摩利と新吾

摩利と新吾

大正時代~昭和初期の日本、全寮制の名門高等学校持堂院高校、及びヨーロッパを舞台に、ドイツ人とのハーフの鷹塔摩利と、日本人の印南新吾が、恋に悩み愛に苦しみながら、たくさんの友人達との交流を通し、永遠の友情を築き上げる青春群像物語。

正式名称
摩利と新吾
ふりがな
まりとしんご
作者
ジャンル
時代劇
レーベル
河出書房新社
巻数
既刊5巻
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あらすじ

第1巻

親友同士の鷹塔摩利印南新吾は、男子校の持堂院高校に入学し、学生寮に入る。その寮では先輩達による「ストーム」と呼ばれる新入生歓迎の儀式があった。その儀式の最中、摩利は天井裏で、先輩の四季遙の男装した恋人を発見する。親から二人の仲を反対されていた四季は、彼女を寮にかくまっていたのである。だが、摩利と新吾、春日夢殿らの後押しにより、二人は中国へと旅立つのだった。この一件で、摩利と新吾は風魔一教授に認められ、学内の花形グループである全猛者連の会長に任命され、校内で一躍有名になる。2年生に進級した摩利と新吾は、ライバル校である不知火高の生徒、白鳥騎士の自宅を訪れ、新吾は彼の姉である美しい年上の女性、白鳥扇子と出会う。実は扇子は新吾の叔父で、持堂院高校の数学教師の印南数馬の元恋人であった。しかし、彼女は無理やり不知火高校出身の男性と結婚させられてしまい、今は夫を亡くし、独身だった。持堂院高校と不知火高の伝統の騎馬合戦の最中、摩利と新吾の計らいによって扇子と数馬は再会し、結ばれる。そしてこれをきっかけに、両校も仲直りを果たす。

第2巻

 夏休みになり、鷹塔摩利印南新吾持堂院高校の寮より自宅に帰って来た。摩利は久々に父親の鷹塔思音との再会を喜び合う。だが、父親が体調を崩してしまう中、父親の若き日の恋人であったエリザベート・ナハチガルの娘、ベルタが家に侵入して来る。そして彼女は、ナイフを手に摩利に襲いかかって来る。ベルタは自分の父親が思音の存在を気に病むあまり、亡くなったと思い込んでおり、思音を恨んでいたのだ。しかし、母親のエリザベートから、父親の死は思音のせいではなく、自分に責任があるのだと諭される。ベルタはいつしか摩利の人柄に引かれるようになり、淡い恋心を抱くが、彼女は少女特有の勘で摩利は新吾を愛している事を知り、静かに身を引く。 

第3巻

 印南新吾は父親に命じられるまま、女子修学院吉野姫花とお見合いをするが、親の言いなりになってお見合いするような男は気にいらないと、姫花に断られてしまう。一方、幼い時から新吾を愛していた鷹塔摩利は、彼のお見合いに心穏やかではなかった。その後、二千院での新年事始めの歌会に、持堂院高校の生徒と女子修学院の生徒が招かれる事となり、摩利や新吾もその合同練習のために女子修学院に赴く事になった。だが、持堂院高校の生徒達は女子修学院の生徒に冷遇され、さらに新吾は女子修学院の生徒で、男装の麗人である美女夜にキスをされてしまう。その場面を目撃した姫花は、ますます男嫌いに拍車がかかるが、一人で寮の掃除をする新吾を手伝い、弁当を作るなどしているうちに、二人の距離は縮まっていく。

第4巻

初めは完全に持堂院高校の男子生徒を拒絶していた女子修学院の女子生徒だが、徐々に態度を軟化させ、彼らに好意を持つようになっていく。しかし、吉野姫花だけは、父親に愛人がいた事、初恋の人への失恋、さらにいとこの春日夢殿が男色であった事もあり、その男性不信は根深いものとなる。一方で姫花は心の奥底では印南新吾に恋していたが、それ故に素直になれずに彼にいじわるして、怒らせてしまう。しかし、鷹塔摩利美女夜のとりなしにより二人は仲直りする。そんな時、女子修学院付近の山が噴火する惨事が起こる。男子生徒と女子生徒が協力して避難したが、密かに姫花を愛していた美女夜が、姫花がまだ避難できていないと新吾をだまし、彼を炎の中の校舎に戻らせる。その事に気づいて摩利は新吾を追いかけ、炎に包まれる中で愛する新吾と二人で死ぬ事を摩利は夢見るが、無事救出される事となる。そして摩利は、密かに新吾に恋人ができた時は自分は冷静でいられるだろうかと苦悩する。

