あらすじ
第1巻
姉の広田美子、妹の水穂の姉妹のもとに、財閥「小早川グループ」の御曹司、小早川柾から見合い話が持ち込まれる。柾は美子に好意を抱いており、美子といっしょになるために画策した事だった。しかし美子はこの申し出を断固拒否し、代わりに妹の水穂が柾と結婚して小早川水穂となった。実は中学生時代、ケガをした水穂は柾に助けられており、以降ずっと片思いをしていたのだ。美子の代わりだと自覚しつつも、水穂は幸せな時間を過ごしていた。そんな中、水穂が帰宅すると柾と美子が二人で話し込んでいる場面に遭遇。そこで柾が「美子の妹でなければ水穂と結婚しなかった」と発言したのを聞き、水穂は改めてショックを受けて家出をする。(第1話)
学校内で水穂と柾が会話をしていたところに、龍城寺影王が現われる。影王にからかわれて珍しく焦った表情を見せる柾に対し、水穂は少し安らいだ気持ちになる。そんな中、水穂と柾に美子から結婚式の招待状が届く。柾は美子に対して冷たい態度を取りながらも結婚式に出席し、結婚式は無事に終了。その後、柾はホテルの一室に水穂を連れ込む。その部屋は美子夫婦が宿泊予定のとなりの部屋で、柾は二人への当てつけのように水穂を激しく求めるのだった。(第2話)
柾といっしょの高校に進学したいと猛勉強して、現在の学校に入学した水穂は、テスト勉強に追われていた。テストでいい結果を残すためにも、水穂は通いなれた実家近くの図書館で勉強をしたいと柾に伝え、家を空ける時間が増えていく。そんな中、水穂は中学時代にいっしょに勉強をしていた小早川真砂と偶然再会し、成績優秀な真砂から勉強を教えてもらう。実はかつて真砂は水穂に好意を寄せており、顔を合わせた事で恋心が再燃。本が落ちて来るトラブルもあり、真砂は水穂にキスをしてしまう。(第3話)
第2巻
小早川真砂とキスをしてしまった小早川水穂は、後ろめたさから小早川柾を避けていた。様子がおかしいと気づいた柾は、水穂が真砂となにかあった事を突き止める。一方の真砂は、水穂がほかに好きな人がいるのであれば、きっぱりあきらめようとしていたが、相手が自分のコンプレックスの原因である柾だとわかると態度が急変。また、水穂と結婚をした事も知り、何としてでも水穂を手に入れようと決意する。さらに柾と水穂は父親の策略によって正式な夫婦になっていない事実も知り、自分が水穂と結婚しようと画策。そして水穂は自分を本当に必要としてくれている真砂に心を動かされ、身体を重ねる。そんな中、柾が水穂のもとを訪れ、自分と真砂のどちらを選ぶかと迫る。(第4話、第5話、第6話)
第3巻
小早川柾と小早川水穂は、別々の大学へと進学した。水穂と柾は以前よりも打ち解けた関係になっていたが、水穂は柾に対して今も気を遣ってしまう生活が続いていた。そんな中、水穂は柾の携帯電話に上光院志乃という名前を見つける。志乃との電話のあとはいつも不機嫌な態度を取る柾に対し、水穂は不安を感じつつも直接聞く事ができない。そんな水穂の前に、志乃が現われる。志乃は自身を柾の許嫁と名乗り、財閥「小早川グループ」には柾が必要で、自分と結婚する必要があると水穂を説得する。水穂が苦悩している中、偶然にも街で龍城寺影王と出会う。そしてその場で体調を崩して倒れてしまった水穂を、影王が病院に連れていくと、水穂の妊娠が判明する。しかし、水穂はこの事を柾にはまだ伝えないでほしいと影王に口止めする。そして影王は水穂の身体を心配して頻繁に連絡を取り合うようになる。その姿を見た柾は影王と浮気をしているのではないかと嫉妬。「小早川グループ」の将来を案じた水穂は、影王との浮気疑惑を利用して、柾に別れを切り出す。(エピソード「愛なら、足りない」)
時は流れ、水穂と柾のあいだには小早川真実が誕生。柾は財閥「小早川グループ」を継ぐ事になり、多忙なうえに愛情表現もなく、真実は不信感を抱いていた。さらに水穂と柾の夫婦仲のよさから家庭内での居心地が悪く、幼い頃から龍城寺影王に懐き、いつしか影王が初恋の相手になった。高校へと進学した真実は、影王に対して積極的なアプローチを開始するが、すべてかわされてしまう。ようやく一度だけキスをしてもらえたが、影王からは気の迷いだと謝られてしまう。ショックを受けた真実は、告白をしてきたクラスの男子と交際を開始して、影王を忘れようとする。(エピソード「愛しか、いらない」)
登場人物・キャラクター
小早川 水穂 (こばやかわ みずほ)
