俺の空 三四郎編

俺の空 三四郎編

本宮ひろ志の長編漫画『俺の空』シリーズ3作目。これまでのシリーズの主人公だった安田一平の甥、安田三四郎の活躍を軸に、日本国内の構造改革、世界のみならず地球規模の環境の変化と、それにあらがう人間の姿を描く。「週刊ヤングジャンプ」1992年21・22合併号から1993年52号にかけて連載された作品。

正式名称
俺の空 三四郎編
ふりがな
おれのそら さんしろうへん
作者
ジャンル
ヒューマンドラマ
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あらすじ

モンゴルの旅(第1巻)

日本の政財界に大きな影響力を持った大財閥「安田グループ」の総帥、安田一平は、自身の腹違いの姉の子供、安田三四郎と出会う。自分にはない「強さ」を持った三四郎に一平は共感、旅に出て世界を見たいという三四郎を援助することを決める。まずはモンゴルに降り立った三四郎は、そこで遊牧民と交流し、大自然の中で人間が果たすべき役割とその意味を考える。モンゴル相撲の名手、スチンら多くの人と出会い、認められた三四郎は次の地へ旅立つ。

アメリカの旅(第2巻~第3巻)

安田三四郎は次の旅の地としてアメリカを選ぶ。地元の高校に編入された三四郎は白人と黒人、そしてメキシコ移民との校内の抗争に巻き込まれる。三四郎は黒人とメキシコ移民との抗争に割って入り、見事に抗争を収めることに成功。双方からの信頼を得る。さらに三四郎は白人側のリーダーであるジム・ネルソンと決闘、ジムを退けて友情を結ぶ。こうして高校をまとめあげた三四郎は、新たな旅路へと向かう。

旅の途中で女性プロゴルファーのキャシー・キングと知り合った三四郎は、そのまま彼女のツアーにキャディとして参加し、キャシーの眠れる才能を引き出していく。長年くすぶっていたキャシーだったが、三四郎のアドバイスで開眼を果たし、見事にツアー優勝を遂げるのだった。

地球の危機(第4巻~第5巻)

アラスカを訪れた安田三四郎は、アメリカ合衆国副大統領候補であるエルビス・コアから、叔父の安田一平が飛行機事故で死亡したこと、そして一平の遺言により、自分が大財閥「安田グループ」の後継者に指名されたことを知らされる。一平の遺言で、御前めぐみという女性を秘書とした三四郎は、ニュージーランド、南極、そしてロシアを訪れ、地球規模で環境が激変する現状を目の当たりにする。コアは、このままでは人類は滅亡すること、そしておよそ半世紀にわたって地球外生命体とアメリカがコンタクトをとっていることを、三四郎に告げる。

コアは、人類の滅亡は避けられないということで、選ばれた人間のみを地球外に避難させる「ノアの方舟計画」が立ちあがったことを三四郎に告げる。そして、一平はそれに反対したために暗殺されたのだと語る。そのコアもまた、何者かに暗殺されてしまう。悲しむ三四郎の前に地球外生命体の円盤が出現、三四郎はめぐみとともにその円盤に乗り込んで月や火星を訪れ、地球で今起こっていることを改めて知るのだった。

一方、死んだと思われていた一平はアメリカで生き延びており、大統領補佐官として政治の世界で復活。三四郎を連れ去った地球外生命体の円盤も含め、世界の政財界を牛耳るローテンシルデ一族が裏で糸を引いていることを知った一平は、彼らと戦うため日本へ帰国、新たな政党を結成して国会議員に出馬する。

ロシアの武道大会(第6巻~第8巻)

円盤から帰還し、再びモンゴルを訪れた安田三四郎は、スチンがロシアで開催されている武道大会に出場するために、消息を絶ったことを知らされる。ロシアへ向かった三四郎は、その途中でと名乗る謎の老人と出会い、なし崩し的に武道大会へと出場させられる。武道大会でスチンと再会し、連れ帰ろうとする三四郎だったが、その大会に飛び入り参加したかつての兄弟子沢田京太郎の姿を見て、そのまま大会への出場を続行する。

三四郎と京太郎は、古武術「楊心陰流」を継承する父親たちから、それぞれ「陰」と「陽」の技を伝授されており、2人の戦いは「楊心陰流」の陰陽を合一するための戦いでもあった。激闘の末、京太郎と別れた三四郎は、ローテンシルデ一族の最長老であるゴールド・ローテンシルデと出会い、孫娘のマーガレット・ローテンシルデを紹介される。三四郎はマーガレットを妻とし、「安田グループ」の後継者となることを決意するのだった。

登場人物・キャラクター

安田 三四郎 (やすだ さんしろう)

大財閥「安田グループ」の総帥、安田一平の甥。安田グループの血縁ながら慎ましい暮らしをしていた。自分以外の人間をみな「仲間」と呼ぶなど、大きな人間愛にあふれ、行く先々で多くの人から慕われる。紆余曲折を経て一平の後を継ぎ、「安田グループ」の総帥となる。幼い頃より、父親から古武術「楊心陰流」を伝授されている。

安田 一平 (やすだ いっぺい)

大財閥「安田グループ」の総帥を務める男性。かつて世界中を放浪し、自身の妻となる人物を探したという逸話の持ち主。自分と同じく旅に出たいと考える甥の安田三四郎を援助する。三四郎を次期の「安田グループ」の総帥に指名し、自身は国会議員に立候補。のちに総理大臣に就任する。

御前 一十三 (みさき ひとみ)

安田一平が世界中を放浪した末に見い出し、妻とした女性。一平を心から愛し、信頼している。また、一平の最大の理解者でもあり、一平が考えたこと、感じたことはすべて自分の感情として受け入れる包容力のある人物。安田三四郎にとっても良き叔母として接している。

