あらすじ
第1巻
手塚プロダクションに入社した堀田あきおは、手塚治虫の漫画のアシスタントとして忙しい日々を送っていた。勤務時間は9時半から18時だが、昼も夜もなく執筆を続ける手塚の原稿がいつ上がるかわからないため、夜勤でスタンバイする日も多い。手塚は4階の仕事部屋で一人執筆に集中し、アシスタントたちは2階の仕事場で、ひたすら先生の原稿が上がるのを待つしかなかった。そんな夜勤での楽しみは、深夜12時から1時までの夜食。仕事場と同じビルの地下にある小料理屋での食事は会社持ちで、好きなものを食べられるのだ。そこは貧乏でふだんからろくなものを食べていないアシスタントたちのオアシスだった。堀田は、特に食後のシメに食べるお茶漬けがお気に入り。満腹で仕事場に戻ると、手塚の原稿が上がっており、アシスタントたちは急いで仕上げに取り掛かる。(エピソード「夜食のシメの絶品茶漬け」。ほか、14エピソードを収録)
登場人物・キャラクター
堀田 あきお (ほった あきお)
手塚プロダクションの漫画制作部にアシスタントとして入社した男性。年齢は22歳。大学を中退し、ヨドバシカメラでストロボを売っていた1970年代の終わりに、大好きな手塚治虫がアシスタントを募集していると知り、生まれて初めて漫画を描いて応募した。250人の応募の中から五人に選ばれ、奇跡的に合格を果たす。漫画制作の基本さえも知らず、同期入社のほかのアシスタントに比べて絵も未熟だが、気の合う仲間達と楽しく仕事をしている。作者である堀田あきおがモデル。
手塚 治虫 (てづか おさむ)
「漫画の神様」と評される漫画家の男性。寝る間も惜しんで執筆を続け、堀田あきおが手塚プロダクションに入社した当時は『ブラック・ジャック』『未来人カオス』『火の鳥』『ブッダ』『ユニコ』『どついたれ』『マコとルミとチイ』など、多数の連載を抱えていた。そのため、手塚プロダクションには、原稿の上がりを待つ各出版社の編集者たちがつねに待機している。実在の人物、手塚治虫がモデル。
Wタベ (わたべ)
手塚プロダクションの漫画制作部にアシスタントとして入社した男性。堀田あきおと同期で、年齢は23歳。すでにほかの漫画家のところでアシスタントをしていた経験がある。実在の人物、わたべ淳がモデル。
Nブ (のぶ)
手塚プロダクションの漫画制作部にアシスタントとして入社した女性。堀田あきおと同期で、年齢は20歳。都内の短大を卒業して、五反田にある祖母の家から会社に通う。少女漫画誌でのデビューを目指している。実在の人物、高見まこがモデル。
Fクダ (ふくだ)
手塚プロダクションの漫画制作部にアシスタントとして入社した女性。堀田あきおと同期で、年齢は22歳。名古屋の美大を卒業後、上京した。一人称は「ボクちん」で、語尾に「でしゅ」と付けて話す。実在の人物、石坂啓がモデル。
Sミズ (しみず)
手塚プロダクションの漫画制作部にアシスタントとして入社した男性。堀田あきおと同期で、年齢は19歳。絵が上手すぎて手塚漫画に合わないという理由で一度は不合格になったが、改めて採用された。
Sさん (えすさん)
堀田あきおの先輩のアシスタントで、髭を生やした男性。夜の部のチーフを務める。自分の作品に専念するため、手塚プロダクションを辞める。その送別会には手塚治虫も参加し、二次会ではピアノの演奏も披露した。
Hさん (えいちさん)
かつて手塚プロダクションでアシスタントをしていた男性。現在も自分の漫画だけでは食えないため、時折夜間に助っ人アシスタントして手塚プロダクションにやって来る。代金は手塚プロ持ちなのをいい事に、夜食でうな重の三段重ねを頼むなどずうずうしい性格で、堀田あきおたちからは「わがままH」と呼ばれている。