放課後保健室

それぞれに心の悩みを抱える生徒たちが、週に一度放課後に行われる特別授業の中で戦い、周囲や自分自身と向き合う物語。「プリンセス」2004年7月号から2007年12月号にかけて掲載された。

正式名称
放課後保健室
作者
ジャンル
ダークファンタジー
 
恋愛
レーベル
プリンセスコミックス(秋田書店)
巻数
全10巻完結
関連商品
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世界観

心の悩みがテーマ。性自認の確定や過去の傷の克服、自分の嫌いな部分を受け入れる等、各生徒に与えられた課題を「夢の中で行われる戦闘形式の特別授業」でクリアしていく過程が描かれる。特別授業中は建前や演技が通用せず、本心が暴かれてしまうため、生徒同士のぶつかり合いや自分自身と向き合う上での葛藤も語られる。

作品誕生のいきさつ

『放課後保健室』を執筆する上で著者は、構想のヒントを得たものとしてF1レースの存在をあげている。「同じコースを何度も周回し、個々が競い合う中で常にドラマが生まれる」という図式に惹かれ、そういったコンセプトの作品を描きたいと執筆時の10年前から考えていたとインタビューにて語っている。その過程で誕生した「戦いを勝ち抜く」「コックピットのような閉鎖空間に入れられてエントリーし、データ化された世界で戦う」という案が最終的に「精神世界での戦いに勝ち抜く」「学校内で眠れる場所(保健室のベッド)に入ってエントリーし、夢の中の世界で戦う」というものに変化し、ストーリーの根幹を成すこととなった。

あらすじ

特別授業への誘い編(1~15話)

自らの身体に悩みを抱える一条真白は、ある日謎の保健室教諭に地下の保健室へ呼び出される。そこでは毎週木曜日の放課後に特別授業が行われ、合格した生徒は学年と無関係に卒業できるのだという。わけもわからぬまま授業に参加した真白だが、そこは生徒たちの本当の心の姿を映し出す、残酷な戦いの舞台だった。

自らの性認識編(16~39話)

自分と藤島紅葉、そして水橋蒼の複雑な関係を知る唯一の存在を失い、悲しみに暮れる一条真白。その人物のたっての願いにより、男として生きることを決め蒼を突き放した真白は、紅葉を守るために授業を戦い抜くことにする。しかしその態度は周囲の人物にとっては不自然なものにしか映らず、紅葉にさえ糾弾されてしまう。

メディアミックス

ドラマCD

2009年12月、フロンティアワークスよりドラマCD版が発売された。主人公の一条真白役を沢城みゆき、水橋蒼役を小野大輔、藤島紅葉役を葉月絵理乃が演じている。

作家情報

水城せとなは主に女性漫画誌で活躍中の漫画家。1993年『冬が、終わろうとしていた。』で、「プチコミック」からデビュー。他の作品に『失恋ショコラティエ』『黒薔薇アリス』などがある。誕生日は10月23日で、血液型はA型。

登場人物・キャラクター

一条 真白 (いちじょう ましろ)

鴻鵠学園に通う1年生。普段は男性として生活しているが、実際は「上半身が男性、下半身が女性」という特別な事情を抱えた人物。自らにある女性的な部分を否定し「男性になりたい」と考えており、初潮が訪れたことに大きなショックを受ける。紳士的で心優しい性格で、女子生徒たちからは「王子様のよう」と人気を集める一方で、一部の生徒からは「偽善王子」と揶揄されることも。 部活は剣道部に所属していたが、自らの身体が女性に近づきつつあることから退部を決意していた。コーヒーには砂糖を2つ入れる。

水橋 蒼 (みずはし そう)

鴻鵠学園に通う1年生の男子生徒で、一条真白のクラスメイト。長めの黒髪を外にはねさせた、クールな雰囲気の人物。端正な容姿から女子生徒には非常に人気があるが、来るもの拒まず受け入れる節操のない姿勢から、批判的な意見も多い。真白の身体の秘密を知り、女性として真白に好意を持ち近づいてくるが、知った経緯は不明。そのため、真白は彼の正体が夢の中の授業に参加する「鎧」であると考え、複雑な感情を抱くようになる。 コーヒーはブラック派で、幽霊部員状態ではあるが剣道部に所属している。

藤島 紅葉 (ふじしま くれは)

鴻鵠学園に通う1年生の女子生徒で、一条真白のクラスメイト。ゆるくウェーヴがかった長い髪の毛をツインテールにした可憐な雰囲気の人物だが、潔癖ゆえに棘のある言動をすることも。暴力的な父親の存在と、5歳の頃に受けた過酷な経験から男性を忌み嫌っており、現在も憎しみと恐怖に支配されている部分がある。特別授業において真白の身体の秘密を知り、自らも参加者であると真白に告白し、真白に特別気を許すようになる。

