概要・あらすじ
変わり者ばかりが住まう近代市の一角・□街の高台に、ある日突然、身元不明の人間の死体が出現した。神経を病み、精神が不安定な詩人・朔をはじめとする□街の住人たちは、それぞれに興味を示し、その正体を探ろうとする。
登場人物・キャラクター
朔 (さく)
□街に住む詩人。白に心酔して詩人を志し、□街にやってきた。医者である親の援助で生活しており、自身の原稿料はすぐ酒代などに使ってしまう。詩人としての評価は高いが、生活能力は低く、神経を病んでおり、日常的に様々な幻覚や妄想に悩まされる。詩作においては白と犀の二人に強い影響を受け、白に対しては依存心に近い慕情を抱く。 犀とは親友だったが、その顔が思い出せなくなってしまっている。カレンダーの日付を書き換えたり、時計を操作することで、時系列を操り、過去や未来の時代を現出させる能力を持っているらしい。モデルは実在の詩人・萩原朔太郎とその作品。
白 (はく)
□街の高級住宅地に居を構える歌人。朔が送ってきた詩を自らが主宰する雑誌に掲載したのがきっかけで、朔を弟子として迎える。朔の作品を評する一方で、精神が不安定な彼を挑発的な言動で翻弄する。端正な容姿を持ち、絶対的な自信家で、他人にあまり興味を抱かない。多くの女性から慕われるが、□街に住む男性には反感を持つ者も多い。 一夜限りの関係を持った女性を次々と自宅に住まわせ、女中として使っている。モデルは実在の歌人の北原白秋とその作品。
犀 (さい)
朔の親友の詩人。小説家への転向を試みるもうまくいかず、「旅に出る」と言い残し□街を去った後、第二次世界大戦中のヨーロッパ、硫黄島、サイパンなどをさまよっている。朔に忘れられてしまっているため、顔は描かれていない。モデルは実在の詩人で小説家の室生犀星とその作品。
ミヨシ
□街に住む詩人。朔のことを「兄さん」と呼び、一番弟子を名乗っているが、実際には朔の身の回りの世話ばかりしており、年下の友人として扱われる。白のことは嫌っている。なぜか朔に妹がいると思い込み、その妹に惚れ込んでいる。モデルは実在の詩人・三好達治とその作品。
チューヤ
□街に住む詩人。粗野で口が悪く、喧嘩っ早い性格。ミッチーとは考え方の違いでしばしば対立するが、よく行動を共にしている。モデルは実在の詩人・中原中也とその作品。
ミッチー
□街に住む詩人。恋人がいるが、自分が色欲に溺れることを強く拒絶している。チューヤとはよくケンカをしているが、ともに行動することも多い。モデルは実在の詩人・立原道造とその作品。
コタロー
精神を病んだ末に亡くなった妻・チエコを模したロボット・「チエコさん」を制作し、操作している。□街と美術街の双方に住民票を持ち、□街にいる時は少年のような姿になるが、美術街では口ひげを生やした壮年の姿をしている。モデルは実在の詩人・彫刻家の高村光太郎。
モッさん
歌人にして医者で、□街で脳病院を開業している。朔ら□街の住人のみならず、近代市の住人の多くが治療を受けている。白のことが嫌い。モデルは実在の精神科医・歌人の斎藤茂吉。
石川 (いしかわ)
□街に住む歌人。朔、白とは、河原の屋台でしばしば酒を共にしている。素直で単純な性格。1970年前後、平成の時代へのタイムスリップを経験する。モデルは実在の歌人・石川啄木とその作品。
シキ
飄々とした性格で、□街の高台でスケッチをするのが日課。「ナツメ」という名の猫を飼っている。朔と白からは、密かに嫌われている。モデルは実在の俳人・正岡子規。
アッコ
□街に住む歌人で、街では数少ない、名前を持つ女性。その才能には男女問わず多くの人から憧れの眼差しを向けられている。夫との間に11人の子をもうける。モデルは実在の歌人・与謝野晶子とその作品。
場所
□街 (しかくがい)
近代市の中の一区画で、詩人・歌人・俳人が住んでいる地域。名称は「詩歌句」に由来する。あまり発展していない田舎町だが、風光明媚で自然が豊か。詩・歌・句でざっくりと居住区が分かれており、その内部でも派閥ごとに緩やかにまとまっている。住人には変わり者が多い。
近代市 (きんだいし)
『月に吠えらんねえ』の舞台となる街。詩人、歌人たちが住む□街のほか、「小説街」、「戯曲街」、「評論街」、さらには「政治街」や「経済街」など、文学にとどまらず、様々なジャンルの街が存在し、各地域にはそれぞれの作品とその作者のイメージが具現化した人物が住んでいる。「小説街」と□街の間には「文壇の壁」と呼ばれる険しい山脈があり、「小説街」は「□街」に比べて都会であるとされる。 街と街の間は、汽車で行き来することができる。
書誌情報
月に吠えらんねえ 4巻 講談社〈アフタヌーンKC〉
第1巻
(2014-04-23発行、 978-4063879704)
第2巻
(2014-10-23発行、 978-4063880045)
第3巻
(2015-04-23発行、 978-4063880489)
第4巻
(2015-10-23発行、 978-4063880946)