星のローカス

星のローカス

イラストレーターの夢をあきらめ、父親に言われるがまま高校の機械科に進んだ男子高校生の二木聡と、彼を取り巻く幼なじみや仲間達の高校生活の軌跡(ローカス)を描く恋愛青春群像劇。1話完結の連作方式で、ギリシャ神話や星座の神にまつわる伝承をモチーフに物語が進み、それがエピソードタイトルに反映されている。「月刊少年チャンピオン」に掲載された作品。

正式名称
星のローカス
ふりがな
ほしのろーかす
作者
ジャンル
恋愛
 
青春
関連商品
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あらすじ

第1巻

星恵高校の機械科に通う二木聡は、父親の二木総のいいなりになり、イラストレーターの夢をあきらめた自分を不甲斐なく思っていた。幼なじみの阿見志保里はそんな聡を気にして、彼の下宿に足繁く通っていたが、聡はそんな志保里を少し鬱陶しく感じていた。ある夜、聡は親友の長尾友幸が一番好きだという典型的な冬の星座であるシリウスに魅入られ、今までの臆病だった自分を捨てようと決意する。(Locus・1「雪色のシリウス」。ほか、6エピソード収録)

第2巻

二木聡長尾友幸は、年明けの冬の海を見ようと直江津までやって来た。そこで聡は旅館の娘の大日方五色となかよくなり、おしとやかな五色に惹かれていく。放つ光が五色に変わるというカペラが見えたという日が、彼女の名前の由来だと聞いた一同は、ギリシャ神話に登場するカペラの別名「コーヌ・コピア(幸運の角)」の話で盛り上がる。直江津を離れる日、聡は貝殻で幸運の角を模(かたど)ったペンダントを五色から手渡されるが、聡は複雑な思いを抱える事になる。その頃、聡は幼なじみの阿見志保里との距離が近づきつつあったのだ。(Locus・10「コーヌ・コピア」。ほか、7エピソード収録)

第3巻

七夕には中国の伝説のほか、日本古来のもう一つの意味があった。それはお盆に帰って来る祖先の霊を迎えるため、海や川で禊をするというもので、笹竹に付ける飾りには、本来は自分のけがれを付けて流すという役割があったのだ。夏休みに直江津の大日方五色を訪ねた二木聡達はそんな話題で盛り上がっていた。しかし五色は、付き合い始めた山脇敏夫との交際に人知れず悩んでいた。五色が二人の交際を秘密にしたがるため、二人の関係はぎくしゃくしていた。そんな中、天の川が光る星空のもと、阿見志保里達に誘われるがまま海で泳いだ五色は、山脇との仲直りを願った短冊を海に放つ。(Locus・17「五色の短冊」。ほか、7エピソード収録)

第4巻

父親の二木総にデザインスクールへの入学を許された二木聡は希望に満ちあふれ、ミシンクラフトに熱中していた阿見志保里は洋裁科へ進む事を思案していた。一方、祖父江夕子は卒業後にスナック「赴嶺夜」を継ぐ事を決める。進路の決まっていない長尾友幸は、夕子から「赴嶺夜」で働かないかと誘われるが、なぜか言葉を濁してしまう。友幸の進路を心配する聡だったが、友幸はもう自分の役目は終わったといわんばかりの態度を取る。(Locus・31「西の南斗」。ほか、7エピソード収録)

第5巻

高校3年生の3学期が始まり、二木聡はデザインスクール、阿見志保里はコンピューター学校の入試を控えていた。そんな中、長尾友幸は置手紙を残して行方知れずになる。友幸と聡は複雑な事情が絡み合った兄弟であり、聡だけがその事を知らされずにこれまで過ごして来たのである。そんな聡を、1年前に偶然知り合った佐原亜湖が訪ねて来る。当時、失恋の痛手を負っていた亜湖は聡に会った事で救われ、「縁」を信じるようになったと語り、オリオン座の大星雲で生まれたトラペジウムに聡、志保里、友幸、祖父江夕子をなぞらえ、聡を励ますのだった。(Locus・34「トラペジウム」。ほか、3エピソード収録)

登場人物・キャラクター

二木 聡 (ふたつぎ さとし)

