概要・あらすじ
帝の子供として生まれてきた源氏の君は、幼くして母親である桐壺の更衣を亡くし、淋しい身の上ながら、光り輝くような容姿やスタイル、あふれる魅力から都中の女性たちの憧れの的であった。彼は亡き母親に面差しが似ている藤壺の女御に想いを寄せていたが、彼女は父親の妻であった。禁断の恋だとわかっていながらも気持ちを抑えることができない源氏の君は、父親の勧めで葵の上と結婚するが、心を閉ざす冷たい妻に嫌気がさし、真実の愛を求めて色々な女性と関係を持っていく。
登場人物・キャラクター
源氏の君 (げんじのきみ)
帝と桐壺の更衣の間に生まれた第二皇子。生まれた時から光り輝くような美しさで、頭も良く、社交的。3歳の時に母親である桐壺の更衣が亡くなり、それ以来祖母に育てられていたが、6歳の時に祖母も亡くしてしまう。母親に面差しが似ているという噂の藤壺の女御に想いを寄せている。
帝 (みかど)
国の政治を司り、その一方で子孫を残してその血を絶やさないようにする役目も担う天皇。数多くの女性たちと契りを交わしているが、これ以上はないというほど桐壺の更衣に惚れ込み、深く愛した。桐壺の更衣が亡くなった後は、激しい悲しみを忘れ形見の源氏の君を溺愛することで埋めようとする。桐壺の更衣に面差しが似た藤壺の女御を愛するようになる。
桐壺の更衣 (きりつぼのこうい)
帝の寝所の世話をする女官の1人。美貌の持ち主だが、とても恥ずかしがり屋。帝の寵愛を一身に受けたせいで他の更衣や女御たちから嫉妬を受けるが、帝には愚痴ひとつこぼさない健気なところがある。身体が弱く、第二皇子となる源氏の君を生んだ後、若くして亡くなってしまう。
藤壺の女御 (ふじつぼのにょうご)
2代前の帝の4番目の娘。桐壺の更衣に顔が似ているという評判から、望まれて14歳で帝のもとにやってきた。帝の寵愛を受けたが、元々の身分の高さから嫉妬により意地悪をされることなどはなかった。源氏の君よりも5歳年上。源氏の君にとって永遠の憧れの女性。
弘徽殿の女御 (こきでんのにょうご)
右大臣の娘で、帝との間に第一皇子と皇女たちを授かっている。帝にとっては一番最初の妻で付き合いは長く、嫉妬深い性格から桐壺の更衣のことを目の敵にしている。桐壺の更衣が亡くなると、今度は第二皇子である源氏の君に対して対抗心を燃やす。
右大臣 (うだいじん)
弘徽殿の女御の父親。娘を帝に嫁がせ、生まれた第一皇子を皇太子にすることができたため権勢を振るっている。将来の帝の外祖父になるはずだが、帝が源氏の君を可愛がりすぎることに焦り、安心できずにいる。
左大臣 (さだいじん)
帝の妹宮との間に生まれた葵の上を源氏の君と結婚させるなど、複数の妻に娘を生ませて各地の有力者たちに嫁がせている野心家。源氏の君の元服の時に、髪の毛を結んで冠の中に引き入れる役目をしたことから、源氏の君の後見人になった。
葵の上 (あおいのうえ)
左大臣の娘で、源氏の君の最初の妻。源氏の君よりも4歳年上で、気位が高く冷たい性格。母親は帝の妹なので、帝にとって姪の立場にあたる高貴な血筋。源氏の君ともいとこ同士にあたる。頭の中将とは同母兄妹。
頭の中将 (とうのちゅうじょう)
左大臣の息子で、母親は帝の妹。葵の上の兄。父親のライバルである右大臣の四女と結婚している。派手で女好きな男性で、女性たちからも人気がある。源氏の君に対して興味とライバル心を同時に持っており、なにかとちょっかいをかけている。
左馬頭 (さまのかみ)
源氏の君や頭の中将の同僚。女好きで複数の女性たちと付き合っており、男女の恋愛に関する造詣が深い。自分なりの女性観を持ち、少々理屈っぽいところがある。
空蝉 (うつせみ)
高貴な血筋の女性。父母を失い、頼る人もなく心細い生活をしていたため、父親ほども年齢が離れた、がさつで美しくないがお金だけは持っている伊予の介と18歳の時に結婚した。現在は20歳。あまり美人ではないが、教養があり奥ゆかしく上品な女性。源氏の君と関係を結ぶ。
伊予の介 (いよのすけ)
空蝉の夫。受領の職に就いているためお金は持っているが、あまり品がなく、性格もがさつで無骨。前妻との間に紀伊の守、軒端の荻などの子供がいる。任国に下ることが多いため、空蝉は都にある邸宅に住んでいる。
紀伊の守 (きいのかみ)
伊予の介と前妻の間の息子。父親が若い女性に入れ上げていることを、口では恥ずかしいことだと非難しながらも、自分もまた義理の母親である空蝉に対して下心を持っている。源氏の君に気に入られたいと思っている。
軒端の荻 (のきばのおぎ)
伊予の介の娘で、12歳の女の子。義理の母親である空蝉のことを姉のように慕っている。素直で気取らない性格。声が大きく、大口をあけて笑ったりするなど、姫君としては少々品がない。空蝉に間違えられて、源氏の君と関係を結ぶ。
夕顔 (ゆうがお)
源氏の君の乳母が住んでいる家の隣に住んでいた姫君。ミステリアスで、源氏の君と恋仲になってからも、自分の素姓も名乗らない奥ゆかしい女性。源氏の君との逢瀬の最中に、物の怪に襲われて亡くなってしまう。実は頭の中将と関係があり、頭の中将との間に娘を生んでいる。
惟光 (これみつ)
源氏の君の乳母の息子。源氏の君にとっては乳兄弟にあたり、幼い頃から仕えてきたため、源氏の君の望むことはなんでもわかる。頭の回転が速くとても気が利くうえ、人脈も広い。女性からもモテる。
六条 (ろくじょう)
源氏の君と恋仲になった女性。源氏の君よりも7歳年上。未亡人で、娘が1人いる。高貴すぎるせいか、一緒にいると源氏の君が緊張してしまい、安らぐことができない。嫉妬深いところがある。
若紫 (わかむらさき)
源氏の君が病気を治すために北山の行者を訪ねた際、尼である祖母とともに山荘で暮らしていた10歳の少女で、兵部卿宮の娘。母親は2番目の妻だったため、正妻の意地悪に耐えかねて亡くなった。藤壺の女御の姪にあたるため、どことなく面差しが似ており、あどけなく可愛らしい顔立ちをしている。まだ子供っぽく世間知らずで、すずめをつかまえたり人形遊びをするのが好き。
末摘花 (すえつむはな)
亡き常陸の宮の娘。頼る人もなく、貧しい暮らしをしている。ひどい容姿をしており、でこっぱちで鼻が赤くて長く、顔の下半分が長い。胴長で、黒貂の皮衣を着ている。頭も悪く、手紙を書くのも苦手。源氏の君と関係を結ぶ。
典侍 (ないしのすけ)
宮中に仕えている初老の女性。家柄も良く、琵琶や歌も上手で教養もあり、機転が利いた受け答えをする才覚もある。さらに上品ということもあって評判は高いが、いい年をして男好き。源氏の君や頭の中将と関係を結ぶ。