概要・あらすじ
「アラカン(居酒屋)」には、週に一度必ず訪れる吉田という常連客がいた。しかし何故か吉田が顔を出さなかった日、別件で店に来ていた刑事の沼田の携帯電話が鳴り、吉田の妻が殺されたという情報がもたらされる。沼田と共に事件現場に向かった嵐勘十郎(アラカン)は、そこで伸びきったインスタントラーメンを発見。このラーメンの違和感に気づいたアラカンの推理が、真犯人を突き止める。
登場人物・キャラクター
嵐 勘十郎 (あらし かんじゅうろう)
「アラカン(居酒屋)」の店主。嵐勘十郎と言う名前から、「アラカン」の通称で呼ばれている。親しい常連などには「大将」などと、親しみをこめて呼ばれることもある。刑事の沼田にその舌を信頼され、捜査に協力する名探偵。現場に残された食べ物や服に付着したしみなどから情報を得て、事件を解決へと導く。
嵐 香織 (あらし かおり)
嵐勘十郎(アラカン)の妹。美人で可愛らしいタイプだが口うるさい。「アラカン(居酒屋)」を手伝っているが、アラカンが事件で沼田に呼び出される度に、店を1人で任されることに怒っている。料理の腕はアラカンに及ばず、店で料理を出すレベルには達していない。とはいえ、決して腕が悪いというわけではなく、彼氏のために作った弁当が無駄になった際には、それを平らげた沼田に、美味いと褒められていた。
沼田 (ぬまた)
「アラカン(居酒屋)」の常連客。殺人課の刑事。嵐勘十郎の舌を信頼しており、事件が起こるたびに捜査に協力させている。「アラカン」ではいつもツケで飲み食いしているので、嵐香織には毎回ツケを払うように言われている。店に出すレベルには達していない香織の料理を気に入っており、彼氏にドタキャンされて無駄になった香織の手作り弁当を、美味だと言って全部平らげた。
吉田 (よしだ)
「アラカン(居酒屋)」の常連客。裸一貫で会社を興して、今や社員千人の会社の社長を務めている。妻が何者かに殺された事件で、沼田が捜査を担当することとなった。「アラカン」の常連ということもあり、この時には嵐勘十郎も捜査に協力した。大の辛いもの好きで、唐辛子やからしを料理にたっぷり使って食べる。
中森 京子 (なかもり きょうこ)
吉田家のお手伝いの女性。若くて落ち着いた雰囲気の美人。毎日午後11時に、吉田と、受験生である吉田の息子のため、即席ラーメン「ホッカイ一番」を2人分作る。吉田は貧乏時代によく食べた即席ラーメンの味が忘れられず、社長になってからも中森京子に作らせている。
伍楽飯店の店主 (ごらくはんてんのてんしゅ)
5丁目の中華料理店「伍楽飯店」の店主。この店の小籠包を食べた後に女性が殺害される事件が発生。嵐勘十郎から、最近、包子(パオズ)の味が変わったことを不審に思われる。実は海外省の役人・杉田正二の愛人を匿っており、その不安から料理に集中できないでいた。
杉田正二の娘 (すぎたしょうじのむすめ)
海外省の役人・杉田正二の娘で高校生。父親が普段から仕事と出世にしか興味がなく、家庭も顧みず、母親が倒れても一度も見舞いに来なかったので、憎んでいた。杉田正二が何人も愛人を抱え、その愛人たちを、部下や部下の友人の家などに匿っていることを知っている。
米山 誠次 (よねやま せいじ)
風俗嬢専門の街金業を営む40歳の男性。顧客は風俗嬢ばかり実に100人以上。自宅マンションで殺されたが、テーブルに食べかけのしもつかれが残されていたことから、しもつかれを郷土料理とする栃木出身の女性が、容疑者として挙げられた。
遠藤 加奈 (えんどう かな)