黒崎 晃一郎 (くろさき こういちろう)

鴻鵠学園に通う3年生の男子生徒で、剣道部の主将を務める人物。柔和な雰囲気の落ち着いた人格者で、一条真白のよき相談役として接する。真白は彼を理想の男性として捉えており強く尊敬しているが、黒崎自身は自分は目標とされるような人間ではなく、強くもたくましくもないと考えている。

奥井 美登里 (おくい みどり)

鴻鵠学園に通う3年生の女子生徒。腰まである長い髪を三つ編みにした、うつろな雰囲気の人物。昨年度に卒業したはずが、なぜか現在も籍を置いている。以前は成績優秀で人当たりの良い優等生だったが、周囲からの評価と実際の自分のギャップに悩んでいた。一条真白は夢の中の授業に参加する「顔のない女子生徒」が彼女であると推測している。

新橋 一之 (しんばし かずゆき)

鴻鵠学園に通う1年生の男子生徒。眼鏡をかけた真面目で誠実な雰囲気の人物で、陰ながら藤島紅葉を想っていた。ある時図書館で困っていた紅葉に手を貸そうとしたことで知り合うが、誤解を受け彼女に嫌われてしまう。その後真相を知った一条真白と次第に親しくなっていくが、真白と紅葉の関係に疑問を抱き始める。紅葉のことを非常によく見ており、彼女の人柄を正しく理解している。

東雲 樹 (しののめ いつき)

鴻鵠学園に通う1年生の男子生徒。長いまつげが印象的な、前髪をいくつもヘアピンで留めオールバックにした髪型の人物。14歳にしてチェスの国際大会で史上最年少の優勝者になるほどの高い知能を持っており、飛び級する形で中等部から高等部に編入した。周囲には天才児と呼ばれ遠巻きにされており、彼らを見下しつつも孤独感を感じている。

黄川田 愛実 (きかわだ あいみ)

鴻鵠学園に通う1年生の女子生徒で、一条真白のクラスメイト。長い前髪を真ん中より左側で分けたセミロングヘアの明るい雰囲気の人物。大原桃花、さつきと仲が良く、よく3人で行動している。もともと桃花と親しかったが、グループにさつきも加わってからは、さつきとの関係に比重を置くようになっていた。

水橋 藍 (みずはし あい)

白鷺女学院に通う水橋蒼の姉。長い前髪をピンで留めて額を出した、ストレートロングヘアの自信に満ちた雰囲気の人物。蒼を溺愛しており、彼を独占したいあまり脅迫めいた手紙を送りつけたり、監視したりする激しい性格。真白は夢の中の授業に参加する「あい」と推測しているが、その素性には謎が多い。

蘇芳 あすか (すおう あすか)

鴻鵠学園に通う1年生の女子生徒。真ん中で分けたウェーヴヘアの華やかな雰囲気の人物だったが、交通事故に遭い顔の右側と足を大怪我し、現在は顔を隠して車椅子で生活している。事故に遭うまではモデルとして活動しており、出演したジュエリーの広告は街中にも貼りだされるほど有名だった。口元にほくろがある。

大原 桃花 (おおはら ももか)

鴻鵠学園に通う1年生の女子生徒で、一条真白のクラスメイト。切りそろえたロングヘアの、穏やかで物静かな人物。あるきっかけから真白と親しくなり、彼の手助けをしようと贈り物をする。教室では黄川田愛実とさつきの3人グループで過ごしていたが、友人関係などに悩み、自分自身を好きになることができずにいた。

海老沢 (えびさわ)

鴻鵠学園に通う1年生の女子生徒で、一条真白のクラスメイト。眉の位置で揃えた前髪に、ボブヘアを耳が見えるようにヘアピンで留めている。噂話が好きで、学内の様々な話題の発信源となっているが、真偽が怪しいものも流布させている。同じクラスだが、真白は存在を認識していなかった。

剣道部の男子生徒 (けんどうぶのだんしせいと)

鴻鵠学園に通う1年生の男子生徒で、一条真白と同じ剣道部に所属する人物。部活動中の接点はなかったが、夢の中の授業で出くわしたことで知り合う。夢の中での姿が一定せず、その時々で憧れたものや強いと感じたものに変貌してしまう。その姿は容姿こそ憧れたものだが、強さは本人のものに依存しているため、非常にもろい。

水橋 緋呂子 (みずはし ひろこ)

水橋蒼と水橋藍の母親。職業はフラワーデザイナーで、一流ホテルやテレビのセットなども手掛ける著名な人物。お花の教室を全国展開したり著書を出版するなど非常に仕事熱心な一方で、子供たちへの関心は薄くなりがちで、2人の正確な現状は把握できていない。

