あらすじ
第1巻
流浪の身の紋子は、人さらいから男の子を助け出し、その礼として、男の子の兄である「い駒組」の責任者の男性から食事を奢ってもらう。その男性の容姿端麗さに、イケメン好きの紋子はすぐにひと目惚れしてしまう。紋子はその男性から、獰猛な化け物「土蜘蛛」を飼い慣らす一家に、商売の縄張りを奪われたという話を聞く。紋子は一宿一飯の恩もある事から、土蜘蛛を飼い慣らす一家に一人で殴り込み、自慢の剣技や、回転式拳銃が組み込まれた義手を使って化け物の土蜘蛛さえも倒してしまう。これで一件落着と思われたが、実はすべては「い駒組」の責任者の男性による企てであり、紋子は土蜘蛛を飼い慣らす一家を潰すために利用されていたのだ。真実を知った紋子は「い駒組」の責任者の男性を叩きのめし、日本一の夫を探すためにまた旅に出るのだった。その後、紋子は活気のある町に辿り着く。そこで賞金稼ぎのディキシーお猟に襲われた紋子は、自分に1000両もの高額な賞金がかけられている事を知る。
第2巻
旅を続けていた紋子は、イケメンの三兄弟が営む宿屋に泊まる事に決めた。しかし、その三兄弟は化け狸が人間に化けた姿であり、旅する女性を騙すために宿屋を装っていたのだ。化け狸の三兄弟は紋子を騙そうとするが、突如として宿屋に銃弾の雨が降り注ぐ。銃弾を放ったレイン文七・狩神は、八州廻りと呼ばれる江戸幕府の役人衆であり、狙撃で紋子を仕留めようとする。紋子は銃弾の雨を浴びながらも、レイン文七との戦いに臨むが、奇襲を受けたために武器を持っておらず苦戦。そんな中、紋子は化け狸の三男・芝の凹松に武器を渡され、文七に反撃を開始。戦いの最中、レイン文七は、紋子が犯した大罪について語り始める。それは、紋子が江戸幕府のトップの地位であるショーグンの弟アーサー・トクガワJrの顔に傷をつけたというものだった。それを聞いた紋子は、トクガワJrが自分の初恋の人を殺したからだと返す。レイン文七はそんな紋子の恋情を紛い物だと蔑むが、怒った紋子は、苦戦しながらもレイン文七を倒すのだった。こうして紋子は旅を再開するが、そんな彼女にあこがれた凹松が旅について来るようになる。
第3巻
旅を続ける紋子は、グレート・テング・イーグルと呼ばれる伝説の怪鳥に出会い、運命の男性はすでに決まっているとのお告げを受ける。そんな紋子を、テング・イーグルを神聖視するツチグモ族と呼ばれる民が歓迎する。そこで紋子は、ツチグモ族が暮らす村を襲う幕府軍の存在を知る。幕府軍のライオネル光吉・鯖田は、すべての地はショーグンのものだと主張し、ツチグモ族を次々と虐殺していた。紋子はツチグモ族の女性から、その女性が恋したサムライが幕府軍の砦に捕らえられていると聞き、そのサムライを助け出すために幕府軍の砦に侵入する。紋子はサムライを助け出す事に成功するが、ライオネル光吉に見つかってしまう。ライオネル光吉はその怪力で紋子を苦しめるが、彼の女性を馬鹿にする態度に怒った紋子は、ライオネル光吉を撃退する。辛くも勝利した紋子だったが、戦いによって義手を壊してしまう。紋子は義手を直すため、宗貞親方と、その妻バーバラのもとを訪ねる。
第4巻