第5巻

鷹塔摩利印南新吾は、持堂院高校の3年生になっていた。摩利と新吾はこれまで寮でも同室だったが、摩利が下級生が相談しに来やすいようにと、新吾と部屋を分ける。その行動とは裏腹に、もともと自分には男色のたしなみがあると感じていた摩利は、新吾への気持ちをはっきりと自覚していた。新入生の滝川篝は、そんな摩利に思いを寄せており、身体が弱いのをいい事に卑怯な手で新吾を陥れ、二人の仲を引き裂こうとする。さらに摩利を無神経な偽善者だと非難し、摩利だけではなく、仲間から新吾が孤立するように画策する。傷ついた新吾は自分は摩利の親友に相応しくないと自分から離れようとするが、摩利は二人で話をしようと、新吾を書庫に誘う。しかし、書庫に向かう新吾を滝川が待ち受けていて、書庫に行くなら手首を切ると脅して来る。

第6巻

 書庫で印南新吾を待っていた鷹塔摩利だが、現れたのは滝川篝だった。滝川は摩利の新吾への恋心を指摘し、新吾にこの事を打ち明けると脅し、キスを求めて来る。しかし、摩利は冷たく「言ってごらん」と言い放ち、応じない。その夜、新吾の両親が事故で急死し、翌朝、新吾は両親の遺体に対面する。摩利も彼を支えるため同行しようとするが、滝川の狂言自殺によって引き留められる。尚も滝川は摩利を自分のものにしようと周囲の同情を利用して関係を迫るが、摩利はきっぱり拒否する。その時、新吾が外で聞いているのを知った滝川は、わざと摩利の口から新吾に恋している事を打ち明けさせる。ショックを受けた新吾は、その場から逃げ出し、姿を消してしまう。新吾に去られた事で、摩利は冷酷なまでに滝川を徹底して無視する。そして、自宅に帰って傷つき憔悴しきった摩利を春日夢殿が訪れ、強引に関係を持つ。一方、新吾は旅芸人一座に加わって働いていたが、摩利が一番大切な相手だと気づき、二人の関係を一歩先に進める決意をして摩利のもとに戻るのだった。

第7巻

 ようやく鷹塔摩利のもとに印南新吾が戻って来たその夜、二人で同じベッドで過ごすが、肉体関係を持つ事はなかった。摩利は心と体、どちらの準備もできていないと関係はもてないとし、新吾は摩利への思いを強く意識する。一方で摩利は以前、春日夢殿と関係を持った事を悔やんでおり、その事を新吾には知られたくないと思っていた。それは、心の中で新吾を思いながら夢殿に抱かれた事が自分でも許せなかったのだ。そんな時、執念深く摩利を追いかけて来た滝川篝が、摩利の自宅の庭で倒れ、新吾が彼を助ける。 

第8巻

印南新吾は、これまで嫌がらせをされ続けたにもかかわらず、滝川篝を甲斐甲斐しく世話していた。善意を仇で返すような滝川の行為も許して来た新吾だが、滝川を心配してやって来た設楽星男への冷たい態度を見て彼を叱責する。しかし、それでも新吾は滝川に尽くし、鷹塔摩利に滝川は幼く感じられて放っておけないと語る。摩利はそんな純粋で優しい新吾に思わずキスをする。それでも、二人の仲を引き裂く事をあきらめようとしない滝川は、新吾に摩利が春日夢殿と関係を持った事を明かしてしまう。新吾は夢殿のもとに行き、摩利との関係について問いただす。夢殿は傷ついていた摩利を力ずくで奪ったと語るが、そこで新吾は誰にも摩利を渡さないと夢殿に宣言する。その後、新吾は摩利に汚れてなんかいないと優しく語りかけ、二人はますます強く結びつく。しかし滝川の心の闇は深く、最後は摩利を切りつけ、とうとう新吾を怒らせ侮蔑の言葉を投げかけられる。その後、すぐに身体が弱かった滝川は亡くなるが、実は滝川が愛していたのは新吾であった事が判明する。

