概要・あらすじ
シャーマン族と剛魔人族の権力争いにより、100年にわたる戦争が勃発。それを終結させたのはシャーマン族に誕生した伝説の戦士であった。それから10年後、人並み外れた戦闘能力を持つ剛魔人族のシャクマは、より強い者と戦うことを望み、伝説の戦士として知られるシャーマン王を探す旅に出ようと考えていた。しかしシャクマが村を出る寸前、強い光とともに獣魔人のアネスが飛来する。
アネスは一切の記憶をなくしており、自身の名前すら思い出せない状態にあった。そんな中、剛魔人族の村はシャーマン族の操る怪獣ヒドラによる襲撃を受け、ヒドラの能力によって多くの村人が石にされてしまう。ヒドラによる石化は、シャーマン王の特殊魔法でしか解くことができない。
そこで交渉のため、王子という立場にあり、戦闘能力にも優れたシャクマが使者となってシャーマン王のいるイシュタルへと旅立つことが決まる。アネスもまた、自身の記憶を取り戻すため、シャクマに同行するのだった。
登場人物・キャラクター
シャクマ
剛魔人族の少年で、年齢は14歳。赤い髪と目をしており、額の中央に小さな角がある。剛魔人王族の王子として、シャーマン族との戦争中に生まれた伝説の戦士である。シャーマン族に敗れた後、戦闘能力を封印されたため、外見は小さな子供のままになっている。そのため、両腕を数珠で結ばれて使えず、普段は作り物の腕を気力によってコントロールしている。 その状態にありながらも闘争心は旺盛で、いまだ一般の剛魔人族よりは強く、自分より強い相手を探す日々を送っている。戦争を終結させたシャーマン族の「伝説の戦士」の存在を知ると、その者との戦いを望んで村を出ようと決心するが、祖父である長老たちに阻止され旅立てないままでいた。その後、アネスと出会い、ともに旅立つことになると、多くの敵と戦いながら本当の強さを認識していくこととなる。 基本的に自分の意志に忠実な性格をしており、情よりも自分が戦うことを優先する。そのため、当初はアネスを、自分がイシュタルへ行くための手段として考えていた。王子の立場ではあるが、臣下や村民たちには特に敬われたり、尊ばれたりされてはおらず、仲間の1人として平等に扱われている。 剛魔人族であることに誇りを持っており、ラセツがラブレスに蔑まれているのを見ると、激怒して強い能力を発動させた。真の力を解き放つことにより、完全に封印が解け、身体も本来の14歳の肉体になる。14歳の肉体では戦闘能力が高くなるだけでなく、身長も高くなり、角が額の左右に1本ずつになる。
アネス
獣魔人の少女。シャーマン族の住むイシュタル方面から飛んで来た光球から出て来た。猫の耳と尻尾が身体に付いている。ピンク色の長い髪に緑色の目をしている。一切の記憶を失っており、自分の名前も思い出すことができずにいる。そのため、シャクマがかつて飼っていた大トカゲの名前を流用し、記憶が戻るまで「アネス」と呼ぶことにした。 獣魔人でありながら、想いを昂らせると、シャーマン族の魔法に対抗したり、シャクマの封印を一時的に解くことができるなど、特殊な能力を持つ。料理は苦手なようで、シャクマやイルベスはできるだけアネスの料理を食べないようにしているが、ミーくんは好んで食べている。シャクマに特別な感情を抱いているが、恋愛感情の一歩手前というもので、本人も複雑な心境である。 賢人アグラのもとに行った際に、シャーマンの笛を使って、任意の場面でシャクマの封印を解くことができるようになった。
イルベス
人間の男子で、年齢は13歳。森で狩人をしていたが、住んでいた村を、獣魔人を引き連れたラセツに襲われ、半壊状態にされてしまう。ラセツを自身の手で退治しようと考えて村を出たところを獣魔人に襲われ、シャクマに助けられた。その後、シャクマと改心したラセツによって村には平和が訪れる。アネスに一目惚れし、イシュタルへ向かうシャクマたちのガイドとして、旅に同行することとなる。 剛魔人族ほどではないが、ある程度の武術をこなすことができ、弱い敵であれば自分で倒すことができる。アネスがシャクマに一途と知ると、スピアに想いを寄せるようになる。
