あらすじ
第1巻
16歳で社交界デビューしたオパール・ホロウェイは、夜会を開いていた自宅の庭で何者かに襲われてしまう。幸いにも、警備員の足音に気づいた男は逃げ出し、事なきを得るが、その状況を誤解した貴族たちの噂話が原因で、貴族令嬢としてのオパールの評判は地に落ちてしまう。男性と逢い引きをしていたふしだらな令嬢というレッテルを貼られ、そんなオパールに言い寄ってくる男たちは、財産目当てか遊び目的の者だけだった。初めは夢見ていた幸せな結婚も、もうすっかりあきらめていた。オパールは19歳となり、結婚だけが幸せではないと自分の力で生きていくことを決意し、領地の経営について勉強を始める。そんな矢先、父親から呼び出されたオパールは結婚が決まったことを告げられ、絶句する。知らぬ間に進められていた結婚の相手は、若き公爵のヒューバート・マクラウドだった。自らが抱えた借金に困り、財産目当ての政略結婚を決めたヒューバートは、3日後に簡素な結婚式を済ませ、披露宴も行わないままオパールと共に新居へと向かう。しかしオパールは、不名誉な噂のせいで悪評の的にされ、ヒューバートのみならず使用人たちからも明らかに邪魔者扱いを受けることになる。マクラウド邸では、ノーサム夫人が女主人の座を主張したり、天使と称される謎の女性のステラ・ノーサムが主寝室をゆずらなかったりと、納得いかないことばかり。そんな不条理な状況に、負けず嫌いのオパールは、自ら屋根裏部屋に移り住むことを決める。そんなある日、オパールは公爵家の歴史書や公爵領地の帳簿を見つける。あらためて自室に持ち帰って読んでみると、帳簿には明らかな改ざんの跡があった。そして真実を暴くため、領地経営に詳しい専門家のトレヴァーに相談すべく、オパールは里帰りを決断する。
原作
本作『屋根裏部屋の公爵夫人』は、もりの小説『屋根裏部屋の公爵夫人』を原作としている。こちらはKADOKAWA BOOKSより刊行されており、アオイ冬子がイラストを担当している。
登場人物・キャラクター
オパール・ホロウェイ
貴族の令嬢で、年齢は19歳。16歳で社交界デビューを果たすが、パーティーの最中に自宅の庭で何者かに襲われる事件が発生。警備員の足音に気づいた相手は逃げ出して事なきを得たが、パーティーに参加していた貴族たちの誤解からいわれのない噂話が広がり、貴族令嬢としての評判は地に落ちることになった。3年たった頃には夢見ていた幸せな結婚もあきらめて、自力で生きていくことを決意し、領地経営のノウハウを勉強し始めた。しかし直後に、父親のホロウェイからヒューバート・マクラウド公爵との結婚を言い渡され、マクラウド公爵家に嫁ぐことが決定する。ヒューバートとは、以前に一度だけパーティーで顔を合わせたことがあり、ほのかに恋心を抱いていたこともあった。だが、実際に結婚生活を始めてみると、屋敷の使用人たちからは悪評の的にされ、渋い紅茶を飲まされるなど非情な扱いを受ける。また、ヒューバートからは妻として扱われないだけでなく、女主人の座を主張するノーサム夫人や、主寝室をゆずらないステラ・ノーサムの言い分を一方的に聞き入れ、オパール・ホロウェイ自身を完全に悪者扱いするなど、納得のいかないことばかり。すべてを改善していこうと対話を試みるものの、かえって屋敷中の者たちからの反発は強まっていく。頑固で負けず嫌いな性格なことから、簡単に引き下がるわけにはいかないと、自ら屋根裏部屋に移り住むことを志願。そこで本を読んでいた時、ヒューバート公爵家領地の帳簿に改ざんされた形跡を発見。不正を暴くために、領地経営の専門家のトレヴァーや、使用人のナージャと共に公爵領へと向かい、奔走する。
クロード
男爵家の三男。オパール・ホロウェイの幼なじみで、よくいっしょに遊んでいた。オパールからは家族のような存在として慕われているが、クロード自身はオパールに恋心を抱いている。明るくて優しい性格で、いざというときは頼りになる人物。三男坊のため、男爵位が継げない状況にあり、苦労の多い人生を送っている。大学生だった頃は、すべての教科で優秀な成績をおさめたことで、学費免除の対象となり、あまり裕福ではない実家をサポートした。
ヒューバート・マクラウド