第9巻

 正月に華やかなパーティーが開かれていた。その席で印南新吾に対する女性達の熱い視線に嫉妬し、鷹塔摩利は女装する。摩利の気持ちに気づいた新吾は摩利の背中にそっと「マリガスキダアイシテイル」と指で書く。お互い求め合う気持ち強くなっていく二人だが、そんな二人の気持ちを摩利のばあやが察知し、大人になるまでは肉体関係を持たないようにと釘をさす。そんな時、摩利の父親の鷹塔思音が摩利と新吾に、二人で欧州へ留学しないかと誘って来る。何の苦労もせず、他人のお金で欧州留学するのは申し訳ないと思った新吾は、帝大に合格したら留学する事を約束する。摩利も新吾に付き合って帝大受験する事にし、二人は受験勉強に励むのだった。

第10巻 

鷹塔摩利印南新吾はそろって帝大に合格を果たす。本来、高校を留年するはずだった二人だったが、帝大に合格した事で、無事に持堂院高校を卒業する事が認められる。二人いっしょの留学を目前にして、新吾に思いを寄せている吉野姫花にも摩利との関係を伝え、新吾が自分から摩利にキスをし、二人の仲は盤石の関係に見えた。しかし、相変わらず肉体関係へは発展する事なく、摩利は不安に感じていた。摩利は春日夢殿を訪ね、新吾との関係について悩みを打ち明ける。夢殿は新吾が摩利への恋愛感情が乏しいからだと説明して、新吾を失いたくないのなら、このまま親友同士でいた方がいいとアドバイスを送る。その後、二人は欧州に留学に向かう。新吾はそこで人種差別を受けるが、社交界でのダンスパーティーで差別に屈する事なく、二人は堂々と手を取り合ってダンスを披露する。

第11巻

 鷹塔摩利印南新吾は、二人そろって欧州に留学していた。恋人同士になっていた二人だが、自分達の関係を摩利の父親の鷹塔思音には打ち明けられずにいた。しかしある日、二人で寝室にいるところを思音に目撃されてしまう。摩利は思音が結婚相手を早く見つける事を望んでいる事を知り、新吾への思いを父親へ打ち明ける。それを聞いた思音は、一時二人を引き離そうとするが、新吾から摩利への気持ちを知り、二人をベルリンの大学に行く事を許可する。ベルリンで暮らし始めた二人のもとに、春日夢殿一二三がやって来て、再会を果たす。そんな中、第一次世界大戦が勃発し、摩利と新吾達はスイスへと移住する。そこで新吾は、セビリア独立運動の秘密結社の一員であるドリナと出会う。新吾とドリナは一目でお互いに運命を感じ、恋に堕ちてしまう。 

第12巻

 スイスで出会ったセビリア独立運動に参加しているドリナのために、印南新吾はケガをしているドリナの同志である男を彼らの住まいへと運び入れた。新吾はドリナにすべてが終わったら日本で結婚してほしいと告白する。新吾の着替えをドリナが鷹塔摩利と新吾の住まいに取りに来るが、ドリナ達は敵に捕まりそうになり、摩利を人質にして逃げる。摩利と新吾はドリナ達の潜伏先で再会するが、そこで襲撃に遭って二人は協力して逃げ出す。その後、新吾は再会したドリナに日本を忘れてセルビアに骨を埋めるか、自分と別れるか決めてほしいと迫られる。新吾は摩利の事が脳裏をよぎり、日本を捨てられないとドリナに別れを告げる。新吾は摩利に自分は摩利の恋人にはなれないが、一番好きなのは摩利だと心情を吐露する。新吾はドリナとの別れを忘れるかのように勉強に励み、一方で摩利は父親の思音のもとで働く事を決意する。

第13巻

 依然として第一次世界大戦は続いていたが、鷹塔摩利印南新吾は欧州でそれぞれの道を歩んでいた。新吾は医者になるために勉強していたが、一方の摩利は春日夢殿をはじめ複数の男女と冷めた肉体関係を続け、私生活は荒れていた。ようやく戦争が終わり、日本に帰れる目処が立つが、摩利は新吾から遠ざかるために欧州に留まり、新吾を見送る。しかし、東京が関東大震災に見まわれると、新吾の身を案じた摩利は日本に向かい、新吾と再会を果たす。その後、新吾は結婚して医師として働き、摩利は世界を飛び回る貿易商として活躍していたが、すぐに第二次世界大戦が勃発。摩利は停戦交渉に向かう途中で、そして新吾は軍医として戦地に赴き、共に亡くなってしまう。新吾はその時、摩利の名を呼んで絶命したと伝えられた。二人は別々の場所だが、同じ時間に亡くなり、手を取り合って天に召されたのだった。 

