犬神家の一族

犬神家の一族

信州那須市の大財閥、犬神佐兵衛の遺産をめぐる凄惨な連続殺人事件に名探偵金田一耕助が挑む、横溝正史原作の同名探偵小説のコミカライズ。原作はこれまでに何度も映像化されており、特に1976年に石坂浩二主演で公開された映画は一大ブームとなった。

正式名称
犬神家の一族
ふりがな
いぬがみけのいちぞく
原作者
横溝 正史
作者
ジャンル
推理・ミステリー
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概要・あらすじ

信州財界一の大立者で犬神財閥の創始者である犬神佐兵衛が莫大な遺産を残し、この世を去った。同じ頃、私立探偵の金田一耕助もまた信州那須市を訪れていた。犬神家の法律顧問である古館法律事務所の若林弁護士に「近々、犬神家の一族に容易ならざる事態が勃発しかねないので力を貸して欲しい」と頼まれたのである。金田一は那須ホテルで若林を待っていたが、すでに彼はホテルの手洗い場で変死体となっていた。

死因は毒殺で古館恭三弁護士によると、どうやら若林は佐兵衛の遺言書を盗み見ていたらしい。事態を重く見た古館は改めて金田一に調査を依頼。金田一は若林の代理として佐兵衛の遺言公開の席に立ち会うが、その内容は一族を相争わせることを目的としたような不穏なものであった。

騒然となる犬神家の人々。そして、佐兵衛翁の呪いに突き動かされたかのように陰惨な連続殺人が始まる。

登場人物・キャラクター

金田一 耕助 (きんだいち こうすけ)

古館法律事務所の若林弁護士の依頼を受け、信州那須市へとやって来た有名な私立探偵。若林が何者かに毒殺されてしまったため古館恭三弁護士に頼まれ、犬神家を調査することになる。よれよれの着物にぼさぼさの長髪と見た目は冴えないが、探偵としての能力は確かで血腥い連続殺人の謎を解き明かしていく。

野々宮 珠世 (ののみや たまよ)

那須神社の神官で、犬神佐兵衛の恩人である野々宮大弐の孫娘。両親を亡くした後、佐兵衛によって犬神家に引き取られた。佐兵衛が死去して以来、乗っていたボートに穴を空けられて溺れそうになるなど、たびたび不審な事故に遭っている。佐兵衛の遺言が犬神家の全財産は野々宮珠世が犬神佐清、犬神佐武、犬神佐智の中から配偶者を選べば彼女に譲られるとしていたことから、莫大な遺産をめぐる争いのまっただ中に身を置くことになる。

犬神 佐兵衛 (いぬがみ さへえ)

信州財界一を誇る犬神財閥の創始者。生まれや育ちは不明で、17歳の時に那須に流れてきたところを那須神社の神官、野々宮大弐に保護され、彼の世話を受けて事業を起こした。一代で巨大財閥を築き上げた立志伝中の人物だが生涯正妻を持たず、3人の愛人にそれぞれ生ませた娘たちにも愛情を注ぐことはなかった。死に際して一族を相争わせる呪いのような遺言を残す。

犬神 松子 (いぬがみ まつこ)

犬神佐兵衛の長女で犬神竹子、犬神梅子は腹違いの妹。夫とは死別していて犬神佐清という一人息子がいる。勝気で気が強く、復員してきた佐清に偽物の疑いがかかり、出征前に奉納した手形と指紋を照らし合わせるという提案がなされた時、一度はこれを強く拒否した。竹子、梅子とは犬神家の遺産をめぐって反目しあっているが、かつて2人と結託して犬神佐兵衛の愛人の青沼菊乃を襲い、彼女から犬神家の全相続権を意味する犬神家三種の家宝を奪ったという過去がある。

犬神 竹子 (いぬがみ たけこ)

犬神佐兵衛の次女で、犬神松子、犬神梅子は腹違いの姉妹。婿養子の寅之助との間に犬神佐武、犬神小夜子という子供がいる。松子、梅子とは犬神家の遺産をめぐって反目しあっているが、かつて2人と結託して犬神佐兵衛の愛人の青沼菊乃を襲い、彼女から犬神家の全相続権を意味する犬神家三種の家宝を奪ったという過去がある。

犬神 梅子 (いぬがみ うめこ)

犬神佐兵衛の三女で、犬神松子、犬神竹子は腹違いの姉。婿養子の幸吉との間に犬神佐智という息子がいる。松子、竹子とは犬神家の遺産をめぐって反目しあっているが、かつて2人と結託して犬神佐兵衛の愛人の青沼菊乃を襲い、彼女から犬神家の全相続権を意味する犬神家三種の家宝を奪ったという過去がある。

犬神 佐清 (いぬがみ すけきよ)