ミーくん
火吹き竜の子供。小さいドラゴンで「みきゃ」と鳴くので、アネスが「ミーくん」と名付けた。旅の途中でアネスの作った料理を食べたことをきっかけに、旅に同行するようになった。食べ物をくれるアネスに懐いており、基本的にはアネスのそばにいる。怒ると巨大化して怪獣のような姿になって火を吹くが、食べ物の匂いがすれば、大体もとに戻る。 そのためアネスの前では基本的に巨大化することがなく、アネスだけは、ミーくんが火吹き竜であることに気づかなかった。
ラセツ
頭と顔を白い布で覆って、修行僧のような恰好をしている大男。剛魔人族の出身で、シャーマン族との戦争中にシャーマン王に挑んで敗北し、角を折られて殺された。しかし、シャーマン王が生命珠を使って仮の命を取り戻し、生き続けることができた。その後はラブレスが生命珠を握ることとなった。もともと持っていた闘いの能力に、シャーマンの魔力を組み合わせると、強さを倍増できることを知ると、本来なら敵であるラブレスに仕えながら、シャーマン王への復讐を果たそうと画策していた。 しかし、シャクマに会って剛魔人族の誇りを取り戻すと、身を挺してシャクマたちを守り、崖へと落ちて行った。だが生命珠にわずかに残ったラブレスの魔力により一命を取り留め、残った魔力を消費しないように、少年の姿となってシャクマたちの旅に同行するようになる。
ラブレス
シャーマン族の少女。セミロングの黒髪で、背中には妖精のような細長い羽根を持ち、水着のような服を着用している。無邪気で遊びたがり屋な性格をしているが、時おり冷徹な表情や言動をすることがある。シャーマンとしての力は非常に強く、スピアやランスとは比べ物にはならないほど。正体はシャーマン王の娘で、シャーマン族の王女である。 頭の回転が速く、特に戦闘や拷問などに関しては、味方も恐怖を覚えるほどの提案をする。イシュタルでは、シャーマン王の言葉を臣下たちに伝える役目を担っている。父親であるシャーマン王に対しても、言いなりになるばかりではなく、物怖じせずに発言することもある。幼少の頃は心優しい少女であったが、ある時を境に突如冷酷な性格に豹変した。 臣下たちは彼女の変化を、自らの規律を正すためのものだと信じ込んでおり、冷酷なラブレスにも疑念を抱かず付き従っている。
スピア
シャーマン族の女性戦士。長い髪に鳥のような羽根を持っている。王族であるラブレスと話す時は本来敬語を使うべき立場だが、幼なじみであるため、友達のようなタメ口で話すことができる。ラブレスの性格が変わったので、少なからず不信感を抱いている。しかし、イシュタルを想う王女としての役目だと考え、いつかはもとの優しいラブレスに戻ると信じてサポートをしている。 のちに「ホーリー」という人間の修道少女に化け、スパイとしてシャクマ一行と旅をするようになる。その中で徐々にイルベスに心惹かれていく。
ランス
シャーマン族の青年男性。長い髪にコウモリのような羽根を持っている。イシュタルの第一衛士として仕えており、ラブレスの側近のような役割を果たす。王族であるラブレスと話す時は本来敬語を使うべき立場だが、幼なじみであるため、友達のようなタメ口で話すことができる。この点に関してはスピアと同様だが、スピアよりもラブレスへの忠誠心は強い。 シャーマン族の戦士としての誇りが高く、剛魔人族への偏見が強い。
ランドール
シャーマン族の青年男性。短くカールした髪に、天使のような大きな羽根を持っている。シャーマン王の甥であり、ラブレスの婚約者でもある。強い魔力を持ち、イシュタルの精鋭部隊に所属する。「ランドール親衛隊」という部隊を持っており、イシュタルの中でもかなりの実力を持つ。
賢人アグラ (けんじんあぐら)
永い年月を生きている巨大な双頭の亀。シャーマン族と剛魔人族を創造し、世界を平和にしようとした。ところが、その力を使って双方が戦争を起こしてしまったため、世界に干渉することを止めて山間に隠れるようになった。普段は甲羅の部分が山にしか見えず、顔の出る部分は洞穴のように見えるが、「アグラの結界」を張っているので、入ることはできない。 双頭であるため、顔を出す時は1つの穴から同時に顔を出す。2つあるうちの片方は兄賢者の「アグラ・モーグ」と呼ばれ、戦いを好む。もう片方は弟賢者の「アグラ・モーゼ」で、ヒゲが生えており、平和を好む。