高等学校1年生の女子。既婚者で、旧姓は「広田」。夫は小早川柾で、ほかの生徒達への影響も考え、学校内では柾の妹として振る舞っている。中学生時代に電車に乗る際にケガをして、柾に助けられて以来、淡い恋心を抱いていた。柾との見合い話が持ち込まれた時、実姉の広田美子が激しく拒否したため、代わりに結婚を申し出た。柾が美子と結婚したいと望んでいた事も知っており、柾と美子の関係に心を揺さぶられている。 その一方で結婚した事で、柾の心がどうであれ独占できている事実に満足している。優しく穏やかだが、とにかく押しに弱い性格で、面倒を押しつけられる損な役回り担う事が多い。小早川水穂自身は気づいていないが、地味な顔立ちながらも、男性の加虐心を煽る妖艶な雰囲気があり、Sな性質を持つ相手からターゲットにされやすい。 また、小早川真砂や龍城寺影王に恋心を寄せられるなど、実は異性にモテる。
小早川 柾 (こばやかわ まさき)
高等学校2年生の男子。財閥「小早川グループ」の御曹司。弟に小早川真砂がいる。既婚者で、妻は小早川水穂。ほかの生徒達への影響も考え、学校内では兄として振る舞っている。同じ高校だけではなく、周辺の学生のあいだでも有名な存在で、財力はもちろん優れた容姿とカリスマ性を持つ。笑顔はほとんど見せず、どんな時でも冷静沈着に振る舞っているが、幼なじみの龍城寺影王といっしょの時は、ついペースを乱されてしまう。 中学時代の水穂が電車に乗り込もうとした際にケガをし、それを助けた事で水穂から恋心を寄せられるようになった。小早川柾自身は水穂の実姉、広田美子にずっと恋心を抱いており、一度告白するが、断られている。どうしても美子といっしょになりたいがために、広田家に見合い話を持ち掛けた。 しかし美子からは強い態度で拒否され、代わりに嫁ぎたいと申し出た水穂と、半ば当てつけのように結婚した。未だに美子への思いを抱いているが、水穂と共に暮らすうちに愛情が芽生えつつある。水穂に対しては加虐心を存分に発揮し、いわゆる「ドS」な態度で接する。
龍城寺 影王 (りゅうじょうじ かげおう)
高等学校2年生の男子。小早川柾とはクラスメイトで、幼なじみ。実家は歴史のある寺で、小早川家は檀家でもある。人を寄せつけないクールな雰囲気を醸し出す柾のペースを、唯一乱す事ができる存在。明るく気さくな性格の持ち主で、柾にも劣らないほどの整った容姿をしている。柾に恋をしている小早川水穂を哀れに思い、柾に厳しい助言をするなど、心優しい人物。 柾から水穂の事はあくまで妹だと説明されているが、実際は兄妹ではなく、恋愛関係にある事に気づいている。また誰にも打ち明けてはいないが、水穂に恋心を抱いていた。のちに水穂と柾の娘、小早川真実から猛アプローチを受け、交際を決意する。
小早川 真砂 (こばやかわ まさご)
高校1年生の男子。小早川柾の弟。小早川水穂とは別の中学校に通っているが、図書館で知り合ってなかよくなった。水穂は、中学校を卒業してから柾と結婚するために離れた場所に移り住んだが、テスト勉強のために実家近くの図書館に通った際に偶然再会。水穂が初恋の相手である柾と結婚した事実は知らない。水穂と共に勉強しているうちに恋心が燃え上がり、思わずキスしてしまう。 当初、水穂は小早川真砂の苗字を知らなかったため、柾と真砂が直接顔を合わせるまで兄弟である事実は知らなかった。幼い頃から後継ぎは柾と決められており、真砂自身は何でも二番手で、周囲から存在を無視されてきた。成績優秀で面倒見がよく、細やかな気配りのできる穏やかな性格の持ち主。 だが一方で、小さい頃から存在を無視されてきた事で、柾に対するコンプレックスによる歪んだ一面を持つ。特に水穂への執着は強く、何としてでも柾から奪い取ろうと画策している。
上光院 志乃 (じょうこういん しの)
小早川柾と幼なじみの女性。裕福な家の出身で、柾とは小さい頃に結婚の約束をしており、互いに成長してからは、柾の父親公認の許嫁になった。柾が父親の反対を押し切って小早川水穂と共に生活していると聞き、財閥「小早川グループ」のために和解する必要があると危惧している。上光院志乃本人はずっと柾が好きだった事もあり、別れてほしいと水穂に直接交渉をした。 しかし水穂の妊娠を知り、静かに身を引いた。
広田 美子 (ひろた よしこ)
小早川水穂の実姉。水穂とは異なって非常に気が強い性格をしており、小早川柾から告白を受けた際も、はっきりと断っている。あきらめきれなかった柾が、広田家に見合い話を持ち掛けた際も断固拒否した。自分の代わりに嫁いだ水穂を気にかけ、何かあったらすぐに相談してほしいと言うなど、水穂とは良好な関係を築いている。水穂と柾が結婚してから間もなく、以前から交際していた男性と入籍した。
小早川 真実 (こばやかわ まさみ)
小早川水穂と小早川柾のあいだにできた一人娘。水穂に似た容姿ながら、行動力や気の強さは柾ゆずり。自分に対して積極的な愛情を注いでくれない柾に対し、不信感を抱いている。また、水穂と柾の夫婦仲のよさに、家庭内で居心地の悪さも覚えている。その代わりにずっと自分をかわいがってくれた龍城寺影王に対しては心を開き、いつしか恋心を抱くようになった。 当初は積極的なアプローチをすべてかわされていたが、最終的には執念が実り、両思いになる。