あらすじ
第1巻
王寺(おうじ)学園高校2年生の牧野姫子は、趣味の読書に明け暮れ、恋愛には興味のない日々を送っている。そんな春のある日、姫子は中等部のアイドルの真山春樹に出会う。春樹はオリンピック候補と呼ばれるほどの陸上選手だが、最近はスランプに苦しんでいるらしい。姫子はその理由が、春樹が自身のファンをはじめとする周囲に、気を遣いすぎているせいだと考えていた。そこで人のために頑張るのは立派だが、陸上が好きなら自分のために競技した方がいいと諫めるのだった。後日、この助言と姫子の応援がきっかけで、春樹はスランプを脱出。安堵する姫子だったが、周囲が見ている中で春樹に告白され、一躍有名人となってしまう。それでも趣味に没頭したい姫子は春樹を冷たくあしらうが、周囲はすっかり春樹を応援しており、姫子は陸上大会のスタッフに任命されてしまう。姫子はこれを迷惑に思いつつも、当日まじめに仕事をこなすが、西高校の本田英雄が姫子達スタッフを召使い扱いした事でトラブルが発生。怒った春樹は、中学生でありながら、高校生の英雄の記録を抜いて見返すと宣言し、春樹は見事勝利する。そして春樹は、英雄にも一言言い返した姫子の事をますます好きになる。姫子はこれに戸惑いつつも、少しずつ春樹に惹かれていくのだった。
第2巻
陸上大会から1週間が経過したある日、本田英雄が王寺学園高校に編入して来た。牧野姫子は、これは先日真山春樹に負けた事が原因で、英雄はこれから春樹に嫌がらせをするに違いないと考えていた。英雄は春樹に復讐するため、春樹の最も大切な存在である姫子を自分のものにすると言い放つ。姫子はこれに呆れつつも、英雄を監視するため、期間限定で陸上部へ入部。これを知った春樹は、二人のあいだになにかあったに違いないと察し、1週間後に走り高跳びで英雄と勝負する事にする。しかし姫子はこの間、マネージャーとして完璧な仕事をすると決め、二人の練習に平等に付き合ううち、傲慢で身勝手に思えた英雄の努力家な一面を知り、考えを改めるのだった。そして試合当日、姫子は心愛から、この勝負に勝った方が姫子と交際するのかと尋ねられる。姫子はそんな約束はしていないし、英雄が勝てば彼の気が済むだろうから、その方が都合がいいと答えるが、そこで心愛に、春樹に負けてほしいのかと聞かれて反省。そして春樹に、これまで通り自分自身のために頑張ってほしいと伝える。これがきっかけで春樹は好成績を出し、英雄に勝利する。安堵する姫子だったが、今度は英雄が本気で姫子の事を好きになってしまったと告白して来る。
第3巻
牧野姫子は、校内であまりにも話題になってしまっている、真山春樹、本田英雄との三角関係に決着をつけるため、春樹と交際宣言した。これは姫子と春樹が両思いになったからではなく、その場を収めるための噓だったが、春樹はこれを快諾し、二人は偽の恋人関係を演じる事になる。そこで二人は、周囲に疑われぬよう外では親しげに振る舞うが、春樹に本気で思いを寄せている女性達を傷つけているのではないかと、姫子は申し訳なく思っていた。そんなある日、姫子は春樹の応援中に体調を崩してしまう。これを春樹は、姫子に無理をさせた自分が原因だと捉えて落ち込むが、姫子は、決してそうではないし、春樹との関係を通じて恋がどんなものであるか知りたいと思い始めていると告白。そこで二人はデートする事になり、姫子は心愛のアドバイスで洋服を選ぶ事になるが、いざ買い物を終えると、この服は自分にはかわいすぎではないかと恥ずかしくなってしまう。姫子はデートの当日、仮病を使ってデートを断ろうとするが思い直し、春樹に正直な気持ちを打ち明ける。これによって二人の仲は、また一つ深まるのだった。
第4巻