紋子は、道中で助けたクリストファー知也・秋真矢六世の城を訪れるが、城の壁を壊してしまい、修繕費分を賄うまでクリストファー知也に仕える事になる。クリストファー知也は城主であるにもかかわらず、民からはほとんど年貢を取らず、貧しい生活も苦にしない人物だった。そんなクリストファー知也の人柄に紋子は惹かれていくが、そこにアーサー・トクガワJrからの刺客である夜叉子が現れる。紋子と夜叉子が激しい戦いを繰り広げる中、偶然そこを通りかかったクリストファー知也が夜叉子にひと目惚れしてしまう。そして、紋子と夜叉子はなぜか使用人としてのスキルを競い合う事になる。しかし家事が苦手な紋子は、夜叉子に完敗。紋子は敗北によりクリストファー知也をあきらめ、彼のもとを去る。だがクリストファー知也の目的は、城をロケットとして月に向かって打ち上げ、惚れた夜叉子を道連れにする事だった。それを知った紋子は、クリストファー知也の一人よがりの恋の過ちを諭しに行く。一方、江戸某所では、幕府の13代ショーグンであるダグラス・トクガワの上意により、八州廻りの面々が招集されていた。
第5巻
紋子は旅の途中で色男に出会うが、通りかかったウララ・フォックスという女宣教師に彼を奪われてしまう。ウララは紋子が旅を始めたばかりだった頃に知り合った人物であり、紋子が惚れる男性を次々と奪っていく魔性の女でもあった。その恨みもあり、宿場でウララと再会した紋子は、激しい戦闘に突入する。ウララは紋子にも引けを取らない強者で、二人の決着はつかないままに宿場が次々と壊されていく。しかし、そこに騒ぎを収めるため、宿場をまとめる役人が現れる。その役人の端正な容姿に惹かれた紋子とウララは、宿場をこれ以上壊さないためにも、その役人をめぐってレースバトルを行う事を決める。そして紋子は化け狸の芝の凹松が変身したバイクに、ウララは自分のバイクにそれぞれまたがり、競走を始めるのだった。
第6巻
紋子はある夜、10年前の夢を見た。その夢とは、紋子がショーグンを標的とした暗殺者として育てられていた過去であり、初恋の相手・刃吾と出会った時の事でもあった。ある時、紋子は刃吾によって暗殺を阻止された。しかし、刃吾は紋子の事を気にかけ、一方の紋子もまた刃吾の優しさに触れ、刃吾の弟子になりたいと願うようになっていった。だがそんな中、アーサー・トクガワJrとダーク帯刀の画策によって、刃吾が殺されてしまう。翌日、そんな悲しい過去を思い出していた紋子の前に、帯刀からの刺客が現れる。刺客に捕まってしまった紋子は帯刀の前に連れて行かれ、そこで死んだはずの刃吾と再会するのだった。死んだと思っていた刃吾との再会を喜ぶ紋子は、帯刀の言う通りにトクガワJrの前にも姿を見せ、おとなしく従うようになる。最高の恋の相手である刃吾との再会により、もはや紋子にとって旅をする理由はなかった。
登場人物・キャラクター
紋子 (もんこ)
日本一の夫を探して旅する女性。容姿のいい男性に弱く、すぐにひと目惚れをするが、年下には興味がない。主に長ドスを武器として扱い、防弾笠をかぶり、土蜘蛛の糸を織り込んだ防弾合羽を羽織っている。右腕は回転式拳銃を仕込んだ義手で、手の平から衝撃破を出す事も可能。回転式拳銃で使用する弾など出費が多いため、発射薬を入れる容器である薬莢は再利用している。 恋愛が絡まないと戦闘で本調子が出せない事がある。幼い頃はアーサー・トクガワJrに仕える子供暗殺者で、ダグラス・トクガワを殺す事が目的だった。トクガワJrによって、右腕にトクガワJrの家紋を入れられたために、右腕を自ら斬り落とした。また、トクガワJrの顔に傷をつけた事により、1000両の賞金が掛けられている。 暗殺者だった自分を救ってくれた刃吾が初恋の相手でもある。「刃雷のお紋」の異名を持つ。
ディキシーお猟 (でぃきしーおりょう)
賞金稼ぎを生業とする女性。紋子の強さに惚れ、紋子を追いかけるために牛飼いから賞金稼ぎに転職した。紋子と出会った当時は細身だったが、紋子の強さにあこがれて身体を鍛えたため、巨体となり熊のような怪力を得た。紋子の妹分になる事を目標としている。生まれは甲州で、牛飼い女の愚連隊の頭だった。