星恵高校の機械科に通う男子高校生。初登場時は高校1年生。小柄でどことなく頼りない雰囲気を漂わせている。阿見志保里とは幼なじみで、父親の二木総は、彼女の父親と町工場「セレス製作所」を経営している。小さい頃からイラストレーターになるのが夢だったが、父親に無理やり機械科に進学させられたという経緯がある。父親にまったく反抗できなかった自分を不甲斐なく思っており、今までの自分を捨て、クールな青い光を放つ冬の星座、シリウスに向かって二木聡自身の軌跡を刻み始める決心をする。人見知りな性格で、高校入学当初はとなりに下宿する長尾友幸以外に友達はいなかったが、美術部に出入りするようになり、交友関係も広がっていく。志保里をうるさく感じていた時期もあったが、距離を徐々に縮め、彼女のプシュケのような一途さを受け止めるようになる。友幸からは、暖かそうな光を放つ春の星座、アークチュルスに例えられている。幼なじみの渡瀬良一と友幸が同一人物だと高校2年生の頃に知り、東京にあるデザインスクールへの進学を決めた頃、複雑な事情が絡み合った兄弟であるという事実を知らされる。

阿見 志保里 (あみ しおり)

星恵高校の機械科に通う女子高校生。二木聡と同学年。逆三角顔でやや細身の美女でしっかり者。機械科のアイドル的な存在であり、機械科の「ヴァイセ・フラウエン」と呼ばれている。聡の幼なじみで、彼の父親の二木総と自分の父親は町工場「セレス製作所」の共同経営者。機械いじりが大好きで、将来工場にかかわる仕事をしたいと考えている。聡といっしょにいる事が自分の軌跡だと決め、移り気な聡に悩まされながらも、頼りない聡を放っておけず、イラストレーターになりたいという聡の夢を応援するようになる。当初は口うるさい性格が災いし、聡から距離を置かれていた。色々な女子を好きになる聡に悩まされながら、いつも愛の神、アモールを追うギリシャ神話に登場するプシュケのようになりたいと、聡を一途に思い続けている。一時はミシンクラフトにはまり、洋裁科への道も考えるが、イラストレーターへの夢へ向かい始めた聡といっしょにいるためにも、また工場の将来的な発展を見据え、東京にあるコンピューター学校への進学を決める。星座好きの長尾友幸に、アークチュルスの傍で光る白い乙女、スピカのようだと例えられている。

長尾 友幸 (ながお ともゆき)

星恵高校の機械科に通う男子高校生。二木聡と同学年。聡のとなりの部屋に下宿しており、面長で目が細い。星座やギリシャ神話に詳しく、天体望遠鏡で星の観測をするのが趣味。おおいぬ座のシリウスが一番好きな星座であり、いつもふざけた言動をしているものの、シリウスのようなクールさを内に秘めている。阿見志保里が好きだと公言していたが、ある時から祖父江夕子と飲み友達になり、スナック「赴嶺夜」に入り浸るようになる。高校2年生の頃、聡の幼なじみの渡瀬良一と同一人物だと、聡と志保里に気づかれるが、長尾友幸自身がそれを隠していた理由は語らなかった。しかし進路を決める頃、聡の腹違いの兄であった事が明るみになる。友幸の父親の長尾元二が二木総の子供を妊娠していた渡瀬理恵と結婚したため、元二の子供として育てられたが、両親が交通事故で他界。母方の祖父母である渡瀬家に預けられ、小学校1年生の頃に横浜に引っ越している。総の協力を得て、弟である聡のとなりの部屋で下宿するようになったが、頼りない聡を見守る事に尽力していたため、自分の軌跡を刻めなかったと、卒業間近に姿を消してしまう。

祖父江 夕子 (そふえ ゆうこ)

星恵高校の普通科に通う女子高校生。初登場時は高校1年生。いとこの計一が営むスナック「赴嶺夜」の常連であり、手伝いもしている。同じクラスの瀬ヶ崎美鈴が二木聡の悪口をいいふらしていた事から、聡を知るものの、イメージと違う彼に興味を持つ。聡のファーストキスの相手でもある。すでに大人の女としての雰囲気を持ち、酒を覚えたのも早かった。あとになにも残らない遊びの恋にうんざりしていたため、優し気な聡に本気になりかけたが、阿見志保里の聡に対する真剣な思いを目の当たりにして身を引く。のちに志保里とも仲よくなり、長尾友幸と飲み友達になる。卒業後は、別店舗を経営する事になった計一に「赴嶺夜」を任される事になる。また同じ頃、友幸への真剣な思いに気づいたため、友幸に「赴嶺夜」で働くよう持ち掛けた。