牧野姫子は、真山春樹の案内で、春樹が以前通っていたスポーツクラブに遊びに行く事になった。そこでも春樹は人気者で、姫子は気後れするが、ケガを押して無理やり運動しようとする少年の望を二人で止めた事で仲は深まる。しかしその直後、姫子は突如現れた本田英雄に、無理やり車で連れ去られそうになる。姫子はすぐに降車するが英雄はあきらめず、春樹と無理をして付き合うよりも、自然体で付き合える自分の方がふさわしいと言い出す。しかし姫子は、春樹との約束を守るため、彼のもとへ戻ると告げるのだった。そして、姫子は無事に春樹と合流するが、春樹はこれ以上自分に気を遣ってほしくないと、今日は帰ろうと告げる。姫子はこれに従うが、勇気を出して春樹のもとに戻って来たにもかかわらず、自分の気持ちが届かなかった事を悲しく思っていた。後日、姫子は正直な気持ちを春樹に伝え、二人は夏休みに改めてデートをする事になる。しかし当日、二人はすれ違いばかりで、姫子は春樹と相性が合わないのではないかと不安になってしまう。
第5巻
花火大会の日、牧野姫子は真山春樹から、今の自分達にはうまくいかないところもあるかもしれないが、いっしょに過ごす事で歩調を合わせていこうと言われる。そこで姫子は春樹のファンクラブ会員に頼み、次の大会の応援を手伝う事にする。しかしその翌日、突如春樹から別れてほしいという留守番電話が入る。訳もわからぬまま1週間が経過するが、そこに本田英雄が現れ、自分と春樹は留学の下見として海外に合宿へ行っていた事を告げる。なにも知らなかった姫子は、春樹が将来のために決めた事なら仕方ないと納得しようとするが、結局春樹に電話をかけ、真意を訪ねてしまう。しかし春樹は冷たく、姫子は彼がなにを考えているのか、わからなくなってしまうのだった。それでも姫子は春樹の本心を確かめたくて、帰国後に彼のもとへ話をしようと訪ねる。そこで姫子が聞かされたのは、春樹が夏休み最後の大会が終わり次第海外に留学し、その留学は長ければ3年続くというものだった。
コラボレーション
本作『初恋はじめました。』には、山田デイジーの別作品『恋するふたごとメガネのブルー』に登場するキャラクターの藤田空が、真山春樹の友人として登場する。また、各巻の巻末には『恋するふたごとメガネのブルー』の番外編として、空と春田もものその後を描いた「恋するふたごとスカイブルー」が収録されている。
登場人物・キャラクター
牧野 姫子 (まきの ひめこ)
私立王寺(おうじ)学園高校に通う2年生の女子。前髪を目の上で切り、胸の高さまで伸ばした茶色のロングヘアを、耳の下で二つに結んでいる。制服のスカートは長めで、眼鏡をかけている。マイペースながらまじめな性格で、落ち着いた雰囲気を漂わせている。しかし怒ると怖く、知的で語彙力豊富なため口喧嘩が非常に強い。また、学校生活にはまったく興味がなく、あえてスクールカーストの底辺にいる事で周囲とのかかわりを最小限に留め、趣味の読書中心の生活を送りたいと考えている。しかし、真山春樹に告白されたのがきっかけで一躍校内の有名人となり、春樹に振り回されるようになる。さらにその直後、他校から転校して来た本田英雄にまで気に入られ、三角関係になってしまう。基本的に学校行事や部活動には乗り気ではないが、自分の辞書に適当という言葉はないのを信条にしているため、春樹との出会いを機に参加した陸上大会や陸上部の活動には全力を尽くしている。本だけではなく漫画も大好きで、人間関係や恋愛で困ると、小説や恋愛漫画を参考に乗り越えようとするところがある。
真山 春樹 (まやま はるき)
私立王寺(おうじ)学園中学校に通う3年生の男子。陸上部に所属している。前髪を目の上で切った金色の短髪にしている。細く見えるが筋肉質の体型で、穏やかで心優しい性格の持ち主。走り高跳びの全国大会で1位に輝いた事もあるため、将来はオリンピック出場も夢ではないとささやかれている。しかし、それを鼻にかけない爽やかな人柄で、学校内では王子様的な存在である。しかし、やや強引で人の話を聞かず、無意識に他人を振り回すところがある。陸上は小学生の頃から始め、本田英雄とはその頃に知り合った。中学3年生になったばかりのある日、周囲のために結果を出そうと焦るあまり、スランプに陥ってしまう。そんな折、偶然牧野姫子に出会って、陸上を愛しているのなら、周囲のためではなく自分自身のために頑張った方がいいと諫められる。この事で姫子に惹かれるようになり、スランプを脱した直後に猛烈なアプローチを繰り返すようになる。その後に英雄も交えた三角関係に発展するが、最終的には姫子と交際を開始する。また自分の夢と向き合うため、海外留学を決意した。結果姫子とは遠距離恋愛になってしまうが、変わらず付き合っていく。