栃木出身の風俗嬢。「セブン」というソープに勤める。米山誠次から金を借りており、肉体関係を強要されていた。そのため米山をひどく恨んでおり、米山が死んだ翌日は、お客にまで機嫌がいいと言われるほど、上機嫌であった。最初の容疑者として取り調べを受ける。
春吉、小春 (はるきち、こはる)
桜亭春之助の弟子たち。兄弟子の春吉は岩手県気仙沼出身で、弟弟子の小春は仙台出身。常日頃、春吉と師匠の春之助は、小春にねちねちと嫌味を言っていた。春之助が殺された際に、大阪の料理である半助鍋があったため、大阪出身の彼女がいる小春が疑われた。
桜亭 春之助 (さくらてい はるのすけ)
落語家。神田生まれの生粋の江戸っ子のため関西嫌いがひどく、関西の料理の匂いを嗅いだだけで、くしゃみが止まらなくなる。大阪の料理である半助鍋を食べている時に殺害された。女グセが悪く、女性を連れ込むために、妻のいる自宅とは別にマンションを借りている。本名は田中浩二。
丸山 健二 (まるやま けんじ)
割烹料理屋「大河内」の料理人。「大河内」で料理修業した嵐勘十郎(アラカン)の先輩。ギャンブル好きで、借金を作って店を辞めた過去がある。今は料理人を辞め、地方でまともに働いている。10年ぶりにアラカンに会いに来たが、その途中に後頭部の打撲が原因で死亡する。
大河内の主人 (おおこうちのしゅじん)
割烹料理屋「大河内」の主人。嵐勘十郎と丸山健二の師匠。健二を殴ったと自供する。基本的に温厚な性格で、人に手を上げるような人物ではない。かつて健二がギャンブルの借金を返すために、店の売り上げを持ち逃げした際にも、黙って許した。
正吉 (まさきち)
熊本出身の青年。商店街の総菜屋「相模屋」で働いている。常に新しい味やメニューを試作しては、嵐勘十郎に試食を頼みに来るが、なかなか社長にはその味を認められない。博多の料亭での修行時代に、九州では天ぷらと呼ばれるさつま揚げが得意なことから、「天ぷら」のあだ名が付けられた。
山口 健司 (やまぐち けんじ)
嵐香織の初めての彼氏。日文商事に勤める商社マンで、香織とは合コンで知り合った。死亡した江川良次とは同僚で親友。江川と競馬に行った日は、香織とのデートが気になり早めに帰宅した。その後の江川の様子を心配し、翌日に彼の家を尋ねたことで、江川死亡事件の第一発見者になってしまう。これが原因で香織とのデートをドタキャンすることとなり、香織が作った弁当は沼田が食べることになった。
江川 良次 (えがわ りょうじ)
日文商事に勤めていた28歳の男性。自宅で死亡しているのを、同僚で親友の山口健司に発見される。死亡の前日に山口と一緒に競馬に行き、100万円以上の大穴を当てた。その後、見ず知らずの男と意気投合して、自宅で酒盛りをしていた。
桜井 孝夫 (さくらい たかお)
「アラカン(居酒屋)」の常連客。妻の両親の祝いにと、嵐勘十郎(アラカン)にフグの出張料理を依頼する。妻と妻の両親はアラカンのフグ料理を絶賛するが、その後全員がフグの毒にあたり、義父である桜井順造が死亡した。この事件でアラカンは業務上過失、重過失致死で連行されることになる。
場所
アラカン(居酒屋)
墨田区にある居酒屋。店主の嵐勘十郎(アラカン)のあだ名「アラカン」と同名。一度来た客の好みは絶対に忘れない店主のアラカンが、客の出身や好みに応じて、さまざまな料理を出している。常連客の1人である沼田は、店主のアラカンの舌を頼りに、自分の担当する事件の捜査に協力させている。
その他キーワード
しもつかれ
栃木の郷土料理の1つ。塩ジャケの頭、大根、人参、大豆、油アゲ、酒粕を使用する。大豆を炒り、油アゲをあぶって、シャケを煮る。大根、人参をおろして全部鍋で煮て、酒粕、砂糖、しょう油で更に煮る。栃木以外でも、会津、千葉や埼玉の一部で食べられている。