犬神松子の一人息子。ビルマ戦線で顔に大怪我を負って復員してきたため、ゴムマスクで顔を覆い、その上に黒い頭巾をかぶるという異様な姿をしている。顔全体が醜く焼けただれていて、かつての面影をまったく失っていることから偽物ではないかという疑いがかかる。

犬神 佐武 (いぬがみ すけたけ)

犬神竹子と寅之助の息子。犬神家の跡取りの座を狙っており、野々宮珠世から犬神佐清の手形合わせを提案された際、彼女を無理矢理ものにしようとして猿蔵に殴り倒される。そしてその翌朝、菊人形に生首を飾られるという異様な姿で発見されることになる。

犬神 佐智 (いぬがみ すけとも)

犬神梅子と幸吉の一人息子。犬神家の跡取りの座を狙っており、策を弄して野々宮珠世を犯そうとするが、猿蔵に邪魔されて失敗。その後、琴の糸をくくりつけられた異様な絞殺体となって発見された。従妹の犬神小夜子と関係を持っている。

犬神 小夜子 (いぬがみ さよこ)

犬神竹子と寅之助の娘で犬神佐武の妹。従兄の犬神佐智の子を身ごもっており、野々宮珠世に佐智を配偶者に選んだら恨むと告げる。その後、佐智が行方不明になり、彼のことを探しにいくが、犬神家の旧邸で変わり果てた佐智の姿を見たショックから気がふれてしまう。

猿蔵 (さるぞう)

元は孤児で本名は不明。幼い時に犬神佐兵衛に引き取られ、犬神家の下男となった。いささか愚鈍なところはあるが力は強く、菊作りの名人でもある。佐兵衛に「珠世を守れ」と命じられたことから、常に野々宮珠世の側に付き従っており、彼女の危機を何度も救うことになる。

古館 恭三 (ふるだて きょうぞう)

古館法律事務所の所長。犬神家の顧問弁護士で毒殺された若林弁護士は彼の補佐をしていた。犬神佐兵衛の遺言状の恐るべき内容を事前に知っていた数少ない人物の一人で、犬神家で何かが起きるのではと不安を抱き、死んだ若林に代わって金田一耕助に調査を依頼する。

若林 (わかばやし)

古館法律事務所の弁護士で、犬神家の顧問弁護士である古館恭三の補佐を務めている。犬神家において容易ならざる事態が起きることを予測し、金田一耕助に助力を乞う手紙を送るが、金田一に会う前に何者かによって毒殺されてしまう。

青沼 菊乃 (あおぬま きくの)

青沼静馬の母親。工場の女工をしていた時、犬神佐兵衛に見初められて静馬を生んだ。佐兵衛は犬神家三種の家宝で犬神家の全相続権を示す斧(よき)、琴、菊を生まれたばかりの静馬に与えるが、このことが犬神松子ら3姉妹の怒りを呼び、青沼菊乃は彼女たちに襲われて散々に痛めつけられる。犬神家三種の家宝も奪われるが、その際に呪いの言葉を松子たちに吐いた。 その後の消息は不明。

青沼 静馬 (あおぬま しずま)

犬神佐兵衛が50歳を過ぎた時に女工の青沼菊乃に生ませた子供。佐兵衛から犬神家三種の家宝で犬神家の全相続権を示す斧(よき)、琴、菊を与えられるが、怒り狂った犬神松子ら3姉妹に襲われて母もろとも追放となった。その後の消息は不明。

野々宮 大弐 (ののみや だいに)

信州の那須神社の神官。妻の晴世との間に祝子という子供がおり、その子が野々宮珠世である。那須神社で行き倒れていた17歳の犬神佐兵衛を保護し、社会に出るまで面倒を見た大恩人であるが、実は佐兵衛とは衆道の関係にあった。

山田 三平 (やまだ さんぺい)

柏屋という旅館に泊まっていた復員軍人姿の男性。宿の主人には「山田三平」と名乗るが、帽子と襟巻で顔を隠していたため正体は不明。犬神佐清の手形合わせが行われた夜に犬神家の屋敷に姿を現し、野々宮珠世と佐清を襲った後に姿を消す。

その他キーワード

犬神家三種の家宝 (いぬがみけのさんしゅのかほう)

斧(よき)、琴、菊を象ったもので、「良き事を聞く」という意味が込められている。元々は那須神社の神器としてあつらえられたものだったが、犬神佐兵衛が事業を始めた際に神官の野々宮大弐が祝いとして佐兵衛に贈ったことから犬神家の家宝となった。犬神家の全相続権を示すもので、犬神佐兵衛の遺言では一定の条件により野々宮珠世にこれら三種の家宝が与えられるとされていた。

クレジット

原作

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