シャーマン王 (しゃーまんおう)
シャーマン族の王である老年の男性。娘のラブレスと甥のランドールによって、世界樹エバーグリーンへ魔力を送るため、その根に組み込まれ、監禁・幽閉状態となっている。シャーマン王としての矜持と平和を望む心は残っており、アネスをシャクマのもとへ送り、ラブレスたちの計画を阻止させようとした。
場所
世界樹エバーグリーン (せかいじゅえばーぐりーん)
宇宙空間に浮遊している大樹。この樹から酸素や水、生命が生み出された。植物として生み出される種子は独自に成長し、そこでまた生命が誕生する。これを繰り返して地球のような生物の棲む世界が作られた。しかし、1つの植物としての寿命が近づいている。
イシュタル
シャーマン族が住む場所と言われている。その詳しい場所は知られていない。知っているのは戦争に参加したものがほとんどで、イシュタルを目指すものは口伝によって教えられた方向へ進むしか方法がない。だが、イシュタルに住んでいるシャーマン族は出入りすることが容易である。
その他キーワード
シャーマン族 (しゃーまんぞく)
「神の末裔」といわれる2つのヒューマノイド種族の1つ。知性が高く、魔法を得意とする。また、背中には鳥や虫などの羽根が生えており、空を飛ぶことができる。本来は平和を望む種族であったが、剛魔人族が世界樹エバーグリーンを支配しようと戦いを仕掛け始めたため、それを抑えるべく開戦した。しかし伝説の戦士が誕生し、実質的な勝利を得た後は、その強さを過信する者が増え、他の種族を見下して魔法を悪用するようになってしまった。 イシュタルに集落があり、世界樹エバーグリーンを実質的に支配している。
剛魔神族 (ごうまじんぞく)
「神の末裔」といわれる2つのヒューマノイド種族の1つ。戦闘力が高く、屈強な肉体を持つ。自然のパワーを使って戦うことにより、その能力を上げることができる。頭に角を持っているのが特徴。この角は自身の強さの象徴とし、他人に触れさせることを嫌う。万が一にも角に傷が付いたり、折れるようなことがあれば、一族の恥として扱われる。シャーマン族との戦争が終わった後は、その戦闘狂である感情を抑える訓練がされ、喧嘩っ早い種族ではなくなった。 しかし、以前の認識により、他の種族からも嫌われたり、避けられたりすることも多い。
プリズナー
もとはシャーマン族だった者たち。強すぎる力を持ちシャーマン族の規則や誇りをすべて捨て、強さと権力だけを追い求めた結果、害となる存在になった。あまりにも行き過ぎた行動により、シャーマン王に封印された。そもそもは魔法などを使うことができない弱い存在であったが、下剋上のように、他の有能と言われるシャーマン族を見返すために結束した集団であった。
人間 (にんげん)
魔法や特殊な戦闘能力を持つことのない種族。世界樹エバーグリーンの各地に集落を持っている。シャーマン族や剛魔人族などの特殊種族にはまったく力が及ばず、弱い存在ではあるが、独自の文明を築いて特殊種族の者たちとも上手く付き合っている。
獣魔人族 (じゅうまじんぞく)
魔法により獣人化した者を指す。この魔法は基本的にシャーマン族に反抗した者への罰や罪を犯した者へかけられる。そのため、シャーマン族のみならず他の種族からも「罪人」という扱いをされる。獣人化した後は使い魔として使役したり、ペットのような扱いをされることがほとんどである。
生命珠 (せいめいじゅ)
水晶玉のような球体。ラブレスが、死亡したラセツに生命を与えるために使用した。ラブレスの魔力を注ぐと、その生命を永らえるだけでなく、怪我をしてもすぐに回復することができる。だが、ラブレスのコントロール次第では、逆に怪我をさせたり、痛めつけることが可能。そのため、ラセツは自身がシャーマン王への復讐を果たすまではと、表面上ラブレスに忠義を尽くしていた。