計一 (けいいち)

スナック「赴嶺夜」のマスターを務める若い男性。祖父江夕子のいとこで、夕子からは、口が悪くて客が寄りつかないと軽口を叩かれている。自分をはすっぱな女のように自嘲する夕子の事をたしなめるなど、彼女をいつも気に掛けている。のちに友人と共同経営する店を出すため、「赴嶺夜」を夕子に任せる事を決める。

松井 良人 (まつい よしと)

星恵高校に通う男子高校生。美術部の油絵を専攻している。二木聡と同学年。小柄で黒目がちで、かわいらしい雰囲気を漂わせている。友人の聡を美術部に誘うなど、世話好きで親しみやすい性格の持ち主。のちに投票により、小城あい子のあとの美術部の部長に選ばれ、副部長となった美代子に好意を寄せるようになる。一方で、聡と合作で描いた絵を展覧会に出展するよう勧められた際には、聡に劣等感を感じて絵を破り捨てるなど、芸術家として高いプライドを持っている。聡からは明るいのか暗いのかよくわからないと評されており、根は「夕暮れ」だとからかわれている。

大日方 五色 (おびなた ごしき)

直江津の旅館「天輪荘」の娘。女子高校生で、二木聡と同学年。長尾友幸と聡が高校1年生の冬に「天輪荘」を訪れて以来、彼らと交流を深めている。色白で丸顔のおしとやかな性格で、聡の好きなタイプだが、意外にしたたかな一面を見せる事もある。11月28日に生まれで、窓から光が五色に変わるといわれているぎょしゃ座のカペラが見えたため、五色と名づけられた。ちなみに、カペラの別名である「コーヌ・コピア(幸運の角)」は、神々の王ゼウスを育てた山羊の角が星になったもので、その角を持つと幸運が訪れるという言い伝えがある。そのギリシャ神話を知ったあと、聡が拾って来た貝殻を、角を模ったペンダントに細工し、別れ際に聡に手渡している。聡とはペンフレンドとして交流が続き、のちに山脇敏夫と付き合っている事を打ち明けている。周囲に彼氏がいる事を隠そうとして、山脇との関係を一時的に悪化させるが、彼氏の存在を恥ずかしがる事をやめたため、以降は順調に交際を続ける。高校卒業後は家事手伝いをする事が決まっている。

山脇 敏夫 (やまわき としお)

直江津にある高校に通う男子。二木聡と同学年。聡から「山ちゃん」と呼ばれている。大日方五色と付き合っているが、自分との交際を秘密にしたがる五色に苛立ち、一時的に関係が悪くなる。そんな中、海水浴にやって来た聡達と話す機会を設け、五色と仲直りする。お世辞を言うのが苦手で、歯に衣着せぬ物言いをするが、デザインスクール進学を反対された聡を気遣うなど、根は非常に優しい。卒業後は地元の大学に進学する事が決まっている。

渡瀬 良一 (わたせ りょういち)

二木聡のとなりに住んでいた幼なじみの男の子。いつも阿見志保里や聡といっしょに遊んでいた。聡が長尾友幸と出会うまで、気を許して遊んでいた唯一の友人。小学校1年生の時に転校してしまったが、聡の兄的な存在だった。高校2年生になった聡と志保里が、渡瀬良一と友幸が同人物ではないかと疑いを持つ。良一の誕生日が4月10日だと覚えていた志保里が友幸にかまをかけた事で、友幸が良一と同一人物だと判明する。しかし、ギリシャ神話でヒドラと呼ばれている星は、天文学ではうみへび座と呼ばれている事に鑑み、どう呼ばれようと同じ星は同じ星だと考える聡からは、それ以降、追及される事はなかった。

瀬ヶ崎 美鈴 (せがさき みすず)