マクラウド公爵家の主を務める男性。両親の死後、12歳の若さで公爵の爵位を継いだ。そのため、後見人となったノーサム卿の一家と共に暮らしていたが、8年後にノーサム卿が亡くなり、後見人としての権限がノーサム夫人へと移り、彼女がマクラウド公爵家の女主人を名乗るようになった。夫人の娘であるステラ・ノーサムのことを、天使のような子と称し、過保護で大切に扱っている。また恋愛感情ではなく、妹のような存在として、家族愛を抱いている。公爵家の抱えた借金で首が回らなくなり、お金のためだけにオパール・ホロウェイとの結婚を承諾。彼女の持参金で、馬車の座面の張り替えや屋敷の修繕を行った。オパールに付きまとう噂話を信じており、彼女に対してはふしだらで汚らわしい女という印象を持っている。そのため、オパールにステラに会うことを禁じたり、ノーサム親子の言い分を一方的に聞き入れたりと、オパールを完全に悪者扱いしようとする。すべてにおいて、オパールの方かあやまれば、許してやってもいいという見下す態度で接している。オパールとは3年前、パーティーで一度顔を合わせたことがあり、ダンスを踊った。その時には、初々しく可憐な女の子という印象を持っていて、オパールの変貌ぶりに勝手にがっかりしている。公爵家の領地については、すべて領地管理人のオマーに任せきりの状態で、爵位を継いでから14年間にわたり、一度も領地を訪れていない。
べス
マクラウド公爵家で、侍女を務める女性。屋敷の主人であるヒューバート・マクラウドの妻となり、移り住んできたオパール・ホロウェイの身の回りの世話を担当することになった。オパールが男遊びの激しいふしだらで高慢な令嬢という噂を信じており、彼女に対する反発心は強い。そのため、屋敷にやってきたオパールをにらみつけたり、屋根裏部屋で本を読むオパールに渋くてぬるい紅茶を出したりと、好き放題に意地悪をしている。ただし、オパールがステラ・ノーサムに会うことがないようにという、ヒューバートの言いつけを守って行動している。
ロミット
マクラウド公爵家で、執事を務める初老の男性。屋敷の主人であるヒューバート・マクラウドの妻となり、移り住んできたオパール・ホロウェイに、ヒューバートとの続き部屋である主寝室をステラ・ノーサムが使っていることを知らせ、ノーサム夫人の言いつけどおり、オパールを客間に通した。オパールが男遊びの激しいふしだらで高慢な令嬢という噂を信じており、彼女に対する反発心は強い。
ステラ・ノーサム
ヒューバート・マクラウドの幼なじみの女性で、年齢は20歳。父親のノーサム卿が、12歳で爵位を継ぐことになったヒューバートの後見人を務めることになったため、母親のノーサム夫人と共にマクラウド公爵家で暮らし始めた。不治の病と診断されており、幼い頃から体が弱く、車いすでの生活を余儀なくされている。ヒューバートからは、天使のような子と称されて必要以上に大切にされている。しかし、実際はかなり荒んだ心を持っており、それを隠して天使のように振る舞っている。ヒューバートには幼い頃から恋心を抱いていたため、彼の妻として屋敷にやってきたオパール・ホロウェイを敵視し、ヒューバートとの続き部屋である主寝室を明け渡すことを拒否して居座り続けた。オパールが汚い金でヒューバートを買ったのだと罵倒し、すべての悪評の標的になるように母子で振る舞い、オパールを陥れようとする。
ノーサム夫人 (のーさむふじん)
ノーサム卿の妻。ノーサム卿が、12歳で爵位を継ぐヒューバート・マクラウドの後見人を務めることになったため、溺愛する娘のステラ・ノーサムと共にヒューバート家で暮らし始めた。8年後、夫の死により、侯爵家女主人代理として後見人を引き継いだ。ヒューバートが結婚し、迎えた妻のオパール・ホロウェイがやって来たあとも女主人の座を明け渡そうとしなかった。その際には非力な女性のように振る舞い、オパールから女主人の座を明け渡すように言われたと、ヒューバートに告げ口して泣きついた。
ナージャ
ホロウェイ伯爵家のメイドを務めて4年ほどになる女性。明るく快活な性格で、オパール・ホロウェイを心から慕っている。結婚により、突然出て行ってしまったオパールが里帰りした際には、ヒューバート・マクラウド公爵との出会いについての話を聞きたがり、政略結婚という結婚に至る事情を知らないばかりにオパールを困らせてしまうこともあった。マクラウド公爵領の帳簿改ざんに関しては、オパールから声が掛かり、オパール付きの侍女として領地へと同行してオパールの助けとなる。その最中、嫁いだばかりの公爵家のために奔走するオパールの様子を見て、伯爵領の誇りだと笑顔で語り、嫌なことばかりが続いていたオパールを勇気づけた。
トレヴァー
ホロウェイ伯爵家で、領地管理人を務める中年男性。オパール・ホロウェイのことを幼い頃から知っている家族のような存在で、領地経営を学びたいというオパールに勉強を教えた。ヒューバート・マクラウド公爵との結婚後、突然実家に戻ってきたオパールから、領地の帳簿改ざんについて相談を受け、マクラウド公爵家やその領地について、領地を管理するプロの目線で独自に調査を行う。その結果、領地管理人のオマーによる不正が発覚。この不正を白日の下にさらすべく、オパールの従者としてマクラウド伯爵領へと同行する。そしてオパールの助けとなり、逃げようとしたオマーを捕えるなど、大活躍することとなる。オパールには、本当の娘のような思いを抱いていて、政略結婚によって理不尽な扱いを受けていることを知り、激怒している。