登場人物・キャラクター

鷹塔 摩利 (たかとう まり)

『摩利と新吾』の主人公の1人。持堂院高校の理乙学生。世界的な貿易商で伯爵の父と、ドイツ王家の血を引く名門貴族メーリンク家の令嬢を母にもつハーフ。女性と見まごう美貌の持ち主だが、喧嘩早く腕も立つ。幼なじみで親友の印南新吾とともに個性豊かな先輩たちから二人合わせて「御神酒徳利(おみきどっくり)」とあだ名をつけられ、全猛者連会長に指名される。 印南新吾への想いを胸に苦悩しながら、さまざまな人と出会い成長していく。ドイツ名はマリ・コンラート・タカトウ・フォン・メーリンク。

印南 新吾 (いんなみ しんご)

『摩利と新吾』の主人公の1人。鷹塔摩利とは生まれたときからの親友。持堂院高校の理乙学生。天真爛漫で「おひさま新吾」と呼ばれ皆に愛されている。入学したばかで鷹塔摩利とともに全猛者連会長となり、二人合わせて「御神酒徳利(おみきどっくり)」とあだ名をつけられる。鷹塔摩利の本心を知り、悩みながらも受け容れる決心をするが、伯林(ベルリン)留学中にドリナと出会い激しい恋に落ち、想いの違いに気が付く。

春日 夢殿 (かすが ゆめどの)

鷹塔摩利の2年先輩で、持堂院高校卒業後は帝大に進学。思慮深く、何事にも冷静沈着で、文武両道に優れた優秀な学生だが、恋の相手は同性にある。結婚式を先延ばしにしてまで、鷹塔摩利の伯林(ベルリン)に留学を追いかけるほどに想いを寄せ、時には父のように手を差し伸べる。有力議員を父に持つ、春日家の三男。

安曇 紫乃 (あずみ しの)

持堂院高校の文甲学生。鷹塔摩利と印南新吾の1年先輩だが、わけあって留年を繰り返し学生を続ける。学生の身にして芸者遊びを嗜む風流人。鷹塔摩利と印南新吾との関係を優しく見守る。御室流、踊りの家元の跡取り。大震災で避難する際に、姪を庇い命を落とす。

風魔 一 (ふうま はじめ)

持堂院高校のドイツ語教師。厳しいところもあるが、人一倍生徒思いで、卒業生からも慕われる。四季遙と雅子の駆け落ちの一件では、何も知らぬ存ぜぬで見て見ぬ振りをしたり、余命宣告された学生を受け容れるなど、学生達の成長をやさしく見守る。鷹塔摩利と印南新吾が落第した際、留学前に帝大を受験し、見事合格した暁には、前例に拘ることはないと二人の卒業を認める。

鷹塔 思音 (たかとう もね)

鷹塔摩利の父。世界的な貿易商で伯爵。ドイツで出会ったメーリンク家の娘マレーネと恋に落ち、日本へ連れ帰る。一度も帰国できないまま命を落としたため、マレーネの父とは絶縁状態にあった。親友印南隼人と、「何かあった場合には印南新吾を肉親として迎える」と約束しており、実際に父を失った印南新吾を息子同然に迎え、鷹塔摩利ともに留学させる。

印南 隼人 (いんなみ はやと)

印南新吾の父。医者。鷹塔摩利の父鷹塔思音の親友。何かあった場合には、「一人息子を鷹塔摩利を立派に育てる」と誓った。ひさしぶりに出かけた温泉旅行の道中、馬車が谷に落ち夫婦揃って他界する。

吉野 姫花 (よしの ひめか)

女子修学院の女学生。理事長の娘で、春日夢殿のイトコ。美女姫連隊を率いる男嫌い。憧れの春日夢殿が鷹塔摩利と印南新吾の写真を前に、「愛している」と語りショックを受ける。初恋の男に似た印南新吾に憎しみを持ち、見合いを望みながら男装した美女夜を恋人と偽り傷つける。 しかしその憎しみは恋へと変わった。

美女夜 (みめや)

女子修学院の女学生。男性不信に陥った吉野姫花を優しく見守る男装の麗人。鷹塔摩利とは同性を愛する者同士、互いに理解し合う。吉野姫花の気持ちが印南新吾へと向いたことで、傷心のまま、一人、欧州へと留学。伯林(ベルリン)へ留学した鷹塔摩利たちと再会し、激動の時を共に過ごす。

藤村 月夜麿 (ふじむら つきよのまろ)