星恵高校の普通科に通う女子高校生。二木聡と同学年。聡にラブレターを渡し、デートする事になる。自らの感情だけで行動する単純な性格で、聡とのデートに阿見志保里が乱入した事から、泣いてその場から去ってしまい、聡をふる格好となった。その後、祖父江夕子と同じ普通科のクラスで、聡の悪口をさんざん言った事から、夕子が聡を知るきっかけを作った。1年半後、付き合っていた今野をふり、聡に再び接近を図る。ちなみに今野には自分から告白して付き合い始めるものの、優しすぎるという理由で別れを告げた。

浅井 (あさい)

星恵高校の機械科に通う男子高校生。二木聡と同学年。スマートな体型のイケメンで、1年生の時に阿見志保里と化学の実験の班が同じだった。志保里の聡との関係についての愚痴を聞き、自分ならほかの女の子に目移りする事はないと、志保里に猛アプローチを開始した。

小城 あい子 (おぎ あいこ)

星恵高校の普通科に通う女子高校生。美術部に所属している。二木聡の1学年上で、美術部に出入りするようになった聡を気に入り、入部するよう勧誘する。聡の絵のモデルを務めるため、半裸になるなど大胆なアプローチを開始した。祖父江夕子からは、優しそうな顔立ちながら強情な性格だと評されており、そのクセの強さが聡に苦手意識を抱かせる事になる。のちに美術部の部長となると、徐々に聡との関係も良好になり、同学年の樋口に思いを寄せるようになる。3年生を送り出すパーティーの2次会が開かれたスナック「赴嶺夜」では、自分が一等星のつもりでいたとプライドの高さを聡達に詫び、素の自分を見せた。行方不明だった部員の画集を見つけ出し、自分がここにいた証として置いて行くなど、3年間青春を注いだ美術部への思い入れは非常に強い。怪談とピーマンが苦手。

三戸田 明日音 (みとだ あすね)

星恵高校の普通科に通う女子高校生。美術部に所属している。二木聡の1学年下で、新入生の女子に点数を付けていた長尾友幸から90点を付けられた、かわいらしい顔立ちの女の子。部室でヘラクレスのヒドラ退治のイラストを描いていた際に、聡から天文学でヒドラはうみへび座だと教えられる。聡の描くイラストが好きで、半ば強引に聡を美術部の正部員になるよう説得し、入部届けを書かせた。

橋詰 (はしづめ)

星恵高校に通う男子高校生。まじめな性格な事から、長尾友幸とは馬が合わず、祖父江夕子を友幸から引き離そうとしていた。悪い遊びに夕子を誘わないでくれと正論を吐きながら、友幸をこき下ろしたために二木聡から殴られる。

美代子 (みよこ)

星恵高校に通う女子高校生。二木聡と同学年で、のちに美術部の副部長を務める。博識で、大きな眼鏡をかけている。潔癖性で不謹慎な事が嫌いなため、岡本杏子のいたずらで女性のパンツを持っていた聡に、夏休みまで部室に出入り禁止という厳しい罰を与える。松井良人から好意を寄せられている。

今野 (こんの)

恵高校の普通科に通う男子高校生。松井良人のいとこ。失恋して落ち込んでいた時に松井の計らいで、二木聡達がスナック「赴嶺夜」で今野のやけ酒に付き合う事になる。飲んでいるうちに、ふられた彼女が聡に再びちょっかいを出している瀬ヶ崎美鈴だと判明する。ちなみに美鈴から告白されたものの、優しすぎるという理由でふられてしまう。

樋口 (ひぐち)

星恵高校に通う男子高校生。二木聡より1学年上。小城あい子と同学年でクラスメイト。大柄な体型で、穏やかな雰囲気を漂わせている。あい子を気に掛けており、受験前で大変な時期にもかかわらず、あい子から誘われた美術部のパーティーに参加した。あい子の真意を汲み取った聡に、あい子の気持ちに応えるよう後押しされる。

佐原 亜湖 (さはら あこ)

一人旅をしていた女子高校生。二木聡と同学年。バンダナを頭に巻いている。布引観音への道を聡に尋ねた事で、聡が道案内を引き受ける事になった。実は失恋旅行中で、自殺をほのめかすような発言をしていた。心配した聡から、悲しみのために姿を消したすばる事プレアデス星団の行方知れずのプレヤード伝説の話を聞かされ、元気づけられる。その際に彼女が名前を名乗らなかったため、「行方知れずのプレヤード」と呼んでいた。卒業を控えた頃、その時のお礼を言うために聡のもとを訪れた事で、その本名が明らかとなった。

