概要・あらすじ
山奥の山村に棲む末吉は、60歳を過ぎた年寄りは山奥に姥捨てをしなければならないという村の掟に従い、おっ母を背負って山の奥深くへと入っていく。人馬峠を越えて耳鳴川を渡り、柊山を通った先には、岩山だらけの殺風景な光景が広がっていた。末吉は断腸の思いでおっ母を置いて山を降りようとした時、岩山の上に仮面をかぶった、浮世離れした容貌の男を目撃する。
その姿を一目見てヤマミサキ神だと思った末吉は、おっ母のことを宜しく頼むと願い、再び山を降りようとする。すると、ヤマミサキ神は、突如末吉に襲いかかる。その現場にマタギの少女・椿鬼が、偶然通りかかり、末吉を助けるために、ヤマミサキ神と対峙することになる。
登場人物・キャラクター
椿鬼 (つばき)
マタギの少女。長い黒髪で、後頭部で1つに束ねた髪は背中まである。背中には出刃包丁のような刃物を仕込み、布で包んだ村田銃「シロビレ」を背負う。子供の頃からマタギの父親の背中を見て育ち、自らもマタギとして山を守っていく道を選んだ。人を遠ざけ、人里離れた山の奥深くに1人で住んでいる。もともとは心の優しい人物。人道に背くことを嫌い、悪道を許さず、場合によっては物の怪だけではなく、同じ人間にも刃を向ける。
末吉 (すえきち)
山奥の山村に住む男性。黒髪で前髪が右目を覆うほどに長い。気が弱く、兄の大吉からは「愚図」と呼ばれて頭が上がらない。村の掟で、60歳になったおっ母を山奥に捨てなければいけなくなり、大吉から強引にその役目を押し付けられた。母親思いの優しい心の持ち主で、おっ母を山奥に置き捨てる時には、何度も躊躇(ためら)いながら、泣く泣く山を降りる。 その道中でヤマミサキ神に襲われてしまう。
大吉 (だいきち)
山奥の山村に住んでいる男性。黒髪で前髪を中分けにしている。末吉の兄で、愚図で気が弱い末吉に対しては高圧的な態度を示す。女遊びが高じて腰を痛めてしまい、村の掟で、60歳になった実母のおっ母を山奥に捨てに行く役目を、強引に末吉に押し付けた。
おっ母 (おっかあ)
山奥の山村に住んでいる老女。末吉と大吉の母親。村には、60歳になった老人は山へ捨てられ、その後、ヤマミサキ神が現れて、捨てられた老人たちを極楽へ連れて行くという言い伝えがあう。その掟に従って、息子の末吉に背負われて村を出て行く。
ヤマミサキ神 (やまみさきがみ)
山奥に棲む、浮世離れした格好の男性。長い白髪とひげを生やして仮面をかぶり、山伏のような格好をしている。言い伝えによると、ヤマミサキ神は山に捨てられた老人を、極楽へ連れて行ってくれるとされている。しかし、実際には棄てられた老人の人肉を喰らう醜悪な存在。末吉がおっ母を山に捨てに行った際に遭遇し、末吉に襲いかかる。
正一 (しょういち)
朽木村に住む13歳の黒髪の少年。村の近くにある川で川魚を捕まえて生活を営んでいる。村の住人の中では若い方で、働き盛りであるにも関わらず、村ではあまり仕事を任せてもらえない。体がなまって仕方がないと不満を抱いている。同じ村の住人の笛江とは仲が良く、家族からは将来、彼女を嫁にもらうことを期待されている。
笛江 (ふえ)
朽木村に住む13歳の少女。黒くて長い髪を後頭部で1つにまとめている。女は村の繁栄の源として大事にされており、笛江もその例に漏れず、基本的には家の中で過ごすように言いつけられている。しかし、明るく活発な性格で、家の中にじっとしているのは性分ではない。たまに同じ村の住人、正一の仕事を見学に行っては、正一の仕事を手伝わせてもらっている。
ハクのオババ
朽木村に住む、長い白髪の老婆。行方不明になっていたが、朽木村の住人である橋爪のジイさんに、山から下りて来る姿を目撃された。その後、3日ぶりに村に戻って来た。女は村の繁栄の源とされてはいるが、老女には冷たく、村人からは「ババア」や「クソババア」呼ばわりされている。そんな村人たちの態度に憤慨している。
サンジの師匠 (さんじのししょう)
クールで冷たい雰囲気をまとったマタギで、白髪の男性。弟子のサンジとともに山奥で暮らしている。村田銃を常に持ち歩いており、獲物を肉眼で見ることなく、射撃して命中させる必殺技「盲目の飛龍」を持つ。朽木村で腕に自信のある男を集めて山狩りをする、という噂を聞いて、自身のマタギとしての名を上げるいい機会だと考え、山を降りて朽木村へと向かう。
サンジ
黒くて長い髪をしていて、長い前髪で右目を隠した少女。背中に大きなリュックを背負っている。サンジの師匠とともに山奥で暮らしている。明るく活発な性格で、師匠を日本一のマタギと尊敬して付き従っている。朽木村で腕に自信のある男を集めて山狩りをするという噂を聞き、朽木村へと向かった師匠に同行する。