持堂院高校の文甲学生で小説を書いている。療養していたため入学が遅れ、鷹塔摩利とは3つ年上の同級生。旅の芝居一座の娘と恋に落ちたが、身分違いと親の反対をうけ心中を図るも失敗し、世をすねる会に入会したことがある。行方知れずだった心中相手、さよ子を、印南新吾が旅先で見つけ無事二人は再会を果たし、結ばれている。

百地 桃太郎 (ももち ももたろう)

持堂院高校の理甲学生で、卒業後は京大へ進学する。鷹塔摩利の1年先輩で、桜豪寮(おうごうりょう)の寮長。伊賀忍者、百地三太夫の血を引く子孫。女子修学院との合同練習の際、吉野姫花に一目惚れするも、「サル太郎」と呼ばれるばかりでなかなか相手にされない。

設楽 星男 (しだら ほしお)

持堂院高校の理乙学生。女嫌いで通し、基本的に面倒見がよいところが鷹塔摩利と気が合う。幼なじみの滝川篝には深い同情と愛情を持ち見守るが、その思いは通じない。牧織笛が結婚するため中退を決めた際には、最後まで説得を続ける。

牧 織笛 (まき おるふえ)

持堂院高校の文甲学生で、鷹塔摩利とは同級。派手好きで目立ちたがりや。女子修学院との合同練習の際に、林みち子と恋に落ちた。親が家業に失敗し女子修学院を退学した林みち子の生活を支えるため、中退して小学校の教員となる決心をする。

滝川 篝 (たきがわ かがり)

持堂院高校の文乙学生で、設楽星男とは幼なじみ。父は政治家だが妾腹のため、親にも兄弟にも疎まれ愛情に飢えて育ち、世をすねる会の会長となる。心臓に病を抱え余命幾ばくもないことを盾に、鷹塔摩利と印南新吾の仲を裂こうと陰湿な策略を実行する。報われないままに設楽星男に看取られる。

二宮 青太 (にのみや あおた)

鷹塔摩利と印南新吾が旅先の奥山村で出会った、大きな白い犬(シロ)を連れた少年。地元議員、小早川の世話で試験を受け、持堂院高校へ入学し学友となる。山育ちだが賢く、山育ち故に俊足で、運動会のリレーで大活躍する。明るい性格から寮の皆に慕われ、裏庭の一画で畑を耕し収穫物を皆への礼にすると、皆が畑仕事を手伝った。 病気により夭逝。

吉三郎 (きちざぶろう)

つむじ風の吉三と呼ばれるスリ。鷹塔摩利と印南新吾たちから財布をすったところを百地桃太郎に捕らえられるも、幼なじみの炭屋の吉三郎と分かり助けられる。奉公に出されたが合わずに出奔し、流行病で親兄弟が亡くなって以来、荒んだ生活をしていた。印南新吾の努力がみのり、改心して馴染みの常磐津師匠、美好の遠縁の寺に養子に入る。

ウルリーケ

鷹塔摩利によく似た年上の従姉妹で、伯林(ベルリン)留学中は、なにかと世話を焼いてくれる。未亡人となって以来、愛人を何人ももつ奔放な女性。印南新吾に女遊びを教える。

ドリナ

鷹塔摩利と共に伯林(ベルリン)へ留学中の印南新吾と、出会った瞬間に恋に落ちる。セビリア独立運動の秘密結社の一員で、サロナエの星と呼ばれていた。印南新吾とは泣く泣く分かれ故郷セビリアへと帰っていく。

ギョーム・ド・ボーフォール

鷹塔摩利の父鷹塔思音の仕事上のパートナー。一時父の元で暮らしていた鷹塔摩利に、欧州での暮らしに必要なことの全てを手ほどきした男。公爵。

印南 数馬 (いんなみ かずま)

印南新吾の叔父。元持堂院高校の学生で、今は同校の数学教師。印南新吾たちの画策により、忘れられずにいた初恋相手、白鳥扇子と再会し、無事に結婚する。父を失った印南新吾を、親代わりとしていつも見守っている。

白鳥 扇子 (しらとり せんこ)

不知火高校創立者の孫娘。初恋の相手によく似た印南新吾を持堂院高校から転校させようと画策し、弟である白鳥騎士に拉致させる。初恋相手が印南数馬と判明するも諦めて見合いをするが、事情を知った鷹塔摩利、印南新吾たち持堂院高校の生徒たちの無茶な協力により、無事、印南数馬と再会し結婚した。

