の芹沢鴨は元より隊の認可を渋る京都所司代さえも丸め込んで認めさせる所だった。 目的の為なら手段を択ばないNo.2。
平山 五郎 (ひらやま ごろう)
新選組隊士。水戸藩出身。土方歳三を嫌い、同じく恨みを持ち密かに暗殺を企んでいる江戸の老人一派と裏で情報交換をして、隙を狙っている。土方歳三を露骨に挑発するような真似をして、新見錦から無駄に怒らせるのは危険な男だと警告される。酒の席では調子よく芹沢鴨のご機嫌をうかがう。
野口 健司 (のぐち けんじ)
新選組隊士。水戸藩出身。壬生の屯所で平山五郎と一緒に試衛館組を小馬鹿にして何かと因縁を付ける。新見錦のアイデアで土方歳三の弱みに付け込むため、でっち上げの犯人として捕らえたか弱い村の娘を締め上げたため、原田左之助の怒りを買い、斬り付けられそうになる。
間口 (まぐち)
会津松平家重役。江戸では、試衛館で「豪華大食事」と称して両国の川開きの時に他人が宴会をしてる席で弟子同士が大暴れを起こし、その隙に料理を盗み食いするという恒例行事の被害者として登場。その後、京都所司代から隊の認可を断られた近藤勇に、京の治安を守るためには強盗も取り締まれる強い武士が必要として、先の「豪華大食事」の事と京都所司代に歯向かう魂に惚れ込み、松平肥後守預かりで新選組を発足させる。 組を作る条件として、知り合いのはねっ返り山崎ジョウを隊士に加えさせた。新選組が名を上げてくると、目に余る芹沢鴨の悪行に手を焼き、近藤勇に始末を命じた。
山崎 お糸 (やまざき おいと)
新選組探索方。会津松平家間口から「山崎ジョウ」の入隊を頼まれた近藤勇は山崎蒸だと思い込んでいたが、実際には「山崎嬢」という意味だった。その実力は、瞬時に芹沢鴨・近藤勇組の対立を見抜く優れた洞察力を持ち、頭の回転が速い切れ者。スリ仲間たちに顔が利き、アネさんと慕われている。 土方歳三が表立って動けない場合に、裏の人脈を使って力を貸す。土方歳三から女扱いされていない事が不満。
村の娘 (むらのむすめ)
土方歳三が屯所近くで知り合った草餅売りの娘。土方歳三の事は「トシさん」という名前しか知らず、気さくに話しかけてくる。人前ではよそよそしく振る舞っているが、土方歳三も坂で動かない娘の荷車を押してやるなど、お互いに淡い恋を抱いている。結ばれそうになった頃に新見錦に恋心を利用され、「トシさん」は自分の両親を惨殺した鬼の土方歳三なのだと聞かされた上、土方歳三に毒を盛った犯人として捕らえられてしまう。
山上 留作 (やまがみ とめさく)
新選組新人隊士。蕎麦屋の丁稚奉公。元々侍に憧れていた上に、同じく甲冑店で丁稚をしていた安吉が番頭のしごきを受けているのを見て、二人で新選組入隊を志願する。まだ子供で未熟なためボロボロになり門前払いを喰らいそうになるが、決して諦めない度胸に土方歳三が入隊を許可した。隊士となって町人たちを見返すが、徐々に隊規の厳しさを知る事になる。 新見錦の金策に利用され、使いの途中で暴漢に襲われる。また代わりに使いに出た安吉も、新見錦が強請の証拠を隠匿しようとしたため、脱走罪になってしまう。
江戸の老人 (えどのろうじん)
土方歳三を狙い懸賞金を掛けて殺しを命じる謎の人物。土方歳三にかけた懸賞金は、当初江戸を出た時は500両だったが、新選組の活躍により800両まで上がった。
集団・組織
新選組 (しんせんぐみ)
『俺の新選組』に登場する組織。京の都で多発する過激派浪士による要人暗殺から治安を回復するために、テロ取り締まりの機動隊として幕府が一般公募した浪士隊200名の内、清河八郎と江戸に戻らずそのまま京に残った、芹沢鴨一派5名、近藤勇ら試衛館一派8名が、後に松平肥後守預かりで発足させた治安部隊。 局長は芹沢鴨、近藤勇、新見錦の3名で、副長は土方歳三、その下に一~十番隊として各隊長および十数名の隊士が所属する。他に探索方の山崎ジョウなど別働隊も存在する。暗殺者や強盗から京の治安を守るため普段は市中の見回りを任務とし、不審者がいればたとえ町方では手が出せない様な藩士や幕臣であろうと捕らえる事ができる。 隊士は袖をカットしたダンダラ羽織に派手な鎖やアクセサリーなどを身に着ける。局中法度書と呼ばれる厳しい隊規があり、隊士は侍として相応しくない行動を取った場合には、即座に切腹となる。