概要・あらすじ
犬神晴彦は、東京地方検察庁に勤務する検事。警察が逮捕した容疑者を取り調べ、被疑者を起訴するかどうかを決めている。送検されてから24時間以内に被疑者の身柄を拘束して調べ、必要ありと判断した場合は、裁判所に対して10日間の勾留請求を行う。その10日間で取り調べが終わらなければ、さらに10日間の勾留を請求できる。合計20日間の勾留期間で取り調べを終え、被疑者を起訴するかどうかを決めるのだ。
法と正義を信じ、自らの信念を貫く犬神は、今日も粘り強く被疑者の供述に耳を傾け、真実を追い求める。
登場人物・キャラクター
犬神 晴彦 (いぬがみ はるひこ)
東京地方検察庁に勤務する検事。41歳の独身男性。オールバックでモミアゲを少し伸ばし、いかめしい顔つきのため、受付の女性たちからは陰で「ウルフ」と呼ばれている。検事として、日々、警察が逮捕した容疑者と会話し、取り調べを行って、被疑者を起訴するかどうかを決めている。正義感が強く、出世や権力などにとらわれることなく、法と正義を信じる自らの信念を貫いている。
佐久間 亨 (さくま とおる)
山瀬隆平を殺害した容疑で、東京地方検察庁に送られて来た男性。金融業を営む43歳。山瀬を撲殺して現行犯逮捕されたが、殺意はなく正当防衛だったと主張している。犬神晴彦の大学の先輩で顔見知り。20数年の時を経て、偶然にも被疑者と検事という立場で再会する。
山瀬 隆平 (やませ りゅうへい)
佐久間亨に殺された男性。44歳の会社社長。ゴルフ場建設に手を染めて失敗し、倒産寸前に追い込まれた。そのため、債権者の1人で金融業を営む佐久間を自宅に招いて多額の再融資を申し入れる。口論の末、その場で佐久間に撲殺された。
伊沢 杏子 (いざわ きょうこ)
20数年前、犬神晴彦と同じ大学の法学部に在籍していた1年先輩の美しい女性。学生運動のリーダーとして活動していた。早くに両親を亡くし、高校大学と、アルバイトをしながら通い続けた苦学生。犬神と恋に落ち、肉体関係もあったが、間もなく大学敷地内で遺体となって見つかった。対立するセクトによる内ゲバ殺人事件として処理されたが、当時犬神は伊沢杏子に横恋慕していた佐久間亨が殺したのではないか、という疑念を抱いていた。
白川 綾子 (しらかわ あやこ)
28歳の会社員の女性。38歳の暴力団幹部・内藤和夫を殺害したとして警察に通報し、現行犯逮捕された。児童養護施設で育ち、当時の姓は「花村」だった。秋葉宏は弟だが、別々の家に養子として引き取られて生き別れになった。内藤に犯され、それをネタに婚約者との婚約を破談にされたことを恨み、殺害したと自供する。しかし、犬神晴彦は白川綾子が殺害したという確信が持てずにいる。
秋葉 宏 (あきば ひろし)
白川綾子の弟。花村トヨの婚外児として北海道の函館で出生した。父親は不明で、母親は秋葉宏が2歳の時に病死。キリスト教系児童養護施設に引き取られ、5歳の時に秋葉家の養子となった。16歳の時に傷害事件で少年院に入り、その後も窃盗と傷害で前科2犯。現在は出産を間近に控えた妻がおり、堅気としてトラック運転手をしている。 内藤和夫殺人事件の参考人として、犬神晴彦に呼ばれる。
西村 俊明 (にしむら としあき)
汚職の疑いのある県知事・神永英樹の私設秘書を務める男性。県下のダム建設工事の受注をめぐってM建設が知事に賄賂として渡した1000万円を、実際に受け取ったとされている。東京地検特捜部に協力を求められた犬神晴彦によって、参考人として呼び出されるが、賄賂の受け取りについては否定し続けている。
広田 聖海 (ひろた せいかい)
仏教系の新興宗教・大日真宗の実権を握る49歳の男性。大日真宗を設立した父親の広田承道を殺害した容疑で、犬神晴彦によって参考人として呼び出される。ものすごい法力を持っていて、病気の人をバンバン治したり、予言が次々と当たるなど、雑誌などでもよく記事にされており、「今空海」とも呼ばれている。犬神との接見時も、犬神の首の痛みを見抜き、手をかざすだけでその痛みを取り去った。 事件に関しては、父の自殺だと主張している。
広田 絹子 (ひろた きぬこ)
護摩供養の行事の際中に毒殺された疑いのある広田承道の妻。広田聖海の母親で、62歳の恰幅のいい女性。終戦直後、12歳で聖海(当時の名前は聖(ひじり))を出産するが、その後子供を残したまま失踪。10年以上が経過した後、承道の妻となって聖を引き取った。
八木沢 笙子 (やぎさわ しょうこ)
函館で喫茶店を経営する51歳の女性。ロシア人とのハーフで美人。60歳の元刑事・大町勝行を殺害した容疑で、犬神晴彦から取り調べを受ける。不倫関係にあった大町から別れ話を切り出されたので、海に突き落として殺したと自供している。供述に不審なところがあるため、犬神から連日呼び出される。かつては女学院で教師をしていた。