黒崎 悦子 (くろさき えつこ)

黒崎晃一郎の母親で故人。ショートヘアの落ち着いた雰囲気の人物。生前は闘病生活にあり、手術は成功したものの入院する日々が続いていた。黒崎晃一郎の父のことを誰よりも愛し信じており、晃一郎へ「父を信じて彼の言う通りに生きるように」と伝えていた。あまりにも夫を中心としたものの考え方をしていたため、息子の晃一郎は「母は父しか見ていなかった」「自分のことは、父のために動く傀儡のようにしか捉えていなかった」と考えている。

黒崎晃一郎の父 (くろさきこういちろうのちち)

黒崎晃一郎の父親。大規模な会社の会長を務める、非常に厳しく高圧的な人物。晃一郎には幼い頃から徹底的な指導を行い、跡継ぎとして育てていたが、晃一郎がどれだけ優秀な結果を残しても満足せず辛辣な言葉を浴びせることが多くあった。一方で夫婦仲は非常によく、晃一郎は「両親は会社愛と夫婦愛で心を使いきっていた」と語っている。

灰島 (はいじま)

黒崎家の会社に勤める男性。眼鏡をかけた穏やかな人物で、黒崎晃一郎の運転手も務めている。晃一郎の弱い部分も知る数少ない存在で、厳しい父親に叱咤されることも多い彼を優しく暖かく励ます。最近白髪が増えてきており、晃一郎も気になっている。

保健室教諭 (ほけんしつきょうゆ)

一条真白の前に突如現れた女性。長い髪を真ん中で分け、巻いている若い女性で、鴻鵠学園の保健室教諭と名乗っている。しかし、一般の保健室ではなく地下の保健室を管理しており、他の保健室教諭はその存在を知らない。謎が多く、誰にも話していないはずの真白の身体の秘密を知っているなど、不可解な点が多くみられる。

(よろい)

一条真白が夢の中の特別授業で出会う、全身に鎧を着た人物。欲求に忠実な粗暴な人物で、他の生徒には非常に攻撃的。真白に暴言を吐いたり、性的に辱めようとすることも多く、授業における真白の最大の敵として立ちはだかる。合格候補の筆頭でありながら、なぜか卒業する意思が薄い。正体は不明だが、真白は水橋蒼ではないかと考えている。

レインコートを着た少女 (れいんこーとをきたしょうじょ)

一条真白が夢の中の特別授業で出会う、レインコートのフードを被り、片足だけ長靴が脱げている生徒。男性への強い恐怖と憎しみに支配されており、傘を使って他の生徒と戦う。非常に強力な攻撃手段を持っている一方で、自らの感情をコントロールできずにいるため、玉の緒の玉を自分で破壊してしまい自滅することも多い。フードを脱いだ姿は本来のものと変わらないため、正体は自分であると藤島紅葉が真白に自ら明かした。

あい

一条真白が夢の中の特別授業で出会う、黒髪ストレートロングヘアにゴシックロリータファッションをまとった生徒。高飛車で意地悪な雰囲気だが精神的には安定しており、「鎧」をも凌駕する圧倒的な強さを誇る。そのため卒業は容易に思えるにもかかわらず、なぜかその意思はない。テディベアを肌身離さず持ち歩いており、自らを水橋蒼の姉の「あい」と名乗っている。

(て)

一条真白が夢の中の特別授業で出会う、片腕だけの姿になった生徒。枝のように長く伸びた腕の姿で這い回って動き、蛇のように他者を締め付けて攻撃したり、小さく大量な手の姿に変形して現れることもある。真白に謎の執着を見せているが、真白には正体の見当がつかない。触れると体温がある。

顔のない女子生徒 (かおのないじょしせいと)

一条真白が夢の中の特別授業で出会う、顔と胸の部分に大きく穴が空いている生徒。顔がないことを「自分がいない」と捉えており、このままではどこにも行けないと考えるあまり、他の生徒から奪う形で取り戻そうとしている。顔以外の要素から、真白は奥井美登里であると推測している。

キリン

一条真白が夢の中の特別授業で出会う、動物の「キリン」の姿をした生徒。人間の言葉を話し、授業に参加した生徒の正体が見えるという特殊能力を持っている。知能は高いが身体が紙でできているという致命的な弱点を背負っており、物理攻撃や水、火の気には極端に弱い。

携帯電話 (けいたいでんわ)

一条真白が夢の中の特別授業で出会う、真白の「携帯電話」の姿をした生徒。ストライプ柄の入ったガラケーで、玉の緒はストラップとして付属している。着信する形で会話が可能になり、通話相手は新橋一之であることから、正体は彼と推測される。授業内での藤島紅葉の位置を把握する能力を持つ。