レイン文七・狩神 (れいんぶんしちかろかみ)
関東を取り締まる役人・八州廻りの一人で、二丁の銃を扱う男性。並外れた空間把握能力を持っており、空に向かって撃った弾が落下して標的に当たるよう計算している。狩りをする時は獲物の行動も含めて計7手で追い詰める事を信条としている。人の顔をした怪鳥「以津真天」をいつも肩に乗せており、その翼を利用して空を飛ぶ事も可能。それにより、遥か上空から獲物を狙撃する事もできる。 口癖は「死にたい」。「通り雨」の異名を持つ。
アーサー・トクガワJr
駿府と呼ばれる地を治める城主で、つねに仮面で顔を隠している男性。そのため民からは「鬼面王」と呼ばれている。幕府のショーグンであるダグラス・トクガワの弟であるため、大きな権力を持っていたが、ダグラスとの跡目争いに負けてしまう。気まぐれに人を殺す残忍な性格をしており、自分を兄と比べる者、自分の傷のついた顔を恐れる者を絶対に許さない。 顔に傷をつけた紋子に異様な執着を見せ、紋子に斬り落とされた右腕を飾っている。ニンジンが嫌い。
バーバラ
火山の麓に住んでいる変わり者で、鍛冶屋を営む女性。幼い紋子を拾って、夫の宗貞親方と共に1年ほど育てた。持っているハンマーで火山弾を打ち落としたりするなど、たくましい身体を持つ。
宗貞親方 (むねさだおやかた)
妻のバーバラと共に火山の麓に住んでいる変わり者で、鍛冶屋を営んでいた男性。幕府の天気予報を無視して外でラジオ体操をしていたところ、火山弾が直撃して死んでしまう。紋子の義手を作った凄腕の鍛冶師で、サプライズ好きな一面があり、紋子の義手が壊れた時のために、自分の墓石に新しい義手を隠していた。
ダーク 帯刀 (だーく たてわき)
駿府藩目付役で、アーサー・トクガワJr直属の暗殺を請け負う集団・居神の頭を務める男性。「闇の傀儡子」と呼ばれ、他人や死体を意のままにあやつる事ができる。紋子の天才的な戦いのセンスに気づき、その才能を伸ばし、最高の暗殺者に育て上げる事を密かに画策している。紋子の事を跡継ぎや娘のように思っており、紋子が反抗的な態度を見せると嬉しくなって笑顔になる。
ディラン左ヱ門・六串 (でぃらんざえもんむつくし)
関東を取り締まる役人・八州廻りの一人の男性。つねにタバコを咥えており、二本の刀と一丁の銃を装備している。お人好しな性格で、民に好かれている。ダグラス・トクガワの護衛を務めていた事もある。
ダグラス・トクガワ (だぐらすとくがわ)
江戸幕府の征夷大将軍を務める男性。弟はアーサー・トクガワJrである。つねに民の事を思う人格者で、民の様子を探るためによく変装して一般人に紛れ込む。紋子の人柄を見るために、身分をいつわり紋子に接触を図る。「百矢丸」という巨大な犬を愛騎としており、ラムネソーダが好物。
夜叉子 (やしゃこ)
暗殺を請け負う集団・居神に所属する女性暗殺者。紋子を追う刺客で、一人称は「おれ」である。血色の悪い目つきに青白い肌、骨の浮き出た細い身体には、顔も含めていくつもの縫合痕がある。家事全般が得意で、かわいいもの好き。
ウララ・フォックス (うららふぉっくす)
「鉄馬」と呼ばれるバイクに跨り、旅をする宣教師の女性。「ウララ御師」とも呼ばれており、全国にお札を配って回っている。男性を惹きつける術に長けており、紋子が惚れる男を次から次へと奪っていく。そのため、紋子とは犬猿の仲である。金持ちでなければ、たとえイケメンでもふってしまう。二丁の拳銃を扱い、紋子にも負けない戦闘技術を持つ。 そばかすを気にして白粉を塗りこむなど、メイクに時間をかけているため、顔を汚されると激怒する。
刃吾 (じんご)
