概要・あらすじ
棗は京の都で暮らす孤児の童女。あるきっかけで河童さんに出会う。仲良しになった2人は一緒に暮らすことになるが、その毎日は奇想天外、摩訶不思議な出来事に満ちていた。河童さんと暮らすことで、棗の周囲には鬼やもののけなど人知を超えた存在が出現し始めたのだ。ある日2人は、死んだと思っていた棗の母親が実はまだ生きていることを知る。
登場人物・キャラクター
棗 (なつめ)
小さな女の子。家族はおらず一人で暮らしているが、明るく元気で心優しい。雨宿りに寄った廃屋で河童さんと出会った。マイペースで強引な河童さんについて来られ、共に暮らす羽目に。死んだと思っていた母親が生きていたと知り、河童さんと共に母親探しの旅に出る。
河童さん (かっぱさん)
棗と偶然出会い、彼女の家に押しかけてきた。背丈は子供と同じくらい。頭に皿、背中に甲羅を持つ。カエルのようなひょうきんな顔をしている。名前があるかどうかは不明で、棗からは「河童さん」と呼ばれている。頭の皿の中にある「天水」で、様々な技を使える。河童仙人に会うために、河童の国からこの世へやって来た。 呪禁師から技を伝授され、霊符や呪法を使えるようになった。
鬼 (おに)
人間の子供をさらい自分のものにしている。最近都ではやっていた神隠しの元凶。棗のこともさらうが、河童さんによって退治される。
オロチ
大きな蛇のもののけ。女の人に化けて河童さんに近づき、「河童仙人に会うためには心身の毒を洗い流さねばならぬ」と言い、水を与え続けた。だが本当はその水こそが毒であり、河童さんはどんどん蛇に似た凶悪な顔に変わっていってしまう。その時は間一髪でオロチの悪巧みに気づき、河童さんは難を逃れた。 しかしその後もオロチは、棗と河童さんを丸呑みにする機会を狙っている。
呪禁師 (じゅごんし)
棗の近所に住む、どんな病気でも治すと評判の中年の女性。先祖代々の呪禁師で、様々な技法や豊富な知識を持つ。油虫(ゴキブリ)やハチなど様々な虫をあやつり、人間の病気を吸い取らせ、治療にあたっている。
精魅鬼 (しょうみき)
呪禁師が多くの人から祓い落とし、壺に封印したもののけ。川に流して供養するよう頼まれた河童さんは、あやまって壺を割ってしまう。その結果、棗が精魅鬼に取り憑かれてしまう。
お梅 (おうめ)
棗の母親。長者から借りた銭を返すため、長者の敷地内に住み込みで毎日働き続けている。自分に子供がいると知れたら売り飛ばされてしまうので、娘の棗のことは誰にも話さなかった。そのため棗は、自分の母親は死亡したと思い込んでいた。河童さんの活躍により母子は再会でき、長者のもとから逃げ出した。 しかしその後、災難で再び母子は別れ別れになってしまい、棗と河童さんは母親探しの旅に出ることになる。
お狐様 (おきつねさま)
山に棲むもののけ。美しい女性の姿をしているが、口元は狐のまま。お狐様を信仰する人々は、難病に効く秘薬となるコケを背中に植え付けられている。こうすれば功徳となり、来世は良い宿命を持って生まれ変われると信じているのだ。しかし全てはまやかしであり、狐が人々をだまして利用していたことが、棗と河童さんによって暴かれた。
役 小角 (えん の おづぬ)
孔雀明王の呪法を修行して飛行術を得た仙人。棗と河童さんの前に天狗のふりをして現われ、母親探しを手伝ってあげた。人に頼らず自分の力で探せばいつか見つかる、だめな時は無理せず楽にしていればよい、と棗に教え諭した。
鬼の子 (おにのこ)
鬼塚から地獄へ落ちた棗は、何とかこの世に戻ってきたが、頭に鬼のような2本のツノが生えていた。この棗は粗暴で、母をあやつり強盗をさせたりしたので、にせものではないかと河童さんは疑う。おそらく鬼の子が化けているのだろうと予想したが、その正体は、棗自身の邪心が、地獄へ落ちた時に分離した棗の分身であった。
……ぎ……
人の心に巣食うもののけ。人間の言葉で説明するのは困難で、「……ぎ……」と呼ぶしかない存在。棗と河童さんは旅の途中である母娘に出会うが、この親子は激しく憎み合い争い合っていた。母娘に「……ぎ……」が取り憑いていると見抜いた河童さんは、この家族の先祖がついた嘘が溜まったものが「……ぎ……」の正体だと突き止める。
河童仙人 (かっぱせんにん)
河童の国からこの世にやってきて300年以上修行を続けている。長い白髭をたくわえている。河童さんがあこがれ、会いたいと願っている相手。河童さんが人間のために尽くしたり、棗と共に母親探しの旅で活躍する様子をずっと見守っており、旅の終盤では河童さんの前に現われ、彼を弟子にとった。
場所
地獄 (じごく)
『天水』に登場する世界。棗と河童さんが旅の果てに探しあてた母親は、正気を失っていた。鬼塚の中でもののけに胆力を奪われてしまったのだ。母親を元に戻すため、棗は鬼塚で一夜を過ごそうとする。だが鬼塚は地獄へと通じており、棗は地獄に落ちてしまう。そこは言い伝えの通り、罪人が鬼によって永遠に責め苦しめられる、想像を絶する恐ろしい世界であった。
その他キーワード
天水 (てんすい)
『天水』に登場する水。河童さんの頭の皿の中の水のこと。中には魚が泳いでおり、様々な世界にもつながっている。天水をのぞくことで、河童さんの目を通して世界を見ることもできる。