人魚 (にんぎょ)

一条真白が夢の中の特別授業で出会う、「人魚」の姿をした生徒。仮面をつけているため顔は確認できないが、車椅子に座っている、ジュエリー広告の蘇芳あすかと同じ格好をしている等の理由から真白は蘇芳と判断している。口から針のようなものを吹いて他の生徒を攻撃する。

人面疽 (じんめんそ)

一条真白が夢の中の特別授業で出会う、人の顔のような「腫れ物」の姿をした生徒。他の生徒の身体に寄生し、悪質な噂話を叫び続ける。寄生されている生徒は、玉の緒の数が人面疽と合わせた最大6個になり、人面疽は寄生主から切り離されると本来の姿に戻る。

場所

(ゆめ)

特別授業が行われる場所のこと。生徒たちは地下保健室で眠ることで、ここへ訪れることができる。夢の中のどこかにある鍵を手に入れることが授業の目的であり、鍵を獲得した生徒のみが卒業資格を得るため、その捜索と奪い合いが授業の核となる。ただし、夢の中では各々の本来の心を象徴した姿に変わり、普段とまるで容姿や性格が違う別人になることもある。 ゆえに、まず自分自身をコントロールできなくては合格は難しく、自分以外の生徒についても、容易に正体を特定することはできない。開始時に付与される玉の緒の玉が3つとも破壊されると失格になり、授業から離脱する形で目を覚ますことになる。

イベント・出来事

特別授業 (とくべつじゅぎょう)

毎週木曜日の放課後、地下の保健室で行われる授業のこと。合格した者には卒業資格が与えられ、学年とは無関係に学校を去ることができる。授業は夢の中で開催され、有受験資格者たちが保健室で眠ることで開始される。授業は休むことも可能だが、3回連続で休むと失格となり、以降の授業にも参加できなくなるほか、在学資格もはく奪される。 失格となった生徒がどこへ行ってしまうのかは誰にも明かされていない。

その他キーワード

玉の緒 (たまのお)

特別授業の参加者に毎回付与される首飾りのこと。3つの玉がついており、精神的ショックやダメージを受けるたびに1つ破裂する。3つとも失うと不合格となり、夢の中から弾き出されるため、最低でも1つ残した状態でなければ授業に参加できない。玉がすべて破壊され、夢から目を覚ました不合格者は、翌週も特別授業に参加することになる。 尚、心臓に近い玉が最初に割れる。

(かぎ)

夢の中で開催される特別授業に合格するために必要なもののこと。授業参加生徒の誰かの身体の中から発見されることが多く、生徒たちはお互いを攻撃しあい、体内を探り合うことで鍵を捜索する。鍵を手に入れた生徒は、一致する鍵穴を持つ扉を開錠することで合格・卒業となる。

真白の剣 (ましろのけん)

一条真白が夢の中の特別授業に合格するために編みだした武器のこと。羽根のような形をした2本1セットの剣で、長剣の「男性の剣」、短剣の「女性の剣」が紐で繋がれる形でつくられている。どちらかを捨てて扱うことはできないため、真白は2刀流で闘うことになる。

黒い月 (くろいつき)

特定の生徒だけが見える、空に浮かぶ黒い星のこと。月のように次第に満ちていき、大きくなるが、なぜそういったものが決まった生徒にのみ可視化できるのかは不明。満月の状態になると、見えている生徒にはある変化が訪れる。

黒薔薇姫 (くろばらひめ)

一条真白たちのクラスが文化祭で上映することになった作品のこと。幾人ものヴァンパイアに求婚された黒薔薇姫が、彼らの中から1人を選ぶためさまざまな試練を与えるが、ヴァンパイアと結ばれると黒薔薇姫は樹木になってしまうという物語。水城せとなの他作品『黒薔薇アリス』が元ネタになっている。

書誌情報

放課後保健室 全10巻 秋田書店〈プリンセスコミックス〉 完結

第1巻

(2004年12月22日発行、 978-4253194419)

第2巻

(2005年5月16日発行、 978-4253194426)

第3巻

(2005年9月16日発行、 978-4253194433)

第4巻

(2006年1月16日発行、 978-4253194440)

第5巻

(2006年6月16日発行、 978-4253194457)

第6巻

(2006年11月16日発行、 978-4253194464)

第7巻

(2007年3月16日発行、 978-4253194471)

第8巻

(2007年7月13日発行、 978-4253194488)

第9巻

(2007年10月16日発行、 978-4253194495)

第10巻

(2008年1月16日発行、 978-4253194501)

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