エルビス・コア (えるびすこあ)

アメリカ次期副大統領候補の男性。安田一平の親友。環境の激変による地球温暖化を懸念し、地球の現状を安田三四郎に伝えた。国家や地球のために人間として何ができるかと、民衆に問いかける演説をする。その直後、何者かによって暗殺されてしまう。

御前 めぐみ (みさき めぐみ)

御前一十三の姪。安田一平の手引きにより、「安田グループ」の総帥として指名された安田三四郎の前に現れ、彼の秘書となる。思ったことは何でも口にする裏表のない性格をしている。一十三の立てたスケジュールに従い、三四郎とともに行動する。

武尊 善行 (ぶそん よしゆき)

検察庁に務める男性。安田一平とは終生のライバルにして良き理解者。政治家として転身した一平を検察庁という立場から支援し、一平の総理大臣就任の影の功労者となった。立場が変わった現在も一平との友情は変わらず、あくまでも友人として接する。

(ちん)

安田三四郎がモンゴルからロシアへ渡る途中に出会った老人。老齢の男性ながら格闘技の達人であり、三四郎をロシアで開催されている武道大会に出場させた。三四郎の操る武術をはじめ、古今東西の格闘技や武術に精通している。

沢田 京太郎 (さわだ きょうたろう)

幼い頃に安田三四郎とともに生活をしていた男性。三四郎と同じ古武術「楊心陰流」の使い手。かつては三四郎とも兄弟同然の仲だったが、「楊心陰流」の殺人術を伝授されるために父親を殺害したことがきっかけで人が変わってしまい、現在は三四郎を倒すために彼をつけ狙う。

スチン

モンゴルへの旅で安田三四郎が出会った男性。モンゴル相撲の名手。当初は「よそ者」の三四郎を目の敵にしていたが、やがて和解し、その後は三四郎に「家族」として接する。のちに生活費を稼ぐために、ロシアで開かれる武道大会に出場し、三四郎と再会する。

ジム・ネルソン (じむねるそん)

アメリカへの旅で安田三四郎が出会った男性。三四郎が編入された高校のフットボールクラブのキャプテンを務めている。白人至上主義者で、黄色人種である三四郎も差別の対象としていたが、のちに三四郎のことを認め、友人となる。

キャシー・キング (きゃしーきんぐ)

アメリカへの旅で安田三四郎が出会った女性。才能はあるものの落ち目のプロゴルファーで、当初は三四郎のことを疎んじていた。キャディとなった三四郎から数々のアドバイスを受けて自信をつけ、ツアーで見事優勝を飾る。

(くら)

日本最大の暴力団「吉龍会」に、突如として現れた謎の男性。全国の暴力団組織を1つにまとめるという構想のもと暗躍する。その正体は安田一平の腹違いの兄であり、暴力団組織をまとめるという構想も、一平の理想を実現するための行動である。

マーガレット・ローテンシルデ (まーがれっとろーてんしるで)

ゴールド・ローテンシルデの孫娘。ゴールドの指示で、大財閥「安田グループ」の後継者となった安田三四郎と結婚する。ローテンシルデ一族にとって政略結婚は運命であると教えられて育ち、三四郎との結婚も、その運命に従って受け入れる。

ゴールド・ローテンシルデ (ごーるどろーてんしるで)

ローテンシルデ一族の最高権力者の老齢の男性。絶大な権力を持つローテンシルデ一族の最長老。世界の行く末を憂いつつも、その権力を守り盤石なものとすることを最優先に考える老獪な人物。大財閥「安田グループ」の後継者になることを決意した安田三四郎に、孫娘のマーガレット・ローテンシルデを紹介する。

集団・組織

安田グループ (やすだぐるーぷ)

総資産数十兆円を誇る日本屈指の巨大財閥。大手都市銀行をはじめ、重工業や鉄鉱業などさまざまな企業を傘下に収めている。経済界のみならず、政治の世界にも大きな影響力を持ち、世界各国の首脳とのつながりもある。

ローテンシルデ一族 (ろーてんしるでいちぞく)

400年以上もの長い歴史を持った一族。アメリカ合衆国大統領をはじめ世界各国の首脳すら意のままにでき、世界各国の政財界を牛耳る存在。地球環境の激変に伴い、選ばれた人間だけを地球外へ脱出させるノアの方舟計画と、それが失敗した場合の人類削減計画を推進する。

その他キーワード

ノアの方舟計画 (のあのはこぶねけいかく)

ローテンシルデ一族が考案・推進している地球脱出計画。地球環境の激変により、人類の滅亡が不可避となったことを受け、「人類」という種を残すため、選ばれた人間のみを火星へ脱出させるという計画。安田一平やエルビス・コアをはじめ、このノアの方舟計画に反発する者も多い。

地球外生命体 (ちきゅうがいせいめいたい)

ローテンシルデ一族をはじめとする、世界各国の首脳など一部の存在のみがコンタクトできる存在。月面に数々の宇宙船や基地を配備しており、各国首脳は地球外生命体に従うことを義務づけられる。ローテンシルデ一族は、その超科学技術を利用してノアの方舟計画を遂行しようと画策する。

楊心陰流 (ようしんかげりゅう)

1200年の歴史を持つ日本の古武術。殺人術のため、継承者は公の面前でその技を使うことを禁じられている。その真髄は、自身の体内に「宇宙」を具現化することにあり、「陰」と「陽」の2つの流れを合一することで完成する。

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俺の空 (おれのそら)

本宮ひろ志の長編漫画『俺の空』シリーズ1作目。日本最大の財閥の御曹司安田一平が、旅先で多くの女性と巡り会い、人間的に成長する姿を描く。 関連ページ:俺の空

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