根上 (ねがみ)

星恵高校に通う男子高校生。写真部に所属している。二木聡と同学年。カメラの才能は確かで、写真雑誌のコンクールにも応募している。口下手ながらもまじめな性格で、阿見志保里を撮りたいと、写真のモデルを頼んだ事をきっかけに聡と知り合う。卒業後は写真の勉強のためにデザイン学校へ行く事を決めていたが、家庭の事情で3年生の夏休みに急に静岡へ引っ越してしまう。引っ越す前に写真をきっぱりやめると、今まで撮り溜めた写真や愛用していたカメラ、レンズ一式を聡に譲った。

武内 (たけうち)

星恵高校に通う男子高校生。陸上部に所属している。二木聡の2学年下。阿見志保里にあこがれており、陸上大会のアナウンスを依頼した。祖父江夕子がふざけて聡にキスをしたところを目撃した際には、志保里に告げ口するなどトラブルメーカーとなる。そのために聡達からは白い乙女、スピカの横にいるからす座、またはその別名である「スパイカのスパンカー」と呼ばれるようになる。

藤井 (ふじい)

となり町で画廊喫茶を経営している男性。松井良人の遠い親戚にあたる。口ひげを蓄え、眼鏡をかけている。高校生の絵を飾りたいと良人に伝えた事で二木聡のイラストを見せてもらったが、基礎がなってないと指摘し、聡が本格的にイラストを学ぶきっかけを作った人物。

岡本 杏子 (おかもと きょうこ)

星恵高校に通う女子高校生。二木聡の1学年下。聡に好意を寄せており、幽霊の振りをして聡を驚かせたのをきっかけに、何度もいたずらを仕掛けるようになる。ちなみに聡の好きな丸顔という事もあり、聡の方も満更でもない様子を見せている。だが自分のいたずらのせいで、聡が美術部を出入り禁止になった事を反省。同時に阿見志保里がいつも聡のプシュケでありたいと願っている事を知り、身を引く。

立 明葉 (ついき あきは)

長尾友幸の中学校時代のクラスメイトだった女子。高校生バンド「ヘルメス」のメンバーの中で、ただ一人中学生だった友幸の取り巻きで、今は「ヘルメス」のキーボードを担当している。横浜在住で、友幸が離れていったのは自分のせいだと思い込んでおり、友幸がバンド仲間に牧神、バーンと呼ばれていた事から、自分をバーンを襲った怪物テュフォンのようだと自己嫌悪に陥っていた。のちに友幸と再会し、彼が横浜から離れた真の理由を聞く事となる。

二木 総 (ふたつぎ そう)

二木聡の父親。阿見志保里の両親と工場「セレス製作所」を共同経営している。聡を工場の跡継ぎにすべく、無理やり星恵高校の機械科に通わせた。しかし、秘密を共有する長尾友幸に半ば脅迫めいた言葉をかけられ、家出されるよりはましだと、デザインスクールへの入学を許可した。実は、結婚する前に渡瀬理恵と交際していたが、親族が結婚に反対し、現在の聡の母親と結婚した。自分の子供を妊娠していた理恵は、同じく理恵に思いを寄せていた親友の長尾元二と結婚するが、翌年交通事故で二人が死亡。生まれた友幸への援助を続けており、友幸が聡のとなりの部屋で下宿できるように取り計らった。

渡瀬 理恵 (わたせ りえ)

長尾友幸の母親。旧姓は「長尾理恵」。二木総と長尾元二に好意を持たれており、結局総を選んだ。しかし総との交際は父親が許さず、二人は元二の協力で隠れて交際を続けるが、渡瀬家では元二と付き合っていると誤解されていた。同じ頃、二木家でも総の縁談が進められていたため、総と別れて元二と結婚した。総の子供を宿していたため、元二は友幸を自分の子供として育てようとしていたところ、元二と共に交通事故で亡くなる。そして友幸は、自分の祖父母である渡瀬家に預けられたという経緯がある。

長尾 元二 (ながお げんじ)

長尾友幸の父親。二木総の親友で、渡瀬理恵に好意を寄せていたが、理恵が総を思っていた事で失恋するが、交際を反対されていた二人の仲立ちをしていた。総の縁談が強引に進められたため、総の子供を身ごもっていた理恵と結婚し、長尾友幸を自分の子として育てようとしていた矢先、理恵と共に交通事故で亡くなる。

