あらすじ
出会ってから10年目の春、戻って来た桜
大学に入学して早々のガイダンスで、河原木春喜は花梨桜と出会う。最初は桜のギャル風の派手な外見に警戒していた春喜だったが、彼女からの積極的なアプローチを受け、二人は間もなく恋人同士となる。そして春喜と桜は同棲を開始し、幸せな毎日を送っていた。しかし、出会ってから5年目のある日、突然桜はこの世を去ってしまう。それ以来、春喜は毎年桜と出会った4月になると無気力になり、1か月の有給休暇を取得するのが恒例となっていた。出会ってから10年目の4月、まだ桜のことを忘れられない春喜は彼女が綴っていた日記を偶然にも発見して涙する。そしてふと桜の名前を呼ぶと、幽霊になった桜が現れる。こうして再会した二人は、当時綴っていた桜の日記をもとに、10年前の4月と同じ行動を取ることにする。
大切な人たちに会いに行く二人
河原木春喜は長期の有給休暇も終わり、仕事に復帰する。そして春喜は忙しい日々を送ることになるが、再び訪れた花梨桜との生活に幸せを覚えていた。そんなある日、春喜は生前の桜が使っていたデスクから、南楓宛のボールペンを発見する。桜もなぜ会社の後輩だった楓のボールペンが手元にあるのか覚えておらず、春喜は桜と共に楓に会ってみようと行動を起こす。春喜は楓との出会いをきっかけに、自分の知らなかったもう一人の桜の姿を知る。こうして春喜はもっと桜のことを知りたいと、生前の彼女と関係のあったほかの人たちに会うことにする。そんな中、春喜は桜の親友だった菊花と会って、なぜ桜がこの世を去ったのかを思い出す。
登場人物・キャラクター
河原木 春喜 (かわらぎ はるき)
社会人の独身女性。年齢は32歳。10年前、大学の入学式のガイダンスの日に花梨桜と出会って恋人関係になり、同棲を開始した。5年前に桜が突然この世を去り、未だに彼女のことが忘れられずにいる。毎年桜と出会った4月になると無気力になり、新卒で入社した会社に1か月ほど有休をもらうのが恒例になっている。そして出会ってから10年目の春、幽霊となった桜と再会し、再びいっしょに暮らすようになる。桜が亡くなったことは理解しているものの、その死因や死の前後に河原木春喜自身が何をしていたのかはまったく覚えていない。ふだんは控え目でおとなしい性格ながら、ここぞという時には大胆に振る舞う。桜からは「ハル」と呼ばれている。
花梨 桜 (かりん さくら)
河原木春喜の元恋人の女性。10年前、大学の入学式のガイダンスの日に春喜と出会って恋に落ち、積極的にアプローチして彼女と付き合うようになる。大学在学中から春喜と同棲を開始し、二人で幸せな日々を過ごしていたが、5年前にこの世を去る。そして春喜と出会ってから10年目の春、彼女の前に幽霊として現れる。生前に日記を綴っており、再会したあとは春喜に託す。この世を去ってから、花梨桜自身も何をしていたのかよく覚えていない。また、春喜からはその存在を認識され、さらに物に触れたり食事をしたりすることはできるが、春喜以外には声や姿を認識されていない。明るい髪色に派手なメイクで、いわゆるギャル風の容姿をしている。派手な外見もあって軽薄そうに見えるが、他者への思いやりにあふれ、愛情深い性格の持ち主。大学卒業後は森恵梨香が経営する会社に就職し、在宅でデザインの仕事をしていた。
柊 (ひいらぎ)
河原木春喜が卒業した大学の講師を務める女性。花梨桜からあこがれられており、授業以外の話もよくしていた。突然この世を去った桜のことを今でも忘れられず、彼女からもらったキーホルダーを大切にしている。桜と親しかったこともあり、在学中の春喜からはひそかに嫉妬されていた。桜の死後、偶然春喜と出会ったことでかかわりを持つようになる。
菊花 (きっか)
河原木春喜と同じ大学の卒業生の女性。花梨桜の親友で、河原木春喜と桜が交際していることも知っており、在学中から二人を応援していた。また、春喜のことで何か悩みが生じると桜から相談を受けていたが、桜がこの世を去ってからは、春喜に連絡する頻度も減っていた。5年前に桜がこの世を去った前後、彼女に何があったのかを最もよく知っている人物でもある。
南 楓 (みなみ かえで)
森恵梨香の会社でデザイナーを務める女性。花梨桜の後輩にあたる。一見軽薄そうに見えるが仕事熱心で、律儀な性格の桜に好感を抱いていた。河原木春喜が桜が使っていたデスク周りで南楓宛のボールペンを発見し、連絡を取ったことでつながりを持つようになる。明るく社交的な性格で、桜も楓に心を許していた。
森 恵梨香 (もり えりか)
デザイン会社を経営している女性。即戦力となるデザイナーを募集した際に、未経験の花梨桜が面接にやって来る。なぜデザイナーになりたいかの問いに、彼女を幸せにするためと答えた桜を面白いと感じ、そのまま採用した。ふだんは喜怒哀楽を表すことがないため、一見クールに思われがちだが非常にユーモアあふれる人物。生前の桜がまだ若いにもかかわらず、変に死を意識した発言が多かったことを気にしていた。
八代 (やしろ)
河原木春喜が暮らすアパートの大家を務める老齢な男性。建物の1階に住んでいるため、ふだんから春喜や花梨桜と顔を合わせる機会も多かった。二人がいっしょに住んでいたことも知っており、妻の草江(くさえ)を交えて夏は花火をしたり、不要になった電化製品を二人に譲っていた。7年前に草江を亡くし、現在は一人で暮らしている。