ノーサム卿 (のーさむきょう)
ステラ・ノーサムの父親で、ノーサム夫人の夫。12歳で爵位を継ぐことになったヒューバート・マクラウドの後見人となったことがきっかけで、妻子と共にマクラウド公爵家に移り住んだが、8年後に病で亡くなった。
オマー
マクラウド公爵家の領地管理人を務める中年男性で、眼鏡を掛けている。優しい笑顔で落ち着いた雰囲気を漂わせているが、実は賭博場に多額の借金を抱えている。ヒューバート・マクラウドが12歳で爵位を継いで以降、14年間にわたり、一度も領地に姿を現さないのをいいことに帳簿を改ざんし、屋敷の金の横領に手を染めた。最近、ヒューバートの妻となったオパール・ホロウェイがマクラウド公爵領地を訪れたことで、帳簿改ざんの疑いを掛けられていると感じ始める。オマー自身があやうい状況にあることに気づき、深夜に屋敷内の帳簿をすべて持ち出し、逃げようとしたところをトレヴァーに見つかり、捕えられることとなった。
ホロウェイ
オパール・ホロウェイの父親で、ホロウェイ伯爵家の主を務める。口数は少なめで厳格な性格をしている。社交界デビュー後に不名誉な噂が広まり、嫁の行き先がなくなったオパールを「傷もの」と発言し、傷つけた。しかし、借金で身動きが取れなくなったヒューバート・マクラウド公爵にオパールとの結婚を提案したことで恩を売る形となった。非情なところがあるが、勤勉な者には報酬を与え、発展のためには出資を惜しまないなど、領地経営に関しては合理的な考えを持つ。これにより、領民のやる気を引き出し、ホロウェイ自身の領地は伯爵領としては格段に潤う結果となっている。手に触れたものをすべて金に変えたという伝説があり、「伝説の王」「現代の錬金術師」などと評されている。
リンド
マクラウド公爵家の領地にある領館で、執事を務める中年男性。ヒューバート・マクラウドが12歳で爵位を継いで主となって以降、14年間にわたって一度も領地に姿を現さないため、その留守を預かる者として、屋敷の管理を任されている。ヒューバートの妻となったオパール・ホロウェイが、領館を訪れた際には素直に歓迎して、ゆっくり滞在してほしい旨を伝えた。共に領館を管理する立場にあるオマーが帳簿を改ざんし、屋敷の金を横領していたことを知らず、事実が明るみになった際には涙してオパールに頭を下げた。
デビー
マクラウド公爵家の領地にある領館で、家政婦を務める中年女性。ヒューバート・マクラウドが12歳で爵位を継いで主となって以降、14年間にわたって一度も領地に姿を現さないため、その留守を預かる者として、屋敷で暮らす使用人たちを統括している。ヒューバートの妻となったオパール・ホロウェイが領館を訪れた際には全力で歓迎した。領館を管理する立場にあるオマーが帳簿を改ざんし、屋敷の金を横領していたことを知らず、明るみになった際には涙してオパールに頭を下げ、オマーの罪に気づけなかったことを詫びた。
ルボー
金貸しを生業にしているふくよかな体型の男性。利用者は地位の高い貴族が中心で、その信頼は厚い。マクラウド公爵家の領地にある領館から、馬車で2日ほどかかる場所にあるノボリの町で主に仕事をしており、その町にヒューバート・マクラウドの妻のオパール・ホロウェイが訪れたことを聞きつけ、宿泊先まで面会にやってきた。オマーに多額の金を貸していることをオパールに明かし、返済を求めた。もともと賭博場でオマーと知り合ったことがきっかけで、金を貸すようになった。
ケイブ
マクラウド公爵家で、御者を務める青年。オパール・ホロウェイが、マクラウド公爵邸から実家に帰る際、御者として馬車を出した。オパールが男遊びの激しいふしだらで高慢な令嬢という噂を信じており、彼女に対する反発心は強かった。しかし、ホロウェイ伯爵家で使用人たちから大歓迎を受ける様子を見たり、ホロウェイ伯爵家での彼女に対する評判を聞いたりして、想像との違和感を感じ始める。
クレジット
- 原作
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もり
- キャラクター原案
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アオイ 冬子
書誌情報
屋根裏部屋の公爵夫人 5巻 KADOKAWA〈B's-LOG COMICS〉
第1巻
(2019-11-30発行、 978-4047358508)
第2巻
(2021-02-01発行、 978-4047364936)
第3巻
(2022-02-01発行、 978-4047367951)
第4巻
(2022-12-27発行、 978-4047373273)
第5巻
(2023-12-28発行、 978-4047377875)