さよ子

藤村月夜麿の恋人で、心中相手。鷹塔摩利の気持ちを知った印南新吾が、放浪先で世話になった旅の芝居一座の娘。印南新吾のおかげで再開した二人は、その後、無事に結婚する。

一二三 (ひふみ)

鷹塔摩利の気持ちを知った印南新吾が、放浪先で世話になった旅の芝居一座で働く、身寄りのない少女。印南新吾に恋をし、姉妹のように育ったさよ子について東京へ来るも想いは告げられなかった。伯林(ベルリン)行きの船に思わず乗り込むが発覚し、乗り合わせた春日夢殿に身元を引き受けられ、無事に印南新吾たちと再会。 看護士への道を進み、生涯、印南新吾を助ける。

ささめ

鷹塔摩利の隣家、綾小路家の小間使い。主家の子息の留学先に送られ嫁になるも離婚。留学中の鷹塔摩利と偶然に再会し、世話をすることになる。跡継ぎを残す必要に迫られた鷹塔摩利に、子供なら自分だって欲しいと伝え受け容れられるが、身分の違いから正夫人の座につかず、生涯、高藤家を陰から支え続けた。

大和 飛竜 (やまと ひりゅう)

持堂院高校の文甲学生だった。幾たびも留年していたが、父親の死に伴い家族を養うため学業を諦め、幼なじみの芸者、波子を連れ故郷へ帰る。波子を連れ出す際、鷹塔摩利と印南新吾に身代わりの芸者役を頼み、座敷に居合わせた春日夢殿の協力を得て無事出発する。

大江山 将鬼 (おおえやま しょうき)

持堂院高校の文甲学生。落第3回の、取り柄といえば体力のみの日本男児。いつも鷹塔摩利に勉強をみてもらっている。女子修学院との合同練習で、額田の君に一目惚れ。なんとしても卒業しなくては額田の君に嫌われてしまうと、一大決心し猛勉強に励み、周囲が落第する中、唯一卒業を決め、教員風魔一に初めて褒められる。

四季 遙 (しき はるか)

持堂院高校の理乙学生で、全猛者連会長を務めていた。次期会長に鷹塔摩利と印南新吾を指名する。恋人の雅子とうり二つの印南新吾の協力を得て、中国へと駆け落ちしていく。

額田の君 (ぬかたのきみ)

女子修学院の女学生。美女姫連隊の三羽鴉との異名を取るほどの男嫌いだったが、持堂院高校との合同練習の際、大江山将鬼の逞しさに一目惚れ。周囲からゲテモノ好きと言われる中、ひっそりと愛をはぐくむ。

雅子 (まさこ)

四季遙の恋人で、交際を親に反対されたため持堂院高校の桜豪寮へ逃げ込む。その面差しは印南新吾にうり二つで、当初は鷹塔摩利ですらも間違うほど。追っ手を誤魔化すため印南新吾と鷹塔摩利が一芝居うち、四季遙と中国へと駆け落ちしていく。

松平 (まつだいら)

茶道華道師範。春日夢殿が縁談を断る口実に協力し、女装した鷹塔摩利が暴漢に襲われた際、助けてくれた品の良い老婆。礼を伝えに訪れた鷹塔摩利を優しく迎え、印南新吾への想いも「最後まで貫き通せば本物になる」と進言する。息を引き取った日、鷹塔摩利と印南新吾は新選組隊士らしき剣士の亡霊を見る。 木原敏江作、『天まであがれ!』に登場する、土方の想い人、松平蓉姫の後年の姿。

ベルタ

鷹塔思音の若き日の恋人であるエリザベート・ナハチガルの娘。自分の父親の死は思音に責任があると思い込み、復讐しようとしていた。のちにエリザベートから父親の死は思音のせいではない事を知らされ、考えを改める。

集団・組織

持堂院高校 (じどういんこうこう)

『摩利と新吾』に登場する、全寮制の名門高等高校。全猛者連と称する、生徒会機関が寮生活や学校生活の規律などの全体をまとめている。不知火高校とは勉強にスポーツにと、何かと競争するライバル関係にある。

女子修学院 (じょししゅうがくいん)

『摩利と新吾』に登場する、有名子女が入学する、名門女学院。持堂院高校との歌会の合同練習の際は、女学院の別棟の寮に持堂院高校一同を受け容れた。

書誌情報

摩利と新吾 完全版 5巻 河出書房新社

第5巻

(2019-06-25発行、 978-4309290263)

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