場所

赴嶺夜 (ふれいや)

祖父江夕子のいとこである計一が、マスターを務めるスナック。夕子と交流を深めた二木聡や長尾友幸の溜り場となる。圭一が友達と別の場所でもう1軒店を持つ事になり、卒業後に夕子が店を継ぐ事になった。夕子は友幸を従業員になるよう誘っていたが、曖昧な返事を残したまま、友幸は行方知れずになってしまう。

その他キーワード

ヴァイセ・フラウエン

ドイツの民話に出て来る妖精。古い城跡で人間の若者が訪れるのを待ち、埋もれている財宝のありかを教え、首尾よく財宝を手に入れると、ヴァイセ・フラウエンを荒野にとどめている呪いも解け、その美しさにふさわしい花園に帰れるという伝承がある。阿見志保里が女だてらに機械をいじくっているのはなにかの呪いだという意味も込め、機械科の「ヴァイセ・フラウエン」と呼ばれている。また、星座ではアークチュルスの傍で光る白い乙女の星、スピカに例えられている。

行方知れずのプレヤード伝説 (ゆくえしれずのぷれやーどでんせつ)

「すばる」という和名のプレアデス星団の星々には、アルケオーネ、メローベ、ケレノ、タイゲタ、アステローベ、マイア、エレクトラという七人の乙女の名前が付けられているが、肉眼ですぐに見つかるのは六つの星だけ。七つの星のうちの一つであるエレクトラがよく見えないのは、自分の息子のダルダノスが建設したトロイの街が、トロイ戦争で壊滅したのを悲しみ、顔をそむけているからだといわれている。世界各地に同様の話が伝説として残っており、古代ギリシャ人は失われた七つ目の星の伝説を行方知れずのプレヤード伝説と呼んでいた。

スパイカのスパンカー

スピカを取り込もうとするような四角い星座、からす座の別名。高校1年生の頃、長尾友幸はオレンジ色のアークチュルスを二木聡に、純白のスピカを阿見志保里に例えていた。スピカが英語で「スパイカ」と発音され、また「スパンカー」という単語は帆船の後部マストの下に張る縦帆の事を指すため、志保里のつねに傍にいる高校1年生の武内は「スパイカのスパンカー」と呼ばれている。また、からす座のからすはギリシャ神話では、太陽神アポロの使いであり、アポロンの愛したコローニスという女性が浮気しているとアポロンに告げ口した。コローニスに死の矢を放ったアポロンの怒りがカラスに向けられたため、真っ白な姿から真っ黒な姿にされたといわれている。

プシュケ

ギリシャ神話に登場する、美の女神ビーナスよりも美しいと噂されていた娘。ビーナスは愛の神である息子のアモール(キューピッド)に、プシュケを醜い男と結婚させよと命じるが、アモールはプシュケといっしょに暮らし始めた。神であるアモールは人間のプシュケに姿を見られてはならなかったが、姉達にそそのかされ、プシュケはアモールの姿を見てしまう。そしてアモールは去ってしまうが、プシュケは夫を探す長い旅に出て、ビーナスの命じた厳しい試練を果たし、アモールと永遠に結ばれた。阿見志保里はアモールを二木聡に見立て、自分も一途なプシュケのようになりたいと思うようになった。

トラペジウム

オリオン座の大星雲の中心で生まれた四重星。二木聡を再度訪ねて来た佐原亜湖が、聡や長尾友幸、阿見志保里、祖父江夕子の四人をみんなでいっしょに輝くトラペジウムに例え、行方知れずになった友幸はきっと戻って来ると聡達を勇気づけた。

バーン

ギリシャ神話に登場する音楽好きな神、ヘルメスの子。上半身は人で、下半身は山羊の姿をした神。葦の笛、シュリンクスの発明者でもある。宴会の最中に怪物テュホンに襲われて逃げ出し、その姿がやぎ座になったといわれていると、立明葉は長尾友幸に教わった。友幸は川原の芦で笛を作るのがうまかったため、牧神・バーンと呼ばれており、立明葉は自分が友幸をしつこく追ったため、彼が姿を消したのでないかと思い、自身を怪物テュフォンに例え後悔していた。

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