左目に傷があり、銃を使わず長ドスだけを使って用心棒を生業とする男性。「長ドスの刃吾」とも呼ばれている。酒好きで一度寝たらなかなか起きない。弾丸を斬るほどの剣の腕前を持つ強者で、任侠の世界では有名な伝説の渡世人。幼少期に起こした銃の事故で父親を失ったため、武器は刀にこだわっているといわれている。アーサー・トクガワJrとの取引で右腕を自ら切り落とした。 紋子を弟子に取るが、弟子にした10日後にトクガワJrの根回しによって処刑された。
ライオネル光吉・鯖田 (らいおねるみつよしさばた)
幕府軍の征夷騎兵隊第七聯隊の丙小隊長を務める男性。アーサー・トクガワJrの治める駿府に仕えるサムライである。筋骨隆々とした体格で、人並み外れたパワーを誇る。女性の事を見下しており、女性のにおいに敏感に反応する。巨大なダンベルを武器として振り回す。
クリストファー知也・秋真矢六世 (くりすとふぁーよしなりあきまやろくせい)
「遠眼鏡城」と呼ばれる城の殿様。金髪の男性で、眼鏡をかけている。民の話をよく聞き、年貢もほとんど取らないため、民からは非常に慕われており、自身は質素な暮らしを送っている。博学で、民のためには命を惜しまない男気もある。10年前に城ごと月に向かって飛んで行った両親のあとを追うべく、自分も妻を見つけて城ごと月に飛んで行く事を目標としている。 悲壮感を漂わせた夜叉子にひと目惚れする。
土蜘蛛 (つちぐも)
蜘蛛のような身体に虎のような顔を持つ怪物。別名「荒野の虎」とも呼ばれている。人の手によって育てられ、その成長度合いを比べる大江戸土蜘蛛品評会も開かれている。その大きさは個体によって異なり、小さい子供ぐらいのものから人間の数倍の大きさを誇る個体も存在する。毛の繊維がとても強く、体内で作られる糸はさまざまな商品に利用され、場所によっては高値で取引されている。 基本は夜行性で、昼のあいだは巣の中で寝ている。敵を捕らえる際に口から大量の捕獲糸を出すが、その直後は動きが鈍くなる習性を持つ。
化け狸 (ばけだぬき)
擬態の術を使い、あらゆるのものに変身できる狸。自らが人間や道具に変身できるだけでなく、草を集めて建物に変化させる事までできる。ただし、攻撃を受けて傷を負った場合は、変身が解ける事がある。
芝の凹松 (しばのぼこまつ)
人間の女子を騙し続けていた化け狸三兄弟の末弟であるオス狸。三兄弟では一番の落ちこぼれで、一人前の男になる事を目指していた。紋子の強さとまっすぐな性格に惚れて、その子分になる。かわいらしい男の子に変身する事が得意。
グレート・テング・イーグル (ぐれーとてんぐいーぐる)
天狗の顔に鳥の身体を持つ巨大なオスの怪鳥。人間に化ける事もできる。すべてを見透かしたような態度を見せ、実際にあらゆる事を知っており、紋子に運命の相手がいる事を告げる。土蜘蛛と共に生きるツチグモ族から神聖視されている特別な存在でもある。「サンダー・イーグル」と呼ばれる事もあり、小さい種族は「リトル・コテング」と呼ばれている。
集団・組織
八州廻り (えいとまーしゃるず)
関東八州の無宿・博徒・咎人を取り締まるため、天領・私領を超えて警察権を行使できる江戸幕府の役人衆。所属する者は、盾の絵に八つの星の模様の「八ッ星盾」といわれる紋が描かれた衣服を身につけている。その強力な権限から、「関東取締役出役」「江戸のFBI」とも呼ばれている。
ツチグモ族 (つちぐもぞく)
土蜘蛛をあやつり共に生きる民族。民族間だけの言語を扱うが、共通語の使用も可能。グレート・テング・イーグルを神聖視しており、それに認められた人間を家族のように受け入れる。「リトル・コテング」という天狗の顔をした怪鳥を伝書鳩のように利用する事もある。