本田 英雄 (ほんだ ひでお)
西高校に通う2年生の男子。高校2年生の春に私立王寺(おうじ)学園高校に編入し、陸上部に所属する。前髪を眉上で短く切って左寄りの位置で分けた短髪にしている。釣り目で目が細く、背が高く筋肉質な体型。自分が一番でないと気が済まない性格で、気が強く傲慢なところがある。さらに目的のためには手段を選ばないが、自分の理想のために鍛錬を欠かさない努力家でもある。真山春樹とは小学生の頃に陸上の大会で知り合うが、春樹の天然気味な言動に振り回されていた。しかし小学6年生の時の大会で、本田英雄自身は優勝できなかったにもかかわらず、春樹だけがいいジャンプだったと褒めてくれた事で、強く意識するようになる。高校2年生になっても春樹をライバルとして意識していたが、春樹に敗北。この負けを受け止められず、王寺高校に編入して春樹に復讐しようとする。そこで、春樹の思い人である牧野姫子を奪えば春樹にダメージを与えられると考えて近づくが、やがて姫子の人柄に触れ、本気で思いを寄せるようになる。そして強引なアプローチを続けるが、最終的には姫子と春樹が結ばれるよう手を貸した。
心愛 (ここあ)
私立王寺(おうじ)学園高校に通う2年生の女子。牧野姫子の友人。前髪を目の上で切って左寄りの位置で分け、肩につくほどまで伸ばしたセミロングヘアにしている。よく髪型を変えており、特に編み込みアレンジが好き。明るい性格で、恋愛至上主義者。中学時代までは姫子と同様目立たない存在だったが、高校進学を機に自分を変え、現在のかわいらしい容姿となった。運命の男性に出会って幸せな結婚をする事を夢見て、さまざまな男性と交際を繰り返している。しかし交際は長続きせず、一人の男性と3か月以上続いた事がない。自分とは対照的に恋愛にまるで興味のない姫子を心配していたが、姫子が真山春樹に告白され、本田英雄までもが姫子に好意を寄せている事を面白く感じ、姫子に恋愛やファッションのアドバイスをするようになる。
藤田 空 (ふじた そら)
私立王寺(おうじ)学園中学校に通う3年生の男子。真山春樹の友人でもある。前髪を目の上で切って左寄りの位置で分けた短髪にしている。明るく落ち着いた性格で、暴走しがちな春樹を諫める事が多い。
望 (のぞむ)
とあるスポーツクラブに通う小学生男子。前髪を額が見えるほど短く切った短髪にしている。釣り目で太眉が特徴。気の強い性格のために、自分の力を伸ばそうとするあまり、競技順を守らなかったり、大人の言う事を聞こうとしなかったりと、身勝手な言動を繰り返している。真山春樹にあこがれてスポーツクラブに入会するが、やる気が先行するあまりトレーニング過剰となり、ケガをしてしまう。そんなある日、スポーツクラブに久しぶりに春樹が遊びに来た事を知り、大人に止められているにもかかわらず、自分をアピールしようとするが、それを春樹と牧野姫子に叱責される。
書誌情報
初恋はじめました。 5巻 講談社〈講談社コミックスなかよし〉
第1巻
(2015-09-11発行、 978-4063644821)
第2巻
(2016-01-13発行、 978-4063644968)
第3巻
(2016-04-13発行、 978-4063915099)
第4巻
(2016-09-13発行、 978-4063915266)
第5巻
(2017-01-13発行、 978-4063915358)