概要・あらすじ
怪力と強い正義感を持ち、自らの出自を隠す不思議な少年の天草鉄太郎は、その力と知恵を使って、さまざまな人を助けていた。それが新聞に掲載されたことで、不良の深井裏海に目をつけられてしまう。しかし鉄太郎の計画により総級長になった深井は、良心に目覚めて次第に変化を見せ始める。そんななか、代議士を務める深井の父親は、科学者の田島博士を他国に売り飛ばそうとしていた。
この企みを察知した深井は、鉄太郎に田島博士の窮地を知らせる。田島博士を日本から逃がすため、鉄太郎は博士を連れて故郷の南十字共和国へと向かうのだった。
登場人物・キャラクター
天草 鉄太郎 (あまくさ てつたろう)
力持ちで正義感が強く、困っている人を助けるためなら危険にも飛び込んでいく。戦争中にインドネシアのスラバヤで産まれ、南十字共和国で育った少年で、王子である身分を隠し、日本映画を勉強するために来日した。映画「流星王子」にエキストラとして参加したことで、主演スターの桂龍太郎と出会う。
桂 龍太郎 (かつら りゅうたろう)
映画「流星王子」の主演スター。驚くほど強く、謎めいた雰囲気を持つ天草鉄太郎に興味を持ち、鉄太郎に協力して、さらわれた阿部野つや子を助けたり、政府要人を狙って船を沈没させる企みを阻止した。最近は人気が落ちてきているのを気にしている。田島博士と船に同乗し、南十字共和国へと向かう。
阿部野 つや子 (あべの つやこ)
暴力団にさらわれていたことがあり、彼女の兄はそのための身代金を盗むため、桂龍太郎の楽屋に忍び込んだ。結果、兄は天草鉄太郎に取り押さえられたが、事情を知った鉄太郎と龍太郎の活躍で阿部野つや子は無事に助け出された。この一件以降、鉄太郎を慕っている。戦死したと思っていた父親が南十字共和国で生きていると知り、田島博士を運ぶ船に同乗して南十字共和国へと向かう。
深井 裏海 (ふかい うらみ)
執念中学を仕切る不良。6回落第しているため、中学生ながら年齢は20才になっている。新聞に掲載された天草鉄太郎の活躍を読み、弟分にしようと目をつけていた。鉄太郎の計画により学校の総級長になってからは、少しずつ正義に目覚めていく。父親の深井代議士が田島博士を誘拐して他国に売ろうとしているのを知り、鉄太郎に協力して田島博士を逃がす。
田島 典雄 (たじま のりお)
深井裏海の率いる不良にリンチを受けて、倒れていたところを天草鉄太郎に助けられた。深井と同じ中学に通っており、学校で暴れ回る深井たちに苦しめられていたが、鉄太郎のアドバイスにより、学校中に呼びかけて深井を総級長にしたことで、平穏な学校生活を取り戻す。兄の田島博士を、鉄太郎の助力により南十字共和国に送り出した。
田島博士 (たじまはかせ)
田島典雄の兄。7年間、ある国の基地で強制的に働かされており、逃げ出して日本に帰ってきた。今でも彼を狙う国はいくつもある。人類が幸せになる研究を志しているため、軍需産業への協力を拒否している。深井代議士が関わる企みにより某国へ売られそうになり、弟の友人である天草鉄太郎に助けられて南十字共和国へと逃亡する。
深井代議士 (ふかいだいぎし)
深井裏海の父親で、代議士を務めている。深井と田島典雄が通う中学のPTA会長でもある。田島博士を追ってきた某国の諜報局に大金を積まれ、博士を売ることを約束。協力を拒む博士に腹を立て、無理やりにさらって引き渡そうとする。
山本 五十六 (やまもと いそろく)
南十字共和国の外務大臣。かつて日本海軍の連合艦隊司令長官を務めていた。マレーのジャングルで戦死したと伝えられていたが、実は戦争が嫌になって南十字島へ逃げていた。天草鉄太郎が連れてきた田島博士一行を快く迎える。
阿部野 (あべの)
阿部野つや子の父親。スラバヤで天草鉄太郎の父親である天草鋼と出会い、共に南十字島へ渡った。つや子には戦死したと伝えられており、阿部野自身も家族が東京大空襲で死んだと聞かされていたが、南十字共和国で涙の再会を果たす。
ドードン
南十字共和国アカデミー会員。田島博士を歓迎し、研究のために自由に使って欲しいと施設を提供した。万年筆のように見える「磁力シャープ」の発明者。この「磁力シャープ」は、ボタンを押すと強い磁力を発し、敵の武器を奪うことができるというもの。南十字共和国の鉄則のひとつである「火薬兵器を持たない」に従い、あくまで攻撃用の武器ではないのが特徴。
天草 鋼 (あまくさ はがね)
天草鉄太郎の父親で、南十字共和国の国王。戦争中にスラバヤでアルサロという女性と出会い、鉄太郎をもうけた。その後、阿部野と共に南十字島へ渡り、島を切り拓いて国を作った。偉ぶったところのない、気さくでおおらかな性格。